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二戦目

あけましておめでとうございます!

もう二週間弱経ったわけですが……

今年こそ更新ペースを上げたいですね……


皆様今年も作品共々宜しくお願い致します!


――――【ギルド対抗バトルロイヤル】その二戦目。


初戦にて100のブロックで行われた戦闘の勝利を掴んだギルドが再び10のブロックに分かれて勝者を決める。

フィールドの広さ、制限時間共に初戦と変わらずにひとつのルールが追加される。




――――ギルドマスターの敗北がギルドの敗北となってしまう。




余程自信のあるプレイヤーを除いてギルドマスターが前線に立つことはまずない。

自分なら大丈夫だという慢心が敗北へのルートになってしまうかもしれないからだ。


ほとんどがギルドマスターを除くプレイヤーで『調査』、『偵察』、『襲撃』、『戦闘』、『守護』などの様々な役割に分かれて行動する。

何せひとつのブロックには10のギルドしか居ないため、初戦ほど簡単に見つけることができないのだから。

数々のギルドがある中で100に残ることが出来るギルドが全て敵となれば警戒しすぎる位がちょうどいいのだ。




それがこの2戦目におけるセオリー――――のはずだった。










背の高い木々に囲まれた森の中を歩く3人のプレイヤーたち。

1人は眠たそうに、1人はそれに連れ添うように、1人は神妙な面持ちで宛もなくただ進んでいるように見えた。




「――――見つからないもんだなぁ……」


「マスター。

索敵は私にお任せを――――()()()()()()()()


「おぉ!流石『イカルガ』!

んで?どんなもんだ?」


「…………」


()()()()()()()()()()


「マジか〜なら頼んじゃうか〜。

――――『アルル』もそう思うだろ?」


ユウノはイカルガから聞いた言葉にケラケラと笑いながら神妙な面持ちで歩くアルルへと話を振る。

どうやら会話を聞いていなかった訳ではなくユウノの方へと視線を向けて本当に分からないと言った様子で尋ねた。


「……なんでおにーさんここに居るんですか……?」


「え、なに?俺仲間はずれ?」


アルルからの言葉に悲しそうな表情を作って自らを指さすユウノ。

その反応にアルルは慌ててそういう意味ではないと首と手を振った。


「ち、違います違います!

おにーさんギルドマスターなのに()()()()()()()()()()()()()()()ってことですっ!!!」


「あ〜なるほど?

良かった〜……ついに『アルル』にすら雑に扱われるようになるかと……」


額の汗を拭うようなジェスチャーで心の底から安心したと一息つく。

しかしそれはアルルの言葉への答えとはならない。




「――――まぁ初めは俺も出る気は無かったよ」


「……えっ?」


ユウノが腰に差す日本刀の柄に手を添えながらぽつりと呟く。


「初戦みたいにしようかと思ってたけど事情が変わってな。

トーナメント戦前に身体を慣らしておきたかったっていうのと()()()()()()()()()()()


自らの日本刀の方へと視線を移して言った。

その行動にアルルもユウノの腰に差さる日本刀に視線が向けられる。


そこにはユウノのメイン武器は()()()()


至ってシンプルな鞘に納められた二振の日本刀。

そのどちらとも同じもののようにしか見えない。






「――――マスターそろそろです」


告げられるイカルガからの知らせ。

それは敵ギルドのプレイヤーが近いということ。

アルルは深呼吸をして落ち着き、ユウノは首をこきりと鳴らす。


全プレイヤー(フル)か?」


「10名が固まっています。

残り5名に関しても気にされず大丈夫です――――()()()()()()()()()()()()


