婚活女子は異世界でも婚活する
「じゃ、頑張って売ってきまーす。」
そう言って、私は元気よく、重箱サイズのお弁当20個あまりを不思議カバンに詰め込んでお店を出た。
この重さも個数も完全無視をしている、不思議カバン。
日本にいた頃も欲しかったなぁ。
そんなノスタルジックに浸っていながらも、本日の営業先、町の自警団にサクサクと向かっている私。
お気付きだと思いますが、私ら異世界転移した、日本人女子です。
いやね、びっくりしたね。
まさか電車の到着先が異世界とか。
田舎から都会に出たつもりが、異世界とか意味わからないから。
日本では絶賛婚活中だった私は、婚活パーティーに出る予定だったあの日。
田舎ではなかなか開催されてなかったから。
電車でガタゴトと都会に向かったんですよ。
ちょっと電車の中でうたた寝して、誰かに起こされて、目を覚ましたら、あら不思議。
電車も消え、私は森の中。
訳もわからず、彷徨い歩いて。
通りすがりの親切な夫婦に拾われて、なんとか今まで生きてます。
そりゃね、最初はパニック起こしましたよ。
何の説明も無く。
いきなり、知らない場所にきて。
何の悪夢かと泣き叫んで。
何日寝ても、夢は覚めなくて。
日本には帰れなくて。
もうここは現実かと受け入れるしか無くて。
幸い拾ってくれた人たちは優しくて。
言葉も何故か通じたし。
ずっとここに居てくれて良いって言ってくれたから。
やっと前を向けた今日この頃です。
ここで生きてくって、心が決まってから。
周りをやっと見渡せるようになった。
ぶっちゃけ、ここってなんて言うファンタジー?の世界だった。
大雑把に言うと。
科学がなくって、剣と魔法の世界。
魔物が出て、冒険者が居て。
コマーシャルで観たことある、RPG?的な世界だった。
森でさまよってた私、よく無事だったね?
まぁ、この辺の森は、初級冒険者の町らしいから、人を襲うモンスターはいないらしいけど。
で、私を拾ってくれた人たちは、そんな冒険者たち相手に食堂と宿を経営している。
と、言っても、大分町外れにある為に、あまり繁盛はしてないらしい。
やっぱりギルドに近いところに、客は集まるらしい。
それでも、私1人を養うくらい大丈夫だと、2人は笑う。
だから、私は考えた。
いつまでも2人の好意に甘えられないと。
客を集めて繁盛させて。
ついでに、私も独り立ち…。
ううん、ここでもう、生きていくなら。
婚活しよう。
ここでステキな人を見つけて。
家族を作って。
大事に守っていこう。
幸い、私は日本で婚活するにあたり。
料理の勉強をした。
ついでに調理師免許と栄養士の資格も取った。
仕事は営業をやっていた。
…。
「あの、おかみさん。私ちょっとやってみたいことがあるんですけど。」
※※※※※※
お店の存在を知ってもらう為に。
ギルドや自警団に料理の売り込みをしてみないかと提案した。
ランチのデリバリーサービスだ。
ここの料理は美味しいから、味を知ってもらえば、きてもらえると思うんだよね。
聞いたところによると、他でこんなサービスやってるところ無いっぽいし。
普段は冒険者が素材集めに使っている、不思議カバンにお弁当入れたら簡単にデリバリー出来るし。
ついでに、旦那様になってくれそうな人もデリバリー先で探せるかもだし。
うん、一石二鳥!
と、言うことで。
お弁当箱をご近所の防具屋さんで作成してもらって。
そこに入れる、冷めても美味しい料理をおかみさんと考えて。
ようやく出来た品を、今日。
町の自警団に売り込みに行きます!!
ついでに私も売り込んできます!!!
皆藤 瑠璃 26歳
異世界で婚活はじめます。