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煙と一緒でモヤモヤっと

この日僕は、上野で井上と藤田というクラスメートと共にベストキッドという映画を観た


いじめられっこの高校生が、日系の老人に空手を教わり、強くなっていくというストーリーの内容だった


空手の型を覚える為に車のワックスがけや窓の拭き掃除をやらされ、それが防御の型になっているという、ヘンテコなトレーニングだが、僕らはそのシーンが気に入り、よく真似をしていた、あんなんで強くなるのかよ~って、笑ってたな…


「後、1週間で卒業だな。何かあっという間だったような気がするな」


藤田はそう言うが、僕はそうは思わなかった


「ウソー、長く感じたよオレは」


ようやく卒業か、という感じだった


「でも、卒業したらこうやって会う機会はなくなるだろうな」


まぁそういう事になるだろうね、何せ新たな出会いが待ってるし、友人も増えてくるから、いつの間にか会わなくなるもんだよね

やっぱり皆、卒業となると少しは寂しさみたいな感じになるのかな?


この時の僕はどう感じたのだろうか?実はよく覚えてない…


とはいえ、高校生活に期待が持てるか?と言われたら全く期待は無かった


4月からはむさ苦しいヤローどもに囲まれ授業を受けなきゃならないと考えただけでウンザリだったしね


僕らは映画を観終わった後に、映画館の近くにある喫茶店に入った


おもむろにポケットからタバコを取り出し、一服する


「小野っち、ここで吸ったらマズくないか?」


井上が止めようとするが、僕はお構いなしに煙を吐き出した


「んー、大丈夫だよ、オレらの他にも吸ってるヤツいるじゃん」


店内を見渡すと、明らかに僕らと同年代の男女が紫煙を燻らせていた


「フジも吸うだろ?」


そう言って僕は藤田にタバコを差し出した


「あ、サンキュ。ライターはいいよ、持ってるから」


結局3人とも店内でプカプカとタバコを吸っていた

何度も言うようだけど、この頃はこういうのが許されてた

店員も注意しなかったしね

それとも、変に注意して何か言われるとか思って、見て見ぬふりしてたのか、よくわからないけど


「フジは何処の高校行くんだっけ?」


そういえば僕は藤田と井上は何処の高校に行くか聞いてなかった


「オレA高校」


「あの学校ってガラ悪くねえか?」


「何だかタチの悪そうなヤツラいっぱい居たな。しょーがねーよ、男子校だしな」



「井上は何処の高校?」


「オレH工業、オレんとこも工業高校だから男子校みたいなもんだよ」


「何だか高校に行ったら男ばっかでイヤになってくるな」


「なぁ、何で高校は共学じゃないんだよ、くそつまんなそうだな」


皆考えてる事は同じだ、共学の高校に進んだのは、都立校の普通科に行ったヤツだけじゃないかな


そんな会話をしながら、灰皿はあっという間に吸い殻だらけになっていった


タバコの煙と一緒でモヤモヤ~っとしていた




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