オリエンテーション
本日5月7日は本作【平凡高校生の俺がゲームでは最強ギルドのギルドマスターなんですが……】のコミック一巻の発売日です!
皆様今後ともどうぞ宜しくお願い致します!
集まったメンバーの中にはユウノ、アラタといった未成年も居るからか飲み物はソフトドリンクで統一され各々が自らのグラスに好きなものを注ぎ、口にしていた。
ビュッフェスタイルで用意された様々な料理は運ばれてきたカートに乗せられたトレイで輝き食欲をそそる香りがふわりと漂う。
初めは『World Of Load』と現実世界で会う少しの違いに戸惑っていたものの、それも自己紹介を経た今いつも通りの雰囲気へと変わりそれぞれが好きなように楽しんでいた。
「お口に合いました?」
「は、はい!とても美味しいです!」
「本当にかなり美味しいわよ。
『ソフィア』が準備させたってことは滅多には食べれなさそうね……」
「そうでありんすなぁ……。
わっちも茶屋を経営してる身としてこの料理のくおりてぃは素直に凄いとしかいえんすよ」
「そう言ってもらえれば用意したかいがありますわ」
ソフィア、アラタ、アマネ、ユウギリの4名は椅子を寄せて優雅に食事を楽しみつつ談笑。
穏やかなその様子は4人の容姿が整っているのも相まってあまりにも絵になっていた。
「こらこら……その辺でやめておけ」
「「はーい」」
「おーいやりすぎ……今更か……」
「「はーい!」」
「……?ポテトが……辛い……?
――――『アリィ』、『イリィ』ちょっとこちらに」
「「いやー!」」
ダイン、ハース、イカルガの3人は幾度となくイタズラを仕掛けようとするアリィ、イリィの2人を時には止めたり、時には放置したり、時には自らくらったりと、幼子の面倒を見る父母のようなことをしつつもしっかりと食事を楽しんでいる。
「うんまっ!?
なにこれ何でもかんでも美味いんだが!?」
「わかるにゃ!
このグラタンチーズとろとろでサイコーにゃっ!……あちゅ……っ!」
「流石はにゃんこ猫舌なんだな。
……どれどれ一口」
「にゃーっ!?自分で取りに行けにゃ!
というか乙女の食べかけを食べるにゃっ!」
「いーだろ『マリィ』。
俺とお前の仲じゃん!」
「どーゆー仲にゃっ!!?」
「ギルマス〜!
この料理も美味しいよ〜!
――――あーん」
「自分で取って食うわ!」
「お、お水も飲んでくださいね?」
ユウノ、マリィ、イルム、クリスの4人はララノアに様子を見られながら取り皿に大量に盛られた食事をかき込む。
まるでハムスターのように頬をいっぱいにして美味しい食事に舌鼓を打っているようで、そんな4人をハラハラした表情でララノアがキョロキョロしていた。
そんなこんなで全員が空腹を落ち着かせ、自然とコミュニケーションに移り始めた頃、せっかく現実世界で会っているのだからと何かゲームでもしようという話になる。
「で、何するんだ?」
空腹は落ち着いたどころか満腹になっていてもおかしくない中、未だに食事を続けるユウノが言う。
マリィ、イルム、クリスの3人もユウノと同じく食事を続けており、その言葉に頷きを見せた。
「ふっふっふ……」
「こんなこともあろうかと……」
アリィ、イリィは得意げな表情を浮かべて立ち上がる。
そして自分たちの持ってきていた荷物を漁ると円卓の上に広げた。
「人生ゲーム!」
「ツイスターゲーム!」
「「準備してきたよ〜!」」
広い円卓を埋めてしまうほどに巨大な人生ゲームのシートと小道具、そしてなんともベタなツイスターゲーム用の色の付いた円がプリントされたシートの登場に一部を除き拍手が起きる。
「人生ゲーム!
わた……俺やってみたかったんです!」
「このツイスターゲームも楽しそうだと思っていましたの!」
中でもアラタ、ソフィアはやったことがないのか若干ほかのメンバーたちよりもテンションが高く目がキラキラしていた。
「……おい『アマネ』」
「……何よ『ユウノ』」
手にはまだ料理を持ったままではあるが口の中を空っぽにしたユウノが引きつった笑みを浮かべるアマネに近づきコソコソと話す。
「アイツらが用意したもの……だぞ?
俺の記憶だとロクな目に合わない気がするんだが……?」
「……それには私も同意ね。
でもあの2人、すごくやる気よ?」
「いや、でも……」
「だったら貴方が止めてきなさいよ。
――――私にはあの2人を前にやらないって言える自信が無いわ」
「……せめてツイスターは……でも人生ゲーム……」
「……私あんな巨大な人生ゲーム見たことないわよ……?
明らかに『アリィ』と『イリィ』の手作りね……」
「……手作り……」
明らかに市販品よりも巨大な人生ゲームのシートを見つめゴクリと生唾を呑む2人。
「どう考えても地獄なツイスターゲームか危険度未知数な手作り人生ゲームか……」
「……まぁ思春期男子にはツイスターゲームは地獄ね」
「おい、そこで俺をからかう意味を聞かせてくれ」
「特に意味は無いわよ?
