三体目――――2
新年明けましておめでとうございます。
鈍足更新ではございますが本年も何卒よろしくお願いいたします。
――――駆け抜ける
――――斬り捨てる
――――一太刀で斬り捨てる
――――すれ違いざまに斬り捨てる
――――背後に回りこみ斬り捨てる
二振の日本刀が敵と斬り結ぶことはない。
おおよそ百体にも及ぶ敵の分身体をただひたすらに斬っていく。
システムのアシストが入っているとはいえその動きはあまりにも洗練されていた。
無駄のない身体運び、迷いのない判断により彼の――――ユウノの一歩は敵の数歩先を行く。
まるで全方位への視覚でもあるのかと言わんばかりに縦横無尽に動き回る姿は圧巻の一言である。
一体を片腕で振るう一太刀による大袈裟で屠ったかと思えばそのまま背後へと近づく他の一体を地面から跳ね上がる刃で斬り殺す。
さらにもう片腕に握る日本刀は自らの身体へと引き絞り刹那の刺突。
喉元へと正確に突き刺さり貫通する鋒をそのままに上空へと振り上げ頭を真っ二つに。
その場には数秒ととどまらない。
一瞬で三体目もの敵を地に沈めたユウノは再び駆け抜ける。
――――すれ違いざまも逃さない。
長槍、ロングソード、双剣、棍棒などなど、様々な武器で武装した【戦乙女・ブリュンヒルド】の分身体を翻弄する。
長槍が振るわれればすんでのところで身体を一回転させ躱し、そのまま遠心力を利用して周囲の数体巻き込みながら腕ごと胸部を両断する。
もちろん、長槍を振るってきた分身体も言わずもがな一太刀の元に地に沈む。
ロングソードがユウノの身を襲えば紙一重でその剣筋を読み切り返しの一太刀が分身体を斬り捨てる。
手数の多い双剣ではどうだろうか。
流石に日本刀で数度程度は受けるかと思えばだらりと両の腕を下げて脱力を見せて躱す。
そして脱力されたユウノの腕は蛇のようにしなやかにしなりを見せ双剣を握る腕を斬り落とし無防備な胴体を頭から一直線に割る。
倒せば倒すほど――――というよりは斬り捨てれば斬り捨てるほどにユウノの動きが良くなっていく。
それがユウノの【サブ職業】――――【斬人】の【恒常型技能】。
『ノーダメージで斬り倒した敵の数に応じてステータスを上昇させる』というもの。
上昇値は1体につき1%、10体毎に10%のボーナスが発生する。
このステータス上昇効果は次にプレイヤーがダメージを受けるまで継続され、斬り倒す以外の方法でプレイヤーが敵を倒した場合、ダメージを受けた場合は上昇値がリセットされるようになっている。
まさに一対複数を得意とするプレイヤーにとって理想的な【恒常型技能】といえるだろう。
しかもこの【職業】は分類されるのは【基本職業】という誰にでもなれるというものだ。
しかし、この【職業】を獲得しているプレイヤーは少ない。
理由は簡単、【基本職業】なのにも関わらず獲得条件がかなり厳しいのだ。
『推奨レベル80以上の敵をノーダメージで100体以上連続で斬り倒す』
そもそも【基本職業】に分類されているにもかかわらず推奨レベル80以上の敵を要求する時点でおかしいだろう。
そして100体以上連続で斬り倒すというのもかなり難しい。
何せ100体以上の敵が連続で出てくるという場面がそうそうないからだ。
そのためこの【斬人】という【職業】はあまり獲得しているプレイヤーが少なく、しようとするプレイヤーもいつしかいなくなっていった。
――――ちなみにこの【斬人】も【剣聖】と同じくユウノが『The World』内で一番初めに獲得している。
「――――ふぅ……」
目測半数ほどを斬り捨てたユウノは短く息を吐き出す。
完全に【敵対心】がユウノに集まっているのだろう【戦乙女・ブリュンヒルド】の分身体からの視線がユウノに突き刺さる。
現状、『ユウノVS分身体』、『【十二天将】VS【戦乙女・ブリュンヒルド】』の構図が完全に出来上がっていた。
ユウノは【十二天将】たちを一瞥することすらなく再び姿勢を低く駆け出すと加速する。
【瞬地】を使っている訳ではなく、ただのステータスと身体運びによる移動だが見るものが見ればそれは【技能】を使っているように見えるほど、ユウノの移動は疾かった。
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――――ユウノが【戦乙女・ブリュンヒルド】の分身体を斬り捨てていた時。
【十二天将】たちは【戦乙女・ブリュンヒルド】本体との戦闘へと移行していた。
