表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/110

イベント

やっと復活致しました……。

毎度毎度遅くなってしまい申し訳ないです……。


そしてお知らせが!

Twitterでもお知らせさせて頂きましたが、私の処女作である【平凡高校生の俺がゲームでは最強ギルドのギルドマスターなんですが……】が【まいどく】というアプリにて配信されることとなりました!

小説家になろうで投稿されているものに少々加筆を加えさせて頂いているので宜しければ御一読くださいませ!


今後も様々な報告が出来るように頑張らせて頂こうと思いますので、どうぞよろしくお願いします!

大型連休初日早朝。

イベント開始を当日正午に控え、少なくない数のプレイヤーが既に『The World』にログインしていた。

高天ヶ原(たかまがはら)】のメンバーたちもそれにもれることはなく、各々が準備を進める。


ギルドマスターであるユウノも準備のためにある場所に向かっていた。

その道中、ユウノは準備をする【十二天将】たちの様子にほっと胸を撫で下ろす。

全員の様子を見た訳では無いが、少なくとも様子を見れた【十二天将】たちは見覚えのある武装を用意していたのだから。


(……少なくともふざけてる奴は居ないみたいだな……)


今回は【レイドボスモンスター】との3連戦をするイベントなだけあって皆本気のようだ。

一つの不安が取り除かれたユウノは足取り軽く目的の場所へと急ぐ。


(仕上がりがまさか今日になるとはな……)


出来ればイベント前に試しておきたかったと内心思いながらも、しっかりと仕上げてくれたことに感謝するユウノ。

目的の場所はこのギルドハウスにある工房――――


「――――ギルドマスター!

今日は武器のメンテナンスですか?」


工房にいたプレイヤーにそう声をかけられるも、ユウノは手を振って否定する。


「今日は違うんだわ。

ちょっとアイツに用があってな」


「あぁ!なるほど!

だから今日はあんなに早くから……納得です」


「悪いな、また今度メンテナンスは頼む」


そう言ったユウノは手をひらひらと振ってその場を後にした。

そして、工房のさらに奥にある一つの扉を開く。





「――――おぉ、今日は時間通りにいるんだな」


「その言い方だと私が時間にだらしないみたいだぞ〜?」


「事実だろうが」


「そ、そんなことないぞ〜!」


ユウノがそうやってやり取りをするのは唯一ギルドハウスに個人で工房を与えられているクリス。

予想外に綺麗に整理整頓されたクリスの個人工房に毎度の事ながらユウノは笑ってしまう。


「……何笑ってるのかね〜?」


「いや、相変わらず意外にも綺麗にしてるんだなと思ってな」


「意外とは心外だな〜私は綺麗好きだぞ〜」


そう主張するクリスは頬をふくらませながら鞘に納められた日本刀を差し出してくる。


「そんなことより〜今日はこれが目当てでしょ〜?」


「おっと、そうだったそうだった。

さんきゅー『クリス』」


クリスから差し出された日本刀を受け取ったユウノは感謝の言葉を述べて笑顔を浮かべる。

今回クリスの元に来たのはこの日本刀が目的だったのだ。


「いや〜私は自分の才能が恐ろしいよ〜」


得意気な表情を浮かべて笑うクリスの様子にそれほどまでのものができたのかと受け取った日本刀を見る。


柄の部分から鞘に至るまで真っ黒に仕上げられたその日本刀は今までユウノが使ってきた日本刀のどれよりも重たく、鞘から抜いてみればなんと、その刀身すらも黒く輝いている。

全てを飲み込んでしまいそうな程の漆黒の刀身は見事な重花丁子の刃紋が見えた。


「銘を【(よい)】にしようかな〜」


クリスはそう言いながらユウノが持つ日本刀に軽く触れると、日本刀は淡く発光する。

それは武器を造ったプレイヤーにのみ許された名付けの証。

まるで自らの銘を取り込むかのようにゆっくりと発光が収まっていく。

その様子を静かに見届けたユウノは【宵】を腰に差すと満足気に頷いた。


「本当に助かった『クリス』。

今日はこれを使わせてもらうわ」


「え〜?性能は確認しないの〜?」


「ん?『クリス』のお墨付きだろ?

