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いつも読んでいただきありがとうございます!
さて、今後についてなのですが、新作の方もかけてきたので投稿しようと思っています。
おそらく次の更新は新作の方だと思うので宜しければ読んでいただけると嬉しいですっ!
今後ともどうぞよろしくお願いしますっ!
―――――『トウキョー』岩壁付近
『トウキョー』という都市をぐるりと囲むように建てられた岩壁。
そこに作られた都市の中に入るための門へと続く道を歩く2人のプレイヤーの姿があった。
1人は日本刀を携えた少年プレイヤー。
1人は身の丈よりも巨大なバスターソードを背負う女性プレイヤー。
日本刀を携えた少年プレイヤー―――――ユウノは足取りも軽く、他の3人の仲間が見れば上機嫌だとわかる雰囲気を漂わせていた。
そして、もう1人の身の丈よりも巨大なバスターソードを背負う女性プレイヤー―――――その名前を『クリス』という―――――も鼻歌交じりに歩いており、上機嫌なのが誰から見てもわかる。
「それでそれで〜?
少年の『ギルドハウス』はどの辺にあるのかね〜?」
「まだ俺たちの【ギルド】は出来たばっかりだから『トウキョー』の端の方に建ててるよ。
……誘った俺が言うのも何だけど良かったのか?俺たちの【ギルド】で」
かしこまった話し方ではなく、いつもの砕けた話し方で問いかけるユウノ。
それはクリスたっての希望だった。
「いいのいいの〜。
だって作られて日の経ってない【ギルド】のまだ誰も触ってない『工房』を好き勝手に弄ってイイんでしょ〜?
私好みにさせてもらうからね〜??」
「それは一向に構わないけど……その言い方だと作られたばっかりの【ギルド】ならどこでも良かったみたいだな」
ユウノがそう言うとクリスは一瞬キョトンとした表情を浮かべた後に少々困ったような笑みを浮かべつつ頭を掻いた。
「まぁ〜そうだね〜。
否定はしないかなぁ〜」
「……ラッキーとでも思っておく」
クリスの発言にユウノはため息を一つ吐き出すとそう言って歩を進める。
「あらら〜……落ち込んじゃった〜??ごめんね〜?
よ〜し、お姉さんの胸でお泣き〜」
自分の発言に落ち込んでしまったのかと思ったらしいクリスはユウノよりも少し前に出ると腕を広げてそう言った。
「はいはいありがとね〜おねーさーん」
「あぁ〜!
何今の可愛くない〜!
初めの時の『お姉さん』呼びはど〜したのさ〜!」
ぷんぷんという効果音を自分で発しながら講義するクリス。
ユウノはそんな姿を見つつ再びため息を吐いた。
(……腕は確かなんだろうけどなぁ……)
今までの話の流れから察した人も多いだろうが、ユウノはクリスを自分たちのギルド、【高天ヶ原】に誘い、それに対してクリスは二、三質問した後に快く了承したのだ。
まさかすんなりと了承してくれるとは思っていなかったユウノだったが、武器をひとつ見ただけで良い腕を持っているとわかるプレイヤーを【ギルド】に誘えたのは大きいと考えていた。
そして、それは間違えでは無い。
ユウノはその後、クリスが作った武器を見せて欲しいと頼んだ。
その時クリスは気分転換に片手間で作った武器しかもっていないがと言ったのだが、ユウノはそのクオリティに舌を巻いた。
【人造物】の装備品はその性能にかなりの差がある。
それは作ったプレイヤーの腕であったり、素材や職業も関係してくると言われており、【通常物】程度の性能しか持たない装備品もあれば【神造物】に迫る程の性能を持つ装備品もある。
今回ユウノがクリスから見せてもらった武器のどれもが【人工遺物】級の武器ばかり。中には【幻想物】級とも言えそうな武器もあったのだ。
クリスを【高天ヶ原】に誘えたのは本当に運が良かったとしか言い様がない。
ユウノ自身それを自覚しているようで、暫くいいことは無いだろうなと思っていた。
暫く歩いたユウノとクリスは『トウキョー』を囲む岩壁の中へと入り、【高天ヶ原】の『ギルドハウス』の前までやって来ていた。
「おぉ〜!
