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会議

『World Of Load』には大小数々のギルドが存在するが、その中でも世界的に有名なギルドが5つ存在する。


その理由としては、毎年ギルド対抗のバトルロイヤルが開催されており、上から順に【ギルドランク】というものを付けられている。

このバトルロイヤルを開催してからというもの、毎年【ギルドランク】にある程度の変動があったのだが、ある年を境に―――――その上位5つはほぼ変動していないからである。









―――――ギルドランク5位


ギルド構成員全てが様々な国籍の女性で構成されるギルド―――――【BLACK・ROSE(ブラック・ローズ)






―――――ギルドランク4位


多方面へのパイプを持ち様々な場所で活躍するギルド―――――【Aurora(アウローラ)






―――――ギルドランク3位


ギルド構成員が一人残らず屈強な男性で構成される戦闘系特化ギルド―――――【Greedy(グリーディー) Walker(ウォーカー)






―――――ギルドランク2位


数あるギルドの中で、ギルドメンバー全てがそれぞれ現実世界に存在する武術を使い戦うギルド―――――【龍驤虎歩(リュウジョウコホ)






―――――ギルドランク1位


数あるギルドの中で唯一『日本』という国で世界に名を知らしめた全ギルド中最強のギルド―――――【高天ヶ原(たかまがはら)






この5つのギルドの名前はゲーマー達はもちろんの事ながら、ゲームをしない人々でも1度は名前を耳にしたことがある、という程に有名である。


数々のゲーマー達がこの上位5ギルドに入るのを夢見ながら『World Of Load』をプレイしている。

―――――まさに憧れの的。


この5ギルドのギルドマスターともなればそれぞれが余裕に生活することができる『プロゲーマー』であり、そのプレイヤースキルともなれば常人離れしているのが周りの認識だ。






―――――まぁ、そのギルドマスターたちの『性格』などを知っているものは数少ないだろうけれど。





















―――――【ニッポン】中心都市『トウキョー』


近代的なビルなどが立ち並ぶ近未来的都市かと思えば、古き良き日本の和風建築物も存在するそんな何処と無く文化の入り交じったような都市。

都市の周りを巨大な岩壁が覆い、円状に囲まれたこの都市の中心。


立派な水堀に囲まれた、本丸を守るように二の丸三の丸が造られた輪郭式の一城のお城。

しかし、お城と言っても何処か近代的な雰囲気も持っていた。

正面に架けられた赤と黒を使われた橋は頑丈そうでありながら一種の美術品のような美しさを持っている。


この城こそがギルドランク1位である『高天ヶ原』の本拠地である。











「―――――『ユウノ』!!!!

貴方が会議するって言うから集まったのに貴方自身が来ないってどういうことよ!?」


本丸、天守に造られたギルドマスタールームの襖を力任せに開けて一人の女性が入ってくる。

明らかに着崩され、完璧に肩まで露出させた華やかな着物に身を包んだ、夜色の長髪を持つその女性はふさふさの尻尾と美しい狐耳が着いていた。


「……え……?

俺そんな話したっけ?」


ユウノと呼ばれた少年は手入れをしていた日本刀をおろしながら間抜けな表情を浮かべて返答する。

その姿は、襖を開けた女性とは対照的で、何の特徴もないただの少年だ。

唯一特徴があるとすれば彼も和装であるということくらいだろうか。


「えぇ、えぇ!

一週間前に私たち【十二天将】に『メッセージ』を飛ばしたでしょう?!

なのに集まってみれば待てども待てども貴方が来ないから皆を代表して私が呼びに来たというわけよ!!」


これが証拠よ!と、襖を開けた女性は自らのウィンドウに送られてきたメッセージ画面を映し出してユウノと呼ばれた少年に向けた。


それを見たユウノは顎に手を置くと眉をひそめて口を開く。


「なぁ『アマネ』。

―――――【十二天将】って名前恥ずかしくないか?

すっごく厨二病臭くてむず痒くなるわ」


「貴方が付けたんでしょうがッッッッ!!!!

ていうより話が違うわよ!

本題はこの会議ッ!」


「あ〜……うぅーん……そうだなぁ……」


虚空を見つめながら体を左右に揺するユウノは思い出す気があるのかないのかよく分からない仕草を見せた。

その仕草にアマネと呼ばれた襖を開けた女性はため息を付きながら額に手を当て下を向く。


「……全く……私たちも暇じゃないのよ?