信じてるし大丈夫だろ?」


真顔で言い放つユウノにクリスは嬉しそうな表情を浮かべる。


「もぉ〜そうだとしても武器の確認は基本だぞ〜?」


「冗談だ冗談。

まぁ、信じてるってのは本当だけどな」


ケラケラと笑いながらユウノはウインドウを操作して【宵】の性能を確認する。

予想外の性能に感心しながら、ある一部分に目を細めた。


「……おい『クリス』このフレーバーテキスト……」


「先に言っておくけど私は書き換えたりしてないよ〜。

造った時からそのフレーバーテキストだったんだよね〜」


「そうなのか……」


書かれていたのはユウノの握る【宵】についての説明。


『この刀は二振一対。その真価は二振が揃った時にこそ発揮される』


短いその一文に注目する。

本来であればあまり気にもしないフレーバーテキストの部分であるが、今回ばかりは無視することが出来なかった。

何せその書き方であれば、この【宵】にはもう一振相方となる日本刀が存在していることになる。

ユウノは今まで様々な武器を収集してきたが、【人造物(クリエイト)】の武器でそのようにフレーバーテキストが書かれたものは見たことがなかった。


通常、武器や防具などの装備品だけでなく、消費アイテムにもフレーバーテキストというものは存在している。

書かれている内容は大したものはなく、例えば素材に使われたものの説明や、見た目の説明、【人造物(クリエイト)】であれば製作者のコメントなどが一般的だ。

幻想物(イマジナリー)】よりも上のものであれば今回のようなフレーバーテキストが書かれているものも多くはないが存在している。


「珍しい……どころの話じゃないよな」


「そうだね〜……まぁ、私の造った武器だし〜?

それくらいの事あっても不思議じゃないよね〜」


「……これがあったから得意気だったんだな……」


クリスの言動に納得が言ったのかユウノは頭を掻きながらそう言ってウインドウを閉じた。


「確かに性能面は文句なしだし流石としか言い様がないけどな」


「でしょ〜?

あ、でも一つデメリットがあってだね〜?」


指を一本立ててそういうクリス。

なんのことだろうかと首を傾げるユウノは、先ほど見たウインドウにデメリットがあったかを思い浮かべるがそれらしいものは書いてなかったぞと疑問符をうかべる。




「――――その武器、何故か装備するとその武器以外装備できなくなるんだよね〜」


「……は……?」


「特にそう言うこと書いてなかったから試しに装備してみた時びっくりしたよ〜。

何せ防具まで全部弾かれちゃったからね〜。

いや〜人がいないところで試しててよかった〜」


しみじみとそう語る姿に思考が止まるユウノ。

そしてその言葉をゆっくりと理解していく。


「ギルマスも装備する場所は考えなよ〜?」


クリスがそう言ってケラケラと笑い始めるとようやくユウノが反応した。


「――――クソ装備じゃねぇか!?」


「ロマン武器と呼んでくれるかな〜!?」


ユウノの叫びにまるで決まっていたかのようにすぐ反応して返事を返すクリスは無駄にキリッとした表情を浮かべており、それがなおさらにユウノの頭を痛めさせる。


「……はぁ〜……最後の最後にオチをつけやがって……」


ため息を吐くしかないと言わんばかりの状況にユウノは肩を落とす。

ウインドウを操作してインベントリに【宵】を収納する。


「今日のイベントは別の武器で行くしかないな……」


「まぁまぁギルマス〜。

そんなに気を落としなさんなって〜。

ほら、おねーさんがよしよししてあげよう〜」


「あ、間に合ってます」


「即答は酷いと思うんだ〜!」


真顔でクリスからの申し出を断るユウノにクリスは不服だと声を上げた。

そして一瞬無言の間を開けて2人して笑い出す。


「まぁ、なんにせよ造ってくれたことに変わりはないからな。

ありがとうな『クリス』。

また頼むと思うけどその時は改めて依頼するわ」


「任せたまえ〜。

私のやる気……元気があったら受けてあげようじゃないか〜」


「いや、誤魔化すの下手かよ」


「う、うるさいぞ〜ギルマス〜。

オンナノコの小さいミスはスルーするのがモテ男への近道だぞ〜」


「喧しいぞおねーさん(笑)」


「カッコワライとか普通口に出す〜?!

