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宿を探すは・・・

 あれから、横になれる宿を探すこと幾数件


 まずは入り口が大きそうな処を探していたのだが、そういう所というのは大抵は両扉となっている宿になっていたりし、その扉の装飾やらその建物の佇まいからは、見目が綺麗な装飾が豪華絢爛とでも言うのか(きら)びやかとでも言うのか、そういった見た目ばかりが目立つところばかりとなり、そういった見た目の宿というものは、宿泊費用もおのずと高級となっていき、その金額の例えをあげれば、現状の手持ちの懐具合からだと、最高額の処で一泊というか一食すらできそうにもないという事が色々と回ってみて解った事実でもあった。


 それでも大きさというファクターに注釈する理由というのは、この身体で経験した一般大衆向けの食堂的な飲食店での入店時の狭さを体験すれば、ある程度の大きさ以上の部屋が存在するなどで対応できるのかが重要な点であり、そういったところをと他にもないかと状況説明といっしょに聞いては回ったりしてきたのだが、教えてくれたところもあればそうでないところもあったり、結局は自分の足で総当たりしていくしかなく、運よく対応できる部屋があるという宿を見つけては、手持ち予算を伝えた途端「何だ貧乏騎士か」と呟かれたかと思えば、先ほどまで愛想のよかった店員は、それは綺麗に手の平をクルーリと返して追い払いをしてくる始末という親切きわまりない洗礼を受けていったからである。


 そういえば、ゲーム内でも銭の強さは確かにあったな。

 そうなってくると、ゲーム内部ですらそういう事ににありうるのならば、現実なんてそりゃ当り前であり、少し考えればこういう商売事の場では、銭がサービスに直結するという事は解るはずで・・・結局、銭が全てなのはどんな世界でも共通ということか・・・と、ヒシヒシと体験しているという。



 すべて貧乏が悪いんや……



 そんなこんなで、この際、横になるという事はやめて直立(スタンディング)モードで構わない。

 よくある格納庫(ハンガー)的に羅列されるという方法で落ち着かせるという妥協点となる内容を作り出し、当初の要望を犠牲にし、先ほどまで入口の大きさから除外していた宿へとアタックをしかけて回った、のだが・・・

 今度は重さでお引き取りという言葉を聞かされる羽目になる事数件という結果に。

 確かに、入ったとたん床板がミキミキとかミシミシとか、いやぁな音をたてたりしてはきていたし、たまぁにパキッとかいう音がしたような感触を感じたりとしていた。

 そういえば高級なお宿は石みたいなフローリングばかりで、そういう感じなのは無かったなぁ・・・



 すべて重力が悪いんや……



 当初、アタックを仕掛けていた高級なお宿と比較するように記憶を思い出しながら、幾度目かの撤退戦を強いられ、次なる交渉戦に赴こうとしていた時、



「あのぉ、もしかして宿を探していますか?」



 撤退を強いられた宿から移動し始めた直後、ふと、背後から声がかかってきた。

 振り向いた先にいるのは、手荷物と背負い荷物を持った一人の少女がこちらを見上げている。

 確かにその通りだが、なぜその事に気づいたのだろうかと思っていれば。



「何度も宿に入っては、肩を落として出てくる所をみたので、もしかしたらかなーと」



 表現的に"エヘヘヘと笑う"その少女の姿があった。

 その表情は、まるで愛くるしいという表現が当てはまるかの様に少女であり、守ってあげたいとか思う人たちも出てくるのではないだろうか?と思えるその仕草である。

 これはあれだな、"お巡りさん、この人です!"という、その手の人たちのハートを鷲掴みをしてくる程の物だろうと推測ができる。



 だが、生物(ナマモノ)である。

 自分にとっては、それ以上でもそれ以下でもない。



 そういった点には、まったく気にする事もないので、先の問いに対して素直に返しておこう。ここは紳士的な行動が重要である。

 そう、これロボ道。とても重要な事。ノータッチ とか そんなのでは決してない。



「アア ソノトオリダ」

「なら、あたしが紹介してあげるからついてきてよ、安くて良い宿だから!」



 こちらの要望を全く聞こうともせずに勧誘を始める少女、まったくもって非常識であるが、そのままこっちこっちと自分の手を取って誘導しようとして引っ張ろうとしてくる。

 残念なことに、重装甲のこのキャラならば小さな生物(ナマモノ)程度の力では何をされようともビクともしない。


 うーん!とか言って引っ張り出そうとしている生物(ナマモノ)

 ピクリとも動いていないロボ。

 さらに体重をかけて引っ張ろうとしてくる少女。

 それでもびくともしないロボ。



 うむ、シュールな構図だなぁ・・・



 あ、そこのお兄さん達、なに訝し気にこちらみてるのかな?

 えっ?少女が連れ去られそう?何か警邏を呼ぼうとか聞こえたんだけど?

