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Spiral Labyrinth……螺旋の迷宮  作者: 村咲 遼
9/11

8……間章……


 小さい頃から、家族に囲まれて育った。

 音楽に囲まれて育った……。


 パパは指揮者。

 普段はママといつも寄り添って、笑っている。

 でも、コンサート会場では背を向けているので余り見えないが、何回か内緒でリハーサルをこっそり見せて貰ったときのパパは真剣で、物凄く表情が違っていた。


「鬼気迫る表情ってあれだな~」


 こっそりとと言うよりも堂々と腕を組んで、高飛たかとお兄ちゃんは言った。

 髪の毛を染めたりコンタクトに、兄弟のなかで一番派手な格好をするお兄ちゃんは、6人兄妹の4番目で次男。

 17歳年上で、プロのトランペット奏者で、世界中の音楽家とのコラボや、ソロコンサートもしている忙しい人。

 でも、優しい。


「本当に指揮者は演奏者の個性を上手く引き出してまとめあげ、曲を作り上げるんだ。一応は楽譜をチェックするためにめくっているけど、ほとんど覚えているはずだぞ。しかも立ちっぱなしで、交響曲ってかなり厳しいもんだ」

「しゅごーい。パパ」

「まぁ、今回はリズの誕生日コンサートとチャリティコンサートだしなぁ」

「ママも海音かいとお兄ちゃんも、歌音かのんお姉ちゃんもいる~。お兄ちゃん、海音お兄ちゃんは何で立ったり座ったり、それに音を最初に出すの?」


 妹をだっこしながら、説明する。


「英語でコンサートマスター、イギリスなどではリーダーと呼ばれているオーケストラの演奏を取りまとめる役目なんだ。ヴァイオリンの首席奏者が担うんだ」

「わぁぁ、じゃぁ、海音お兄ちゃん凄いね!」

「結構大変らしいけどな。それに今回は父さんと母さんがいるし、緊張するだろうな。しかも、リズの希望が『歌劇アイーダ』のラダメスの『清きアイーダ』だし。蓮斗れんと歌えるのか?」


 別室で声楽担当の英玲奈えれなと蓮斗は練習をしている。

 蓮斗は、『清きアイーダ』と、『トゥーランドット』の名曲『誰も寝てはならぬ』だが、英玲奈は『ペール・ギュント』の『ソルウェイグの歌』と、『トスカ』の『歌に生き、愛に生き』、『ジャンニ・スキッキ』の『私のお父さん』である。


 特に、リズが、


「英玲奈お姉ちゃん。あのね?『ペール・ギュント』の『ソルウェイグの歌』聞いてみたいなぁ……この間CD聞いたら、歌じゃなかったの」


と言うおねだりに、短期間で仕上げたらしい。


 ちなみに蓮斗も、リズのおねだりに、苦手とする恋愛ものにチャレンジである。

 まぁ、テノール歌手は主役や、女性が主人公でも相手役が多い。

『カルメン』の主人公の女性はメゾソプラノ、もしくはソプラノだが、相手役の衛兵ドン・ホセはテノール、その恋敵の闘牛士のエスカミーリョはバリトンである。


「あら?何してるの?リズちゃん。お父さんやお母さんが呼んでいるわよ?」


 英玲奈が又高飛が……と言いたげに苦笑している。

 音をチェックしていた蓮斗も、


「リズ。早く戻ってきて。ベアちゃんが心配してるよ」

「えと、お兄ちゃんたちも待っててくれる?」

「当たり前でしょ?安心してもどっといで」


その声に、リズはだっこしている高飛を見る。


「大丈夫だ。皆いるから」

「うん!お兄ちゃん。待ってて……?」




 リズは声のする方に歩いて行くのだった。

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