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1985年空は蒼かった~イノセントスカイ(改訂版)  作者: sky-high
彼女が出来た
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あの、ビールください…

駅から少し離れた商店街に、中華レストランと書かれていた店に入った


この店は小学生の頃、家族全員で何度か食事に行ったことがある


中華レストランというが、和食も洋食も注文でき、和洋折衷な店として繁盛していた


「いらっしゃいませ~」


ドアを開けると昔と変わらず、小太りなオバサンが店内を切り盛りしていた


僕らはテレビが観れる真ん前の席に座りメニューを見ていた


「ねぇ小野っち…」


波多野が急に声を潜めた


「ん、なんだ、どうしたの?」


入った店が気に入らなかったのかな、僕は女子が好みそうな洒落た店なんてしらないからな…


「ここ中華以外でも何でも作れるし、子供の頃からよく行ってたよ。あんまりこういう店好きじゃない?」


もう少しオシャレな店にすれば良かったのかな、でもこの辺りはそんな店は無かったよなぁと思ってたら


「アタシね、実はその…たまにお酒飲むんだよね。こういうトコで頼んだら店の人におこられるかなぁ…」


はぁ?意外だった

まさか波多野がお酒を飲むだなんて


「いや、ちょっとぐらいなら出してくれるよ」


そう言って僕はオバサンを呼び


「あの、ビールとコップを2つ。後は…餃子にする?」


「うん、餃子大好き」


「じゃあ、餃子を二人前で」


「あれっ!いつの間にかお酒飲むようになったの?」


オバサンは僕がよく家族でこの店に来たことを覚えていたらしい


「あ、すいません!ダメならいいんです。ちょっとだけ飲んでみたくて…」


慌てて波多野がビールの注文を断ろうとしていた


「いいよ、ただし一本だけね!その代わり飲んだら彼女をちゃんとウチまで送ってあげるんだよ、わかった?」


「あ、はい。大丈夫です」


「餃子って焼き餃子と水餃子あるけどどっちにする?」


この店は水餃子もあって、僕も何度か食べたことがある

黒酢をかけて食べるとさっぱりして餡の中にシソの葉が入っているのだ


「えと、じゃ一人前づつで」


「はぁい、ちょっと待っててねぇ」


オバサンはそう言うと冷蔵庫から瓶ビールを取り出し、コップ2つテーブルに置いた


「はい、じゃビールね。餃子はもう少し待っててね」


オバサンはそう言って空いてるテーブルに座りテレビを観ていた


「今年は巨人は全くダメだね!その代わり阪神がスゴいね。このバースってホントよく打つわ」


この店は巨人ファンで、店内にジャイアンツグッズがあちこち置かれていた

メガホンやペナント、選手のサインも飾られていた


この年、阪神タイガースは驚異的は破壊力で相手チームのピッチャーをことごとく打ちまくった


トップバッターの真弓

3番は史上最強の助っ人、三冠王のバース

4番はミスタータイガース、掛布

5番はこの年、バースに次ぐ高打率を誇った岡田


巨人の槙原から放ったバース、掛布、岡田の三連続バックスクリーンのホームランはこの年の勢いを象徴する名場面として語り継がれている


「じゃ、小野っち、はい」


そう言って波多野は僕にビールを注いでくれた


「あ、じゃあオレも」


僕も波多野にビールを注ぐが、波多野のように上手く注げず、泡だらけになった


「泡ばっかだよ、これ~」


波多野が笑いながら自分でビールを注いだ


何せ酒なんて飲んだの中1の時以来だ

まぁあの後バレてえらい怒られたんたが


「はい、じゃあカンパーイ」


「ほい、カンパーイ」


波多野は一気にビールを飲み干した


「あぁー、美味しい!」


満足げな表情で次のビールを注ぐ


「あら、お嬢さん随分ビールの味わかってるねー、じゃあオバサンもう一本だけ許可するよ」


「わぁ、ありがとうございます」


僕もコップの中のビールを飲んだ

苦ぇ…どこが美味いんだろ?


「あらあら、お兄ちゃんはビールはまだかな。それ飲んだらジュースでも頼みなさい」


オバサンに言われ、僕はサイダーを頼んだ


しかしいつの間に波多野は酒を飲むようになったんだ?


「アタシね、実は中2の頃から少し飲んでたんだ。あ、お母さんの前なんかでは絶対に飲まないよ!親戚とか集まると、アタシにビール飲ませようとするオジサンがいて、初めて飲んだらなんか美味しくってね。それからたまに飲むようになったの」


はぁ、意外にも波多野がビールとはねぇ


「はい、焼き餃子と水餃子おまちどうさま。水餃子はこの酢をかけて食べてね」


オバサンが餃子をテーブルに並べた


「アタシ水餃子って初めてなんだけど」


「中の餃子を取り皿に移してこの黒酢をかけて食べるんだよ」


僕は波多野に水餃子の食べ方を教えた


恐る恐る波多野が水餃子を食べた

「あっ、あっついけど美味しい!」


どうやら水餃子が気に入ったみたいだ


「これビールとすごく合う、美味しい!」


「焼き餃子も美味いから食べてみなよ」


「うん、アタシこの店大好きになっちゃった」


ビールを飲んだせいか、陽気に波多野がビールを飲んでいた


「お嬢さん、あんまり飲み過ぎちゃダメだよ。今日はこれでおしまいね。次はオムライス作ってあげようか?」


オバサンもちょくちょく僕らの会話に入ってくる


テレビじゃ巨人が負けてるせいか、僕らに色々と話しかけてくる


「はい、オムライス久しぶりに食べたいです」


「じゃオムライス今から作るから待ってな」


オバサンは厨房に入っていった


端からみたらかなりお節介なオバサンだが、当時はまだこういう感じのオバサンは近所によくいた


「ねぇ小野っち、またここ来ようよ」


波多野は終始ご機嫌だった


っていうか、ハナっから酒飲むつもりでいたのかな?

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