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第四話  学園長と・・・?  Side Kuon

夏休みに入りましたが、更新のペースは今までと変わらないと思います。


善も悪も関係ない。俺がすることはただ一つ・・・。そのためなら道化ピエロになって誰かに踊らせられることもいとわない。











Side Kuon




人目を避けて道に迷った俺が言うのも難だが、


「あんたも相当まぬけだよな。」


「い、言わないで下さい。」


顔を赤くして動揺する絢香は現地人であるし、道案内をあっさり受け入れてくれたもんだからすぐに目的地まで着くと思っていた。


「普通、自分も道が分かってないのに道案内引き受けるか?」


「し、仕方ないじゃないですか。そもそも街を見るために出歩いていたわけですし、少し考え事していたらあんなところにいてたんですから・・・。」


「で、そんなところにいるにも関わらず俺の頼みを引き受けて歩き出すまでそのことに気づかなかった、と。」


「うぅ。いいじゃないですか、こうして知ってる道に出たんですから。」


「そうだな。そのおかげでまた人目に晒されて、さっきから視線を感じるのもたいしたことじゃないな。」


「うぅぅ・・・。」


俺が皮肉を言うと彼女は申し訳無さそうに顔を伏せる。それと同時に周りの視線がより一層強くなる。


あ〜、傍目から見て俺が彼女をいじめてるように見えるのか?控えめに見ても絢香が美人だから余計に俺が悪者扱いかよ・・・。


「まぁ、とりあえずは目的地に辿り着けりゃいい。多少のことは気にすんな。」


「あ・・・。」


俺が絢香の頭を撫でると彼女の足が止まった。


「どうかしたか?」


「あの、その、あ、頭を・・・。」


「ん?」


頭?ってことは俺が撫でたことが原因で・・・っと、そうか。


「悪い。癖でついな。」


「あ・・・、いえ。」


俺が手を離すとどこか名残惜しそうな声を出して再び歩き始める。


「癖、というといつもさっきみたいなことを?」


「まぁな。子守をしてた時期があってな。不機嫌になったときはたいてい頭を撫でてやると随分ご機嫌になるもんだからよくやってたら何時の間にか癖になっちまった。子守が終わってからは直そうと思ったんだが、どうも周りは直してほしくないらしくてな。結局、そのまま放置したんだ。」


「子守ですか?」


「ああ。色々とやってたんだよ。」


それこそしょうもない手伝いから殺し、殲滅任務、暗殺。手広くやったもんだ。そのせいで無駄な技能、役に立つ技能、殺しの技能、色々と身についちまった。


「久遠さん?」


「ん・・・、悪い。」


辛気臭い考えはするもんじゃないな。すぐに表に出ちまう。


「まぁ、色々やってたんだが、一段落したからやりたいことをやろうと思ってな。」


「やりたいことというのは、これから行く先に関係あるんですか?」


「大有りだ。学生やるんだったら最高責任者に話をつけないとな。」


それに学園の理事長がどれだけの実力か直に確かめたいしな。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜









「・・・一言言わせてもらっていいか?」


「何だ?」


目の前に肘を机に立てて手の上に顎を乗せて座っている女がこの学園の理事長であるらしいのだが、用件を後回しにしても言わせてもらいたいことが一つ。


「ここは学園長室だよな?」


「部屋の前にかけられたプレートを見なかったのか?」


「じゃあ、この趣味全開の部屋は何だ!?」


ファンシーな壁紙に部屋中に置かれた部屋の半分以上を埋め尽くすぬいぐるみの数々、天蓋尽きのベッド、唯一浮いているのが机のみで今、彼女が座っている椅子さえも何かのキャラクターをかたどっているらしいふざけた椅子で、本人自身も真っ黒なゴスロリに身を包んでいる。


