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閑話?:平常運転?

「きちんと掃除はしておいたんですよ?いつでも帰ってこられてもいいように」


 借りている部屋へと通されては中を確認してみると、言われる通りに周囲はキッチリと片付けられており、変わったところといえば、仮の扉が普通の扉に変わって・・・?


 いや、扉だけではない。

 天井もしっかりしたモノに作り変わってるし、壁も隙間風が吹き込むのが当たり前ともいえる板張りだけだったものが、隙間すら無いしっかりとした壁に変わっており、ここが元馬房というのを忘れてしまいそうな、そんな印象を受けたぐらいである。



「お父さんが冬の事を考えて、今のうちにって大工さんに頼んだみたいですよ」

「あぁ、そういう」

「ほんと、女心が分かってないんですから・・・ねぇ?」

「え?あ、あぁ」

「やっぱりそうでしょ?そうでしょーとも!」



 唐突に振られた言葉に反射的に反応するかの様な単純な言葉で返してはいたが、元気娘はというと「そうですよね」的な会話をしながらも、そそくさとベッドメイキングを続けていた。



「あ、それとベッドに関してですけど、アーネストさんに対応できる程の大きいのは、新たに作らないと無いとかで、その間は今まで通りのこれで我慢してください、ねっと」



 きれいに干し草が敷き詰められた上に、洗濯が終わったともいえる白いシーツをバサリとかぶせては、隅を調整した後「ふぅこれでよし!」と、やり切ったとでもいう表情をしていた。


 

「では、夕食にはまだ時間がかかるので、待っててくださいね。シーちゃんから教わったレシピで、美味しいのできますから!いまでは自慢の看板料理ですよ!」



 教わったレシピ・・・それ、無断使用して覚えたという"あのコレクション"していた奴だろうな。

 それならハズレになるものはないだろうけれど・・・というか、看板料理にまでなってるとか、シーの奴、いったい何を教え込んだんだ?



「それと、本当にシーちゃんどこ行ったか知りません?」

「直してもらってる場所にはいたんだが、まぁ、そのうち帰ってくるハズ、たぶん、メイビー‥‥‥」

「めいびぃ?」

「メイビー」

「めいびー?」



 完全に度忘れして放置状態にした事を棚の上に全力でぶん投げておく返答をしておくと、元気娘はわかったようなわからないような表情をしながら「"めいびー"ってなんだろ?」と、つぶやきながら部屋を後にしていった。



 そうして、取り残された自分はといえば、ベッドメイクが終わったベッドへと腰を下ろし「アイツ(シー)をどうするか?」と思案を巡らそうとしていた。



『シー殿の事ならば、大丈夫ではないでしょうか?』



 唐突に目の前に姿を現してはそう言ってくるヒョウさん。

 赤い目は、こちらをしっかりと見つめ返してきているのだが、


「本当に"大丈夫"と、言い切れる?」

『………』



 そう言葉を投げかけると、ヒョウさんはその視線を横へと外しては、それ以上何も答えてくれなかった。





   *   *   *


 誰もいない静かな夜


 街路樹ともよべる木の根元付近に寝かされている一つ存在がいたが、それがムクリと起き上がったかと思えば



「復活!復活です!

 さぁ!さぁ!!さぁ!!!お姐様!

 今宵はシーと寝台で、ナマお姐様と()んず(ほぐ)れつ‥‥‥

 ほぐれ…つ‥って、アルェ?」



 そんな存在の視界に入ってくる情報は、暗闇ともいえる場所。

 上を見上げてみても、星空しか見えない空間。


 そして、今一番"合いたい(重なり合いたいという意味のため、誤字ではない)アーネストお姐様"の存在を感じられないでいた。



「アッルェェ?お姐様が・・・いない?」




 視界モードを暗視モードに切り替えても、目的とする存在を視認できないでいた。

 しかし、その視界情報に熱望する存在の情報を得られないと判断するとわかると、すぐさま別の五感情報を利用すべく行動に移していた。




 (スンスン・・・スンスンスンスン・・・)





 臭覚器官を利用し、周囲のニオイから過去の情報を導き出そうと、ニオイの残滓(ざんさい)から得た情報を可視化へと変換し、確実に愛しい人の存在がそこに居た場所をはっきりと示していた。


 そうして、そのはっきりと示された愛しい人の存在が、特に色濃く残っていた長椅子という代物に対して、地を這う四つ足の昆虫の様に這い寄ったかと思えば、位置を変え角度を変えてと情報をさらに事細かく収集しては確認しつくすと、確証を得たとでもいう表情にかわった。




