第一話 現在 Side Ritu
更新が遅くなってしまい申し訳ありません。これからも不定期的に更新していくのでご了承下さい。
罪を償う?そんなの自己満足だ・・・
Side Ritu
久しぶりにあの悪夢を見た。
くーちゃんがいなくなってから一年近くは毎日のように悪夢にうなされていたのだけど、時が経つにつれて悪夢を見る頻度が減っていった。
そのことがボクに僅かな安堵と堪らないほど恐怖を感じさせた。
何時かくーちゃんのことを、自分の罪を忘れてしまうんじゃないかと思ってしまう。
あの出来事を忘れたくない。
ボクはくーちゃんを殺したんだ・・・。
「―――ばな!橘!」
「えっ?」
「え、じゃないだろ。ちゃんと話しを聞いてるのか?」
「すいません。」
教師はボクが謝ると、授業を再開した。
駄目だな・・・。あの夢を見た日はどうもぼーっとしてしまう。
「律さん、どうかしましたか?」
「大丈夫だから気にしないで。絢香。」
隣の席の魅宗絢香が心配そうにボクを見てきた。絢香はボクと違って、とても女の子らしくてお嬢様のようなたたずまいだ。まぁ、実際に実家は確か凄いお金持ちらしいけど。
艶やかな黒髪を腰まで伸ばして、黒曜石のような瞳に眼鏡が知的な印象を、頭につけたカチューシャが可愛いらしさをかもしだしている。
「でも、起きた時から様子が変ですよ?」
絢香はボクとルームメイトだから朝から様子がおかしかったことに気づいていたみたいだ。
「ちょっと夢見が悪かっただけ。」
「夢、ですか?」
「そう。ただの夢。」
彼女は一度眠ると深い眠りにつくみたいだからボクが夜中に起きたことはわからないだろう。
「そんなことよりさ、この授業退屈だと思わない?」
この話しを終わらせるために話題をすり替える。
「そんなことはないと思いますよ。」
絢香もそれを察してのってきてくれた。
「知識がなくて損をすることがあっても、あって損をすることはないですから。」
「確かに無知はよくないと思うけど、今やってるところって役に立ちそうにないじゃん。先生の自慢話も混じってるし。」
「でも、今までお伽話だと思っていたことが実在すると言われたらどんな些細なことでも面白いじゃないですか。」
「ボクは体を動かしてほうが性に合うな。」
それに常識の外の存在は知っていたからそんなに驚くことじゃなかった。
この学校、天鳴学園では俗に言う魔法というものを教えているらしい。
らしい、というのはまだボクはまだ魔法というものを見ていないし、ここがそれを教えるところだというのも入学してから聞いたからだ。
何でも素質がある人間は自然とこの学園に惹かれてやってくるらしい。
かといって、ここに意識を誘導して人が集まっても不自然さを感じさせてしまう、それを解消するために普通の学校ではありえないほどの優遇された施設、制度が整っていて、学園というより学園都市といえるほどの広大さを誇る全国人気第一位の学校になっている。
お世辞にも成績がよくないボクもこの学園を受験したのはパンフレットを見て何となく受けてみようかなという記念のつもりだったので、何故か合格してしまいボクはもちろん母さんも父さんもおばさんも驚いた。
そして学園に来てみれば、試験は形だけのものでありそのときに素質があるかどうか調べていたということを聞かされた。
で、こうして二週間ほどが経ち、今は魔法に関する基礎知識を詰め込まれている。
絢香は楽しんでいるみたいだけど正直ボクにはどうでもいいことばがりだ。
昔から頭で考えるより感覚で覚えてきたボクには退屈以外の何者でもない。
そんなことを考えているとチャイムがなり、授業が終わった。
教師が出て行くと、クラスメイト達はにわかに騒がしくなる。
「律さん、行きましょうか?」
「え?行くって?」
「もうお昼ですから食堂に誘ったのですけど?」
ボーっとしている間に午前中の授業が終わっていたらしい。
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だって。あ、そうだ。食堂に行くなら「りっちゃん!絢香ちゃん!お昼だよっ!お昼っ!」・・・向こうから来たか。」
教室の入り口のところから大声でボクらの名前を満面の笑みを浮かべながら呼ぶ友人のところに絢香と一緒に行くと彼女はボクの腕を引っ張る。
「早く行こっ。お腹すいちゃったよっ。」
「分かったから落ち着いて、悠。」
今にも走り出しそうな友人、里見悠璃を宥める。
悠は小柄な体で茶髪をツインテールにしていて悠の動きに合わせて揺れる様が彼女の小動物のような可愛さを引き立てている。
天真爛漫という言葉を体現したかのような彼女に振り回されるて何年も経つけど未だに彼女の考えていることはよくわからない。
くーちゃんだったら、どうなんだろうな・・・。
「りっちゃん。」
「ん?何?」
「気にしちゃダメだよっ?」
・・・こういうことには鋭いんだよな。ボクがあの夢を見たことにすぐ気づかれたか。
ボクにそんな資格はないのに親友でいてくれる彼女には本当に感謝している。
彼女には、くーちゃんの妹である彼女にはボクは恨まれても仕方がないのに・・・。
「そんな元気のないりっちゃんにはぁ〜、これを進呈してさしあげましょうっ!」
「うん。全力で遠慮させてもらうよ。」
笑みと共に彼女が差し出したのは『超絶人外魔境シリーズ 第五弾奇想天外阿鼻叫喚殺人級 カオス味』。
突っ込みどころがありすぎてもうどこを突っ込んでいいやら分からない飲み物だ。というか、第五弾?その前があったの?カオスって何味?それに飲み物としてあっちゃいけないような単語があるじゃん。
「もうっ。人がせっかく気を遣ってあげてるのにっ。」
そう言いながらその明らかに有害危険物であろう飲み物をおいしそうに飲み始める。
長い付き合いだけど、悠のこの味覚は全然理解できない。
隣にいる絢香の顔を見ると彼女の顔も若干引きつっていた。
うん、そうだよね。だって、阿鼻叫喚殺人級だもんね。
「〜〜〜♪」
何でそんなにご機嫌なのさ?
悠の将来、主に食べ物関係でそこはかとなく心配になった。
今回はキャラを出すだけで終わってしまいました。
次回はようやく主人公の視点になると思います。
文章も長くなるか短くなるか分かりませんが、見ていただけると幸いです。
ご意見・ご感想のほうがあればどんどんお願いします。新参者ですのでご指摘があれば、直すように努めたいと思っています。
では、また次回の後書きで。