「趣味だが?」


「くっ・・・。上層部の思考がぶっとんでるのはあっちでもこっちでも一緒ってわけか。」


何を当然のことを、という感じで心底不思議そうに尋ねてくる女に俺はまともな人間を期待していた数分前の自分が情けなくなった。


「ああいう人ですから諦めてください。」


絢香も何処か達観したかのような声で俺に話しかけてきた。


「ん?絢香はあいつと知り合いなのか?」


「魅宗は私が直接迎えに行ったからな。それからも諸事情で一般生徒よりは親しい仲だ。」


俺が絢香に尋ねたのだが、何故か女が答えた。


「そんなことより見ず知らずの人間が私に何の用だ?」


「簡単に言えば、編入させて欲しい。それも一年に。」


女に言われて、用件を思い出した俺はその旨を伝えると女は怪訝そうにただでさえつりあがっている眼を更に吊り上げた。


「こんな中途半端な時期にか?私は構わないが、ここに入るにはそれなりの資格が必要だぞ?試験の結果に納得いかなかったというならお引取り願うが?」


「試験は受けられなかっただけだ。それに俺はそちら側にどっぷりと浸かってる身だ。」


「ほう?」


「自己紹介をしてなかったな。俺は警邏『黒組』が『歩』、銀河久遠だ。」


俺の紹介と同時に女から威圧感が生じる。

・・・腐っても最高責任者か。

女が絢香に目を一度向けた後、再び俺に先程より厳しい視線を向ける。


「最下級の『歩』といえ、『黒組』の人間、いや、妖魔がどういう了見だ?」


「別に特に意図はない。俺の個人的な事情で頼んでいるに過ぎない。」


俺が答えると同時に僅かな違和感を覚える。


「・・・『精神感応テレパス』か。なるほど、それで理事長と個人的に知り合いなのか。」


俺が視線を隣の絢香に向けながらそう言うと彼女は怯えるように震える。


精神感応テレパス』の力を持つ人間はそうじて精神的に脆い人間が多い。その力の特性ゆえに人の汚い面を否応なしに見てしまうため、その人間には早急なケアが必要になる。


「あまり驚いていないようだな?」


「知り合いに心を読む奴が何人かいるからな。しかも、そのうちの一人が上司な上にイタズラ好きで日々読まれてた身としてはただの『精神感応テレパス』ごときで一々騒ぐことでもない。」


何も心の全てを簡単に読めるわけではない。無防備な人間でも訓練して深く読もうとしなければ深いところまで読むことは出来ないし、訓練したとしても対処法を知っていれば相当力が強くない限り心を読まれることはない。


今の感じだと表層意識を読む程度くらいのものだろう。毎日のように深層心理まで読まれていた身としては痛くも痒くもない。


「それに驚く云々で言うなら『精神感応テレパス』より妖魔のほうが驚くだろ?」


「それもそうだな。」


「っつうことだから、あんたが俺を避けるようなことはあっても俺があんたに嫌悪感を覚えるようなことはないから安心しな。」


「さ、避けるなんてそんなことしないですよっ!」


突然叫んだ絢香に目を丸くする女と俺に気づき、彼女は叫んだことを恥ずかしがるように顔を背けた。


「くっくっく、そうかそうか。中々いい傾向だな。」


「何がだ?」


「いや、何でもない。こっちの話だ。」


女が愉快そうに笑うと先程より若干警戒心を下げて俺に視線を向ける。


「それで、個人的な事情ということだが?」


「本当に個人的なことだ。あちら側の連中は一切関係ない。というか、基本的にあいつらが他に関わるようなことはないのはあんたも知ってるだろ?・・・そちら側に迷惑をかけるつもりはない。もし、こちら側の関係で問題が起こったとしても俺が鎮圧する。」


「しかし、妖魔を入れるとなると他の教師陣から反対意見が出るぞ?」


「それも問題ない。俺は半妖だ。学園は半妖も受け入れているという話を聞いているが?」


「え?そうなんですか?」


「・・・さらっと学園の秘匿情報を言わないで欲しい。確かに半妖を受け入れているが、その事実を知っているのは一部に過ぎない。迂闊な発現は謹んで欲しいな。」


「あちら側では有名な話なんだがな。」


自分の手元に子供を置けない妖怪が自分の子供がどうしているのか気になって何度かこっそり見に行って、帰ってきてその話を周りの親しい仲間に話すということがよくあり、半妖を学園が受け入れているというのはほとんどの妖怪が知っている。


