改めて
コミック見本本が届いてとてもテンションが高い妃羅です←w
5月7日は散歩コース決定ですね!
ともあれ本編をどうぞ!
14名の男女が集まった部屋の中心には、恐らくというよりか確実にこの【オフ会】のために用意されたであろう――――円卓。
それは【高天ヶ原】のギルドホームにある会議室、そこにある円卓と同じデザインであった。
唯一違う点としては椅子の数が違うくらいだろう。
中野 裕也――――ユウノたちは全員が揃ったタイミングで各々椅子に腰掛けていた。
「あ〜……まずは自己紹介でもするか?」
周りを見渡しそう口にするユウノ。
何となく雰囲気で誰が誰なのかは察することが出来てはいるが、現実世界で一同が会することは初めてであるがための提案だ。
「そうねそれが良いわ」
周音 詩葉――――アマネがユウノの言葉に同意し、他のメンバーも異論はないようで頷いていた。
「じゃあ――――もちろんギルドマスターから、よね?」
「え゛っ……」
出たことがないような声がもれるユウノ。
にっこりと笑いながらユウノを見つめるアマネの言葉に笑顔が引き攣る。
円卓を囲む全員がユウノへと注目し喋り出すのを待っているようだ。
「……何言えばいいんだよ……」
ため息も共に吐き出された言葉。
アマネは呆れたような表情で腰に手を当てていた。
「私はこんな人間ですよーって伝えるだけよ?
分かったかしら?中野くん?」
「うっわ……ここでそのキャラはキツ……「何か言った?」……なんでもないっす!」
学校でのアマネを彷彿とさせる喋り口調にユウノが何か言おうとすれば笑顔に般若を背負ったアマネが鶴の一声を放つ。
敬礼しつつ続く言葉を飲み込み椅子から立ち上がるユウノ。
「あ〜……とりあえず俺が誰かはわかるよな?」
「わかりませーんどなたですかー?」
カットソーのTシャツとワイドパンツという全体的にだぼついているシルエットの青年は楽しそうに手を挙げて言う。
その反応で青年が誰なのかを特定したユウノであったが自己紹介を続ける。
「……馬鹿がいるみたいだから一応、ギルドマスターの『ユウノ』だ。
えーっと……本名は【中野 裕也】で学生やってる17歳……まぁほとんどのメンバーより歳下だな……これでいいか?」
「まぁ自己紹介なんてそれくらいで充分ね」
「そりゃどーも」
ユウノはそれだけ言うと椅子に腰を下ろすと円卓に頬杖を着き次は誰がやるのかと周りを見る。
特に自分からと立ち上がる者は居らず仕方がなしとアマネが立ち上がった。
「じゃぁ私から後は時計回りに行きましょう」
その言葉にも反対する者は居らず、それを確認したアマネは口を開く。
「何となくみんな誰が誰かは分かってるも思うけど私は『アマネ』。
本名は【周音 詩葉】。
『ユウノ』が通ってる学校の日本史の先生をしてるわ。
年齢は24歳で確か近い人が多かったわよね?
勉強面でもし分からないことがあったら任せなさい。
これからもよろしくね?」
「あまねせんせー課題を減らしてくださーい」
「中野くんは追加の課題をご所望かしら?」
「……なんでもないでーす」
ユウノの茶々を入れにアマネは特攻の切り返しを入れ黙らせる。
そして次に立ち上がるのは膝丈よりも少し大きめのグリーンの猫耳付きオーバーパーカー姿の少女。
「私の番だにゃぁ!
私は『マリィ』にゃ!
本名は【猫屋敷 舞麗】でイラストレーターしてるにゃ!