 ジブンカラウゴイテナイカラネ? ホラ、ビクトモシテナイデショ?

 あー、でも冷静に第三者視点からみてみたら、確かに一所懸命腕をひっぱろうとしてる少女とびくともしないロボの姿が、なんか逃げ出そうとしてる少女を放さないという風にも…


 ・・・


 不味い!このままじゃとても不味い!そんな予感がヒシヒシとする!!



「アー、ワカッタワカッタ キミノ 紹介スル 宿ニ 行コウ」

「やった!一名様ご案内!」


 とりあえず、周囲に聞こえる様に声を上げて、答えておく。

 紹介されるというのなば、その宿へと向かおうではないか。と、そう、案内されるままに、後についていくだけなのだ!!と、"自分、不審者じゃないよアピール"は忘れない。というかしておかなければ不味い。そうしておかなければ嫌な予感しかしない。


 というか少女から「教わった通り、うまくいった~」とかいう言葉が聞こえて来たんだけど…

 えっ?これってもしかして狙ってやってる?というかそんな方法教えてる人がいるの?

 えぇ・・・何それ、怖い・・・


 何か裏の事があるのかと多少なりとも気になりつつも、案内されるがままに路地を曲がり、進み、先ほどの人通りがあった宿街から離れた、正直に言えば寂れた場所というにはそれほどでもない場所に、三階建ての建築物へと到着し、少女は、迷う事なくその建物の中へと入っていき



「おとうさーん!お客さんだよー!」


 宿に入った早々、カウンターの奥に向かって大声でそう叫ぶ少女。

 お父さんというからには、この宿の従業員兼家族といったところだろうか


「客だと?」

「うん!お一人様!」

「一人・・・か」



 と、奥から出てくる男性が一人。

 いかつい顔で、頭髪が無い頑固おやじという存在が現れてくる。

 それになかなかにデカイ。だが、自分よりも小さいが。



「うぉ・・・アイツよりデカイ奴なんて、久しぶりに見たぞ?」

「でしょでしょー、びっくりするでしょー」


 というか、少女は父親を驚かせるために自分を連れてきたのか?すごくしてやったりという顔をしている。

 まぁ、そこは置いておくとして、とりあえず宿というのだから部屋があるかの確認だ。


「ヨコニ ナレル ヘヤハ アルカ?」

「面白い鎧だな、話す時に甲冑の目の部分が光るなんて」


 そういいながら、その親父さんはこちらを上から下まで見渡すと


「結構重そうだな・・・それにタッパもある・・・か、なら、裏の馬房ぐらいしか無いな」


 ほぅ、馬房といえば厩舎か・・・ふむ、動物の中にロボか。

 牧歌的な雰囲気にロボ。

 某アニメのおかげで大いにアリになったシチュエーションではないか。

 というかおおアリである。



「ソレデ タノム」

「本当にいいのか?何だったら、1Fの部屋を」

「バボウ デ タノム」



 ぐいっと顔を近づけて、そこを取付ける。

 なにせ、動物とロボの親和性を経験する為に必須な事だ。

 こればかりは実際に行わなければロボ道が廃れるというものだ。



「お、おぅ、わ、わかった・・・。おいシルビィ!馬房でアイツん時みたいに大き目のシーツで部屋作って来い」

「はーい!」


 結構なれた手つきともいえる指示で、荷物を置いたその後に素早く走り去っていく。


「たまに来るんだよ、昔なじみの巨人族の奴がな。だが、あんたはソイツよりも頭ひとつ飛びぬけてる。どうすりゃそんだけデカくなるんだよ」


 すこし笑い顔でそうつげてくる宿の主人。

 そこからは、金額面を確認すると、とてもとてもお安いリーズナブルを通り越して本当に大丈夫かと思ってしまう価格を提示されてしまった。


「馬房だから予算は通常の半額でいい、だが、物取り云々の対応は出来ないからそのつもりで。そこらへんはそっちで何とかしてくれ。その分安くしておくからな。それと、安いからといっても寝具に関しては悪くないぜ?泊まりに来る巨人族の知人が、身内びいきじゃなくお墨付きをつけてくれるくらいだからな。まぁ、準備が整うまで、宿帳に名前を書いてから、そこに座ってまってな」



 そういって、カウンターに置かれてある荷物を以って、奥へと消えていった。



 懐にも優しい状況になり、最初のいかつい親父という印象だったが、実はとても良い人であるという事で認識を新たにする事にした。




〇第三者的(やや酔っ払い)

「おい、変なやつがちっこい女の子を軟派してるぜ・・・」

「あれだろ、そういう趣味ってやつだろ?」

「あ、捕まった、こりゃ警邏よんだ方がよくねぇか?」

「おれらじゃあんなガタイの甲冑持ち対応できないもんな」

「おれ、ちょっくらいってくるわ」

「おう、いそげよ?おれは見張っとくから」

「たのんだぜ!」



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