【十二天将】たちが見上げるほどには巨大な身体を持ち、軽装ながらも強固さを主張する全身の鎧。
左腕にはラウンドシールドを、右腕には長槍を装備した姿はソフィアを連想させる。
その背に携えた光の翼からは絶えず眩い光を発していた。
【戦乙女・ブリュンヒルド】は【聖属性】、【火属性】、【闇属性】の三属性を持った攻撃のダメージを完全に無効化し、プレイヤー側からの状態異常付与を無効、非物理攻撃のダメージを半減、更には【HP】【MP】の自動回復をも持った驚異的な【レイドボスモンスター】である。
そして、その手に持つ長槍。
――――【乱輝せし地墜としの槍】。
自らの名を冠するこの長槍は複数の能力を持つ。
一つ目は【乱輝】の名の通り不規則なタイミングでの発光によるプレイヤーの視界を一瞬とはいえ奪うもの。
二つ目に【地墜とし】に準ずるものか【乱輝せし地墜としの槍】の攻撃を受けたプレイヤーに一定確率で移動速度低下の【状態異常】を与えるもの。
最後にこれも【地墜とし】に合わせてか【乱輝せし地墜としの槍】が触れたプレイヤーを強制的に地面へと墜すというもの。
これだけでも厄介極まりないにも関わらず、左腕のラウンドシールドは唯一減少されることなくダメージを与えることの出来る物理攻撃ダメージを確率で無効化する能力を与えられている。
しかもこの確率無効化はラウンドシールドで防御しなくても発動されるため、早々にこのラウンドシールドを排除しなければならない。
そもそもと言えばであるが、【戦乙女・ブリュンヒルド】はその身体を軽装ながらも鎧に護られているため防御能力が非常に高いため物理攻撃ダメージもある程度は入りにくい。
プレイヤーを絶望させるに値する【戦乙女・ブリュンヒルド】の唯一の救いといえばこの武装を破壊または剥がす事ができることくらいだろう。
――――そして、この唯一の救いこそが【戦乙女・ブリュンヒルド】の攻略法でもある。
先頭をかけるのはダイン。
ソフィアから貸与された【不可侵の神盾】を左腕に、右腕には自らのメイン武器であるグレートソードを握りしめ疾走する。
両武装共にその巨大さゆえ相当の重量があるにもかかわらず、ダインはそんなことお構い無しと言わんばかりだ。
牽制のためか【戦乙女・ブリュンヒルド】から放たれる【上級魔法】――――【紅炎の雨】。
【ヒンダルフィヨルの炎壁】を見たあとではその熱量は大したものでは無いように感じるが侮ってはいけない。
【レイドボスモンスター】、しかも【戦乙女・ブリュンヒルド】程の強さをもつ敵が放つ【上級魔法】はその一撃一撃がパーティーを壊滅させかねない。
――――しかし、【十二天将】たちにとってはそんなものはないにも等しい。
「わっち相手に野暮でありんすねぇ……」
虚空へと伸ばされるその手、一戦目の【聖域の守護龍・ラメド】を思い出させるユウギリの仕草。
ため息でも聞こえてきそうなユウギリの声色は呆れが混じっていた。
発動されるのは【魔法引動】。
ユウギリへと【紅炎の雨】は引き寄せられ【暴食】によって喰らい尽くされる。
まだまだ自らの【GP】に余裕のあるユウギリがいる間は生半可な広範囲非物理攻撃は意味をなさない。
ただユウギリに回復の機会を与えているだけに過ぎないのだ。
「ん……ごちそうさまでありんす」
唇を艶やかにひと舐めするとユウギリはお返しと言わんばかりに【神話魔術】を行使する。
ユウギリの周囲を3つの水晶玉が囲み回転を始め、徐々に天にその回転周期を縮めながら上っていく。
ちょうどユウギリの身長の2倍ほどの高さに到達した時、3つの水晶玉たちは同時に衝突する。
反発し3つの水晶玉たちがそれぞれ別方向へ弾けると巨大な魔法陣が一瞬のうちに描かれた。
「――――【終わりなんし】……」
それは冷たい声音だった。
まるで敵へと下す【最終宣告】。
ユウギリは天に右腕をかかげると静かに告げる。
「【神話魔術――――永遠と降り注ぎし天の水門】」
その言葉と共にユウギリの右腕はゆっくりと振り下ろされる。
ユウギリの頭上に広がった巨大な魔法陣はふわりとその姿を消し、次の瞬間には【戦乙女・ブリュンヒルド】の遥か上空に出現した。
――――ぽつり……。
それはそんな可愛らしい音から始まった。
――――さー……。
徐々に強くなりよく見る小雨ほどに。
――――ざー……。
これは大雨と言っていいほどに強くなる。
――――ごぉぉぉおっ!!!
