予定
Twitterでも少しだけ載せたのですが、いつの間にかブックマークが10000件を超えておりました!
更新が遅くて大変申し訳ないのですが何時も感想等ありがとうございます!
趣味で書いていたこの作品もコミカライズされ、無事単行本一巻を発売させて頂きました。
今後ともどうぞ宜しくお願い致します!
なんだかんだ言いながらも楽しい時間を過ごしたユウノたち。
自己紹介から始まりアリィとイリィの悪魔のようなゲーム、食事を楽しみながらの雑談。
午前10時という比較的に早めの時間に集まり開始したにも関わらず、気がつけば日が落ち始めていた。
「この後はどうするんだ?」
カップに注がれたコーヒーを楽しみながらユウノは訊ねる。
既に料理を乗せたカートは片付けられており円卓を囲む全員の前にはコーヒーもしくは紅茶の注がれたカップとクッキーなどのお茶菓子が置かれていた。
様々なことで楽しみ上がったテンションを落ち着けるには最高の状態と言えるだろう。
「今日は疲れたからホテルに帰って寝るのにゃぁ〜……。
まぁでもせっかく東京まで出てきたんだから明日観光するにゃぁ〜」
「東京観光ですか!
『マリィ』さん私もご一緒してもいいですか?」
「にゃ?『ララノア』も来るにゃ?
私の目的地秋葉原だけどいいのにゃ?」
「『マリィ』さんならそう言うと思ってましたからもちろんです」
「なら一緒に行くのにゃぁ〜」
マリィはそう言うとコーヒーを啜るニヤリと笑いながら。
そんなマリィの様子を見ていたユウノはララノアに向かって小さく合掌する。
悪巧みをしている時の表情だったからである。
「私は『ユウギリ』たちとお酒でも飲みに行くわ」
「お店は任せて良いでありんすか?」
「私の行きつけでよかったらね」
「『アマネ』の行きつけか〜バーとかではないよな?」
「まぁ、任せていいだろう『イルム』」
「私も一緒にいい?」
「『イカルガ』も?良いわよ」
アマネ、ユウギリ、イルム、ダイン、イカルガの5人はこの後の予定を口にしつつ楽しそうに談笑していた。
「『アラ』さ〜ん明日お姉さんとデートしよ〜」
「く、『クリス』さんっ!?」
「『ソフィー』ちゃんも行こ〜」
「両手に花かしら?
私は明日なら大丈夫ですわ」
「よ〜しじゃぁ決定〜」
「わたっ……俺の意見はっ!?」
「良いじゃないの〜」
クリスのマイペースさというか独特な雰囲気に巻き込まれたアラタは面白いように慌て、それをソフィアが楽しそうに眺め優雅に紅茶を口にしている。
そして、その様子を見ていた悪戯っ子が笑う。
「「――――ねぇねぇ『ハース』」」
「……なんだ?」
「俺たちと」
「デートに行こうよ〜」
「断る。私は明日行きたい場所がある――――1人で」
「そんなこと言わないでさ〜」
「ボクたちと行こうよ〜」
「……にじり寄ってくるな」
「ほらほら〜遠慮せずに〜」
「お兄ちゃんお姉ちゃんが奢っちゃうから〜」
「……少なくとも私の方が年上だ」
ハースはアリィ、イリィにロックオンされたようで絡まれていた。
おそらく一緒に行くことになるだろうとユウノは苦笑いを浮かべる。
「そう言う貴方はどうするの?」
「俺?まぁちょっと予定がな〜」
アマネからの問いにユウノはふっ、と小さく笑って答える。
「予定なんて無いくせによく言うにゃぁ〜」
「やかましいぞ『バツ8』」
「い、言ってはいけない言葉を言ったなっ!!!!!」
ユウノをからかうために言ったであろうマリィであったがユウノからの手痛い反撃に語尾を忘れて半泣きで立ち上がる。
「はいはい落ち着いて……」
「ふしゃーっ!!!!」
「……『ユウギリ』パス」
アマネがマリィを後ろから抱きとめることで落ち着かせようとするが、当のマリィはユウノからの反撃により野生に帰っており、まるで暴れ馬を相手にしているようで手の付けようがない。
そのためかアマネはため息を吐きながらユウギリへとマリィを受け渡すのであった。
「落ち着くでありんすよ〜」
優しくマリィを抱きとめて頭を撫でつつ柔らかな声音で落ち着かせるユウギリの姿はどこか母親のような雰囲気を持っている。
バタバタと逃れようとしていたマリィであったがしばらくすればそれも無くなり大人しくユウギリにされるがままとなっていた。
「これでよし!」
「……いつから『ユウギリ』はあんな処理班みたいな扱いに……」
苦笑いと言うよりは頬を引き攣らせた様子のユウノはあれで落ち着いてくれるなら問題は無いかと再びコーヒーを啜る。
「それで?
