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ギルド

『World Of Load』における【ギルド】の設立には最低3人のプレイヤーが必要である。


その他にもいくつかの条件があり、例えば『【ギルドマスター】になるプレイヤーはメイン職業のレベルを30以上にしておかなければならない』や、『ギルドハウスを最低一つは所持しなければならない』などである。


ちなみに『ギルドハウス』は小さいものはワンルームマンションのような狭さのものから、大きいものはお城や島などまで存在する。


そして、最高ランクの『ギルドハウス』、それは―――――都市のシンボルとなる建物になる場合もある。

例えば【高天ヶ原】の本拠地。

【ニッポン】という場所の最大級の都市『トウキョー』にある、あのお城こそまさにそれに該当するのである。


『ギルドハウス』というのは大きければ大きいほど良いとされる。

その理由としては『工房』などの施設を設置できるからである。


『ギルドハウス』に設置された施設にはギルドメンバーのみに付与される恩恵を受けることが出来る。


例えば職業【鍛冶師】を持ったプレイヤーが『ギルドハウス』内にある『工房』で武器を作るとする。

本来であればレアリティの高い武器を作ろうとするにつれて、成功率は大幅に下がってしまうのだが、この『ギルドハウス』内の『工房』で作った場合、その成功率は設置された『工房』のランクによって上がるのだ。

最低ランクの『工房』でも成功率5%アップ、最上級の『工房』ともなると30%もアップするのである。


他にも様々な施設があるため、それを設置する場所が多い、大きな『ギルドハウス』が好まれるのである。


このような恩恵を受けれるため、【ギルド】に加入したいと思うプレイヤーは数多くおり、出来るだけ上位の【ギルドランク】の【ギルド】に加入しようと頑張っているのである。

上位の【ギルドランク】の【ギルド】は『ギルドハウス』の大きさや設置されている『施設』のランクも高水準の為だ。




―――――ただし、上位の【ギルドランク】の【ギルド】になるにつれて加入するのは厳しくなっていく。


その理由としては『ギルド加入条件』が厳しいものが多いという事だ。


例えば【ギルドランク】5位【BLACK・ROSE(ブラック・ローズ)】の加入条件。

―――――『メイン職業レベル80以上、サブ職業の3つ以上が50レベルに達した女性プレイヤー限定』

という、そもそも性別が関わってくる条件をかけられることもあるのだ。


基本的に多い条件としては『メイン職業が高レベル』や『メイン職業、サブ職業のバランス』などである。


ただ、稀に見る条件がある。


それは【ギルドランク】3位【Greedy(グリーディー) Walker(ウォーカー)】が提示している『【ギルドマスター】と一騎討ちをし、【ギルドマスター】に認められた者のみ加入を許す』などの、職業のレベル関係なしにどれほどの才能があるかなどを見るものだ。


様々なギルド加入条件がある中、プレイヤー達は自分たちの加入したい【ギルド】にいつか加入することを夢見て『World Of Load』をプレイするのである。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






―――――『トウキョー』都市ダンジョン20層


毒針を持ち、それを発射して攻撃して来る蜂型モンスター【ポイズン・ビー】。

基本的に、自分たちの巣に餌を届けるため広範囲を移動しており、見つけた者を無作為に攻撃して来る面倒くさいモンスターである。


俺はそんな【ポイズン・ビー】の巣にダンジョンの中で出会ってしまっていた。


「お、おにーさん危ないっ!」


俺の背後からアルルの叫び声が聞こえてくる。

―――――が、既にそれに関しては気がついている。

振り返ること無く、身体を半身にして避けると、俺の周りを飛んでいる【ポイズン・ビー】を素早く斬り刻む。

こんなモンスターに【技能(スキル)】を使うのは馬鹿らしい。


「お、おにーさん凄いですっ!」


「おーさんきゅーさんきゅー。

でも気をつけろよ?

この後はちょいと面倒くさいから」


手をぱちぱちと叩きながら賞賛の言葉を送ってくるアルルにそう声をかける。

【ポイズン・ビー】は全て片付けたものの、それで終わりではない。

俺たちが遭遇したのは【ポイズン・ビー】の群れではなく、その巣である。

―――――巣にいるのが【ポイズン・ビー(ザコモンスター)】だけなはずはないのだ。




―――――ピュギョォォォォオッッ!!!




