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『World Of Load』には【戦争】や【演習】などの多人数のプレイヤーが戦うためのフィールドが、通常のフィールドとは別に存在している。

その地形は様々で、【演習】では平地などの開けたフィールドが、【戦争】では城跡などの遮蔽物のあるフィールドが好まれる傾向にある。


こういった特殊な条件下でのみ使用するフィールドには各地の中心都市にのみ設置されている【世界間転移門(ワールド・ゲート)】から転移することができるようになっているのだ。




―――――『World Of Load』にはいくつかの【転移門(ゲート)】がある。

先にも述べたと思うが、『World Of Load』というゲームのフィールドは現実世界のものと同じ大きさで広がっている。

そんなフィールドを全て歩いて移動するなんてことは不可能だ。

確かに乗り物が無いこともないが、それでも時間がかかり過ぎてしまう。


そのため、『World Of Load』には手ごろな移動手段として【転移門(ゲート)】が用いられている。




―――――【世界間転移門(ワールド・ゲート)】。

これは各地の中心都市に設置されている【転移門(ゲート)】で、その名の通り世界間の移動が出来き、特殊なフィールドへの転移はここでしか行えない。

例えば【ニッポン】から【ペンタゴン】現実世界で言うところの『アメリカ』までの移動などが出来るのだ。




―――――【地域間転移門(リージョン・ゲート)】。

これは中心都市のみではなく、各地に設置されている。

こちらも名称のまま、地域間の移動ができる。

例えば【ニッポン】という地域の中であれば何処へでも転移可能なのだ。




―――――【組織間転移門(ギルド・ゲート)】。

これは、所属しているギルドで、設置されていれば使用が可能な【転移門(ゲート)】である。

例えばギルド名義で獲得した土地などへの転移などができるのだ。




―――――【簡易転移門印(ゲート・マーカー)】。

これは【転移門(ゲート)】というよりかはアイテムの1種である。

プレイヤー1人につき最大10枚までしか所持できないが、その効果は【簡易転移門印(ゲート・マーカー)】を設置した場所に転移できるようになるというもの。

ただし、このアイテムはそこそこの値段がする物で、その価格、10億クレジットである上に消耗品。

設置した場所に3回転移すると【簡易転移門印(ゲート・マーカー)】は壊れてしまうのだ。




このように、移動にとても便利な【転移門(ゲート)】であるが、これには利用料金がかかってしまうものもある。

世界間転移門(ワールド・ゲート)】は1回の転移につき1000クレジット、【地域間転移門(リージョン・ゲート)】は1回の転移につき500クレジットだ。




こういった移動手段が存在しているお陰で、フィールドが現実世界のものと同じでも移動できるのだ。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






