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第六話   再会  Side Kuon

まず驚いて、次が安堵、その次に懐かしさ、微かな不安と後悔、それと近くに来たのに更に遠くに感じたな。・・・お前の隣に帰ってくるために血にまみれた俺と案の定、過去の俺に囚われてるお前、一体どちらが俺たちを遠ざけたんだろうか?












Side Kuon



まずは担任に会わせるということで一昨日に訪れた莉里の悪趣味な学園長室に来るように言われて来たのだが、


「・・・逢引?」


「この状況を見て現実を拒否したくなる気持ちは分かるが、とりあえずそうじゃない。」


来るときから少し呼び出された時間が早いから予想はしていたが、かれこれ一時間近く俺の耳と尻尾を俺の膝の上でご堪能されるとは・・・。


俺がふざけた椅子に座りその膝の上に向かい合うように座りながら莉里が俺を弄ってる光景を見て入室して数分停止した後、口を開いた女性にとりあえず否定の言葉を返す。


「って、が、学園長!?何をしていらっしゃるんですか!?」


「ふにゅ〜。」


女性が慌てて叫ぶも本人は尻尾を撫でて恍惚としている。


ため息をつきながら莉里の首根っこを掴み片手で放り投げると、彼女は何の苦もなく宙返りをしてスカートの裾を押さえながら綺麗に着地する。


「いきなり酷いじゃないか。」


「それくらいで怪我をするたまでもないだろ?それと、待ち人が着たぞ。」


事実、昨日はもっと荒く振り払ってもケロッとしていたしな。


耳と尻尾をしまいながら立ち上がり、入り口の近くに立っている女性を指差す。


「チッ・・・。早かったじゃないか、紗羅さら。」


「舌打ちっ!?え、ええ。と言っても、言われた時間の五分前ですが。」


「む?もうそんな時間か。・・・気を利かせればいいものを気の利かない奴だ。」


「理不尽な罵倒!?あ、あなたが呼び出したんじゃないですか!」


「気にするな、本気だから。」


「冗談じゃないんですか!?」


・・・苦労人か。何処か親近感を感じるな。


紫がかった髪は短めで中性的な容姿にスーツをキッチリと着こなしていることからキャリアウーマンっぽい印象だったのだが、今のやりとりで若干イメージが崩れ、楽しそうに女性をおちょくる莉里とそれに一々反応を返す女性を見て、俺とあのクソ上司が重なり女性の気苦労が想像できて苦労をかけないようにするかと思った。


「で、紹介はしてくれないのか?」


「彼女はすすき紗羅さら。私の有能な右腕だ。」


「有能な右腕という名の雑用処理、主にあんたの世話係じゃないだろうな?」


「で、こっちが銀牙久遠。今日からお前のクラスに入れる。」


見事にスルーしやがった。


「私のクラスに、ですか?半妖の方のようですから、それなら私じゃなく氷雨先生のクラスに入れたほうがよろしいのでは?」


「私はどっちでもいいんだが、絢香がこいつを気に入ったようでな。」


「魅宗さんがですか?」


「そうなのか?」


気に入られるような行動をとった覚えもないので俺も莉里に問いかける。


「くっくっく、まぁ、そういうことだ。」


「そういうことでしたらお引き受けします。」


紗羅が俺に向き直る


「改めまして、芒紗羅です。あなたのクラス、1−Fの担任で理論を主に教えています。」


「銀牙久遠だ。敬語が必要なら口調は改めるが、どうすればいい?」


「あなたの話しやすいようにしてください。呼び方も好きなようにどうぞ。」


「そうか。で、どこまで知ってる?」


「どこまで?」


やはり、というか何も知らせてなかったのか。こいつといいあのクソ上司といい部下にしっかりと情報をよこせ。


「莉里。」


「安心しろ。紗羅は話の分かるやつだ。」


ため息をついて、紗羅を見据える。


「改めて、警邏『黒組』が『歩』、銀牙久遠だ。」


名乗ったと同時に紗羅の眼が鋭くなる。


「警邏・・・。確か、『裏平安京』の戦闘機構、『黒組』は執行部隊でしたか。」


「昇進したばかりだがな。」


いつでも動けるように体を整えながら紗羅と睨みあう。


しばらく睨みあうと突然、紗羅が力を抜く。


「学園長が信用しているようですし、悪い人ではないみたいですね。」


「どうかな?俺は自分が悪人だとは思わないが、善人だとも思ってないぞ?」


言いながら俺も力を抜く。


「そのときはそのときです。」


「そうか。」


極自然な動作で紗羅が右手の人差し指を僅かに動かすと、俺は苦笑しながら右手を顔の前にまで持ち上げて、いきなり飛ばされた炎を握りつぶす。


「じゃあ、これは何のつもりだ?」


握りつぶした炎のせいで煙が指の間から漏れるが、特に気にもせずにそれを放った紗羅に問いかける。


「いえ、どれほどの実力なのかと思いまして。」


「殺気もなしに放つわりには少し威力が強いんじゃないか?」


「防ぐと思いましたから。握りつぶすとは思いませんでしたが。」


「打たれ強い体質なものでな。」


右手を広げて掌を相手に見せる。


「・・・高速再生リバース、ですか。」


「それと似たようなものだ。持ち前の丈夫さと合わさってそれなりに耐久力はある。」


僅かにあった火傷もすぐに塞がり、すでに何の問題もない。


「しかし、人狼ライカンスロープ固有特性インヒューレント・クオリティーにそのような特性クオリティーはなかったはずですが?特異特性イレギュラー・クオリティーですか?」


