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顕現

【防御系技能(スキル)】―――――【斬消(ざんしょう)】。


矢やクナイ、【魔法】からユウノ、アラタが身を守った【技能(スキル)】である。

この【技能(スキル)】、実は取得するプレイヤーが極端に少ない【技能(スキル)】となっている。




『World Of Load』における【技能(スキル)】はプレイヤーの取得している【職業】のレベルアップ時に付与される【技能(スキル)・ポイント】を割り振り『解放』、『強化』していくものである。

技能(スキル)・ポイント】に関しては、【職業】のレベルが1つ上がる度に5ポイント獲得できる。

つまり、メイン職業を100にするだけで【技能(スキル)・ポイント】は『500』貯まり、サブ職業を合わせれば『1750』もの【技能(スキル)・ポイント】が貯まる。


そして、気をつければならないのは、【魔法】は【技能(スキル)・ポイント】を消費して取得するものでは無いというところだ。

確かに【技能(スキル)・ポイント】を使って取得する【魔法】も存在するが、ほとんどの【魔法】はそれとは別の取得方法である。


技能(スキル)】に関して、基本的には『解放』に使用する【技能(スキル)・ポイント】は最低で『10』。

『強化』に関しては、1つの【技能(スキル)】につき最大十段階まで行うことができ、1度強化する度に【技能(スキル)・ポイント】をこちらも最低『10』消費する。

最大強化すると『Ⅹ』というローマ数字が【技能(スキル)】の最後に付くためわかりやすく判断することが出来るのだ。


技能(スキル)】には様々あり、大きく分けると【能動型能力(アクティブ・スキル)】と【恒常型技能(パッシブ・スキル)】に分けることが出来る。

勿論、【職業】によっては取得できない【技能(スキル)】はあるものの、それでもかなりの数の【技能(スキル)】が存在しているため、プレイヤーはどれを『解放』するのか、レベルアップの度に悩んでいる。




―――――さて、話を戻すとしよう。

先にも出した【防御系技能(スキル)】である【斬消(ざんしょう)】。

これは刀剣系武器を使用することができる【職業】の場合は全員が取得することが可能な【能動型能力(アクティブ・スキル)】である。


その効果は『【魔法】の中心を斬ることで、武器の性能により【魔法】を切断する』というものであり、それの派生として飛び道具類も切断が可能なのだ。

そしてこの【斬消(ざんしょう)】はハイリスクハイリターンな【技能(スキル)】となっている。


その理由としては、『【魔法】の中心を斬る』という成功条件がとても難しいというところ、そして、失敗した場合、防御をしていない時に攻撃を受けたという判定でダメージを受けるというところだ。

つまり、この【技能(スキル)】は成功しない限りは必ずダメージを受けてしまう。


そもそも【魔法】の中心の当たり判定はスーパーボール程しかない。

それを正確に斬るとなると、1度や2度ならまだしも、何度も何度も繰り返して成功させるのは至難の業だ。


そのため、【斬消(ざんしょう)】は取得するプレイヤーが少なく、もし、刀剣系武器の【防御系技能(スキル)】を取得するのならば、最大強化をすれば50パーセントのダメージをカットできる【防剣(ぼうけん)】を選択するのだ。




―――――では何故、ユウノはこの【斬消(ざんしょう)】を取得し、その上最大強化までしているのか。


それは、唯一、ダメージを完璧にカットすることの出来る【技能(スキル)】だからである。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






「……嘘……だろ……」


その言葉は誰が呟いたのか。

新しい夜明け(ニュー・ドーン)】のプレイヤーたちは目の前の光景に圧倒されていた。

先程まで3人のプレイヤーに注がれていた【魔法】の数々は、今では1人のプレイヤーに向かって放たれている。

【魔法】を使用し、枯渇する【MP(マジック・ポイント)】を回復アイテムで復活させ、既に3度の枯渇を味わっているのにも関わらず、目の前に立ちはだかる敵は倒れる気配すら見せない。


―――――それどころか、ダメージを負っているようにも見えない。


理由は簡単だ。

放たれる【魔法】を斬ってガードしている。

それも、四方八方からランダムに放たれる【魔法】を、だ。

流麗な剣舞を見ているかのように、両の手に握られた日本刀を振るう姿に【新しい夜明け(ニュー・ドーン)】のプレイヤーは戦慄を覚える。


「これが……【剣聖】……」


それは誰もが知っている【二つ名】。

高天ヶ原(たかまがはら)】のギルドマスターが持つものだ。


もともと、【剣聖】とは【最上級職業】の名称である。

この【職業】は指定条件がなかなかに厳しく、『World Of Load』を始めた当初から【剣聖】になるということを決めておかなければまずなれない【職業】だ。

その指定条件の中で最も厳しいものとは、『一定期間、一種類の刀剣系武器を使用し続ける』というもの。

この『一定期間』というものがどれほどなのかと言うのは未だに詳しくは分かっていないものの、【剣聖】になったプレイヤーたちは総じて、【剣聖】になるまでの間同じ武器しか使わなかった、と言っている。


