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装備

大変遅くなりました!

今回の内容のある1点について凄く悩んでしまいまして……。

楽しんでいただければ幸いです!

―――――【高天ヶ原(たかまがはら)】本拠地




本丸、天守に作られたギルドマスタールーム。

内装は純和風の雰囲気をしっかりと醸し出し、畳の床と板張りの床、両方が存在している。

部屋の中央に設置された囲炉裏で火は焚かれていないが、何ともマッチした存在だ。

最奥部には、日本刀が飾られており、それがユウノのメイン武器だというのが良くわかる。


そんなギルドマスタールームにいるのはゆるりと寛ぐユウノときっちりと正座をしているアラタの2人のみ。

ユウノはアラタに湯呑みを渡しながら口を開いた。


「それで?

今日の『レイドボス戦』はどうだったんだ?」


「思っていたより危なげない戦いでした。

戦士職の人たちはしっかりと自分の役割を理解していましたし、魔法職の人たちは回復、攻撃、支援、とそれぞれに割り振って戦えていましたからね」


そう言って、ユウノに渡された湯呑みに口をつけるアラタ。

熱すぎず、温すぎない丁度いい温度のお茶が喉を潤す感覚がする。


「へぇ……レベル差的に勝つにしてもギリギリだと思ってたんだけどな……俺の予想より遥かに成長してるってことか」


「まぁ、何せ【十二天将(みなさん)】が選んだというか気に入った人たちですからね。

成長具合で言えば他の人よりも早そうなものです」


「そりゃ違いないな」


それぞれが何に惹かれてそのプレイヤーを【高天ヶ原(たかまがはら)】に加入させたのかは詳しくは分からないが、それでも【十二天将(なかま)】が選んだプレイヤーならば、それだけで期待をしてしまうというものだ。

しかも、期待に押しつぶされるでもなく、その期待以上に応えてくれるプレイヤーばかりでユウノは驚くばかりだった。


「特に『アルル』は凄かったですよ」


「『アルル』か?

確か最近は『ララノア』だけじゃなくて『イルム』とも一緒にレベリングしてるんだったかね」


「『ララノアから頼まれたんじゃ仕方ない』って笑いながら手伝っていましたよ?

まぁでも、頼まれなくても『イルム』さんならそのうち手伝いそうですけどね」


そう言って笑うアラタに同意を示すように首を縦に振ったユウノ。

湯呑みに入った自分の分のお茶を飲み干すと、仕方がないという表情を浮かべた。


「『イルム』はそういう奴だからな。

なにせ、【高天ヶ原(うちのギルド)】に1番新人連れてきてるのは『イルム』だし。

その上、レベリングを一番手伝ってるの『イルム』だ。

割と『イルム』に助けられたプレイヤーは多いんじゃないか?」


「わた……俺も加入当初は本当にお世話になりましたからね……」


しみじみと思い出したように言うアラタにイジワルな笑みを浮かべてからかうような口調でユウノは言った。


「『加入当初』??

なんだなんだ?

最近はお世話になってないのか??

知ってるぞ〜俺は。

『アラタ』が『イルム』に何かしら相談事して助けてもらってるの」


「な……っ?!!!

な、なんで知って……っ!?

相談の内容は聞いて無いですよね?!!」


「流石にそこまではしないわ」


そのひと言に胸をなでおろすアラタ。

どうやら聞かれたくない相談事だったそうだ。


「なんなら俺も相談くらい乗ってやるぞ?」


「あ〜……えっと……なにかあったら直ぐに相談しますね!」


歯切れの悪い物言いだったが、ユウノは特に気にすることもなくスルーする。

これも何かあったのなら本当に相談してくれるだろうという信頼からだ。


「さて……この後は暇か?『アラタ』」


「勿論暇です!

なんですかなんですか??

まさか今日も遊んでくれるんですか?!」


身を乗り出して問うアラタにユウノはクスリと笑いをこぼす。

アラタの姿はやはりよく懐いた犬のようにしか見えない。


「最近は凄く構ってくれるので嬉しいです!!!」


「おいおいおい……今まで放ったらかしにしてたみたいな言い方を止めろ」


「え?事実じゃないですか」


何を言っているんだろうこの人はと言わんばかりのアラタの表情にユウノは苦笑いを浮かべる。

今までは言わなかったが心の中ではもっと構ってほしいと思っていたのだろう。


「……悪かった悪かった。

今後は定期的に構ってやるから許してくれ」


「えぇ〜……そんな嫌々なんですか……?」


「うっ……」


上目遣いに少々潤んだ瞳で弱々しく呟くアラタにユウノは言葉を詰まらせる。

日頃は一人称を『俺』にしようとしたり、フレンドリーなアラタだが、たまに見せるこのような年相応な少女らしい反応に弱い。

しかもそれが意識しての行動では無いらしいため、ユウノも手を焼いているのだ。


「……嫌々じゃない」


「そうですか!