私たちの誘いをことごとくふったギルドマスターさまは本当にご予定はあるんですかね?」
「……『アマネ』その言い方だろ……。
予定があるのは本当だよ」
若干トゲのある口調のアマネに疲れて様子で返すユウノ。
今回のオフ会でアマネたちに誘われていたユウノであったが、その全てを予定があるからと断ったのは事実だ。
「ふ〜ん……何の予定かしら?」
未だに疑わしいものを見るようなジトっとした視線をユウノへ向けるアマネ。
予定の内容を伝えてない上に、日頃からの行いのせいかと肩をすくめたユウノは一言言い放つ。
「――――デートに誘われちゃった」
てへぺろとでも言い出しそうな表情、そして仕草だった。
『――――はぁぁぁぁぁあっ!!!??』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――――『トウキョー』【高天ヶ原】本拠地
初の開催であったオフ会は成功を収めそれぞれか解散した日の晩。
ユウノの姿はギルドマスタールームにあった。
ログイン表示上この時間はオフ会に参加したメンバーのうちユウノ以外はログインしていないようでおそらく各々楽しんでいるのであろうとユウノは小さく笑う。
「……デートを信じるかね普通……」
用事はなんだと聞かれた時に口にした冗談にその場は騒然となった。
勿論直ぐに冗談だと言ったユウノであったが反応が楽しかったなと思うユウノ。
実際の用事というのはアルルが【魔導師】となりユウノにも成果を見てほしいとの事だったため腕試しにクエストでも受けようかというもの。
行くのはユウノとアルルの2人だけのため傍から見ればデートと言えなくもないがそのような浮ついた話ではない。
ウインドウを片手で操作しながら惰性で溜まっていたメッセージを開封し目を通していく。
特に内容も大したものがない雑談のようなメッセージから報告や簡単な依頼のようなものまで様々。
ほとんどのメッセージは飛ばし読みをしていたユウノであったが何通かのメッセージは真剣な表情で目を通していた。
「……ふーん……」
一瞬鋭い目付きになるユウノ。
しかしその時間は僅かなもので瞬きをひとつすればいつものユウノへと変化する。
気になったメッセージを間違って消去してしまわないようにロックすると不必要なものを全て消去してしまう。
返信するという行動は取ることなく、ユウノは立ち上がり背伸びをするといつもの如く装備の手入れを始めるのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――――『トウキョー』【アサクサ】
アルルと初めて出会った町を集合場所に選んだユウノとアルル。
本来であれば一緒に現地に直接向かうつもりであったが、ユウノが準備をしなければならないということでこの『アサクサ』集合となった。
ユウノがいつも人前に出る時のように狐面を被っているが、そんなユウノに声をかけてくる者はいない。
遠巻きにその姿を見るものはいるが、その興味は直ぐに別のものへと向けられていた。
「(ん〜……たまにはこういうのも悪くない)」
鼻歌交じり歩いていると聞きなれた声がかけられる。
「――――お、おにーさん……?」
振り返ればそこに居たのは出会った頃から装備の変わった【犬人族】の少女。
「おぉ、『アルル』。
悪いな集合場所ここにして」
「えっと……それは良いんですけど……」
「ん?どうかしたか?」
目をまん丸にしたアルルはユウノの姿を上から下まで見ると再び顔へと視線を向ける。
「な、なんですかその装備……」
「あぁ、これ?――――面白いだろ?」
「……まさかおにーさんの準備って……」
「そ、この装備を揃えるっていう準備」
そう言ってユウノは笑った。
現在、ユウノはいつもの装備を身に纏っていない。
狐面、武器、防具その全てをこの『アサクサ』で揃えたのである。
「……なんだか今のおにーさんニセモノ感が凄いです……」
アルルの視線を受けながらユウノは額に手を当てて笑った。
「に、ニセモノ……っ!
そりゃそうだな!こんな初心者装備一式だとそうなるな!」
「そんな装備してるから声かける時におにーさんかどうか自信なかったんですよ!」
「それは悪かったな」
わしゃわしゃとアルルの頭を撫でる。
ユウノの装備はパッと見で初心者装備だと分かるほどに質素だ。
装飾品などほぼほぼ皆無で地味な色合いの和装とその辺の店で売られていた狐面。
武器である日本刀すら初期装備として売られているものだった。
「今日って【渇きの森】に行くんですよね……?」
「そうだな」
「……そんな装備で大丈夫なんですか……?
あの、決しておにーさんを疑ってるとかではなく……!
純粋に大丈夫なのかなって……」
「問題なし!
それに今日は俺に『アルル』の日頃の成果を見せてくれるんだろ?
俺がメインで戦うことはないだろうし、あったとしても日本刀があれば大丈夫だぞ」
腰に差した日本刀の鯉口を切りニヤリと笑うユウノ。
それに対してそこまで言うのであれば大丈夫なのだろうと全幅の信頼を寄せるアルル。
「さて……行くとするか」
「はいっ!今日は任せてください!」
「おぉ〜頼もしいなぁ〜」
足取り軽く2人が向かうのは【渇きの森】。
装備を一式初期装備にするというのは舐めプと言っても過言ではないが、それを可能にするほどの実力があれば問題は無い。
――――つまり、ユウノであれば何の問題もないのだ。