やがて気がつけば雨の勢いは風もないというのに嵐の如き強さへと変わっていた。
大地を穿つかのように激しい雨は【戦乙女・ブリュンヒルド】を中心に降り続く。
この【永遠と降り注ぎし天の水門】は発動時に2種類から選ぶという珍しいものだ。
方や大洪水を起こし敵へとダメージを与えるもの。
方や一定時間大雨を振らせ敵に【状態異常】を与えるもの。
今回ユウギリが選んだのは後者。
非物理攻撃のダメージを半減してしまう【戦乙女・ブリュンヒルド】に対して使うにはそちらの方が効果的だという判断だ。
この【状態異常】は複数あり、まずこの雨を浴びたパーティーメンバー以外に攻撃のクリティカルヒットと呼ばれる一定確率で発生するダメージ増加の確率を減少させる。
そしてさらに移動速度低下、【雷属性】攻撃のダメージ増加、【火属性】攻撃のダメージの激減。
極めつけに、敵に自らの装備している武装の【短期解除】確率の増加というものがある。
最後の効果などまさに【戦乙女・ブリュンヒルド】相手にうってつけだ。
そうこうしているうちに、ダインは【戦乙女・ブリュンヒルド】との第一の接触。
まずは小手調べと言わんばかりに【戦乙女・ブリュンヒルド】は自らの長槍を横凪に振るう。
「ふんっ!!!!!」
力強く野太い声が響く。
ダインは【不可侵の神盾】を握る腕に力を入れ、身体に近づけて構えることにより長槍の横凪に振るわれる攻撃を受け止める。
激しい衝突音ののち、元々ステータスの高さもあるが、ダインは複数の支援によりその場から吹き飛ばされることも無く長槍を受け止めて見せた。
【乱輝せし地墜としの槍】の【状態異常】も今回は受けることなく、さらに初めから地に足をつけているため地面に墜すという効果も意味をなさない。
基本的に地から足を離さないダインは今回の先兵、壁役としてうってつけなのである――――たった一人で【レイドボスモンスター】の壁役をこなすという人外じみた内容を考えないのであればだが。
そして、受け止めたその一瞬を逃すほど【十二天将】たちは甘くはない。
攻撃方法が物理型であるアラタ、イルム、イカルガ、ソフィアの4人が自らの間合いへと駆け抜ける。
アラタは一振の日本刀、イルムは体術、イカルガは両の手にダガー、ソフィアは長槍とロングソードの槍剣術。
誰よりも間合いが敵に近いイルムが四肢に力を入れ、四足走行でもしそうな勢いの前傾姿勢で駆け、初撃を叩き込む。
狙うはもちろん、ラウンドシールドが装備された左腕。
「はぁぁぁぁあッ!」
気合を入れるイルムの咆哮。
【永遠と降り注ぎし天の水門】による大雨でぬかるむ寸前の地を踏み砕きながら【戦乙女・ブリュンヒルド】の左腕その僅か上に向かって跳躍したイルムは、空中で縦に一回転すると、落下の勢いも合わせ左腕のラウンドシールドが装備された腕部分へとかかと落としを放つ。
あわよくばその一撃によりラウンドシールドの【短期解除】が起きればという所だったが、そこまで上手いことはいかなかったものの、ありがたいことにラウンドシールドによる確率物理攻撃無効化が発動することはなく、幾ばくかのダメージを与える。
さらに【戦乙女・ブリュンヒルド】の腕はイルムのかかと落としの勢いに負け強制的に地面に向かって沈んだ。
【乱輝せし地墜としの槍】の横凪を受け止められ、想像以上の威力によるかかと落としにより地に沈められた左腕。
さしもの【戦乙女・ブリュンヒルド】もバランスを崩してしまう。
しかし、その左腕に装備されたラウンドシールドは未だ健在。