「本当に頼もしい限りだわ……。

んじゃ――――行くか」


既につけている狐面を深く被り直しユウノ先頭で突撃していく。


『奇襲』と言えば『奇襲』ではあるが、何処に真正面から倒されたら終わるプレイヤー先頭で突っ込んでいく『奇襲』があるというのだろうか。


敵のプレイヤーたちも同じことを思ったらしく唖然とした表情を浮かべて一瞬戸惑うものの、流石に勝ち残ってきたプレイヤーたちだけあって直ぐに体勢を立て直す。

突撃をしかけてきたユウノ、イカルガ、アルルの3名を視界に収め、他に伏兵が居ないかを確かめるかのように広域に向けての牽制遠距離攻撃。


放たれたのは威力よりも広域を攻撃する事に重きを置いた【中級魔法】――――【飛来する槍々(フライング・スピアー)】。

それを複数人のプレイヤーが放ったらしく密度はかなりのものである。


「おに――「任せろ」」


ユウノはアルルの言葉に被せるように口を開くと自らの後ろに来るように指示を出す。

腰に差された日本刀を一振抜刀すると笑みを浮かべながら【飛来する槍々(フライング・スピアー)】を見据えた。






「――――ふっ……!」


自分に当たる軌道の【飛来する槍々(フライング・スピアー)】のみを正確に【斬消(ざんしょう)】を用いて斬り落としていく。

体格の小さいイカルガ、アルルはユウノの後ろにいるため余程のことがなければ当たることは無いだろう。

敵のプレイヤーたちもこの攻撃が当たるとは微塵も思っていなかったらしく、ユウノの行動から後方に控えているプレイヤーは居ないものとして判断したようだ。


密集することはなく3人、3人、4人と言ったふうにプレイヤーを分けると互いに距離を取り向かってくるユウノたちを正面だけでなく側面からも攻撃できるように自らの配置を変える。

言葉を発することなくそんな行動をすることができるところを見ると余程手馴れているのかハンドサインでも決めているのかと考えるところだが、考えたところでやることは変わらないとユウノはスピードを保ったまま疾走していく。


あえて左右に分かれたプレイヤーたちは無視して真正面にて構えるプレイヤーたちを見据えると狙いを絞らせないようにするためか直線的な移動をやめ【歩行者(ウォーカー)】の【技能(スキル)】を使用して立体的な動きへと転ずる。

それによって姿が見えるようになった2人のうちアルルは既に【舞う魔弾(フラッター・バレット)】を発動させており3つの漆黒の弾丸のようなものが浮遊していた。


「――――【灼炎の群槍(バーン・スピアーズ)】!」


舞う魔弾(フラッター・バレット)】はそのまま待機させ、アルル自身が【個別魔法(プレイヤー・マジック)】を放つ。

虚空から煌々と燃える焔が槍の形を成して複数本出現する。

敵プレイヤーたちの放った【飛来する槍々(フライング・スピアー)】が形作る槍が玩具のように感じられるほど見た目にもこだわったのであろう【灼炎の群槍(バーン・スピアーズ)】はその威力も比較するのが馬鹿らしくなるほどであった。


射出速度もさることながら、弾速、射程距離共に圧巻。

敵プレイヤーたちからすれば放たれたかと思えば目の前で爆ぜていたであろう。


それでも敵プレイヤーたちは取り乱すことなく視界に存在しているユウノとアルルを逃がすまいと目をそらさない。

灼炎の群槍(バーン・スピアーズ)】の後処理は出来る者へと任せ次の攻撃に備える。











◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇











「――――あれ……?」


ふと、1人の敵プレイヤーが声を上げる。

姿が見えるのはユウノとアルル()()


()()()()()()()()()()()()()()()




――――ドサッ……。


「……っ……!」


自らの後ろから何かが地面に落ちる音がした。

その後に聞こえてくる音はないのが嫌に不気味で振り返る気力を奪う。

しかし、今は戦闘中。消えたイカルガのこともあるため確かめない訳にはいかない。

仲間にハンドサインを送って自らの持つ剣を横凪に振るいながら後方を見た。




剣が何かを捉える感覚はなく一瞬の安堵をもたらすも、次に視界に入った光景に頬を引き攣らせる。






「――――……?」


「「…………」」


自分の後ろに構えていた魔法職の仲間が地面に倒れピクリとも動いていない。

それも――――()()()()()

そして代わりにそこに立っていたのは口元を拭う仕草をしているイカルガだった。

鋭く長い犬歯がギラリと輝いて見える。


(あり……えない……っ!

あの一瞬でしかも音もなく!?俺が気が付かないほど?!)


注意を散漫にした気は毛頭なく少しの異変も見逃すつもりもなかった。


しかし、イカルガの姿を見失ったのは何時なのかが分からない。

ユウノが動きを変えた時には居たはずなのにも関わらずまるで初めからそこにいなかったかのように姿を消した。


そして、気がついた頃には背後に現れている。


(……挙句にはうちのギルドのプレイヤー2人を瞬殺……?

冗談は噂だけにしておいてくれ……!)