なんだねそのバカっぽい呼び方〜!」


怒っているような反応だが、クリスもユウノも楽しそうにそのやり取りをしていた。

やはり付き合いが長いからだろうか、気が知れた関係というものだろうか、その後しばらくユウノがクリスの工房から出ることは無かった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






――――時刻正午直前。


イベント開始の時刻までほんの少しという時にユウノたち13名はギルドホームの円卓に腰掛けていた。

その一人一人の装備がいつものものとは違う。

当たり前のことのように感じるだろうが、それぞれが自らのメイン武装に身を包み準備を終えていたのだ。


――――彼らは基本的にはメイン武装のみで身を包むことは無い。

特に対人戦の時など多くの人の目に触れるところではサブ武装ですら使わない時も多いという。

理由は簡単、メイン武装の情報を与えたくないのだ。

しかし、【レイドボスモンスター】など閉鎖空間で行われるであろう戦闘に関しては別。

自らのメイン武装を惜しげも無く使うことが出来る。


引き締まったその場の雰囲気に今回のイベントへの本気度合いを感じる。


「――――さてと」


一番に口を開いたのはギルドマスターであるユウノ。


「準備はいいよな?」


ユウノの言葉にその場の全員が頷く。

満足気に笑ったユウノは腰を上げた。

そしていつもとは違う二振の日本刀をインベントリから取り出すと腰に差して歩み出す。


今回のイベントは【組織間転移門(ギルド・ゲート)】からも参加できるらしく、ユウノたちはそこへと向かおうとしているのだ。

目的はもちろん【レイドボスモンスター】との三連戦。

それも一度で終わる気はさらさらない。


目当ての【レイドボスモンスター】を狩るまで続ける気でいる。


「さて……何から出るかね」


パッと見服装のみであれば盗賊(シーフ)をイメージさせる軽装に身を包んだイルム。

その四肢には赤黒く輝くまるで龍の手足のような装備が付けられていた。


「何が出ようと同じことだ」


その長身を丸々覆う漆黒の全身鎧と身の丈以上に巨大なグレートソード。

日頃見なれているダインの武器が小さく感じるほどの存在感を発するグレートソードは光を浴びやや蒼みがかった輝きを反射している。


「間違いないにゃぁ〜」


少女らしい可愛らしさを感じさせる顔とは裏腹に、まさにアラビアンな踊り子と言うべきセクシーな装備に身を包んだマリィは楽しそうに笑う。


「今日もやりますよ〜!」


いつもの狩衣姿ではなく、モノトーンの巫女服に身を包んだララノアは金色に輝く錫杖を手にやる気を見せていた。


「……突撃だけはやめて欲しいものだ……」


白を基調としたフード付きのローブに身を包み、時折見せる裏地には鮮血を思わせる赤。

ハースは身の丈ほどの木製の杖を握り、ため息を吐く。

そしてそれに呼応するかの如く、木製の杖の先端に埋め込まれた七色に輝く宝石が光を反射する。


「俺たちも活躍しないとね『イリィ』」


「ボクたちも活躍しないとね『アリィ』」


フレアスリーブのパーカーのようなトップスにサルエルパンツというそれだけ聞けばただのおしゃれ着に、胸部のアーマーなど所々に防具をつけた装備に身を包んだアリィとイリィはお互いに同じことを同じタイミングで言い合いながら、悪戯な笑みを浮かべる。


「久しぶりに全力が出せそうですわ」


美しい純白、そして所々に散りばめられた紫のドレスと鎧が融合した装備に身を包んだソフィアは片手にラウンドシールドを持ち、もう片手には長槍を持っていた。


「わた……俺も頑張ります……っ!」


アラタは藍色の着物に朱色の袴、空色の羽織を装備しており、腰に差さる日本刀は二振。

そして両腕に細身のガントレットを付けている。


「気合を入れすぎるのはダメでありんすよ?」


いつもの赤を基調としたものではなく、黒を基調とした着物を色気たっぷりに着崩したその姿はあまりにも艶やかで、美しい。

そしてそんなユウギリの周りには三色三つの水晶玉。


「任務を遂行します」


漆黒のフードがついた忍装束に身を包んだイカルガは口元を黒いマフラーでおおっていた。

パッと見わかる武装は特にないがその手足は漆黒の包帯のような布が巻かれている。


「みんな気合いは十分ね」


豪華絢爛な十二単に身を包み、それでもなお着崩し肩を露出させるアマネの背後には九つの尾があった。

そんなアマネの手には武器は何も握られていない。

以前使っていた鉄扇すらなかった。




そして到着する【組織間転移門(ギルド・ゲート)】の前に。

ユウノは全員の顔を見てニヤリと笑った。


「まさかと思うけど誰も忘れ物なんてしてないよな?」


その言葉に笑い声が漏れる。

もちろんユウノはそんなことは無いとわかっていたが、敢えてそれを口にしたに過ぎない。


「んじゃ、行くぞお前たち――――狩りの時間だ」


ユウノは【組織間転移門(ギルド・ゲート)】を操作して今回のイベントに参加する。

事前に今回の参加メンバーでレイドは組んでいたため、面倒な操作はない。

そして、メンバーを光が包む。


イベントのためのステージに転移するようだ――――。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