屋台広場
大量のガキンチョどもを引き連れて、屋台でB級グルメを味覚という感覚器官で感じ取りながら、味も香りもへったくれもない流動食をただ流し込む作業からオサラバしながら、とにもかくにも摂取行動を続け、ふと気づけば、大量にいたガキんちょどもがいつの間にかいなくなっていた。
そして、残っていたのはガン泣きしてたガキんちょと、大量に呼び込んだクソガキが残ってるだけになっていた。
他には?と思い、周囲に意識を向けると耳に入ってきた音声として「オレはやったぜ・・・オレはやったぜ・・・」「ええぇっと、売上はっと・・・」「うへぇ・・・明日の予備分も無くなったじゃねぇか・・・こりゃぁ仕込みしなおしか」「明日の分、どうしようか・・・」などなど、屋台のほうから悲観的な雑音が流れて来る程度であった。
そんな中を、モヒカン頭のおっちゃんが「きょ、今日は、これで勘弁してくれや‥‥他の客の分も無くなっちまうからよ・・・」と、何か恐ろしいものを見たという感じで、となりの席の残骸を見ながら、とても疲れた表情で最後の串焼きを数本手渡されたのを持ってきた。
「これが最後らしいぞ」
「まだ食うのかよ・・・」
クソガキはこっちを冷めた目で見ながら、そんな事を言ってきたが、その視線は皿に乗せられている串焼きに向かっていたので
「ん・・・いるか?1本ぐらいならいいぞ?」
「いらねぇよ!」
「そうか?そうか・・・」
どうもいらないらしい。
という事で、最後だし、ゆっくり味わうかと、流し込みモードをやめ、このアマダレともいえる照焼き風ともいえる串焼きは、なつかしき本物の照り焼きを思い出させるレベルで美味しいのにおもいつつも、その6本を2本づつ口へと運んではいただいておいた。
「そんなに食えるなんて、まるで噂のグーラだな」
「・・・?なんだそれ?」
「知らねーのか?最近、屋台街を食い荒らしてる巨人族って話だよ。
そいつが現れたら商品が一掃されるってさ」
「へぇ、はた迷惑な奴もいるもんだな」
「というか、今の俺らが似たような事してるけどな」
そういっては、あきれるような視線でとなりのテーブルに積み上げられている山を眺めているクソガキ。
その視線を無視するかのように、こちらは周囲の屋台街を見渡してみていくと、こちらと視線を交わしたそれぞれの店主はすぐさまに視線をそらしていたりし、または腕を交差させてはバッテン印を作っていたりしていた。
「たしかに、そう・・・かもな・・・」
「もしかしたら、ねぇちゃんがグーラだったりして・・・」
「名前が違うから、別人だろ?」
「そういや、名前聞いてなかったな」
「アーネストだ。グーラって名前じゃない」
「へぇ、全然違うな。で、オイラはみんなからはバンって言われてる。
で、隣にいるのはエル。一応孤児院に厄介になってる」
そう言っては、クソガキに寄りかかりながらも、こっちを見続けているガキんちょの頭をなでていた。
「バン?」
「ここらの番長だからバンだってさ」
「安直だな」
「うっせーよ」
「あと、すっごくなれなれしくなってないか?」
「あんな周りの目を気にしないで大喰らいしてる姿をみせられたらな」
何かしら、憐れむ視線を投げかけてきているような気がしないでもないが・・・
「それでだ、約束だからな。情報だっけ?」
「ああ、そうだな。情報だ。そのユーロスとかいう人物についてだ」
「ユーロスさま・・・ねぇ。ねぇちゃん、本当に知らないのか?」
「知らん」
「そっか・・・他の大陸人なら知らないのかも?けど、結構、有名そうな話だし・・・」
「いいから、ほら、そのユーロスってやつの情報をだせ」
最後の肉串を平らげ、その串を楊枝代わりに口に加えこみながら、その先を促していく
「わかったよ。
ユーロスさまってのはな、世界の騎士シリーズっていう"おとぎ話"にでてくる主人公」
「ふむ」
「を、真似た人だな」
「・・・は?なんだそりゃ?」
「たまにいるんだよ、慈善活動?みたいな形でそういう事してるヤツ」
「エルたちに"ごはん"たべさせてくれたの!」
となりにいるガキんちょが、笑顔になって続けてそう言ってきた。
「いや、なんでユーロスって名前なんだよ?と」
「へっ?知らないの?本当に?世界の騎士シリーズに出てくる主人公だよ?」
「だから知らん」
「えぇ・・・うっそだぁ・・・」
「本当に知らん。なんなら、その・・・なんとか騎士とかいうのが、どういう話なのか教えてくれ」
クソガキとガキンチョは、お互い見合い「有名な話なのにな」「おねぇさん、読んでもらった事ないかも?」「かもな」と、ちょっとだけ憐れむ視線を投げつけてきたと思ったら、ガキンチョが
「えっとね、ゆーろすさまは、悪い奴を懲らしめて、エルたちみたいな人に食べ物とか持ってきてくれる人なの」
「悪い事したら、ユーロスさまがお仕置にきて、お仕置された人からお宝を俺たちみたいなのに配って回るって感じがほとんどかな」
なんだ?