プレイヤーとイカルガは対峙し互いに動かない。

一方は眉間に皺を寄せ険しい表情。

一方はなんとなしの無表情。


余裕を持っているのがどちらなのかは火を見るより明らかである。


(なんで動かないのかはわからない……けど此処で1人でも足止めできてるのは大き――――)




――――ストン、と自分の視界が下へと落ちる。

しゃがもうとした訳ではなく、頭を下げた訳でもない。

自分から動こうとした訳では無いのだ。


なのにも関わらずプレイヤーの視界が明らかに低くなった。


「……っ!?」


プレイヤーが自分の状況に気がついた時にはもう既に()()()()()()()()()()

踏ん張るための足も、立ち上がるための腕も無く地面に突っ伏し顔を起こすしか出来ないプレイヤー。


「【異常状態(デバフ)】なんていつの間に……!」


しっかりと自分のステータスを確認してみれば周囲の音が聞こえなくなる【状態異常(デバフ)】である【無音】がいつの間にかかかっており、既に解除される寸前まで進んでいた。

【無音】が解除されたと同時に先程までプレイヤーの前にいた動かないイカルガが姿を消し、無音で背後をとっていたイカルガが近寄っていき口を開く。




「――――失礼」


そしてそのままプレイヤーの首筋に噛み付いた。

こくり、こくりとイカルガの喉が鳴る。

するとプレイヤーの【HP(ヒット・ポイント)】と【MP(マジック・ポイント)】が加速度的に減少していく。


イカルガは噛みつきによってダメージを与えているのではなく、噛み付いたプレイヤーの【HP(ヒット・ポイント)】、【MP(マジック・ポイント)】を奪い取っていた。




これこそがイカルガの種族系統によって可能な【技能(スキル)】――――【吸血(ドレイン)】。

()()()()()()()()


本来イカルガは噛みつかずとも【吸血(ドレイン)】を使用することが可能だ。

例えば触れるだけで効果を発揮する【吸血姫の戯れ(ドレイン・タッチ)】、ダメージを与えたプレイヤーの【HP(ヒット・ポイント)】か【MP(マジック・ポイント)】のどちらかを微量ながら継続的に奪い取る【吸血姫の徴収(ドレイン・レヴィ)】など。


では何故今回わざわざ噛み付きを選択したのか。


理由は時間効率が良いからである。

噛み付きによって直接奪い取る方が他の【技能(スキル)】よりも早く、そして多く奪えるのだ。

さらに、イカルガは自らのメイン職業である【真祖なりし者トゥルー・アンセスター】の効果によって【HP(ヒット・ポイント)】や【MP(マジック・ポイント)】だけではなく短時間ではあるがプレイヤーのステータス値を上昇、もしくは奪うことが出来る。

その上昇値には()()()()()()()()()()()

流石に1人のプレイヤーから得られるモノは限られているのだが、時間内であればその数値は加算されていく。




――――【穢れなき暗殺者(アサシン・ヴァルゴ)】。

HP(ヒット・ポイント)】、【MP(マジック・ポイント)】共にそうそう減ることがなく、たとえ減ったとしてもステータス値を上昇させた上で回復してしまい、戦闘が終わる頃には無傷でその場に立っていることから付けられた【二つ名】だ。




イカルガに全てを奪われたプレイヤーはポリゴン体へと還っていく。

既に()()()()()()()()を屠ったイカルガは満足することなく次の仕事に取り掛かる。











◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇











「――――もう終わっていらっしゃいましたか」


イカルガがユウノの元へ行こうとした頃には既に戦闘が終わっていた。

そのほとんどがユウノにより斬り倒されており、アルルに関してはほとんどやることがなかったらしく【HP(ヒット・ポイント)】も【MP(マジック・ポイント)】もほぼ使われることなく残っている。


ユウノは満足気な表情を浮かべて納刀すると自らのステータスを確認した。


「あ〜……こんなもんか」


「確認は出来ましたか?マスター」


「大丈夫大丈夫。

コツも要領も掴んだし完璧完璧」


ケラケラと笑いながらイカルガに言葉を返すユウノ。

背伸びをしながら欠伸をすると木陰にふらふらっと歩み寄っていき腰を下ろした。


「んじゃもうきゅーけー……後はみんながやってくれるだろ〜……」


先程までのやる気はどこへやらなんとも怠惰にくつろぎ始めてしまう。




「――――どうせ俺らが行ってももうやることないだろ」


そう言いきったユウノの【MP(マジック・ポイント)】が半分を切っていた。





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― 新着の感想 ―
[一言] イカルガさん、ヴァルゴの名を使われるだけはある、やばい組み合わせしてるなぁ、
[一言] 更新ありがとうございます。 私事ですが、定期的な更新がいいなー。 1ヶ月1回とかとかね。 ギルマスの新武器? 今までのメイン武器だと、 HPも減るはず。はてさて。 ここぞという時を期待し…
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