何も用事が無いのなら解散するけど良いわね?」


「……あ、思い出した」


ぽん、と手のひらを叩いて、さも簡単なことかのように言葉を吐いた。


「そろそろ新規加入組に【レイドボス】狩らせてもいいかなーって思ってな」


ユウノはウィンドウを開くと素早く文字を打ち込み『メッセージ』を送信する。


「取り敢えず5人1組で6組作っといたから。

そのメンバーたちで狩れそうな【レイドボス】探しといてくんね?」


再び日本刀の手入れをやり始めるユウノ。


「ついでに【十二天将】の中から1人引率付けといてくれるとなおグッジョブ」


「………………」


今まで口を挟むことなく静かに聞いていたアマネは肩を震わせ、ユウノを睨んだ。


「―――――そういうことはしっかり会議でいいなさいよッッッッ!!!」


「取り敢えず『アマネ』に伝えとけばなんとかなるかなって」


「ギルマスは貴方でしょーがッ!!!」


アマネは日本刀の手入れをしつつまったりしているユウノの首根っこを掴むと引きずるようにして連れていこうとする。


「ちょ、く、首締まってるって!!」


「ゲームなんだから大丈夫よッ!」


やめてくれぇ〜!ユウノは悲痛な叫びをあげながらアマネに引きずられて行くのであった。

……ちなみに、会議室までユウノは引きずられて行ったらしい。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






「―――――と、いうわけで……何か手頃な【レイドボス】思いついた人いない?」


お城の中と言うには場違い感がある円卓に13の席が用意されたこの会議室。

その席は全てが埋まっていた。


「―――――はぁぃ!

私は【キューシュー】にある【焔鷹(えんしょう)・ハガダ】とかがいいんじゃにゃいかと思いますです!」


小柄な猫耳を付けた少女が尻尾を左右に振りながら元気に意見を述べる。


「いやいやいや、俺らが戦うならまだしも今回は新規加入組だろ?

流石に厳しいって」


軽装気味の青年が苦笑いを浮かべならその意見を却下する。


「まずは小物の方がいいだろう。

例えば【岩兵・ラックス】なんてどうだ?

アイツなら【レイドボス】でも弱いほうだから大丈夫なんじゃないか?」


真っ黒な鎧を身に纏った見た目30代ほどの男性が兜を円卓に置きつつ提案した。


「そうだなぁ……メンバー表のメイン職のレベル的にも丁度いいんじゃないか?」


ローブを羽織った青年は冷静にメンバー表を見ながらそう反応すると、それに合わせるように声が発せられる。


「平均のレベルが55ですからね。

確か【岩兵・ラックス】の推奨レベルが52だったはずなので負けはしないギリギリのラインだと思います」


狩衣姿の耳の長い女性はそう言ってニコリと微笑んだ。


「それじゃぁそれにさんせーい」


「右に同じーく」


ケラケラと笑いながらその二人は意見に賛同する。

おおよそその二人の見分けが付く者はほぼほぼ居ないだろうと言うほどにそっくりな容姿をしていた。


(わたくし)もそれでいいと思いますわ」


おっとりとした声ながら何処か凛とした女性の声。

その姿は何処か姫を連想させるものだった。


「私はマスターがいいのであれば」


忍装束に身を包んだ女性はそれだけを言うと黙り込む。


「わっちもそれで良いと思いんす」


花魁を彷彿とさせる姿の女性もそう言って同意する。


「わ、私……あ、僕……いや、お、俺もそれでいいと思います!」


どう見ても男装した少女にしか見えない何処と無くユウノの服装に似た少女も元気に頷きながらそう言った。


「取り敢えず【岩兵・ラックス】でいいんじゃないかしら?

もしそれで手応えがないようならまた他のを探せばいいわ」


最後にアマネがそう言って、ユウノは頷く。


「そんじゃぁ、今回は【岩兵・ラックス】が相手ってことで。

誰か引率に1人欲しいんだけど……」


ユウノが円卓に座る12人―――――【十二天将】を見渡すと、1人を見つめて口を開いた。


「『アラタ』、引率頼める?」


男装した少女―――――その名前をアラタと言うらしい―――――はユウノにそういわれるとぱぁっと表情を明るくして勢いよく立ち上がった。


「ま、任せてください!

わた……俺が、完璧に引率してきます!!!」


「お、おう……た、頼んだわ」


アラタのやる気にユウノは苦笑いを浮かべながら言った。


「そんじゃ、今日はここまでな。

解散してもらっていいぞ」


ぱん、と柏手をユウノが一つ打つと円卓に座った13人のメンバーはそれぞれに解散して行った。






「―――――さってと……俺はまた引きこもるかねぇ……」


背伸びをしつつ欠伸をしたユウノはギルドマスタールームに向かおうと足を進める。











「―――――ユウノ、このあと暇よね?」


「わっちたちとクエスト(アソビ)に行きんしょう?」


「……『アマネ』『ユウギリ』……」


アマネはジトっとした視線を向け、ユウギリと呼ばれた花魁を彷彿とさせる姿の女性はニコリと微笑む。


「い、いや〜……美女2人に誘われるとは光栄だなー……だけど残念ながらこのあと用事が―――――」


「無いわよね?」


「無いでありんしょう?」


「……わぁお、こんな嬉しくない美女からのホールドあるんだなぁ〜……」


左右の腕を掴まれたユウノは苦笑いを浮かべて呟いた。






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