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もういいや、この学校で

「小野っち、高校決めた?」


僕の隣に座っている杉下って女が聞いてきた


「いや、まだ。ウチ、オヤジが都立に行け!ってウルセーんだよ、私立だと金かかるからって」


「で、何処の高校にすんの?」


「んー、都立は大体決まったんだけど、滑り止めの私立が何処にしようかわからなくってさぁ。何処がいいかな?」


「アタシに聞いても知らないよ(笑)」


「出来れば電車で通学したいな」


「えぇ~、朝なんて満員電車じゃん!」


「何か電車で通学してみたくて」


教室でこんなやり取りをしていた記憶はある

前の席の波多野は僕らの会話を聞いていたらしく


「小野っち、アタシと同じ学校にする?」


と後ろを振り返り、僕に聞いた


「一緒って、何処の高校だよ?」


「アタシはF高校に受験するよ」


F高校か…僕の偏差値なら大丈夫っぽいかなぁ


波多野とまた同じ高校になるならそこにしよう!

こんな邪な考えで僕は第一志望校をF高校に決めた


となると、問題は滑り止めの高校だ…


僕は都内の私立校で入学金がなるべく安い学校を探した


(なんだよ、全部男子校じゃないか…)


共学の私立校はあまり無く、あっても偏差値がかなり高いところだったり、入学金が無茶苦茶高い高校しか無かった、当時はそんな感じだったし…


F高校一本に絞って勉強をすれば良かったのだが、落ちた事を考えると、滑り止めの高校も受けた方がいい


僕はその夜、オヤジに入学金に負担がかからないような学校を選ぶから滑り止めの高校を受けさせて欲しいと頼んだ


「そうならないようにさっさと勉強しろ!」


オヤジは渋々承諾してくれたけど…


と言っても、まだ何処の高校にするかは決めてなかった


入学金が安く、電車で通える高校

今思えば何故、電車通学が必要だったのだろうか…


翌朝、僕は一緒に登校する高橋に、何処の高校を受けるのか聞いてみた


「オレはST学園にしたよ」


「ST学園?こっからだとかなり距離あるんじゃないか?」


ST学園は都内で有数の歓楽街の場所にあるじゃん!そこ良い!


「オレ、そこに単願で入るから」


高橋はST学園だけ受験する単願で入る予定だった

ただその高校は特種な学校で、ある科目を専門としていた珍しい高校だった


単願だと、偏差値が多少低くても合格出来るからな


併願で受けても僕の学力なら大丈夫そうだし

でも、オレはその学校の科目を習おうとは思わなかった


何故なら全く興味が無いからだ


「そうか、じゃあ他の学校にしようかな」


僕はその特種な科目専門の高校なんかに行っても意味が無いと思い、何処にしようか頭の中で考えていたが、全く思い付かない。


「だったら兄弟校として、S学院があるからそこに受ければいいじゃん?それに早く入学願書もらいに行かないと」


兄弟校?何の事やら分からない僕はちんぷんかんぷんで、高橋に詳しく聞いた


どうやら同じ校舎は道を隔てて向かい側に各校舎があって、グランドは同じという、何だか僕にとっては一緒にしてしまえばいいのに、って感じの兄弟校らしい。おまけに男子校だ…


「S学院てのは普通科?」


僕はその学校の名前すら聞いた事も無いし、同じ都内とはいえ、ここから電車で一時間程かかる繁華街だ


「普通科と工業科と商業科があるみたいだけど、もし願書もらいに行くなら一緒に行くよ」


そんなやり取りで、僕はS学院を滑り止めで受ける事に決めた、ホントどうでもいい理由で決めて後で後悔するんだけど…



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