「その辺は色々事情があるんだ。それに俺は人狼ライカンスロープとは何の縁もない。」


「縁がない?」


紗羅が訝しげに俺を見るが、必要ないことをこれ以上喋るつもりはないので沈黙を保つ。莉里にも視線を向けたが、そもそも彼女にも話してないので知っているはずがない。


「そんなに気にしなくてもそいつが何であろうと問題はない。人狼ライカンスロープだろうと新種だろうとそいつはそいつだ。どうしても気になると言うなら調べるか、本人が話すのを待てばいい。」


「・・・そうですね。」


とりあえずこの場での追求は止めることにしたらしい。


「それでは時間も時間ですし、そろそろ行きましょうか。」


「そうだな。」


「ま、適当に頑張って来い。」


莉里に送り出されて俺たちは部屋を後にした。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「では、呼んだら入ってきてください。」


「ああ。」


紗羅が先に教室に入っていくと、騒いでいた室内が途端に静かになっていく。


それから紗羅が何点か連絡事項をした後に


「それと今日から編入生がこのクラスに加わります。一身上の都合で入学が遅れましたが仲良くやってください。」


やはり編入生と聞くと若干クラスがどよめき始めた。何時の時代も編入生はいい話題になるらしい。


「それではどうぞ。」


促されてドアを開けて教室に入る。

多くの視線を感じながらもそれらを無視して、紗羅の隣に行くとチョークを渡されたので黒板に自分の名前を書き、生徒たちに振り返る。


「銀牙久遠だ。一身上の都合でこんな時期に編入という形になったがよろしく頼む。」


軽く頭を下げると紗羅が拍手を始めて、そこから生徒にも伝播して迎え入れられた。


顔を上げてクラスを見渡すと、クラスの後ろのほうに絢香の姿を確認して目で挨拶をすると彼女も気づいたのか手を小さく振ってくれた。


と、同時にその隣にいる懐かしい面影を残す人物を見つけた。


何の因果か同じクラスらしい。探す手間が省けたのはよかったが少々気まずい。


「席は魅宗さんの隣です。分かりますか?」


「大丈夫だ。」


生徒たちの間を通り絢香の前にまで足を進めて足を止める。


「こんにちは。久遠さん。」


「ああ。これからよろしくな、絢香。」


笑顔で挨拶した絢香に返事を返すと、俺と彼女の関係を探るような周りのざわめきが聞こえた。


そして、視線をその隣に移すと目を大きく見開いて硬直している幼馴染の姿を確認して出来る限り穏やかな声で


「久しぶりだな、律。いや、りっちゃんのほうがいいか?」


その声に律は更に目を大きく見開くと震える声を搾り出した。


「くー、ちゃん?」


「ああ。・・・その、悪かった。色々あって連絡がつけられなくてな。」


罰が悪くなり若干視線を逸らしていると、律の両目から一気に涙が溢れてきた。


「くーちゃん!!」


「っと。」


椅子を蹴り飛ばして抱きついてきた律を受け止めると、律は俺の背中に両手を回して力一杯抱きついて俺の胸に顔を埋める。


「いるん、だよね?ここに、ちゃんと、いるんだよね?」


涙声で俺の胸に顔を埋めたまま問いかけてきた。


「ああ。ただいま、律。」


優しく宥めながら声をかけると堰を切ったように泣き始める。


俺も律の背に手を回してあやしていると


「銀牙君?」


「悪い。もうちょっとこいつを泣かせてやってくれないか?こいつには色々と重いものを背負わせちまったからすっきりするまで好きなようにさせてやりたいんだ。」


紗羅が状況の説明を求めてきたが、とりあえずは心配させてしまった幼馴染を優先させてもらうように頼む。


「・・・わかりました。彼女とも知り合いのようなので席は彼女と魅宗さんの間にしますが、いいですか?」


その様子を見て俺と律が浅からぬ仲であることを悟った紗羅が絢香と俺に確認をとる。


「ええ。大丈夫です。」


「むしろ、そうしてくれると助かる。」


それから授業が始まっても律は泣いたままで、周囲から律との関係をあれやこれやと推測されて生暖かい視線で見られたり、嫉妬交じりの視線で見られたりして律が我に返ったときには顔を真っ赤にしていた。


昼休みになり、俺の姿を確認した悠がそれ以上にというか、とんでもないくらい大泣きして周りからの視線が更に厳しくなったりして、あっという間に俺の顔と名前が女泣かしという不名誉な言葉とセットで知れ渡ってしまった。



試行錯誤した結果、下手に多く表現しようとするとうまく書けなくなってしまい結局、肝心の再開のシーンがかなり短めになってしましました。

自分の文章力の無さを改めて痛感しましたが、これからもこの作品を頑張って作成していきたいと思います。

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