―――――人気のない荒廃した街。

瓦礫の山がそこら中に積み上げられ、地面は砕けたアスファルトが抉れたり、盛り上がったりしている。

立派であったであろうビルたちは窓ガラスが割れ、ひび割れた壁には苔が生えているところも多々存在した。

乗り捨てられた車や瓦礫の山が遮蔽物となり、見通しは悪く、足元も悪い。

俺たちが初期位置として転移されてきたのはそんなフィールドの開けた元、交差点と呼ばれていたであろう場所。


此処が【新しい夜明け(ニュー・ドーン)】との、【戦争】のフィールドである。

基本的にはフィールドは互いが指定したフィールドをランダムで選択して決められるのだが、今回に関してはフィールドの決定権も相手に譲った。

その為に、このフィールドになることは全く知らなかったのだ。




周りを見渡したのちに俺は自らの装備を確認する。


俺の身体を守っているのは紺色の着物―――――【魑魅魍魎(ちみもうりょう)の主の着物】と同シリーズの袴―――――【魑魅魍魎の主の袴】。

その上から羽織っている漆黒の羽織 ―――――【深き闇夜の羽織】。

腰には二振の日本刀を差している。

そして、忘れてはならないのが、俺の顔に付けられている白い狐の面―――――【白銀狐の面】。


そのそれぞれの装備に効果があり、【人間(ヒューマン)】である俺のステータスを強化してくれている。


「―――――準備はいいか?」


俺の左右に立つ2人に声をかける。

2人も俺と同様に装備を確認していたようだ。


「勿論です!」


右隣にいるのはアラタ。

俺と装備の大まかな見た目は似ているものの、アラタは藍色の着物に朱色の袴、空色の羽織を装備しており、腰に差さる日本刀は一振のみである。

そして、確実に俺を意識しているであろう狐面が頭の側面に付けられていた。


「当たり前でありんしょう?」


左隣にいるのはユウギリ。

いつもは地面に引きずるほどの長さを持つ赤を基調とした美しく、華やかな和服をたくし上げ、掛け端折りにしている。

腰に巻かれた黒の帯が和服の美しさを纏めているようにも見える。

そして、こういった和服が、ユウギリのはだけさせた肌を美しく飾っていた。

そんな中でも一際目立つのはユウギリの周り。

そこには三つの水晶が浮かんでいる。

あれがユウギリのメイン武器だ。


「じゃぁ、私たちは待機しておくわね?」


アマネたちもしっかりと装備を整えて、俺たち3人よりも3歩ほど後ろに待機している。

言っていた通り、俺たち3人以外はその場で待機だからだ。




―――――【戦争】開始まで残り5分。


確認してみたところ、【新しい夜明け(ニュー・ドーン)】の参加メンバーの数は55人。

あちらもギルドのメンバー全員で参加しているという訳では無いらしい。

おそらく、今まで行ってきた【戦争】の中で【デスペナルティー】を受けたプレイヤーは流石にレベリングが間に合わなかったのだろう。

未だ目視することは叶わない敵の事を考えつつ息を吐く。


「……へぇ……」


軽く辺りを歩き、地面を観察する。

これ程までにでこぼこした地面であれば動きにくいことは必至。

おそらく【新しい夜明け(ニュー・ドーン)】は俺たちの足を潰しにかかってきたということだろう。

そして、遮蔽物の多くあるこのフィールドであれば姿を隠したりもしやすく、魔法に関しても狙いにくいという考えを持っているらしい。

俺たちに勝つ為に少しでも条件を整えようと考えられたこの光景に口角が上がる。






「―――――まだ甘い」


しかし、この悪条件は【新しい夜明け(ニュー・ドーン)】においても同じである。

どんな【専用職業(リミテッド・ジョブ)】を持っているのかは知らないが、まだまだ負ける気はしない。

これは慢心では無い。


―――――絶対的なまでの自信だ。


今までの経験を経て得たその絶対的なまでの自信は少しの悪条件程度では揺るがない。


「『アラタ』、調子はどうだ?」


俺の真剣な声音にアラタは腰の日本刀の鯉口を切りつつ薄く笑う。

その笑いにはいつもの人懐っこそうな犬ような雰囲気はどこにも無かった。


「……今なら『ユウノ』さんに一太刀くらい入れれるんじゃないかってくらいには絶好調ですよ」


「そりゃすげぇ。

今度気が向いたら久しぶりに交えるか」


「是非っ!!!」


……無かったと思っていたが、途端に犬耳と尻尾を幻視する。

どうもこの変化に調子が崩される気がしてならない。


「『ユウギリ』は……聞くまでもなさそうだな」


ユウギリの方を見れば、メイン武器である3つの水晶をまるで手足のように操り、宙を舞わせている姿が目に入る。


「今日はさぽーとでありんすけど、わっちにも襲いかかってくる輩はいるでありんしょう?

でありんすから、おいしぃーくいただいてしまおうかと思いんして……ね……?」


艷やかに唇を舐める仕草にどきりとする。

味方ながら恐ろしくもあり、だからこそ頼もしくもある。


俺はそんな2人よりも一歩前に進んで振り返ること無く口を開く。


「頼りにしてるぞ」


その言葉を合図にしたかのように、俺たちの目の前に文字が浮かび上がる。




『【高天ヶ原(たかまがはら)】VS【新しい夜明け(ニュー・ドーン)】START!!!』




「―――――行くぞ……勝つ!」


「当たり前です!」


「当然でありんす」


短く言って、俺たちは初期位置から移動を開始した。














ここまで引っ張っておいてまだ戦闘は開始されませんっ!!!

次回をお楽しみにっ!!!

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