攻略直前
大変おまたせしました!!!
更新が遅くなり申し訳ありませんでした……。
ユウノが依頼を送ってから数日。
【トミス樹海】からモンスターが溢れ出てこないかを逐一観察し、緊張感高まる中、ようやく今回の戦闘に参加するプレイヤーたちが集まった。
人数は予定通り4レイド分の120人。
そこにサポート役として【料理人】や【鍛冶師】などをプラスするとかなりの人数になる。
集まっている場所はギルド【高天ヶ原】の本拠地、その広場であった。
早々にレイドの割り振りは言われていたため、それぞれのメンバーたちが固まって会話をしていた。
もちろん、【高天ヶ原】からの参加メンバーたちもそれぞれ分かれている。
「―――――まさかあんたが直接出張って来るとは思ってなかったよ」
ユウノは1人の商人風の男性に対して苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて言葉を吐いた。
「それは当たり前ですよ。
【高天ヶ原】のピンチともあれば駆けつけますとも」
ニコニコとした人当たりの良さそうな表情を浮かべる商人風の男性―――――アルヴァンはユウノの言葉の意味に気が付きながらも受け流している。
今回、アルヴァン率いる【Aurora】から参加したメンバーはギルドマスターであるアルヴァンを含めて13人。
偶然か必然か、【高天ヶ原】の参加メンバーと同数である。
ユウノはこの現状に眉を顰めながらも、出来るだけ全レイドメンバーが死なないレイド構成をした。
強さが未知数である『王』という存在との戦いを想定しているユウノを含むレイドには、他の3つのレイドが弱くならない程度に戦力を詰め込んだのだ。
【高天ヶ原】からはユウノ、アラタ、ララノア、マリィ。
【Aurora】からはアルヴァンと後方支援を得意とするプレイヤーを3人。
その他には【ニッポン】に設立されている様々なギルドからプレイヤーを組み込んでいる。
「……はぁ……取り敢えず話を進めさせてもらう」
ユウノはその場に集まっている自分のレイド内のそれぞれのパーティーリーダーたちに向けて声を発する。
「ここのレイドは1番危険性が高いというのは初めに言ったと思う。
その理由は強さが未知数の存在と戦うからだ。
最低でも【最強種レイドボス級】の強さは超えてると思っていい」
ゴクリと生唾を飲む音が聞こえる。
「基本的には俺たち【高天ヶ原】と【Aurora】からの参加組が最前線で戦うことになってるからその他の皆はサポート、隙があったら攻撃だったりをお願いしたい」
「近距離からの攻撃しか出来ない者はどうしたらいい?」
プレイヤーの1人から質問がでる。
ユウノはそちらの方を向くとそれは考えていたと言わんばかりにスラスラと答えを口にした。
「出来れば後方支援や遠距離からの攻撃をしているプレイヤーを守ってもらいたい。
【敵対心】は最前線の俺たちに集中するとは思うんだけどもしもがあるかもしれないからな」
「なるほど……了解した」
納得の表情を浮べたプレイヤーは自分たちの役割を確認するかのように頷いていた。
「何か他に聞きたいことは??」
ユウノのその言葉にパーティーリーダーたちは反応を示さなかった。
つまり、気になっていたのは先程の質問だけだったのだろう。
元々ある程度の説明はしていたため疑問はあまり無かったのだろうとユウノは思う。
「それじゃぁ、今度はそれぞれ自分のパーティーのメンバーと話し合いをしてもらいたい」
手を叩いてこの場の話し合いは解散だという意を伝えるユウノ。
パーティーリーダーたちはそれぞれのパーティーメンバーの待つ方へ移動していくのであった。
「―――――私をこのパーティーに入れてよかったので?」
アルヴァンはユウノに向ってそう言った。
ため息を吐きつつもユウノは仕方なしと言わんばかりの表情を浮かべている。
「……こそこそやられるよりかはマシだからな」
「はて?何のことでしょうか?」
見覚えのあるニコニコとしたアルヴァンの表情。
ユウノにとってそれは本音を隠すための仮面のようにしか見えていなかった。
「ともかく……戦力としては期待してるから……よろしく?」
「えぇ、えぇ。
もちろんですとも」
「はぁ……」
予想通りとはいえ、【Aurora】にそれもギルドマスターであるアルヴァン自らに自分たちを監視されるのは気持ちのいいものではない。
ユウノはアルヴァンから離れて自らの準備をすることにした。
「『ユウノ』さん。
今回は何か制限を??」
武器をメンテナンスしているとアラタが隣に座り、小声で呟く。
「……まぁ、アイツに出来るだけ情報を渡したくないんだが……死ぬよりマシだ。
出し惜しみはそんなにしなくていい」
「了解です。
じゃぁ、わた、俺も準備しますね。
……隣、いいですか?」
「もう座ってるんだから聞かなくていいぞ?」
「そ、そーですよね!」
アラタは少々慌てたような仕草で自分の日本刀のメンテナンスを開始した。
アルヴァンが近寄ってくるかと予想していたユウノだったが、当のアルヴァン本人は木陰でアイテムの整理をしているようだった。
(……面倒なことにならなけりゃいいけど……)
本日何度目か分からないため息を吐きつつも、ユウノは未知数の敵である『王』という存在に思考を向けるのであった。
―――――総勢120名。
【トミス樹海】攻略レイドは程なくして目的地に向って移動を開始した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
静まり返った【トミス樹海】最奥部。
モンスターたちが居なくなったという訳では無い。
むしろ今までよりも増えており、その姿は屈強なモノへと変化していた。
そして、そんなモンスターたちが1人の人間らしき少女を中心に頭を垂れている。
もちろん、【最強種】であるドラゴンも例外ではない。
「…………」
少女はまだ起きたばかりらしくフラフラとしていた。
しかし、その身から発せられるプレッシャーは生半可なものではなかった。
―――――事実、【最強種】であるドラゴンたちですら、目の前の存在には到底勝てないだろうと再認識させられるほどだ。
「……誰か……来る……?」
途切れつつもハッキリとした発音。
少女は流れる小川のように澄んだ声でそう言った。
『【王】よ……我らを討つために【餌】たちが集まっているようです』
「……えさ……?」
『はい。
愚かな者たちでございます。
早急に掃除するべきかと進言します』
ドラゴンの言葉に少女はぽわぽわとした雰囲気を出しながらもこくりと頷く。
「お腹……へった……」
少女は空腹を訴える腹の虫を可愛らしく響かせながら言った。
そして、軽く尻尾を振るう。
―――――刹那。
少女の後方が吹き飛んだ。
「……あれ……??」
長い眠りから醒めたためだろうか。
自らの力の加減が上手くいかないらしい少女。
『お、【王】よ。
今回は我らにおまかせを。
出来るだけ良質な【餌】をお持ちいたします』
この加減の効かない力を振るわれたのでは巻き込まれてしまうと危惧したドラゴンはそう言った。
少女はそれに納得したのか頷いて再びフカフカの白銀の体毛を持った巨大な狼の体毛に埋まり寝息をたて始める。
ホッとした様子のドラゴンはその場にいるモンスターたちを見据える。
此処、【トミス樹海】の入口に大勢のモノが来ているのは分かっている。
しかし、所詮は有象無象だ。
ドラゴンはモンスターたちに配置を言い渡し、有象無象を自らの【王】に献上する【餌】にするために行動を開始した。




