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第二戦3VS3


3人が初めに目にしたのは荒廃したビルが立ち並び木々が所々に茂る明らかに見通しの悪いフィールド。

恐らく3人の転送されてきた場所は元は公園だったのか遊具らしき物は倒れ、唯一シンボルであったであろう噴水が辛うじてその姿と役割を保っている。

ダイン、ソフィア、マリィの3人は辺りに視線を散らしいち早くその場の情報を読み取ろうとしていた。


「俺としては何ともやりにくいフィールドになったな……」


「またまたそんなこと言って〜『ダイン』ならちょちょいのちょいで守りきるのが目に見えてるのにゃぁ。

私はのんびり鼻歌でも歌ってるのにゃ〜」


頭をかいて困り眉を浮かべるダインに対してマリィは何とも気楽に言って鼻歌を奏でる。


「そうか。

そこまで余裕そうな『マリィ』には2割ほど攻撃を通して気合を入れてもらうのもアリかもしれないな」


「なんでにゃっ!?

今回は後方で支援するのが私の仕事のはずにゃっ!?」


「なに、ちょっとした冗談だ」


「本当にぶっ飛ばすのもじさないにゃ」


まるで威嚇する猫のように髪の毛を逆立てているかのような勢いでダインを睨みつけるマリィ。

そんな2人の様子をくすくすと笑いながら平和にソフィアは見つめていた。











『――――それでは只今より第二戦を開始させていただきます』




フィールドに唐突に響き渡る機械音声。

未だ相手の姿が見えていないことから今回は索敵から必要なのだと察する3人。

先程までの賑やかな、和やかな雰囲気は何処へやら。

一瞬にして鋭い眼光を携えて自分たちの役割を全うするために意識を切り替える。


ダインは2人の前に立ふさがるように一歩踏み出し身の丈以上に巨大なグレートソード【王の理想(キングス・イデアル)】を両の手で握り何時でも対処できるように。


ソフィアはその場から一歩引きいつも通りに片手にはラウンドシールドである【不可侵の神盾(アイギス)】を片手には【神輝の長槍(アテーナイアー)】を構える。


マリィは2人から1メートルほど後方に移動するとひとまずは武装を展開することはなくその場の状況に合わせた支援を行えるようにと準備を完了させた。






『――――スタート!!!!』


開始の合図がなされそれと同時に攻撃が来るのではないかと予想していた3人だったが、攻撃どころか音のひとつも起きないフィールドに自分たちの予想も大したことがないなと小さく笑う。

しかし油断することは無い。

いついかなる場合でも守るだけではなく反撃ができるようにと視覚、聴覚、勘の全てを研ぎ澄ませていく。











「――――どうもこんにちは」


「「「っっ!?」」」


突如として聞こえてきた声に3人は驚愕する。

一切の油断も見逃しもなかったはずなのにも関わらず、いつの間にか噴水傍に佇んでいた一人の女性。

旅人風の装いにマントを羽織ったその出で立ち雰囲気は何処か秘書のような物を感じ、強者としての風格は感じられない。




――――だからこそ3人は警戒を強めた。


「……誰かと思えばいつも『アルヴァン』殿の傍に居る秘書の方か」


「もしかして今回は【道化師(クルーン)】が相手になってくださいますの?」


「もしそうだとしたら面倒くさすぎるにゃ……」


今までどんな状況であっても戦闘をしたところを一度も見たことがないことから目の前の女性プレイヤーが相手になるとは考えにくく、であればいつも一緒にいるため今回の戦闘にアルヴァンが出てきている可能性の方が大きいと踏んだ3人は目の前の女性プレイヤーから視線は離さなくとも辺りへの警戒を強めた。


「いえ、今回の3名の中にリーダーは入っていません」


答える必要のない質問ではあったが女性プレイヤーは律儀に返答する。


「ふむ……ではこのタイミングで貴女が姿を現したということは」


ダインは己の勘を信じて喋りながらも【大剣城塞化フェンス・オブ・ソード】を最速で発動させた。

目の前の女性プレイヤーの雰囲気が一瞬にして変貌したからだ。






















「――――流石は【高天ヶ原(たかまがはら)】の司令塔【黒の将軍】『ダイン』。

直線的な攻撃では防がれてしまいますか」


「……恐ろしいほど速いな……!」


一瞬にしてダインの目の前に移動した女性プレイヤーはどこから取り出したのか三叉槍を突き出した体勢で攻撃を繰り出しており、ダインが【大剣城塞化フェンス・オブ・ソード】を発動させていなければ諸共貫かれていたかもしれないと危惧するほどの威力をしていた。

女性プレイヤーはその場からとん、と地面を軽く蹴ると宙返りしながら再び噴水の側へと移動する。


予想以上の強さを持っている事が今のワンアクションで理解したダインたちは顔を顰めた。

未だ姿の見えない2人のプレイヤーを気にしながら戦うのは大変だという言葉では簡単に表すことが出来ないほどに目の前の女性プレイヤーは厄介だからだ。




「――――安心してください。

戦うのは私のみ。

他の2人のプレイヤーは私のサポートしか行いません」


「いやいやいや!

そんな言葉信用できるわけが無いにゃ!」


「……はぁ、そうですか。

それでは心置き無く戦えるようにお見せしておきましょう」


そう言って女性プレイヤーは三叉槍を持たない手で指を鳴らす。

するとその背後に渦のような物が開き、その向こうが見えるようになる。

どうやらそこは【Aurora(アウローラ)】側のスタート位置らしく男女2人のプレイヤーが地面に座り坐禅を組み何やら行っている様子が見えた。


「【Aurora(アウローラ)】の【双星の導師(ツインズ・グルー)】か……」


「えぇ。あなた方ならよくご存知でしょう?

彼らは完全にプレイヤーのサポートをしようとすればその場から動けない事を」


そう言って女性プレイヤーは再び指を鳴らすと背後の渦を消して三叉槍を構える。


「ようやくリーダーからの許可を貰って戦うことが出来ますので愉しませて下さい」


獰猛とは違うただようやく戦うことが出来るという喜びに打ち震えているという表現があっている表情を浮かべた女性プレイヤー。

とはいえ、3対1という状況に少しの気後れもない姿から何かあるのではないかと考えずには居られない3人。

その様子が分かったのか女性プレイヤーははぁ、とため息を吐いた。


そして、しばしの間目を閉じたかと思えばゆっくりと開き口を開く。





















「――――これでも、不満ですか?」





「――――【解放】」






瞬間、ダインたちの考えは一致する。

3対1を挑むだけの理由がやはりあったのだと。




女性プレイヤーの足元から湧き上がる透明感のある水。

弾け飛び散り飛沫をあげる。


その様子はよく知っている。




――――【種族解放】を行った際に起こる出来事。




彼女は【神話族】を獲得したプレイヤーであった。









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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます♪ 1対3、だがしかし、双星の魔導師という 名前持ちのサポート、座禅スタイル、未知の神話族 神話族って何人いるんだろう、八百万の神(*`▽´*)ウヒョヒョ
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