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戦闘

昨日は更新出来なくてすみません……

用事が重なってしまい今日の更新となってしまいました……

意外にも、真っ先に動き出したのはユウノだった。


―――――何の情報もない状況下では後の先を取るというのがほとんどのプレイヤーが取る行動だ。


しかし、ユウノはそうはしない。

例えば後の先を取ることの出来ない行動、ユウノであれば遠距離からの弾幕をされた場合、詰む可能性が高いからだ。

勿論ユウノもプレイヤーからの【魔法】なら捌き切る自信がある。

なにせ、【魔法】はほとんど規則正しい軌道で飛来してくるからだ。

その軌道をなぞるように日本刀を振るい【斬消(ざんしょう)】を発動させれば【魔法】は霧散する。


―――――だが、モンスターの放つ魔法のような攻撃はたまにだがその規則正しい軌道を外れて飛んでくる。


ユウノとて完璧超人ではない。

その正確な日本刀捌きは凄まじいが、それもゲームの中のみの技術。

ゲーム内のアシストを受けて実現するものなのだ。

現実世界でやろうと思っても、頭では分かっていて身体が付いてこないという現象が起こるだろう。


ユウノは切先を地面に向けて疾走する。

少女はその姿を確認すると両腕を振るう。

勿論そこに何がある訳でもなく、少女の腕は空を切った。

しかしそれは攻撃ではなく、骸骨たちへの指示だったようで、少し遅れて骸骨たちがユウノに向かって突進を開始する。

両者とも、互いに向かって走るため、その接触はまさに一瞬の先だった。


その巨大な体躯を駆使して2体の骸骨はユウノに強烈なタックルを放つ。

ユウノはそれを受け止める―――――ことはせず、身体を出来る限り小さく縮め、がら空きの肋骨の間を通り抜けた。

そして、脇目も振らず一直線に本体であろう少女に向かって再び走り出す。


まさかこのような避け方をされるとは思っていなかったのだろう。

少女は驚きの表情を浮かべるが、直ぐにその表情は元の邪悪な笑みに戻っていた。


おそらく何かあるのだろう、ユウノはそう考えつつも少女に向かっていくのをやめない。

まずは一太刀入れてからという考えだからだ。


「……ふっ!!!」


疾走し、前に行く力を残したまま跳躍する。

その高さは骸骨の全長とほぼほぼ同じほどだ。

日本刀の斬るという性質を最大限に活かすために、落下による力をも利用する一撃。

両の手に握った日本刀を大きく振り上げ、落下の衝撃と共に少女めがけて振り下ろした。


「【降斬(コウザン)(ソウ)】ッ!!!」


本来の【降斬(コウザン)】は一振の剣を上段に構え一気に敵を斬り落とすという一撃。

鋭さ、つまり切断という現象を起こしやすい武器に向いた【技能(スキル)】である。


少女はそんなユウノの一撃に合わせるように手をかざす。

そして現れる六層の魔法陣。


―――――【六層障壁(ゼクス・シルト)】。


以前、ユウギリが使った【幾層にも重なる繭(コクーン・ドーム)】と同じ防御系の【上位魔法】だ。

六層障壁(ゼクス・シルト)】はユウノの【降斬(コウザン)(ソウ)】を受け止めると激しい衝撃音と共に5枚まで割られ、最後の1枚で完全に勢いを殺した。


ユウノは舌打ちをすると、すぐさまその場を離れようとサイドステップで横に回避する。

後ろから追ってきていた骸骨たちに捕まらないために。


「『ユウノ』さん!

そのままどうぞ!

こっちの骸骨はわた……俺に任せてください!」


しかし、その心配は杞憂に終わる。

どうやらアラタが2体の骸骨の足止めをしているようだ。

ユウノはちらりとアラタの方を見る。

骸骨が振るう腕を日本刀で弾いては一太刀浴びせていた。

【種族解放】は使ってないにしてもアラタの攻撃を受けて怯みもしないところを見ると流石は【ボスモンスター】と言ったところだろうか。


アラタの武器である【布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)】は【神造物(ミソロジー)】であり、【恒常型技能(パッシブ・スキル)】として【神気】というものが発動している。