聴くのも嫌になる奇声を発しながら、薄い羽を震わせて現れたのは【ポイズン・ビー】よりも遥かに大きく、鋭角なフォルムをした蜂型モンスター。


「な、何ですか……あれ……」


「『アルル』はまだ【ポイズン・ビー】の巣に遭遇したこと無かったのな。

アレは【ポイズン・ビー】の親玉だぞ。

名前を【クィーン・ホーネット】。

推奨レベルは50だったかね……」


滅多に出会わない【ポイズン・ビー】の巣に存在する【クィーン・ホーネット】。

たまに出会った初心者達が【ポイズン・ビー】の弱さに慢心し、【クィーン・ホーネット】に虐殺されるという事が昔あったのを思い出す。


「ご、50……」


「まぁ、【ポイズン・ビー】の推奨レベルが15そこいらだってのを考えると相当強いわな」


こちらを威嚇するようにお尻に付いている鋭利な毒針を向けてくる【クィーン・ホーネット】に俺はため息を吐きつつ、抜刀済みの日本刀を斬り払う。


「お呼びじゃないモンスターとは出会いたくないもんなんだけど……」


今日は50層程まで駆け下りて、【クリスタル・イーター】を狩りまくる簡単なお仕事だったはずなのに……。


「今日は全くツイてない……」


刃を横に、【クィーン・ホーネット】に切先が向くように構えて一瞬で終わらせるのを確定事項とし、向き合う。











「―――――穿き抉れ!『ファイア・ジャベリン』ッ!!!」


俺が斬りかかろうとしていると、背後からその掛け声とともに中々に立派な炎の槍が【クィーン・ホーネット】に向かって飛んでいく。

着弾と共に破裂、その威力は思っていたよりも強く、それが既存の【魔法】では無いことを確信させる。


「へぇ……オリジナル……」


まだレベルが40になったばかりの【魔法使い】が【個別魔法(プレイヤー・マジック)】を使うとは……。


【個別魔法】とは魔法などを使える職業のプレイヤーが自らで構築するオリジナルの魔法だ。

過程、効果、魔力量、時間などなど、様々な要素を細かく設定していき作るのが【個別魔法】なのだが、その設定がしっかりとしていないと初級魔法にも劣る物が出来上がってしまうため、あまり創ろうとしないプレイヤーが多いのだ。

もちろん、しっかりとした設定がされた【個別魔法】は燃費がよく強力な物に仕上がる。

そのため、魔法を創るプレイヤーがいない訳では無い。

【魔創師】という魔法を創るための職業があり、その職業を選択して、『創る専門』のプレイヤーなら何人か知っている。

しかし、彼らは皆、前線に出て戦うのはそこまで得意ではないというプレイヤーばかりだ。


個別魔法(プレイヤー・マジック)】の主な利用方法は自分で創るか、造られた物をプレイヤーから買うかのどちらかである。

一般的には買う方が楽だという意見が多く、ほとんどの人がそうしている。

しかし、その値段はかなり高額であり、初心者には手が出せないものばかりだ。


さて、そこで先程のアルルの【個別魔法】を見てみよう。

俺から見てもなかなか強力なものであり、アレがもし別のプレイヤーが創り、販売しているものなら、それをレベル40になったばかりのアルルが買えるかと言えば、答えは『NO』だろう。


―――――つまり、先程の『ファイア・ジャベリン』という【個別魔法】はアルルが作ったものだという予想がつく。


「結構良い才能持ったプレイヤーなんじゃないか……?」


ボソリと呟くようにして口にする。

そうして俺は、アルルの魔法を喰らったことによって怒った【クィーン・ホーネット】に一歩で間合いを詰める。

【個別魔法】を喰らわせたことによりアルルに【敵対心(ヘイト)】が向いていた為、何の苦労もなく、懐に潜り込めた。

日本刀は先程とは打って変わって、地面スレスレに切っ先を向けて構えている。


「……【昇斬(ショウザン)】」


【クィーン・ホーネット】の体を下から斬り上げる。

刃は硬いであろう【クィーン・ホーネット】の毒針ごとその身体を真っ二つに斬ってしまった。

この光景に驚いて口を開けたままのアルルに構わず、左右に斬り払って、腰につけてある鞘に納刀する。


「………………」


「ほら、まだ先は長いぞ?

早く進むぞアルル」


「………………」


しばらく口を開けたままぼーっとしていたアルルだったが、数秒で再起動したかのようにハットした表情を浮かべて俺の後ろをついてきた。


「お、おにーさんって私が思ってたよりかなり強い人ですか……??」


「さぁ?どーだろうな??

そこそこ強い自信は無いことも無い」


これでも【ギルドランク】1位の【ギルド】の【ギルドマスター】なのだから弱くはないだろう。

まぁ、普通といったところだ。


「やっぱりギルドマスターの方たちは皆さん強いんですね……」


再認識するかのように深く頷きながら歩くアルル。

俺はそこで思い出したことを聞く。


「そう言えばさっき聞いたけど答え聞いてなかったよな。

アルルはギルドに入ってないのか?」


レベル40の【魔法使い】に強力な【個別魔法】を使える女の子プレイヤーとしたら、選り好みしなければある程度の【ギルド】には入っているのではないかと思っているのだが……。


「まだ入ってないですね……。

何個かは加入しないかという話が来てたんですけど、私の行きたい【ギルド】じゃなかったので……」


「へぇ~……どこに入りたいんだ」


興味本位でそう聞いてみると、アルルは瞳をキラキラとさせて食い気味に声を発した。
















「―――――【高天ヶ原】です!!!」










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