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1985年空は蒼かった~イノセントスカイ(改訂版)  作者: sky-high
彼女が出来た
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あの、夕飯食べに行こうよ

僕らはその後、メリーゴーランドに乗り、しきりに楽しんだ後、遊園地を後にした


帰る頃はぎこちなかった手の繋ぎ方もスムーズに握れた


手の握りかたも慣れ、端から見てもカップルというような感じで地下鉄の駅の入り口階段を下りて、タイミング良く電車に乗った


「あそこ空いてるから座んなよ、今日疲れたろ?乗り換えの時起こすから」


そう言って波多野を座らせようとした

しかし

「いいよ、座るなら小野っちが座ってよ。アタシ立ってるから大丈夫」


「いいって、今日早く起きて弁当作ったんだろ?ほら早く座らないと誰かに取られちゃうよ」


そう言って僕は波多野を座らせ、僕は波多野の前で吊革に捕まり立っていた


「ありがとうね。じゃ少し寝るけどちゃんと起こしてね」


そう言って波多野は下を向き、しばらくして首をコクコクとさせ、眠りについた


今日はいろんな事があったな…

まさかファーストキスまでしてしまうとは…


観覧車の中の事を思いだし、思わずニヤけてしまう


そこで意識は途切れた…


「っち、小野っち起きて、アタシ達また寝過ごしたみたい…」


ガバッと顔を上げるとホームには3つ先の駅になっていた


僕は吊革に捕まり、立ったまま寝ていた


「やべっ早く降りないと!」


しかしドアは閉まり、また次の駅へと走っていった


「小野っち、立ったまま寝るなんて随分器用な事できるんだね(笑)」


確かに通学途中で吊革に捕まったまま寝るサラリーマンの場面を何度も見るが、まさか自分がそうなるとは


波多野は立ったまま寝ていた僕の顔がおかしくて笑いを堪えていた


やがて次の駅へ到着すると僕らはドアを出で、反対側のホームへ向かった



「前も寝過ごしてこんな事あったよね」


波多野は笑いながらエスカレーターに乗り込む


あぁ確か波多野と出掛けた時だ、あの時も僕が寝過ごしてUターンしたんだっけ


みっともねえ!波多野を起こすつもりが逆に起こされるとは…


エスカレーターで最上部まで上がり、僕らはまた手を繋ぎ反対側のホームに向かう下りのエスカレーターに乗る


「でも今日はしようがないよね。二人とも疲れたからね。小野っち無理してジェットコースターなんかに乗ったから疲れたでしょ?次は小野っちが座ってよ」


僕も疲れきった顔をしていたのだろう、波多野は気を使ってくれている


「ん、大丈夫。さっき寝たし、しかも立ったまま」


「でも吊革に捕まって寝るっておかしいね、アハハハハ!」


どうやら波多野のツボに入ったらしく、ずっと笑っていた


何せ学校行くのに満員電車に乗るからな

吊革に捕まって寝てるサラリーマンなんてやっぱり疲れたのだろうか?


そうこうしているうちに電車はホームに到着した


先程とは違って反対方向に行く電車だから乗客も少なく、僕と波多野が座れる場所はかなりあった


「小野っちここ座ろうよ」


波多野が先に座り、隣の空いている席をバンバンと叩きながら僕に座れと促した


波多野の隣に座った

なんかいい匂いがする


「あ、なんかいい匂い。何つけたの?」


波多野はバッグから当時人気のあった【Ban16】というデオドラントスプレーを取り出した


「暑かったでしょ?だから帰りにまたシュッシュッてスプレーしたの」


波多野の首筋から微香性の香りがした

その優しい香りに包まれ、僕はまた居眠りをした


「小野っち、次で降りるよ」


波多野の声で目が覚めた


っ!僕は波多野の肩にもたれ掛かって寝たいたのだ

おまけにヨダレを垂らしていた!


「あー、うん」


急いで肩に置いた頭を起こし、姿勢良く駅につくまで待っていた


そして扉が開き、僕らは手を繋いだまま地下鉄を降りた


「小野っちやっぱオモシロイ~、急にシャキッとなるんだもん(笑)」


そんなに変だったのか?僕は波多野の肩にもたれ掛かって寝ていたから恥ずかしくなっていた

しかもヨダレをたらしていたとは!あぁ~情けない!


「あぁ、ゴメン。寝てばっかで」


情けない姿で寝ていたんだからな…

あぁみっともねえ!


「小野っちアタシの肩寝やすかった?気持ち良く寝てるから起こしたら悪いなぁと思ってギリギリまで寝かせたんだよ」


(なんかみっともねぇな、オレ)


そう思ったらかなり恥ずかしくなってきた


そして最寄りの駅に着き改札を抜けた


あぁ今日はもうこれでウチに帰るのか、まだちょっとだけいたいなぁ


「小野っち、今日はありがとう。また行こうね」


「うん」


そう言って僕らは反対方向に足を向けた


「あ、波多野…」


後ろから波多野を呼び止めた


「なぁに?」


くるっとこっちを向いた波多野は笑顔で聞いてきた


「あ、あの、もし良かったらだけど、これから飯食いに行かない?無理ならいいんだけど…」


外はすっかり陽が落ちて、日中の暑さはないが、夏独特の湿気のある熱帯夜だ


「う~ん、帰ってもご飯用意してるかなぁ」


少し考えてから


「ちょっとウチに連絡してくるね」

そう言って駅の脇にある電話ボックスに入った


僕は外で真っ暗になった空を仰いだ

(明日も暑いんだろうな…)


そんな事を思いながら


電話ボックスから波多野が出て来て開口一番


「今お母さんにご飯食べてくるからって言ったから、食べに行こう」


声を弾ませながら僕の手を握り、商店街にある中華レストランに入った

何かこのままバイバイするのはちょっと物足りないというか、今日1日波多野に世話になりっ離しだったから、せめて夕飯でもご馳走しようと、僕なりのお礼のつもりでもあった

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