それに男女入り交じってするなんて決まってないものねぇ?」
「……はいはい……言ってろ……」
ニヤニヤと笑うアマネにジト目を向けながらユウノは悩む。
果たしてどちらを希望するべきなのかを。
しかし、そんな悩んでいる場合ではなかったのだ。
「「――――どっちもしちゃう〜?」」
「「そうしましょう!」」
アリィイリィの言葉にアラタとソフィアが答える声が聞こえる。
「「あ……」」
アリィとイリィがお楽しみをどちらかしか選ばせないなんてことは無いのだから。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それじゃあ皆駒は置いた〜?」
「順番はさっき決めた通りで〜」
円卓上に広げられた巨大な人生ゲームのシート。
無駄に整ったフォントで書かれたスタートのマスには『World Of Load』での自分たちのデフォルメされた姿が印刷された駒が12個。
どんなマスがあるのかを先に確認しようとしますユウノたちであったがそこは対策しているようでマス目には数字が書かれており、止まったタイミングでアリィ、イリィが対応する数字のカードを出しそこに書かれていることを実行するという仕様になっている。
なんだかんだでやることが決まってしまったためにせめてもの抵抗としてプレイヤー側にアリィ、イリィを巻き込もうとしたユウノであったが奮闘虚しく2人はゲームマスターの位置に。
「よく出来てますねこの駒!」
「楽しみですわ」
アラタとソフィアはこういったものをやった事がないらしくプレイできるのが嬉しいようだ。
「変な『ます』がなければ良いでありんすなぁ」
「まぁなんとかなるさ〜」
「……楽しまないと損か……」
「別に問題は無い」
ユウギリ、クリス、イルム、イカルガの4人は思いのほか乗り気であり少々の心配はあるようだが概ね問題なさそうな雰囲気である。
しかし、残りの6人に関してはだいぶ表情が思わしくない。
「……やべぇ……嫌な予感しかしねぇ……」
「『ユウギリ』の言う通り変なマスを踏まないようにしないといけないわね……」
「その通りにゃ……一発アウトも有り得るにゃぁ……」
戦々恐々とするユウノ、アマネ、マリィ。
特に順番が前半であるこの3人は目がマジである。
「……はぁ〜……」
「溜息は幸せが逃げるぞ」
「『ハース』さん……」
「流石に楽観は出来ないが……まずは様子見だな」
ララノア、ハース、ダインは先の3人ほど慌てはいない。
なんと言っても順番が遅いため、どんなマスがあるのかを確認できるためだろう。
「それじゃあ今回は『十二面ダイス』を用意したから」
「自分の番に振って出た数字分自分の駒を進めてね」
「それと止まったマスでの」
「指示に関しては」
「「絶対厳守でお願いしまーす!」」
なんとも楽しそうな双子の様子に乾いた笑みが浮かぶユウノたち。
「何故に絶対厳守?」
ユウノからの言葉にアリィ、イリィはとてもイイ笑顔で返す。
「やっぱりせっかく皆でやるんだから」
「ルールは守ってもらわないと楽しくないでしょ?」
「「それに……」」
「こういうことをする時……」
「ゲームマスターの言うことは……」
「「ぜったーい!」」
「……明らかに王様ゲームのノリじゃねぇか……」
がっくりと肩を落として頭を抱えるユウノ。
そんなユウノの目の前に十二面ダイスが置かれる。
――――そう、この人生ゲームトップバッターはユウノである。
「じゃあギルマス」
「記念すべき一回目」
「「お願いしまーす!」」
「はいはい……」
手の中で十二面ダイスを遊ばせ今一度円卓上に広げられた巨大な人生ゲームのシートに視線を移すユウノ。
前半のマスならまだ可愛いものしかないだろうと願いにも似た思いでダイスを振る。
今回ユウノが出したダイスの目に不憫な者を見る目を向けるアリィとイリィ。
「十二面ダイスで」
「初回『1』かぁ〜」
「「逆に面白いかもね〜」」
「……俺ってなんでかこういうサイコロ振る系のやつって序盤に限って小さい目しか出ないんだよなぁ……」
そう言って自分の駒を1マスだけ前に進めるユウノ。
そしてアリィから対応するカードが渡される。
「なになに……『序盤で幸先悪く事故に遭ったため全財産を失い、次の自分の番まで語尾がにゃんになる』……は……?
俺早速全財産無くなったんだが……?
てか後半いるか!?」
「ギルマス〜」
「語尾はにゃんだよ〜」
「いやこれ人生ゲームというかすごろく……」
「ど、どんまい『ユウノ』……っぷふっ……!」
ユウノの肩を叩くのは笑いを堪えられない様子のアマネ。
「ほ、ほら語尾ににゃんをつけなさいよ……っくっ……!」
「……隠すならちゃんと隠せや……にゃん……」
なんだかんだ言いながら律儀にルールを守るユウノ。
その姿に数人が笑い声を耐えきれずに吹き出す。
「お前たちも同じ目にあってしまえ!!……にゃんっ!!!」
「あはははは……っ!!
そ、そう簡単に1なんて出ないわよ……っ!」
「呪ってやるにゃぁん……っ!!!」
余程頭にきていたのかいつもと違う様子で次の番であるアマネに向かって手を向けて謎の念を送るユウノ。
アマネは涙が出るほどに笑っており、ユウノの様子は気にしていないようで十二面ダイスを手に取ると無造作に放って出目の行方を見守る。
十二面ダイスが止まり出目が確定すると……
「――――次の人、振りなさいにゃぁぁぁぁあんっ!!!!」
「フラグ回収乙にゃぁぁぁぁん!!」
全財産を失った猫がもう一匹出現したのだった。