プレイヤーであれば【異種族】や、モンスターであれば骸骨(スケルトン)などの魔物系にはダメージ増加が付与されるのだがあの骸骨には何故か効いてないようにも見える。


ユウノはすぐさま少女の方へと向き直り、思考を戻す。

先程の【六層障壁(ゼクス・シルト)】で分かったことだが、この少女は【魔法】を使うらしい。

未だ防御系しか使っていないのでそれが固有の力なのか、それとも【職業】を持っているのかまでは予想できないが、面倒くさい相手であるのには違いない。


【ボスモンスター】や【名持ち(ネームド)モンスター】の一部にはプレイヤーと同じく【職業】を持つモンスターがいる。

今までに確認された【職業持ち】モンスターの中では3つの【職業】を持ったモンスターが最大となっており、【職業持ち】に共通して言えるのは人型モンスターだということ。


ユウノの前に立つ邪悪な笑みを浮かべている少女も人型のため、【職業】を持っている可能性がゼロではないのだ。


「……魔法使い系の【職業】だと面倒くささが増すな……」


ユウノは苦い表情を浮べながら呟き、そして悩む。

手数の二振か小回りの効く一振か。

弾幕を張られた場合は二振の方が防ぎやすいが、単発の威力が高い【魔法】を使われた場合は一振の方が行動しやすい。


「……まぁ、要所要所で変えるか……」


今悩んだところで解決策は出ないだろう。

むしろここで決めてしまう方が危ない気がすると、二振の日本刀を構える。

一振でいい場合は鞘に納めてしまえばいいのだから。


「さて……やろうか」


サイドステップで移動していたため、ユウノと少女の間には少々距離が出来ていた。

しかしそれも一瞬のうちに埋めれる程度の距離だ。


少女とユウノは再び互いを見つめ合い動かない。

【ボスモンスター】との戦いにしては派手さのない静かなものだ。

刀と骨がぶつかり合い、動き回っているアラタと骸骨たちの方がよっぽど派手に戦闘をしている。


「…………」


「…………」


しばしの沈黙の後、先に動き出したのはまたしてもユウノだった。

行ったのは目にも止まらぬ神速の刺突。

まるでレイピアを扱うかのように放たれた日本刀による突きは常人には知覚できないであろう神速で少女に向かっていく。

その名を【穿空(ガクウ)】。

しかも、これまた巧妙なもので、ユウノは右腕に持つ日本刀で【穿空(ガクウ)】を放った後、一瞬あけて左腕に持つ日本刀でも【穿空(ガクウ)】を放っていた。

初撃が防がれた場合の二擊目ないし、初撃と、追撃のためのもう一撃。

先程の【六層障壁(ゼクス・シルト)】に防がれた【降斬(コウザン)(ソウ)】を意識しての、何としてもダメージを与えるという攻撃だ。


「……くっ……!?」


案の定、再び【六層障壁(ゼクス・シルト)】を展開した少女だったが、初撃の【穿空(ガクウ)】で5枚まで割られ、その後にもう一撃、【穿空(ガクウ)】が叩き込まれた。

六層障壁(ゼクス・シルト)】は完全に破られ、本体の少女に当たる。


―――――が、ユウノは首を捻る。


手応えが、無い。


「ヒヒヒヒヒヒヒッ♪」


引き攣ったような笑い声と共に少女は三日月状に口を開く。

ユウノの放った【穿空(ガクウ)】は少女の身体を貫通したかのように見えたが、その実、すり抜けていたのだ。


「ちっ……!!」


流石のユウノもこの状況は不味いと思ったのだろう。

すぐさまに少女から離れた。


(すり抜け……くそっ!

幽霊だから霊体化して物体を通り抜けたのか……?

そうなるとどこかに核があるはず……)


霊体化した幽霊系モンスターにダメージを与えるにはそのモンスターの核となる部分を攻撃するしかない。

再び舌打ちをするユウノ。

この核という部分、見つけるのは相当面倒くさい。

何せ体内にある上、その場所は移動することが出来るからだ。


「ヒヒッ……ヒヒヒッ」


少女は貫かれた場所を撫でながらユウノの方を見つめてくる。




「……くっ……!」


後方からはアラタの苦戦する声が聞こえてきた。

流石のアラタも2体も同時に相手にするのは厳しいものがあるらしい。


この少女と骸骨たちはどう考えても強さが違う。

おそらく、この【クエスト】は受けたプレイヤーのレベルによって強さが変わるのだろう。


ユウノは再び日本刀を構える。


「……数打ちゃ当たるかね……」


二振の日本刀による二刀流。

その特性は―――――圧倒的な手数。

ユウノから感じる空気を感じ取ったのか、少女は首を90度に曲げる。




「ヒヒヒヒヒィッ!!!」




―――――少女は攻撃に転じた。







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