……ふふっ♪それは良かったです!」


先程の様子が嘘のように明るい声で喜びを表現するアラタ。

決して先程の行動は意識してのものでは無いのだと、己に言い聞かせるユウノの姿がそこにはあった。

アラタはそんな小悪魔チックな性格ではないと思っているからだ。

ユウノはこほん、と咳払いを一つすると、気を取り直して話を進める。


「取り敢えず、このあと散歩にでも行かないか?」


「あれれ……??

遊ぶんじゃないんですか??」


キョトンとした表情になるアラタにユウノはバツの悪そうな表情を浮かべる。


「あ〜……期待してたところ悪いんだけど……な……?」


「いいですけど……でも何で散歩なんですか??」


「………………」


至極当たり前の質問にユウノはしばしの沈黙の後、目を逸らしながら口を開いた。


「……最近ことある事に『アマネ』と『ユウギリ』が俺を連れ出してクエストに行こうとするんだよ……。

俺の引きこもり防止だって言ってな……。

俺はのんびりとしていたい!

だけどギルドマスタールームに引きこもってたらあの2人が俺を連れ出そうとクエストに連れていく!

だったら俺から外に出ておいた方が平和だ!

っていう思考に至ってな。

どうせなら『アラタ』と会話でもしながら散歩するかって思ったんだよ」


「……相変わらず引きこもり癖が付いてますね……」


「違う!引きこもってるんじゃない!

俺はのんびりしてるだけだ!そして武器の手入れとかアイテムの整理をしてるんだ!」


熱を入れてそういうユウノにアラタはクスリと笑う。

出会った時から変わらないユウノの姿についつい笑いがこぼれたらしい。


「まぁ、程々にしてくださいね?」


「―――――さーて散歩に行こうか『アラタ』」


程々にという言葉を聞いたユウノは誤魔化すかのようにその言葉を口にし、立ち上がる。

アラタは誤魔化されたことに関して一瞬じとっとした視線を向けるも仕方がないと言うふうにユウノに続けて立ち上がる。


「何処に散歩に行きますか?『ユウノ』さん」


「久しぶりに【マーケット】に行くのも悪くないんじゃないか?」


アラタの言葉にさらっと答えるユウノ。


【マーケット】とは【NPC】が経営している店とは違い、プレイヤーが経営している店が多く並ぶ場所だ。

基本的には武装や素材、【個別魔法(プレイヤー・マジック)】を販売しており、質のいいものが揃えられてることが多い。

しかしその分、質のいい物は価格が高いので初心者はあまり頻繁には来ない場所となっている。


ちなみに、先程『質のいいもの』と言ったがそれは武装などのレアリティについてである。

基本的に【NPC】から購入できる装備は【通常物(ノーマル)】までしか無く、【通常物(ノーマル)】から上の装備に関してはプレイヤーが造るか、ドロップさせるか、クエストでの報酬でしか入手方法はない。

通常物(ノーマル)】以外の装備のランク付けは5つある。



―――――【人造物(クリエイト)】。

プレイヤーが作った装備全般を指し、性能は様々。

通常物(ノーマル)】程度の性能しか無い物もあれば【神造物(ミソロジー)】に迫る性能の物もあるため、それは使って見なければわからない。



―――――【古代物(オーパーツ)】。

主に【名持ち(ネームド)モンスター】や【ダンジョンボス】がドロップする比較的ランクの低めな装備である。



―――――【人工遺物(アーティファクト)】。

これは基本的にはクエストの報酬として、もしくはクエスト途中に入手可能な装備である。



―――――【幻想物(イマジナリー)】。

一定の強さを持つ【ダンジョンボス】がドロップさせる装備であり、そのドロップした装備が破壊されるまで2度と同じものがドロップすることはない。



―――――【神造物(ミソロジー)】。

『World Of Load』内では所持するプレイヤー数が少なく、【レイドボスモンスター】や【特殊クエスト】などで稀に入手することの出来る最高ランクの装備である。

この装備に関しては1度しか入手出来ず、もし破壊されたりした場合は2度と入手出来ないものとなっている。

ちなみにだが、アラタの【布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)】は【神造物(ミソロジー)】である。



「【マーケット】に行くなら服を買いましょう!

『ユウノ』さんとお揃いの和装が欲しいです!」


「……ペアルックは勘弁してくれ……彼氏でも無い俺にはハードルが高い……」


「ぺ、ペアルックだなんてそんなそんな!

……でも『ユウノ』さんが嫌なら仕方が無いですね……」


アラタの言葉に苦い表情を浮かべて辞めてくれと頼むユウノ。

アラタはしゅんとした様子でそれに同意する。

犬耳があったのなら垂れ下がっているだろう。


「……じゃぁこうしよう。

俺がお前の和装を選んでやるからお前が俺の和装を選んでくれ」


「それ、いいですね!!

そうと決まれば早く行きましょう!!」


途端に機嫌が良くなるアラタ。

ユウノの腕を掴んで早く行こうと急かす。

ユウノはそんなアラタの行動にいつもの微笑ましさを感じながら歩を進めた。




―――――2人の姿は父娘にも、恋人にも見えた。











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