それを確認したアラタ、イカルガ、ソフィアは追撃を決行。
【戦乙女・ブリュンヒルド】のラウンドシールドは腕のガントレットと併合されており、握るでは無くくっついているという表現の方が正しい。
だからこそ、まずはそこを破壊するべきだ。
イルムの初撃により形をひしゃげさせたガントレットに狙いを定め、【戦乙女・ブリュンヒルド】の身体側を駆ける。
強力な一撃による無効化されないことを前提のギャンブルアタックも良いが、ここは手堅くと言わんばかりにアラタは日本刀を振るう。
自らの利き腕側に日本刀を構え超低姿勢で掛けたアラタはそのまま下から上へと振り抜く。
そして刀を返して斬り下ろしたかと思えばさらに刀を返して斬り上げ――――それを刹那で繰り返す程に合計八太刀。
「――――【八堕】」
最後に振るわれる一太刀により体勢を立て直そうとしていた【戦乙女・ブリュンヒルド】の腕は再び強制的に地面へと戻る。
残念なことに【戦乙女・ブリュンヒルド】の【HP】の減り方を見るに無効化されなかったのは二太刀と言ったところだろうか。
しかしそれは些細なことでしかなかった。
なにせこれはダメージを狙ったものでは無いのだから。
イルムの初撃によりひしゃげたガントレットはアラタの八太刀によりさらにその形を変形させ、僅かな亀裂を生む。
アラタは自らの攻撃により完全に破壊できなかったのを確認すると眉をひそめながらもバックステップによってその場から離れる。
「――――【弐の暗殺】」
閃くは目視不可の同時二連撃。
アラタが【戦乙女・ブリュンヒルド】の腕から離れた途端に瞬間移動でもしたのかという速度でその場に出現したイカルガが既に攻撃を終えていた。
両の手に握られた真っ黒なダガーは姿を消し、手ぶらになったイカルガは一瞬のうちに姿を消す。
ここまでイルム、アラタ、イカルガの一点集中の攻撃を加えられた【戦乙女・ブリュンヒルド】のラウンドシールド、それを固定するガントレットは初めの原型など想像できないほどにひしゃげ、亀裂を入れていたがしかし完全破壊にまでは至っていなかった。
『………………!!!』
【戦乙女・ブリュンヒルド】は光の翼を羽ばたかせ、声を上げはしないものの怒りを露わにする。
崩れた体勢を一瞬のうちに立て直し周りの者を屠るために【乱輝せし地墜としの槍】を構えた。
周りには火の粉が舞うがしかし、出現した傍から【永遠と降り注ぎし天の水門】の大雨によって鎮火されていく。
先程ダインが受け止めた横凪のようにコンパクトな横凪では無く【乱輝せし地墜としの槍】を握る手とは逆側の頭部程まで腕を振り上げ、まるで引き絞られた弓の弦の如く力を込め、それを今まさに解放せんとしていた。
ダインはそれを受け止めるために【不可侵の神盾】を握る腕に力を込め、どっしりと構える。
――――しかしそれは不要となってしまう。
【乱輝せし地墜としの槍】よりも【光と闇】の方が疾かった。
「行きなさい【神輝の長槍】!」
槍と剣による追撃を行おうとしていたソフィアであったが【戦乙女・ブリュンヒルド】の行動を視界の端に捉えたため即座に自らの行動を変更。
先に牽制の意味も込め、長槍――――【神輝の長槍】を【種族解放】によるステータス補正の暴力で投擲する。
狙うは【乱輝せし地墜としの槍】の握られた手。
ソフィアの【種族解放】の特徴である光と闇を纏い、軌跡を残しながら一瞬で狙いへとたどり着いた【神輝の長槍】はラウンドシールドの確率無効化を受けることなく手の甲へと突き刺さる。
