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第三話  出会い  Side Ayaka

一気に学園です。

世界なんて欺瞞に満ち溢れている。あなたにはどんな風にこの世界が映りますか・・・?











Side Ayaka









入学して一月近く経ち、やっと身の回りも落ち着いて今日は学園の敷地内を歩くことにしました。


本当なら律さんと悠璃さんと一緒に出掛けたかったのですが、二人とも用事があるらしく私一人で出歩いています。


こうして学園内を実際に歩いてみると改めてこの学園の広さが身に染みます。整備された道や丁寧に世話をされているのであろう街路樹など一般の規格では考えられないほどの充実した環境がここにはあります。


これほどの環境を用意したのも全ては魔法という常識外の事柄を密かに教えるため・・・。

この環境に入って私は何処かでホッとしていました。


『お、綺麗な人だな。一人かな?』


突然聞こえてきた声に驚くこともなく周りを見ると、こちらを見ている男の人がいました。

気が緩んでしまったせいでどうやら『聞いて』しまったようです。


私は生まれもって人の心の声を聞いてしまう力を持っていました。


幼い私はそれが何なのかも分からずに『聞いた』ことを普通のことだと認識して生活していました。当然、周りはそんな私を気味悪がり遠ざけるようになりました。


お父様やお母様にこの力のことは言ってはいけないと言われ、幼い私はその理由も分かりませんでしたが、お父様たちの顔が真剣だったので頷いて力を隠していました。しかし、そこは幼い子供、演技など出来るはずもなく些細なことからすぐにばれてしまいました。それからは周りの友達だった人達は私を気味悪がり、いじめられたりされました。


でも、いじめ以上に辛かったのは、私を慰めようとする人達でした。そういった人達は言葉ではどんなに取り繕っても心の中で私のことを罵倒し、忌避しながら仕方なくやお父様たちの心象をよくしようという下心を持って接してきました。


私はそんな人達が一番恐ろしく、人間はこんな人ばっかりなのかと一時期、人間不信に陥り不登校になったこともあります。


そんな私にも転機が訪れました。


自分の持つ異常性に気づき、周りにそれを隠しながら力との折り合いをつけて暮らしていた中学三年生の冬のことでした。ある日、私が受験に向けて勉強していると、学園の人がじきじきに私の元へ訪れました。


私はすでに学園の受験を終えて、他の学校の試験に向けての勉強中でしたが突然、合格を言い渡されました。そのときに学園の本当の姿を教えてもらい、私の力のことも知りました。


精神感応テレパスと呼ばれているらしいこの力は稀に生まれながらに持った子が生まれるらしく、私以外にも同じような力を持った人がいると聞き、ホッとしました。私はどこかで自分が異端なのではないかと感じていましたが、それもそれを聞いて薄れていきました。


訪れた人物は本来の入学より早く学園に来て、力の制御の訓練をすることを勧め私はその話に二つ返事で答えて、次の日には家をあとにしていました。


それから短い期間で力の簡単な制御法を習い、一月ほど前に新入生としてこの学園での生活を始めました。しかし、気が緩むと自然と今のように『聞こえ』てきてしまうことがあります。


先日は律さんの様子がおかしかったので、彼女と理由を知ってる様子の悠璃さんに力を使ってしまいました。その中で、くーちゃん、という人の死の責任を律さんが感じているらしいということは分かりましたが、力のことを話していない私は彼女を慰めることも出来ませんでした。


彼女の秘密を一方的に知り、私の知りたいことは隠している。こんな私のことを二人が知ったら私を嫌うでしょうか・・・?


