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戦況

―――――【黒の将軍ダイン】。


漆黒の鎧を身に纏い、ダインは長身にも関わらず、身の丈に迫るほどの巨大な剣―――――グレートソードを易々と振るうその姿は多くの男子プレイヤーにロマンを与えた。

さらに彼はパーティーやレイドを纏め、指示を出すことも得意としていた。

最前線で戦いながら戦場を把握し、指示を飛ばす。

時にはピンチの仲間を助けるためにその身と武器一つで突撃することもあり、ダインの大きな背中に憧れたプレイヤーは少なくないだろう。






「―――――最前列タンク隊!つぎが来るぞ……っ!!

【防御系技能(スキル)】で固めるんだ!」


ダインは空を舞う燃えるような紅色の鱗を持つドラゴンの行動を読み、レイドの最前線に立つプレイヤーに指示を飛ばした。

斯く言うダイン自身も【防御系技能(スキル)】の併用し、守りが薄くなると予想されるプレイヤーたちの前に仁王立ちする。


「【大剣城砦化フェンス・オブ・ソード】ッッ!!!」


身の丈に迫るほど巨大なグレートソードを地面に突き立て【技能(スキル)】を発動させた。


大剣城砦化フェンス・オブ・ソード】とは刀剣系武器の中でも大剣のカテゴリーに入る武器を使用する【技能(スキル)】だ。

効果は至極簡単であり、使用した大剣カテゴリーの武器の大きさ、性能に応じてダメージを軽減するのだ。

ちなみに、ダインの使用しているグレートソードになると、【技能(スキル)】を最大強化すれば80パーセントのダメージを軽減することが出来る。


しかしそれにも弱点があり、使用後に【硬直時間】があるのだ。

【硬直時間】とはわかりやすく言うと何も出来ない時間。

他の【技能(スキル)】の使用はおろか、行動すらできない。

もちろんそれは数秒程度なのだが、その無防備な時間が命取りとなる場面は数多く存在する。


燃えるような紅色の鱗を持つドラゴンはその巨大な顎を開くと煌々と燃え盛る焔の息吹をプレイヤーに向けて放った。

しかしそれはダインの指示によって【防御系技能(スキル)】を使用していたプレイヤーに防がれることとなる。

ダメージは無いとは言えないが、ダインの的確な指示によって最低限の損害で済んだのだ。


ダインは数秒の【硬直時間】を強いられることとなるが、事、レイドに関してはこの【硬直時間】はやり過ごすことができる。

何せ1人で戦っているわけではないのだから。


「大丈夫か?

一応俺の【技能(スキル)】でダメージは入っていないと思うが……」


「は、はい!大丈夫です!」


「よし……それなら良かった。

このあとも頼んだぞ」


ダインはそう言い残すとドラゴンに向かって走り出した。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






―――――【完全掌握パーフェクト・コントローラーハース】。


【魔法】や【魔術】を得意とする種族【エルフ】を選択した青年プレイヤー。

白を基調としたフード付きのローブを羽織り、一見弱そうに見えるハースだが、彼は1つの特技を持っていた。


―――――それは相手の行動をコントロールする術。


味方の行動を指示し、それによって相手の行動を予測、誘導することによってより有利な場面へとコントロールするのだ。

ハースのそれはまさに未来予知と言えるほどに正確であった。

完全掌握パーフェクト・コントローラー】という【二つ名】はそこから付いたのである。






「―――――辺りに氷柱を創り出してくれ!」


ハースの指示が響く。

【魔法職】のプレイヤーはその指示が何の意味があるのかと一瞬疑問を抱くものの、あの【完全掌握パーフェクト・コントローラー】の指示だということもあり素直に従う。


「できるだけ密度を高めて欲しい!」


ハース自身も氷柱を創り出しながら、空を舞う堅牢な砦の如く堅そうな翠の鱗を持つドラゴンを警戒する。

次々と創り出される氷柱。

翠の鱗を持つドラゴンはそれをうっとおしげに見つめていた。


『ふむ……余計な物を作りおってからに……』


そう呟き、空を舞うドラゴンからプレイヤーの姿が見えなくなったためか、地に降り立つ。


「……壊さない……か……」


ハースはその行動を目を細めて見ていた。

―――――そして笑う。

少しずつ、少しずつでいいと。


他のプレイヤーたちはその姿に背筋が凍ってしまう。

完全掌握パーフェクト・コントローラー】と呼ばれるハースという男はこのようにして作戦を進めているのかと。

しかし、その様子を知っていた【高天ヶ原(たかまがはら)】のメンバーたちは苦笑いを浮かべ、若干の同情をドラゴンに向けていたのだった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






―――――【戦姫(ヴァルキリー)ソフィア】。


その出で立ち、言動はまさに姫を連想させる程に優雅であり、気品を感じさせる。

1本のロングソード、そして長槍をメイン武器としドレスと鎧が混ざったような防具を身に纏い戦う姿は流麗な舞を見ているかのように錯覚させられるほどだ。


基本的にはリーチのある長槍を使用するソフィアだが、1度間合いに入られれば躊躇いなく長槍を捨て、ロングソードでの戦いもこなす。

その上彼女は騎乗してからの戦闘も得意としているため、機動力もあるのだ。






「―――――くっ……!

流石は【最強種】である【ドラゴン】と言ったところでしょうか……!

こうも機敏な動きを見せられると参ってしまいますね……!」


ソフィアは自慢の長槍を構えながら上空を絶え間なく動き続ける通常よりも小柄と言える体躯を持つ蒼い鱗のドラゴンに意識を向けていた。

勿論、他のプレイヤーたちには指示は出し終えている。


『少しばかり遊んでやればこのザマか……』


蒼い鱗を持つドラゴンは明らかな落胆の声をあげた。

どうやらこの移動速度は遊び程度のものらしい。


「ふふふ……遊んであげているのはこちらの方ですわ蜥蜴さん?」


落胆の声を上げるドラゴンにソフィアが返したのは挑発的な言葉。

それは未だ本気を見せていないドラゴンと同じく自分もそうなのだという意味も含まれていた。


『……ほう?

我を蜥蜴だと言うか高々【餌】の分際で……』


先程まで狙いを定めず動き続けていたドラゴンは完全にソフィアに瞳を向けていた。

そして気がつけばいつの間にはソフィアの周りには誰もおらず、後方でプレイヤーたちは待機していた。

勿論攻撃する準備を整えて。


『他の【餌】たちを後ろにさげて良かったのか?

よもや貴様のみで戦うつもりではあるまいな?』


今度の言葉に含まれたのは侮蔑。

嘲笑うかのようなドラゴンの言葉にソフィアは涼しい顔を浮かべている。


(わたくし)は残念ながら1人の方が得意なのでご心配なさらず……」


長槍を握りながらソフィアは微笑みを浮かべた。


「―――――心配するべきは貴方の身体の方ですわ」


ソフィアの立つ地面がミシリと鈍い音をたてて陥没する。


―――――刹那、光と闇が弾けた。












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