捻挫
1985年10月16日、この日、阪神タイガースはリーグ制覇を成し遂げた
道頓堀川にダイブする熱狂的なファンや、 道頓堀川にあったケンタッキーフライドチキンの創始者、カーネルサンダースの人形が、当時の主砲ランディ・バースに似ていたため虎ファンに胴上げされ、そのまま道頓堀川にドボン。行方不明となった。
猛虎打線と呼ばれ、1番の真弓、3番バース、4番掛布、5番岡田の殺人クリーンナップで凄まじい本塁打を叩き出した
今でも伝説と言われている、バース、掛布、岡田のバックスクリーン3連発は阪神の勢いを象徴するかの如く、これでもかと打ちまくった
ただ、優勝したのはいいけど、道頓堀川にダイブしたり、カーネルサンダースの人形まで川に投げ込んだりする大阪の熱狂的ファンには理解出来なかった
そしてこの時期、学校で体育祭があった
僕は騎馬戦で上に乗ったのだが、下の支えてるヤツがコケて僕は足を捻った
激痛でしばらく歩けない
こりゃ骨折かな…と思った
しかし、レントゲンを撮ってもらい骨に異常はなかったのだが、打撲で紫色に腫れ上がり、しばらくは歩行も困難で松葉杖を使って歩いた
僕はやることがないからウチで昼まで寝て、午後は接骨院で治療するという日を過ごした
松葉杖で接骨院まで通い、治療が終ると、接骨院の裏にあったゲーセンで時間を潰した
(困った…暇すぎて何もやることがない)
ふと波多野が顔が浮かんだ
僕は波多野に電話した
「もしもし、小野ですが…」
「あ、小野っちどうしたの?」
「体育祭で足捻挫してしばらく歩けないんだよ。やることないし、そういや波多野どうしてるかなぁと思って電話しただけなんだけど…」
「え~、小野っちケガしたの?大丈夫?」
「足以外は大丈夫なんだけど、あんまり歩くことも出来ないからさ。波多野は今何してんの?」
「さっき学校から帰って来て、テレビ観ながらボケーっとしてる笑」
「何だ、オレと一緒でやることないのか」
「いつも暇じゃないからね!今日は暇だっただけだから」
(何もムキになって言うことないだろうが)
「まぁいいや。もし空いてるならこれから会わない?」
「これから?うーん、まぁ小野っちの暇潰しの相手になってあげるよ」
ウソつけ!自分も暇なクセに
でもまぁ、それをからかったりしていたからそれはそれで面白かったのだが
「じゃあどこで会おうか」
「アタシが手伝いしてるお店は?」
「あー、あの喫茶店?わかった、それじゃまた後で」
僕は電話を切り、松葉杖をつきながら喫茶店へ向かった
(これじゃ出席日数足りねえな…やっぱ辞めるしかないかな)
中退という2文字が現実味を帯びてきた




