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Spiral Labyrinth……螺旋の迷宮  作者: 村咲 遼
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序章

 そうなんだ……。

 最近二人ともよそよそしいと思った。

 なのに、私たち音楽室に向かうしかない生徒の為の裏口通路で、なぜ座ってるのかなぁ……。


 ここ、古い錆びた鉄の螺旋階段なのに……3階まで登ったが、4階の鍵しか今は開いていない。

 しかも音楽室のある4階の入り口を陣取るように並んでる。


 私に用事かな?


 私、志摩里鶴夢しまりずむ

 名字が志摩、里鶴夢でリズム。

 音楽家の両親と、年の離れたお兄ちゃんとお姉ちゃんは揃って有名なコンクールに出場した天才のなかで、凡才です。

 家族は才色兼備なのに、これまた平凡な顔と成績は中。


 でも、両親や兄姉は、なぜかにこにこと、


「リズちゃんは可愛い!さすがパパの子」

「そうよ!リズちゃんを生んで本当にうれしいわ!」


これは両親で、お兄ちゃんたちは、


「あぁ、癒される……」

「癒し系よねぇ、リズちゃんは」

「そうそう。子犬系?」

「いやハムスターだろ。あ、ホーレホレ、リズ。欲しがってたぬいぐるみだぞ~?」

「いい加減、ぬいぐるみじゃなく、可愛いイヤリングとかが良いと思う」


……はい、長兄、姉二人、次兄、三兄、の6人兄弟の末っ子です。


 まぁ、それはいいとして、今日は久しぶりに家族が揃うから、早退させて貰う為に近道をと思ったのに……。

 一瞬考えたが、大好きな家族を優先させたいが為に、クルッと遠回りの道を選ぶ為に階段を降りていこうとした。

 すると、


「おい、リズ!」


何故か苛立たしそうに頭上から声がした。

 幼馴染みの谷崎敬太郎たにざきけいたろう、そして……。


「やっぱり……リズちゃんは私のこと、嫌いなのよ。敬太郎くん」

「こら!リズ!香也かやちゃんと喧嘩したんだって?お前」

「い、いいのよ。多分私が悪いんだし……」


 止めるふりをするのは、私のクラスの田村香也たむらかや

 同じクラスになったのは今年の春。

 私が2年生になった時。

 最初は仲良くしてた。

 けど、部活も忙しく、家族が滅多に帰ってこないし、家事をある程度していたら距離ができた。

 ついでに言うと、敬太郎を紹介すると余計に……。


「……私、香也ちゃんと喧嘩もしてないし、どうしてそんなことを敬太郎が言うの?」


 つい、このあとのスケジュールが圧している為、珍しくきつい口調になる。


「敬太郎は解ってるじゃない?私は部活と勉強と必死で、それに、両親やお兄ちゃんたちは忙しいから、久しぶりに今日は家族が揃うから、帰るつもりなの。退いて!もうすぐ迎えに来る高飛たかとお兄ちゃんには、本当に久しぶりに会うんだから!」

「俺がいってるのは、お前が香也ちゃんと喧嘩……」

「してないって言ってるじゃない!敬太郎は私を信用してくれないの?」

「香也ちゃんが相談に来たんだ!お前が無視するって!」

「してないし……香也ちゃん。何でそんなことを言うの?私が何をしたの?それより通して!」


 私は、二人の腕を必死に振り払おうとするが、香也の腕が私の腕をつかみ引っ張った。


「きゃぁぁ!」


 バランスを崩す。

 しかも、次の瞬間、強く鉄製の螺旋階段に叩きつけられ、転がり落ち……そして、途中で、手すりに叩きつけられたと思ったら、鉄柵が分解し、宙に浮いたのは覚えている。




 それからの記憶はない……。




 敬太郎は幼馴染みが転がり落ち、しかも錆びた手すりに叩きつけられ、壊れた手すりと共に姿が見えなくなったことに愕然とした。


「お、おい、香也ちゃん!お前、リズの手を引っ張っただろ!」

「そ、そんなことしてないわ!あんたでしょ!誰かぁ!こいつが、女の子を突き落としたのよ!先生呼んで!」

「おい!何いってるんだ!俺じゃない!香也、お前だろ!何いってるんだ!」

「皆!こいつよ!こいつが突き落としたのよ!」


 わらわらと人が集まってくる。


「何があったの!」


 音楽教諭に、香也は大袈裟な身ぶり手振りで、


「二人が言い争いをしてて、止めようとしたら、彼が突き落としたの!」

「はぁ?」


壁にもたれていた一人の男……敬太郎のクラスの和真かずまが香也をにらむ。


「この位置からでも見えたぜ?お前がケイの幼馴染みのリズちゃんを落としたくせに!嘘つくなよ」

「なっ!」

「この女、リズちゃんの悪口を広めて苛めてたらしいじゃん。しかも、単純バカのケイはそれを信じて、苛めはするなって話そうとしてて、リズちゃんは急いでたなぁ……何かあった?」


 救急車とパトカーが到着する音に、教諭は我に返る。


守谷もりやくん。職員室で何があったのか、谷崎くんと田中さんと共に事情を説明してちょうだい!私は、志摩さんのところに……あぁぁ!どうしましょう!志摩さん!」

「はーい、せんせぇ~。ってことで、ケイ。来い。ちなみに逃げようとしても無駄だぞ。お前。ここがどこか解ってねえのか?サボる俺はともかく、ここが音楽室の横で、特に音楽に愛された、先輩後輩問わず慕われてるリズちゃんの仲間の前だぞ?逃げてみろ、殴る蹴るは最低でもされるだろうぜ」


 ニヤッ、


 笑った和真は、香也の腕をつかみ歩き出したのだった。

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