「やはり、この席からお姐様の独特な臀部の匂いがしっかりはっきりと(かぐわ)しいモノがあります!という事は・・・ここに確実におられた訳で・・・」



 その長椅子の隣となる石畳の地べたへと、女性特有の座り方をしながら思考を開始する。



 なぜシーを置いていったのか。

 兜をかぶった少女は、思案に思案を重ねる。

 自分の置かれた状況を、そしてその周囲の状況を、




「ふむ・・・


 ふむふむ・・・


 ふむふむふむ・・・



 ・・・・・・ハッ!!コ、コレハ、モシカシテ」




 そうして、熟考に熟考を重ねた兜の少女は、一つの答えにたどり着く。





































「"放置プレイ"という奴ですかぁ!?」








 そう天に向かい叫んだかと思えば地面にペタリと座りこみ、さらに自身の身体をだきしめては小刻みに震えるように悶え初めていた。



「あぁ、これはそう、そうです。そうに違いありません・・・」



 そんな言葉をこぼしながらも頬を紅色させ、どこかトランスした感情をその表情にあらわにし、大きく鼻から息を吸い込む恰好で深呼吸をし、ゆっくりと口から吐き出しては興奮した感情を引かせた後に続いた言葉といえば



「あぁん、もぅ、お姐様ったら・・・

 言っていただけたのならば、この不詳シー、

 一肌も二肌も三肌も脱ぎ捨てて期待に応える覚悟があるのにぃ~

 もぅ、黙ってヤるなんて~奥ゆかしいんですからぁ~~

 ハッキリと言ってくだされば良いモノを~~照れ屋さんですね~~」



 そんな感情を駄々洩れともいえるぐらいに多大に含んだ言葉を、口から勢いよく漏れ出す滝のような早口でこぼし続け、さらに身体を異様にくねらせたかとおもえば、ふと近くの長椅子に視線を向けた瞬間、急にその挙動がピタリと止まったかと思えば、何かを思いついたとばかりに、その座っていたと思われる長椅子にすり寄る様に近づきはじめ・・・




 そうして、その身体をその長椅子へとこすりあて始め、何かしらの深い意味合いもへったくれもない、ストレートすぎる感情が多大に含まれていそうな吐息を漏らし続けては、その行動を続けていた。





 * * *


 ちょうどそのとき、その広場の横路地を歩いていたほろ酔い集団たちがいたのだが、曇空の隙間から除く月明かりに照らされ、その行動を行っている存在を見つけていた。


 そうして、彼らはそれぞれに、何か見てはいけないものを見たという表情をしては歩く速度を緩めては声を潜めて話し合いをし始める。


「おい、あそこで変な動きをしてるのなんだ?」

「身体クネクネ動かして、椅子にこすって・・・」

「あーああいうのは関わっちゃマズい奴だ。無視しとけ無視。

 見なかったことにしとかないと、厄介なことになったりするぞ」

「何だ?やっかいなことって・・・」

「それはだな、俺ん家の娘っ子がな・・・」


 そんな悲喜劇な物語が始まりそうな会話を続けながら、その場で起きた事を無かった事にするように、そそくさと仲間を連れては離れていっていた。



 * * *



 そんな通行人の会話を聞こえていたのか聞こえていないのか、身体をこすり付けていた存在S(シー)はというと、急にその行為をピタリと止めて立ち上がると、自身の身体についた汚れを確認するかのように服装を整い始め



「ふぅ・・・本物のお姐様分補給には物足りませんが・・・とりあえずは、満たされました」



 と、何か大きな仕事を終えたかのような、それはすっきりとした、そして悟りを開いた賢者とでもいう表情となっては、その長椅子を見つめていたかとおもえば、今度はおもむろにその座の部分へと顔を近づけ・・・ペロリとその椅子の座る部分を舐め初めていた。



「ふむ・・・この味・・・経過から言って、6~7時間といったところでしょうか・・・」



 臭覚だけではとらえきれなかった時間的な情報を、今度は味覚を共用することで足りない情報を補完することに成功していた。



「6~7時間といえば放置プレイも十分でしょう。それでは、お姐様を探しに行きましょうか」



 そうして、再びつぶれた黒い昆虫のような体勢の、四つん這いともいえる恰好になったかとおもえば、スンスンと臭覚による情報を集めるかのようにニオイを嗅ぐ行為をし続けながら、カサカサともいうべき音をたてつつ、月の光が雲に隠れて闇夜が広がる路地へと消えていった。









その日───

 "地べたを這うように四つ足でカサカサと動き回るお化け"

 "犬の様にニオイを嗅いで虫の様に這い回る化け物"

 "壁に張り付いて、素早い動きで壁を疾走する黒い物体"

   ───などなどの怪談が生まれた。



"身体(の一部分を何度も)こすりあてている"だけだから"表現は"間違ってはいない。



なお、それ以上の質問は受け付けません。

各人の想像におまかせします。


イイネ?

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