提示
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今後も頑張っていきますのでどうぞ宜しくお願い致します!!
【ギルドランク】1位【高天ヶ原】。
日本という小さな島国に誕生したその【ギルド】は、『World Of Load』内でも【ニッポン】という島国に本拠地を構えている。
他の上位【ギルドランク】の【ギルド】との交流もあり、比較的友好的な【ギルド】だ。
この【高天ヶ原】という【ギルド】の凄い点はいくつかあるが、その中でも『ギルドマスターの強さ』、『集団戦における勝率』は他の追随を許さない程。
【十二天将】と呼ばれる【高天ヶ原】所属の12人のプレイヤーと【ギルドマスター】、計13人のプレイヤーの連携、さらに個々の強さは『World Of Load』内でも、現実世界でも有名な事柄である。
そして、この13人のプレイヤー達は全て【二つ名】、つまり異名を持っている。
『World Of Load』内における【二つ名】持ちのプレイヤーは基本的に腕試しをしたいプレイヤー達に狙われ続ける。
【二つ名】を持つ以上、その時点でそのプレイヤーは注目されるほどの偉業を成している。
そんな【二つ名】持ちを倒したとなればそれだけで名が売れるからだ。
しかし、今まで【二つ名】持ちが倒された例はほとんど無い。
その理由は簡単。
―――――【二つ名】持ちが単純に強いからだ。
それ故に、ほとんどの【二つ名】持ちプレイヤーは自分で【ギルド】を持っているのだが、【高天ヶ原】に所属している【十二天将】たちは違う。
各々が自分たちの判断で【高天ヶ原】に所属、つまり、自分以外の者の下についているのだ。
―――――【九尾狐】
―――――【踊り女王猫】
―――――【賊龍人】
―――――【黒の将軍】
―――――【完全掌握】
―――――【狂術士】
―――――【双子の悪魔】
―――――【戦姫】
―――――【穢れなき殺人鬼】
―――――【夜の捕食者】
―――――【若武者】
―――――【剣聖】
以上が【高天ヶ原】に所属している【二つ名】持ちのプレイヤーたちである。
このようなプレイヤー達が所属している【高天ヶ原】。
しかしながら加入条件はそこまで厳しくはない。
レベル制限も無ければ、プレイヤースキルの高さも求められない。
求められるのはただ一つ。
―――――【ギルドマスター】や【十二天将】のうちの誰か1人に目をつけてもらえるかである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「へぇ〜……【高天ヶ原】に入りたいのか」
アルルの口から出てきた自分の【ギルド】に入りたいという言葉に反応する。
俺は既に彼女に興味を持ってしまった。
「はいっ!
私、1度だけ【十二天将】の皆さんの戦いを生で見たことあるんですよ!!
あの時に見た皆さんが凄くかっこよくって……特に最後に現れたギルドマスターの方は別格にかっこよかったです!
狐のお面を被ってて顔は見えなかったんですけど何ていうんでしょう……カリスマ的な物があって!
私もあんな人達と一緒に戦いたいなって思ったんです!」
身を乗り出すようにして熱弁するアルル。
その顔はとても楽しそうで、何とも和む表情だった。
それに、こんなふうにストレートに俺と、ギルドのメンバーを褒められると素直に嬉しい。
「―――――だから私は、せめて【高天ヶ原】の加入条件を満たせるように頑張っているんです!」
そのアルルの言葉に違和感を覚える。
(……加入条件を……満たす……??)
おかしい。
【高天ヶ原】の加入条件は特に無しで募集をかけているはず……一体加入条件とは何の話だろうか……??
「あれ?【高天ヶ原】は加入条件特に無しじゃなかったか?」
できるだけ自然にアルルに問いかけると、キョトンとした表情を浮かべ、困ったように口を開いた。
「いやいやいや!
何を言ってるんですか!
それは表向きの理由で、本当は『【最上位職業】であり、尚且つサブ職業も全部【上位職業】にしておかないといけない』っていうのは【高天ヶ原】に加入したいプレイヤーたちの共通認識ですよ!!」
提示した覚えのない加入条件に顔が引き攣る。
一体何故そんな話が出回っているのだろうか。
「やっぱり【ギルドランク】1位の【ギルド】ですから相当難しい加入条件ですけど……それでも私は入りたいですから!」
「……そう、か……」
やる気満々と言ったふうにガッツポーズを取るアルルの姿に俺が返せた言葉はそれだけ。
……つまり、プレイヤーたちの中では俺たちのギルドは厳しい加入条件を隠しているというふうに映っているのだろう。
確かに、【高天ヶ原】は新規の加入プレイヤーは相当少ない。
だが、ほとんどの新規の加入プレイヤーは初心者に近いプレイヤーの割合の方が多い。
アルルの口にした加入条件は完璧に嘘なのである。
(誰がそんな情報を流したんだか……)
溜息を吐きつつ頭を抱える。
これは加入条件を変更しておいた方が……と、思ったものの流石に『【十二天将】もしくは【ギルドマスター】が気に入ったプレイヤー限定』なんて書けないということに気が付き、しばらくはそのまま放置することに決めた。
「【高天ヶ原】に入れると良いな」
「はいっ!!
