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編入試験受けてみれば?

「でも仮にそうだとしても、向こうはオレの事を何とも思ってないはずだよ」


波多野は僕の事をどう思っていたのだろうか?


「うーん、それはわかんないよ。ただ端から見ると、小野っちと慶子は仲良くしてたし、そう思ってた子も多かったんじゃないかなぁ」


そうなのだろうか…いや、気持ちが揺れ動いてしまう!さっき思い出として閉まっておくんだと決めたんだ


杉下がカップを手に持ち、窓に目をやった


(会話が続かねえ…)


言われてみれば、僕の隣の席は目の前に居る杉下だが、僕は杉下よりも、前の席に座っていた波多野とよく話をしていたケースが多かった


宿題のノートを貸してくれたのも波多野だし、シャーペンの芯をいつも貰ってたのも波多野だ

おまけに給食のトマトまで貰って、波多野に世話になりっぱなしだ


杉下とはそれなり会話をしていたが、波多野と比べると挨拶程度の軽い会話しか思い浮かばなかった


僕は天井を見上げ、ぼんやりとして杉下は窓の外を見ていた


向かい合った席で何を話していいのやらわからずに、僕らは違う方向を見ていた


「小野っち」


「ん?」


「ボタンありがとう、来月からは駅で会うようになるよね」


そうか、高校生になれば通学の途中でしか顔を合わす事は無いだろう


「そうか、そうなるよな…」


となると、波多野とも会うことはあまり無いのか…


「ていうかさ、高校に馴染めるかな、オレ」


「ん?何で?」


「んー、だって電車通学で一時間近くもかかって、ガラの悪いヤツラと一緒の教室で授業受けなきゃなんないんだぜ、イヤになるよ」


「アタシが行く高校は女子高だけど、周りはそういう人は居なかったなぁ」


「だって杉下が行く高校は進学校だろ?オレの行く高校なんて偏差値の低いヤツラばっかなんだぜ、落ちこぼれの集まりみたいな学校だもん、何であんな高校受験したんだろ」


「(笑)だって小野っちが自分で決めた高校なんでしょ?何でそんな高校に決めたの~?小野っち変だよーっ(笑)」


杉下のツボに入ったのか、アハハハハハと笑っていた


「そうなんだけどさ、他に行くとこ決めてなくて、なるべく金かからない私立校っていったらそこぐらいしか無かったからさ」


「編入してみたら?」


「編入?」


「そう、途中から他の高校に行けるように編入試験受けて合格すればいいじゃない」


「はぁ、そんなのあるんだ」


「知らなかったの?」


「うん」


「(笑)小野っちらしいなぁ、まずは今の高校に入学して1学期の終わりにでも編入試験受けてみたら?」


「そうか、そういう手があったか」


「その代わり編入試験て学力が良くないとダメなんだからね」


そうなるよな


編入試験か…


て事は、S学院に入学して1学期だけ通って、行きたい高校の編入試験に合格すりゃいいのか!


よし、そうしよう!


杉下のアドバイスが無ければ、掃き溜めに埋もれたままになるところだった


んじゃ落ちたあのF高にリベンジできるチャンスじゃん?


そうかそうか、良いこと聞いたぞ、編入か…


…てことはまた勉強しなきゃなんないんだよな?



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