勿論、【二つ名】を【剣聖】と呼ばれているユウノもその一人だ。

ユウノが使い続けたのは―――――【日本刀】。


『World Of Load』における【日本刀】という武器は、攻撃力がそこまで高くない代わりに、切断するという事柄において無敵であるが、扱いの難しい、かなりの上級者向けの武器という立ち位置にある。

上手く扱えればかなりの強さになるものの、少しでも扱いが下手であれば途端に弱く感じる、そんなシビアな武器なのだ。


では何故ユウノはそんな武器を使っているのか、それは至極簡単であり、馬鹿馬鹿しい理由だ。


―――――『何となくカッコいいから』。


『World Of Load』を始めた当時、小学生だったユウノが日本刀をメイン武器に選び、使い続けたのはそんな理由だった。


さぞ使いにくかったであろう、その武器をただ単純にカッコいいからという理由で使い続けた結果、ユウノは【剣聖】という【職業】を『World Of Load』内で一番最初に取得し、その【職業】の名称を【二つ名】にするまでになった。




「……終わりか?」


ユウノのその一言が重くのしかかる。

新しい夜明け(ニュー・ドーン)】のプレイヤーたちは【魔法】を撃つのを止め、目の前のプレイヤーから視線を外せないでいた。

一体どれほどの【魔法】を彼に撃ち込んだのだろう。

それは数え切れないほどだったはずなのに、何故彼は生きているのだろう。


目の前の出来事が信じられなかった。


「全部……斬った……のか……」


要塞顕現フォートレス・ウォール】を発動しつづける【新しい夜明け(ニュー・ドーン)】のギルドマスター―――――『ガルド』は目を見開き、何だかわからない汗を全身から吹き出していた。


斬消(ざんしょう)】という成功率の低い【技能(スキル)】を全て成功させる。

それも、両の手に日本刀を装備した状態で。

ギルドランク1位という存在はここまで非常識なのか。


今まで戦ってきた格上の相手がまるで赤子のようにも感じる。


そうして直感した。

自分たちはどう頑張っても勝てないと。




―――――だがしかし。

ガルドは諦める気は無かった。


どんなことをしてでも勝てばいい、勝てば正義、勝たなければ意味は無い、という考えの元行動していたガルドであったが、目の前の非常識な存在を認識した途端に思った。


敗けると分かっていても、この目の前の存在に、自分が、自分たちがどれほど通用するのかを知りたいと。


「全霊を持って戦うぞ!!!

魔法職のメンバーは俺の後ろに!

出来るだけデカい一撃を一斉に撃てるように用意しろ!

それ以外のメンバーは時間稼ぎだぁ!!!」


ガルドは笑っていた。

専用職業(リミテッド・ジョブ)】を取得した時に感じた高揚感とは違う何か。

強い者に立ち向かうという状況に、興奮しているのだ。


そんな、見たことのないギルドマスターの様子に【新しい夜明け(ニュー・ドーン)】のプレイヤーたちは応える。


魔法職であるプレイヤーたちは素早く移動し、【要塞顕現フォートレス・ウォール】の内側に入り、自らの最高威力の【魔法】を準備する。

それ以外のプレイヤーたちは、防御系【技能(スキル)】を持っている者は【要塞顕現フォートレス・ウォール】の前を固め、持っていないプレイヤーたちはユウノに向って走り出した。

走り出したプレイヤーの中には先程同様に、影で作られた偽物のプレイヤーも混じっている。


ユウノはその様子にニヤリと笑って、二振の日本刀を腰の鞘に納める。


「ほら、バトンタッチだ『アラタ』。

露払いはこれでいいだろ?」


「はい、ありがとうございます」


その言葉を合図に、ユウノの背後からアラタが歩みでる。

抜刀された日本刀は右手に握られ、だらりと下げられていた。


「見ててください『ユウノ』さん!

強くなった私の……俺の姿を!!」


そう言ったアラタはふぅ、と息を一つ吐いて叫んだ。




「―――――『解放』ッッッ!!!!」




アラタの立つ地面がミシリという音をたてて陥没する。

アラタから迸る雷と溢れ出す焔。


それは、『World Of Load』内で言われる均整を壊す(バランスブレイカー)な【種族】の特徴だ。




「さぁ、やりましょう!

この姿の私……俺は更に強いですよ!!!」


【神話族】を獲得しているアラタが、その本来の姿を顕現させたのだ。










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