時間はかかると思うんですけど頑張ります!」
そう言って、俺たちは足を進めた。
まずは今回の目的を達成させよう。
―――――話はそれからだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「―――――ありがとうございましたっ!!!」
勢いよく頭を下げて感謝を述べるアルル。
今俺たちが居るのは『トウキョー』都市ダンジョンの入口。
あの後、42層まで降りた俺たちは【クリスタル・イーター】と遭遇し、30分程狩り続けてやっと【紅き夜の水晶】がドロップした。
予想外だったのはアルルが【クリスタル・イーター】を倒せていたという事だろう。
彼女が使う【個別魔法】は一つだけではなく、むしろ、【個別魔法】ばかりを使用していた。
何とも珍しいできごとに俺も驚いた。
なんでも聞いたところによるとアルルは【個別魔法】を複数個創っているようで、創るのが楽しくていつの間にか創ること自体が得意になっていたらしい。
何故今まで有名にならなかったのだろうか……?
何なら【二つ名】持ちでもおかしくないくらいのプレイヤーなのだが……。
そんなことを考えているとアルルがメニュー画面を開いて俺にフレンド申請を送ってきていた。
「よ、良かったらフレンドになってもらえませんか……??
今回のお礼をしたいのでまた後日会えるように……」
何とも律儀な性格をしている。
俺はクスリと笑って目の前に表示されているフレンド申請のウィンドウの『YES』ボタンを押し、そのあとに俺もメニュー画面を開いて軽く操作する。
「ありがとう……ござ……いま……す……」
尻すぼみに声が小さくなっていくアルル。
その代わりに目を見開いていた。
―――――俺が送ったのは『ギルド加入の申請』。
恐らく目の前に浮かび上がっているウィンドウと俺の顔を交互に見ているアルルの姿に笑いがこぼれる。
「どうだ?『アルル』。
俺の【ギルド】に入るつもりないか?」
「……あ……えぇ……っ……??」
突然の出来事に驚いているのだろう。
アルルは目を回していた。
しばらく時間を置いて、少し落ち着いたアルルが興奮して顔を赤く染めて口を開く。
「こ、ここここ、これ……っ!!
お、おにーさんっ!」
「あぁ、あんまり落ち着いてなかったな。
ほら、深呼吸深呼吸」
凄い勢いで首を立てに振ったアルルはすーはーすーはーと深呼吸をして、再び俺の方に顔を向けた。
「お、おにーさんって……【高天ヶ原】の……ギルドマスターさん……なんですか……??」
「おう。
いや〜まさかあそこまで褒められるとは思ってなくてな。
あの時の話、凄く嬉しかったぞ?」
「あわわわわわ……っ!!!」
再び顔を真っ赤に染めるアルル。
今度は興奮してではなく、恥ずかしがっているのだろう。
「―――――で、どうだ?
【高天ヶ原】に入るつもりはないか?」
今度は真剣な表情を浮かべて、アルルの目を見つめる。
アルルはしばらく恥ずかしがっていたものの、俺がじっと見つめていると、少しづつ顔をあげて、控えめな声をあげる。
「わ、私……まだ【最上位職業】になってない……ですよ?」
「【高天ヶ原】は加入条件は特に無いから大丈夫だぞ?」
「あ、あれって本当に文章そのままの意味だったんですかっ?!」
心の底から驚いたような表情を浮かべるアルル。
「そうだぞ?
さっきの提示した覚えのない加入条件を聞いた時は本当にびっくりしたわ」
ケラケラと笑いながらそう答えるとアルルは目を丸くしていた。
そうして、アルルは再び興奮した様に身体を震わせて、にやける顔を必死で隠すように再び口を開いた。
「ほ、本当に私でいいんですか??」
「俺が誘ってんだ。
イイに決まってるだろ?」
俺の言葉を聞いたアルルはウィンドウの『YES』ボタンを勢いよくタップした。
そうして、俺の前に浮かび上がってくる新たなウィンドウ。
『【アルル】が【高天ヶ原】に加入しました』
俺はその情報をギルドメンバー全員に送信する。
「―――――ようこそ【高天ヶ原】へ」
こうして、【高天ヶ原】に新たな仲間が加わった。