想像してたよりもずっと立派な『ギルドハウス』だね〜。
かなり高かったんじゃないの〜?」
「ん〜……まぁそうだな。
正直言ってかなり痛い出費だった……。
俺たち4人の懐が寂しくなるくらいには……」
ユウノ、トトリ、キャロ、クレールの4人は少年少女という幼さでありながら、それぞれが【二つ名】を持つ実力あるプレイヤーだ。
勿論それ故に難易度の高いクエストなどもクリアするため、ゲーム内通貨の【クレジット】も多く持っている。
月々の接続費程度なら余裕で稼げているのだ。
そして、そんな4人が貯蓄していた【クレジット】も相当なものであるが、この『ギルドハウス』を購入したことによりその大半を失ってしまったのだった。
ユウノは自らを先頭に『ギルドハウス』の中へと入っていく。
その後ろをついていくクリス。
身の丈よりも巨大なバスターソードを背負ってはいたが、その歩みは軽く、ウキウキしていた。
『工房』も楽しみであったが、ユウノ以外の3人と会うのも楽しみにしているのである。
「ただいま」
簡潔に帰ってきたことを伝えるユウノ。
トトリ、キャロ、クレールの3人は未だにソファーに腰を下ろしてぐだぐだしていた。
「おかえり……ってその後ろの人誰?」
初めにユウノたちの方へと視線を向けたのはトトリ。
ユウノの背後にいるクリスを見ながら当然の疑問を浮かべる。
「うちの【ギルド】にはサポート役いないだろ?
だからスカウトしてきた」
「は〜い。
スカウトされて来ました〜」
やはりと言うべきか、気の抜ける様な声でクリスは言う。
その声に反応してか、キャロ、クレールもユウノたちの方へと視線を動かした。
「『ユウノ』って本当に仕事早いよね」
「……いつの間にかやってる」
そう言いつつも、2人はクリスを観察するように見つめていた。
それは自分たちの【ギルド】の仲間として認めていいものかと探るような視線。
そんな視線を向けられているクリス当人は何故か照れているように頭を掻いている。
「……腕は確かなのか?」
トトリはそこが重要だと言わんばかりに問い掛けてくる。
ユウノはそれに対してゆっくりと頷く。
「作った武器を軽く見せてもらったけど……かなりのものだった」
「へぇ……『ユウノ』がそういうのなら間違いないな」
その言葉を疑うことはなく、トトリは笑顔を浮かべた。
ユウノたち4人は互いに互いを信用、信頼している。
『World Of Load』というゲームで出会った関係ではあるが、長い時間一緒にいたためにその信頼関係は厚い。
トトリはソファーから立ち上がるとクリスの方へと近づいていき、手を差し出した。
「俺は【高天ヶ原】のギルドマスターの『トトリ』だ。
これから宜しくな」
「おぉ〜宜しくね〜『トトリ』くん〜。
私は『クリス』だよ〜」
簡易的な自己紹介をした2人は握手をする。
そんなトトリの後方、ソファーの辺りから声が上がった。
「私は『キャロ』でーす!
宜しくね『クリス』さん!」
「……『クレール』。宜しく」
「『キャロ』ちゃんに『クレール』ちゃんね〜。
これから宜しくね〜」
何とも平和な雰囲気の中、クリスの紹介が終わる。
そしてその後、トトリから【高天ヶ原】への加入の申請をクリスに送り、クリスは正式に【高天ヶ原】の仲間となった。
フレンド申請も終えたクリスは待ち侘びた『工房』へと向かうのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「―――――とまぁ、こんな感じの出会いだったわけだな」
ユウノは楽しげにクリスとの出会いを語り終え、喉が渇いたと再びグラスを呷った。
「ほ、本当に全部話したな〜!」
恥ずかしそうにクリスはユウノの肩をポカポカと叩く。
【ロック・タートル】との戦いの件は話して欲しくなかったらしい。
「ろ、【ロック・タートル】に啄まれるって……っ!」
「なかなか無いことでありんすねぇ」
「『クリス』面白すぎにゃ……っ!」
「わ、笑うなよ〜3人とも〜!!」
アマネ、ユウギリ、マリィに笑われたクリスは腕を振りながら頬を染めて講義する。
ひとしきり講義したクリスは頬をふくらませてユウノの方を向いた。
「あの話は内緒だって言ったでしょ〜ギルマス〜っ!!」
「わ、バカっ!飛びついてくんな!!」
矛先が元凶であるユウノに向いたクリスは恨みを晴らすべくユウノへ飛びかかる。
無駄に俊敏な動きで飛びついたためにユウノはクリスを支えきれずに地面へと沈む。
そんな皆のことを見ながらアルルは楽しそうに笑った。
「―――――楽しい【ギルド】だなぁ」
日頃からこの様子が変わらない。
特別なことは何もしてはいないがこの【高天ヶ原】という【ギルド】は居心地が良いのは間違いないとアルルは思いながら、暴走するクリスを止めるのを手伝うのであった。
またいつか、他のメンバーとの出会いもユウノに聞こうと思いつつ。