暗くなった思考を追い出し気を引き締めなおして、声を遮断するとその人から遠ざかるように歩く方向を変えました。


「ねぇ、ちょっと。」


声をかけられましたが無視をして歩きます。


「ちょっと待ってよ。」


「・・・何でしょうか?」


追いつかれて肩を掴まれた私はこの学校に来る前に身についてしまった愛想笑いを顔に貼り付けて仕方なく応対しました。


「今、暇?」


「いえ、これから用事があるので。」


「でも、少しくらい時間あるよね?」


しつこい人のようです。肩を掴まれたときに振り切って逃げればよかったと思いました。


「ごめんなさい。少し急いでいますから。」


「少しぐらいいいだろ?」


「放してください。」


腕を掴んできたので多少強引に振り払いました。


「本当に申し訳ありませんが、私はこれで。」


「待てよっ。」


「放してください!」


「ちっ、うるせぇな。少し遊んでくれるだけでいいって言ってんだろ!少しくらい美人だからって調子に乗ってんじゃねぇよ!」


男は強引に私の腕を引っ張りました。周りに助けを求めようにも何時の間にか人気のないところを歩いていたらしく周りに人がいません。


「放して!」


「うるせぇ!」


男が私の腕を掴んでる腕とは反対の腕を振り上げて、殴ろうとしたので私は目を閉じて痛みに備えました。しかし、いつまで経っても衝撃がきません。


「ぐぅ。」


男のうめき声がしたので、恐る恐る目を開けると男の隣に何時の間にか別の男の人が立っていました。


「大声がするから来てみれば、何だこの絵に描いたようなナンパの構図は?・・・いや、待てよ。この構図だと俺もベタなパターンに組み込まれてないか。」


新しく現れた男の人が前半は呆れたように、後半は顔をしかめて言いました。


「てめぇ、誰だっ?」


「ただの通りすがり、というとありきたりだから、あえて、打算たっぷりにその子を助けに来た通りすがりと名乗ってやる。」


「ふざけてんのか!」


「そうだが?」


「てめぇ、ぶっころ!?あぁぁぁぁぁぁ!!?」


ナンパをしてきた男が挑発にのって私を放して、殴りかかろうとしたとき、突然叫び声をあげました。


「お前のことなんかどうでもいいが、俺と喧嘩をするというならまずこの腕が折れることになるがいいのか?」


男の人が最初に私を殴ろうとしていた腕を掴んでいて、そこを握りつぶしているらしく男が痛みにのたうちまわっています。


「わかった!わかったから放してくれ!」


それを聞いた男が手を放すと、ナンパをしてきた男は悪態をつきながら逃げていきました。


「月並みだが、怪我はないか?」


「はい。ありがとうございました。」


お礼を言って私は初めてその男の人をちゃんと見ました。毛先から四分の一程度が銀色に染まった髪をうなじのあたりで一本に括ってあり、片方の目が紅い変わった感じの人でした。


「やっぱり珍しいか?これは?」


「あ、すいません。」


「いや、謝らなくてもいい。ここに来るまでに随分と奇異の視線にさらされたからもう慣れた。」


毛先をいじりながら苦笑する彼に私は自分が彼の容姿をジッと観察していたことに気づきすぐに謝った。


「それで、だ。助けたついでに一つ頼みたいんだが、いいか?」


「・・・本当に打算があったんですね。」


「行動に何かしらの理由があるのは当然のことだろ?」


「冗談かと思ってました。」


「で、聞いてくれるか?」


「・・・内容にもよります。」


見た感じ悪い人ではなさそうだで助けられた恩もあるし、表層意識を軽く『聞いて』みたが悪意は無さそうだったのでそう答えた。


「道に迷った。案内をして欲しい。」


「・・・は?」


「聞こえなかったのか?」


「いえ、聞こえましたけど。」


少し予想外だったので間の抜けた声を出してしまった。


「この容姿だからな。人目を避けて道を歩いていたら何時の間にか迷ってた。」


「・・・。」


「今、まぬけ、とか思わなかったか?」


「いえ、そんなことはないですよ?」


ごめんなさい。正直、思いました。

訝しげな視線を向ける男に愛想笑いで誤魔化す。


「・・・そんな作り物の笑顔だと、そうだと言ってるようなものだぞ?」


「え・・・?」


あっさりと見破られた?律さんと悠璃さんはもちろん、お父様やお母様すら欺けたこの笑顔を?少し前にあったばかりの人に?


「どうかしたか?」


「あ、いえ・・・。その・・・、何で作り笑顔だと?」


男は当然と言わんばかりの顔で


「そんなの輝きが違うからに決まってるだろ?誰だって心底笑えば人を引きつける顔になるが、作った笑顔なんてもんは錆びた鉄と同じように輝きを感じない。ただそれだけだ。」


「・・・。」


当然のように言い切ったその言葉を私は呆然と聞いていた。


「で、俺の頼みを聞いてくれるのか?」


「あ、・・・はい。ご案内します。」


「ん。ありがとな。」


そう言って微かに見せてくれた彼の小さな微笑みは確かに私を引き付けて、彼の言葉が私の心に染み渡っていき、そんなことを言った彼のことをもっと知りたくて、気づけば


「お名前は?」


「銀牙久遠だ。呼び方は久遠でいい。お前は?」


「魅宗絢香です。」


「んじゃ、絢香、道案内頼む。」


「・・・はい。久遠君。」


名前を聞いていて、名前を呼ばれたことが嬉しくて、自然体のあなたに惹かれて、気づけば本当に久しぶりに心からの笑みを浮かべていました。



キャラの喋り方や性格、設定など物語の進行に伴いこうしたほうがいいなと思ったら、その都度変更していきますので、読んでくださる方には読みにくいとは思いますがよろしくお願いします。

ご意見・ご感想・評価を頂けると幸いです。

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