『………………!!!??』
やはり声をあげることは無い【戦乙女・ブリュンヒルド】は確かな驚愕の雰囲気を醸し出す。
ソフィアはその程度で満足する訳もなく、【神輝の長槍】が【戦乙女・ブリュンヒルド】の手の甲に突き刺さるのとほぼ同時に自らは本来の目標であるガントレットへと黄金のロングソードを持って跳躍していた。
「はぁぁぁぁあっ!!」
上段に構えられた黄金のロングソードは綺麗な軌道を描きながら、確実にダメージが溜まり脆くなっている亀裂を裂く。
――――ピシッ。
微かに音が響く。
それは小さな音であったが皆が待ち望んだ音だった。
【戦乙女・ブリュンヒルド】にもそれは伝わり驚愕の雰囲気を醸し出したのも束の間、次に訪れたのは驚愕。
『………………??!!!』
ラウンドシールドは固定されていたガントレットが破壊されポリゴン体へと還ってしまったが為に重力に従って地面へと落下する。
よく見たところラウンドシールドの内側には取っ手のような部分が見受けられ手で握ることもできるようだ。
その証拠に【戦乙女・ブリュンヒルド】は落下したラウンドシールドを拾おうと腕を伸ばす。
「ようやく手放したんだからもう少しおさらばしましょうかね……っと!」
なんともいいタイミングでイルムが現れ、【戦乙女・ブリュンヒルド】の伸ばされた腕を蹴りあげ掴むのを阻むと、ラウンドシールドの落下した地点より少し離れた場所に着地。
再び地面を踏み抉り駆け出すとラウンドシールドへとスライディングをし、地面とラウンドシールドの間に脚をねじ込む。
そのままねじ込んだ脚をはね上げ、ふわりと浮いたラウンドシールドにトドメの回し蹴りを叩き込む。
ラウンドシールドはきりもみ回転をしながら遥か後方の壁に吹き飛び、激しい衝突音とともに壁にめり込んだ。
これにてようやく確率無効化の障害を一旦ではあるものの排除した【十二天将】たちはその瞳をギラりと輝かせる。
【戦乙女・ブリュンヒルド】は自らを脅かす存在として改めて認識したのか、光の翼をはためかせ少々距離を取り【乱輝せし地墜としの槍】にて地を揺らす。
突き刺さった【神輝の長槍】はいつの間にかソフィアの手に収まっており、再び【不可侵の神盾】を構えたダインを先頭に各々の役割を確認する。
『………………』
言葉を発さない【戦乙女・ブリュンヒルド】。
しかしその身体からは確実に殺意が発されていた。
その様子を見たユウギリが言う。
「……もう【永遠と降り注ぎし天の水門】は意味がなさそうでありんすね」
降り注ぐ嵐の如き大雨は【戦乙女・ブリュンヒルド】の身体に触れるよりも前に蒸発していた。
【状態異常】を味方には与えない【永遠と降り注ぎし天の水門】ではあるが、その大雨により視界がいくらか悪くなるため、効果が薄いのならばとユウギリは解除する。
一番厄介と言えるラウンドシールドを排除はしたにせよ、未だ与えているダメージは雀の涙ほど。
それも数秒後には自動回復によってなかったこととされるであろう。
【十二天将】たちもダメージというダメージを喰らってはいないものの、アラタ、ソフィアは【種族解放】により継続的に【HP】、【MP】を消費しており、さしものダインとてノーダメージではない。
その場に聞こえてくるのは分身体を斬り裂くユウノの戦闘音。
一人で大量の分身体を相手にしているユウノに負けてはいられないと【十二天将】たちは武装を握る手に力が入る。
――――本番はここからである。