みんなも仕事の依頼ならお友達価格でしてあげるにゃ〜。
年齢は……永遠の18歳にゃっ!」
あざとい猫のようなポーズでそう言いきったマリィ。
「よっ!『マリィ』さんじゅうはちさいっ!」
「そうか……『マリィ』は38歳だったのか……」
ユウノの言葉に白シャツの上から薄手のニットを合わせたどことなくお父さんチックな雰囲気の男性は神妙な顔つきで呟く。
「に、22歳、にゃ……です……」
マリィはそれだけ言い残すと円卓に突っ伏した。
他のメンバーが苦笑いを浮かべる中、続いては黒タイツにデニムのショートパンツ、長袖のカットソーという全体的に黒を基調としたスタイルの女性が椅子から立ち上がる。
「……『イカルガ』。
本名は……【斑鳩 忍】。
……仕事はゲームクリエイター。
歳は23歳……ちょっと人見知り……」
ぺこりとお辞儀をするイカルガ。
「人見知りだったのか……」
「――――いえ、マスター。
現実世界では初対面ですのでまだ慣れていないだけです。
しばらくすればいつも通りになりますのでお気になさらず」
「突然饒舌になるなっ?!」
自分の言葉への返答のみいつものイカルガの様子で切り替わりに目を剥くユウノ。
まだまだメンバーはいるためテンポよく次のカットソーのTシャツとワイドパンツという全体的にだぼついているシルエットの青年が立ち上がる。
「俺は『イルム』な。
本名は【神咲 賢人】でスポーツインストラクターをしてる25歳。
運動不足の時は良いメニューを考えるから気軽にどうぞ」
「へいへーい筋肉キレてるよ〜」
「それはボディービルダーにかけたりする言葉な!」
どうやらユウノはそれぞれの自己紹介に合いの手や茶々を入れることにしたようで楽しそうにしている。
次に立ち上がるのは淡い青のフレアワンピースに身を包んだ女性。
「私は『ソフィア』ですわ。
本名は【安心院 衣緒里】と申します。
お仕事はピアニストをさせて頂いておりまして、年齢は21歳ですわ。
皆さん今日は我が家にようこそいらっしゃいました。
ゆっくりくつろいでいってくださいませ」
優雅に裾を軽くつまんで礼をするソフィア。
「こちらこそ今日は場所を貸してくれてありがとな」
「お料理も準備させてますのでこの後を楽しみにしてくださいまし」
「お、おう……」
ソフィアの言葉にやりすぎていないかドキドキのユウノ。
既にこの場を整えさせていることがやりすぎでは無いかと思っているがしてもらったことにケチをつけるほど小さな男ではない、はずだ。
「じやぁ次は〜」
「ボクたちだね〜」
フレアスリーブのパーカーのようなトップスにサリエルパンツというコーディネートの双子がノリノリで立ち上がる。
「俺は『アリィ』!」
「ボクは『イリィ』!」
「本名は【阿井 和葉】と」
「【阿井 紅葉】だよ〜」
「仕事はペットショップを経営してて」
「年齢は20歳でーす」
「「よろしくね〜」」
「……どうしても俺より年上に見えない」
ユウノのつぶやきににやっと笑ったアリィとイリィが席を離れてユウノの両隣に陣取る。
「お兄ちゃんですよ〜」
「お姉ちゃんですよ〜」
「やめろ!?」
座ったユウノの頭を二人揃ってよしよしするアリィ、イリィと嫌がるユウノ。
そんな3人を見て他のメンバーたちも朗らかに笑った。
しばらくその様子を楽しんだ後に自己紹介を再開しようと白シャツの上から薄手のニットを合わせたどことなくお父さんチックな雰囲気の男性が口を開く。
「俺の名前は『ダイン』だな。
本名は【大入 司】という。
仕事は……まぁちょっとした建築会社を営んでる。
歳は30歳とちょっと離れてるが気楽にフレンドリーに接してくれて構わない。つまりはいつも通りだな」
「「よろしくーお父さーん」」
「誰がお父さんかっ!?
……お母さんでもないぞ?」
「流石に学んだみたいだな……」
「だな……流石は旦那だ」
ユウノ、イルムコンビの言葉にツッコミを入れるダインであったが、以前にも似たやり取りをやった影響か先回りで2人の発言を潰す。
「馬鹿を言ってるんじゃない……。
ほら、次の番だ」
短く溜息を吐いたダインからの言葉で隣に座る真っ白なロング丈のシャツワンピースを黒のシンプルなベルトをワンポイントにした清楚な姿の少女が立ち上がる。
「わ、わた……俺は『アラタ』です!