「ついでに言えば、あっちでは実戦ばかりだったからこちらで少しはまともに勉強したいというのもある。」


俺が戻るために仕事をしたいと言った直後からすぐに実戦投入されたから俺の力は我流であり荒い部分が多々あるのも事実だ。


「それで?受け入れてくれるか?」


「・・・『歩』とはいえ、実戦経験者、それも『黒組』のものがいるなら周りにもいい刺激になるか。」


「じゃあ!」


何故か絢香が嬉しそうにする。


「編入を受け入れよう。・・・ああ、ついでに絢香のクラスにでも入れるか。」


「助かる。」


「いや、こっちもこっちで考えがあるから気にするな。な、絢香。」


「ひょえ!?」


俺が気を遣ってくれたのだろう女に礼を言うと、女が絢香に話を振り、何故か奇声を発して顔を赤くするのを不思議に思いながら見ていると


「そういえば君は何の半妖なんだ?」


「ん?ああ、俺はこれだ。」


魔の気配を操作して分かりやすいようにそれを露出する。


「「・・・。」」


「どうかしたか?」


俺を見て硬直する二人。


何かおかしかったか?あっちでは意外と好評だったんだがな、この俺の耳と尻尾。やっぱり人間の価値観と妖怪の価値観ではズレがあるのか?


「それ、は・・・?」


女が震える声で聞いてくる。

声が震えるほど似合ってないか?


「耳と尻尾だが?狼のだから、犬の耳と尻尾に見えるだろ?」


顔を伏せた女の全身が震え、そんなにまずかったかと思い耳と尻尾をしまおうとしたとき女が顔を上げて


「イ・ヌ・ミ・ミ〜〜〜!!」


「はぁ!?って、おいっ!!」


いきなり叫び声をあげて飛び掛ってきた女を一応は受け止めると


「ついに!ついに夢にまでみたイヌミミが私の目の前に!!しかも尻尾付き!!ああ!!やっぱり本物は手触りが違う!!」


女は無遠慮に俺の耳と尻尾を存分に触りまくり堪能する。俺は絢香に助けを求める。


「え、えっと、莉里りりさんは無類のイヌミミ好きみたいで、その、今までも本物のイヌミミを探してたみたいなんですけど、今まで会う機会に恵まれなかったらしくて。」


「はぁ〜〜〜。」


「・・・で、目の前に現れた本物を存分に堪能していると。」


よく見れば部屋のぬいぐるみも犬系が多いような気がする。

ため息をついて尻尾に頬ずりしてうっとりしている女を引き剥がす。


「いい加減にしろ。」


「もう少し!もう少しだけ!」


「お前は子供か!」


俺が怒鳴ると、ピタッと動きが止まる。


「そんなこと言っていいのか?私の一声でお前をここから追い出すことも出来るんだぞ?」


真面目な顔をしてしょうもないことをするなっ!と、怒鳴りたかったが何とか堪えた。


「はぁ・・・、好きにしろ。」


「そうそう。それでいい。はふぅ。」


元々、あっちでも弄られていたからそれ自体に抵抗があるわけではないからな。


「お前も触るか?」


「え!あ、いや!えっと・・・。い、いいですか?」


さっきから触りたそうだった絢香に言うと、恥ずかしそうに確認してきた。


「一人増えたところで変わらない。」


「で、では、失礼します。」


絢香の手が耳に触れる。


「あ、柔らかい・・・。」


絢香も耳を遠慮なく揉んで堪能していると、


「はふぅ。・・・そうだ。君、私のところに住め。ふにゅう。」


「は?」


「ああ、柔らかい・・・。家に帰ればイヌミミが待っている。何ていう贅沢だ・・・。はぁ・・・。」


「ちょっと待て!確かに住むところはないが、そんなくだらない理由で俺の住居を決められるのか!?」


「あぁ・・・。ちなみに君に拒否権があると思うな。この手触りがたまらない・・・。」


「ぐっ・・・。・・・分かった。だが、その前にあんたの名前は?同居人の名前くらい先に聞いておきたい。」


「ふぁ・・・。亜神莉里あがみりりだ。ふにゅう・・・。」


その後、三十分に渡り俺の耳と尻尾を堪能された・・・。


そういえば、絢香もイヌミミ好きなのか・・・?



先行きがここに来る前と別の意味で不安になってきた。


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