本名は【新崎 葵唯】と言います!
わたし……俺も『ユウノ』さんと同じで学生してます!……あ、学校は別の学校です!
歳は16歳ですよろしくお願いします!」
「後輩〜焼きそばパン買ってこいや〜」
「えっと……『ソフィア』さん!この辺りに美味しいパン屋さんを経営してらっしゃるオーナーの方は――――」
「よし、俺が悪かった冗談だ」
ユウノは冗談で口にした言葉に対して予想外のことをやらかしそうなアラタに謝罪をすぐに口にして止める。
明らかに想像していた返答とは違い、ソフィアと同じくお嬢様のアラタがやりすぎるのを危惧したようだ。
「流石『ユウノ』さんの周りは退屈しませんね……」
心底疲れた様子でぐったりしていたカーキ色のサロペットとノースリーブを合わせた女性はそれまでの自己紹介を聞き楽しそうに笑っていた。
「私は『ララノア』です。
本名は【秋辺 乃亜】です。
仕事はWebデザイナーをさせてもらってまして……今日疲れてるのは納期が近いものがあったので死ぬ気で終わらせたからです……。
年齢は25歳に最近なりまして皆さんそんなに歳が離れてなくて安心しました!」
「仕事は溜め込むなよー。……脳筋なんだし」
「そこっ!『ユウノ』さんに脳筋って言われるのは心外です!
……『ユウノ』くんって呼ぶべきですかね?」
「やかましいわ!
……呼び方はお好きにどーぞ」
年齢を聞いたからか呼び方を変えるべきかと思ったのであろうララノアが小首を傾げるがユウノはそんなのどうでもいいと手をヒラヒラさせる。
続いて立ち上がるのは白シャツにジャケット、パンツといったスマートさを感じさせるモノトーンコーデに身を包んだ青年。
「私は『ハース』。
本名は【如月 隼】。
年齢は21歳で、まだ仕事にはついてなくて大学生をしている。
今日はちょうど一段落ついたから来れたんだが……ギルマス、あぁいうことはもっと早めに教えてくれ」
自己紹介を終えたハースはユウノをじとっとした視線で見つめる。
かくいうユウノは苦笑いを浮かべていた。
「悪い悪い。
てか、めっちゃインテリっぽいな」
「さぁ?服には詳しくなくてね。
恥ずかしながらマネキン買いだ」
肩を竦めながらハースは笑う。
マネキン買いだと言うが似合っているのだから問題は無いだろう。
「いいんじゃない?
俺なんてアニメキャラばりにおんなじ服装だぞ」
「私も似たようなものだ」
そんな2人の言葉に複数人の人間の目が輝いたが、その場では何を言うわけでもなくただ2人をターゲットにしたようでユウノとハースは嫌な予感にゾクリと体を震わすのであった。
順調に自己紹介も進み残るは2人。
何とも目のやり場に困る服装ではあるもののいつもの姿を思い出し、そんなに変わらないから問題は無いと自らに言い聞かせ口を開く。
「――――ほら、そこのエチチシスターズも自己紹介しろ」
「全く『ユウ――――……『ユウノ』貴方、実は焦ってるわね?」
ユウノの言葉に若干きつい視線を向けるアマネであったが、その様子に呆れたような声音で言った。
――――顔が赤く染まり目が泳いでいたのだ。
「や、やかましいわ!」
「うんうん、思春期男子だものね。
あの2人の格好は刺激が強かったわね……」
「……うるせー!!」
図星だったのか、ユウノはアマネの言葉に言い返すことが出来ず何とか出てきた言葉も苦し紛れのものであった。
そして――――そんなユウノの反応を2人が逃すわけがなかった。
ニヤニヤとした表情で1人が、愉しそうな表情で1人が先程のアリィ、イリィのようにユウノの両隣へと移動する。
「も〜そんなに見たいなら言ってくれればいいのに〜」
ショート丈のふわりとしたトップスとダメージデニムショートパンツという装いの女性はユウノの右隣の嫌でも視界に入る程の至近距離に陣取ってニヤニヤと笑う。
恐らく狙ってのことであろうショート丈のために露出された腹部が強調されていた。
「これ、似合ってないかしら?」
オフショルダーの丈が少し長めなニットを身に纏った女性はユウノの左隣の触れそうな位置で自らのニットを摘みながら艶やかな笑みを見せる。
もはや履いていないのでは無いかと思わせるほど惜しげも無く出された太ももは、ニットが摘まれたことによりさらに露出され眩しい。
「…………」
明らかに2人にからかわれているユウノはなんとも言えない表情を浮かべる。
そんな3人を眺めている他のメンバーたち。
「え、何あの羨ましい状況」
果たして自らがあの状況に置かれてそのようなことを言えるのか怪しいイルムが真顔で呟く。
アリィとイリィに関しては爆笑しており涙まで出ている始末。
「……いいなぁ」
そうぽつりと呟くアラタは自分の服装を眺めながら頬をふくらませる。
「ほれほれギルマス〜サービスだよ〜」
「感想はまだかしら?」
「…………」
何とか別のところに視線を向けようとするユウノだが悲しいかな、男性の性というものだろうついちらりちらりと見てしまう。
そしてそれがバレない訳もなくさらに2人にからかわれるという負のスパイラルが出来上がっていた。
――――そんなユウノを助けたのはダイン。
最年長ということもあってか落ち着いた大人の雰囲気で2人を止める。
「その辺でやめてやれ。
そもそも俺はまだお前たちの自己紹介を聞いていないが?」
「あ、そういえばまだだったね〜。
私は『クリス』さんだよ〜。
本名は【甘栗 陽香】ね〜。
歳は20歳でデバッカーやってま〜す」
ショート丈のふわりとしたトップスとダメージデニムショートパンツという装いの女性は両手でピースしながら、しかしユウノから離れることはなく言う。
「私は『ゆうぎり』よ。
本名は【朝霧 結香】。
年齢は24歳で京都で茶屋を経営しているわ」
オフショルダーの丈が少し長めなニットを身に纏った女性は微笑みながらそう言って再び視線をユウノに戻す。
「……『ユウギリ』喋り方はそんなんなんだな」
いつもとは違う喋り方にユウノはようやく口を開く。
その言葉にユウギリは頬に手を当て唇をぺろりと舐めた。
「いつもの喋り方を現実世界でもしてたらえらい変に思われんすから。
まぁ、ここでならこっちの方が良いでありんすかね?」
「『マリィ』がまんまな喋り方だったからな。
『ユウギリ』ももしかしたらって思ってたんだよ」
「……わっちもそれは驚きんした。
まさか現実世界でも猫さんだとは思いんせん……」
ユウノとユウギリの視線はマリィに向けられる。
喋り口調もそうだが、今の格好にもツッコミどころは沢山ある。
何せ着ているのは猫耳の付いたオーバーパーカー。
よく見てみれば尻尾らしきものもちらちらと揺れていた。
「「あいたたたたた……」」
「2人とも喧嘩売ってるなら買うにゃぁ?」
ユウノとユウギリの反応に口角をひくひくさせてマリィは言った。
「滅相も無い」
「同じくでありんす」
「……分かればいいにゃ」
ジト目のマリィは納得してはいなかったが矛を収めてくれたようで大人しく席に着く。
こうしてようやく全員終わった自己紹介。
この場所の主であるソフィアはぱん、と柏手を打ち注目を自分に集めた。
「自己紹介も終わったことですし料理を運ばせますわね?」
そう言ったソフィアは再び柏手を、今回は3回。
すると事前に準備していたのであろうメイド服執事服に身を包んだ人たちが料理を乗せたトレイをカートで運んでくる。
あっという間に料理や飲み物が準備された一角を背にソフィアが微笑む。
「ビュッフェスタイルにさせて頂きました。
さぁ、皆さんで乾杯いたしましょう」
各々が用意されたものの中から自らのドリンクを手に取り円卓を囲む。
そして一同の視線は一点に集まる。
ユウノはそれに関して何か言うことはなく、笑顔を浮かべてドリンクを掲げた。
「――――乾杯!」
『乾杯っ!』
グラスを合わせる音はなく全員の一言がその場を埋める。
そして各々動き始めるのであった。