おとぎ話というから、よくあるお姫様を助けたりとか、ドラゴンや魔王とかを退治したりする英雄物語かと思ったらまったく違ってた。
「わるいおー様やきぞく様たちを懲らしめるの!」
「王様たちからは追いかけられたりするけど、いつも捕まらずに消えていくのもお約束だな」
・・・勧善懲悪としてるおとぎ話・・・なのかな?
「で、それが慈善活動とどうつながるんだ?」
「有名な物語だから、よくある偽名として・・・じゃね?
騎士だからってんで兜で顔も隠せれるし。
貴族様のボンボンとかが身分かくして慈善活動の一環としてやってたり、
ってのは、よくやってるって聞いた事はあるしな」
主人公の名前を借りた的な?ふーん・・・
「まぁ、そういうのはどうでもいいよ、あっちの都合はしらねーし。
ただ、オイラ達の飯のタネとしてはよかったし。
昨日から見かけなかったけど、今日はねぇちゃんにタカれたしな」
「はっきり"タカル"とか言うな」
「もういーじゃん、タカってる事バレてんだし」
「お前な・・・」
と、完全に開き直って話をしてくるクソガキ
飯をタカってくるというしたたかさというか、たくましいというか、なんというか‥‥‥
で、ふとここで気になる事が出てきた。
「そういや、孤児院にいるとか言ってたな、そこで飯が出てないのか?」
そこに話をふると、クソガキとガキンチョが見合った後
「あぁ・・・いつもは出てるんだけどな」
「お船がもえちゃったの」
「燃えた?」
「そ、燃えたってたさ」
クソガキはお手上げというジェスチャーをして話を続ける。
「先々週ぐらいだっけか?
孤児院宛の食い物積んでた船が燃えたらしくてさ、それらがパーになったって。
んで、次の便が来るまで二週間ぐらいかかるからって。
それまで日持ち品とか残り物とか貰いもんとかで何とかやってたみたいだけど・・・
一昨日なんてパン半切れとかそんなんだぜ?」
「うん、はんぶん」
「オゥ・・・そりゃぁ・・・」
想像してみるが、どう考えてもエネルギー補給に必要な分量どころとは到底思えない。
かなりひもじい経験をしてたんだろうか
「で、何とかしなきゃとカモを探してたらさ、
おとぎ話に出てくるまんまな恰好のユーロス様の姿してるカモ・・・
じゃなくて、そういう奴が歩いてたからさ"ピーン"ときたのよ」
「ゆーろすさまみつけたの、エルなの!絵本といっしょだったの!」
「で、タカってみたら案の定、飯を奢ってくれたってわけでさ、ほんと助かったわ」
"カモ"という部分を完全スルーしながら、クソガキとガキンチョは「な!」「うん!」という感じで笑顔でいるが、その笑顔の裏側に、そんな話があったのかと・・・
「大変だな」
「そうなんだよ、だからさ・・・」
そう言いながら、こちらへと何かしら懇願する様なまなざしをしてきては
「っていうか、昨日荷物が届いたから、もう大丈夫なんだけどな」
「って、おぃ!」
しれっという感じで表情を変えてくるクソガキ
なんかこのクソガキ、ちょくちょくこっちをおちょくってきてるような
「いやぁ、まぁ、昨日の朝、院長先生に追及されてバレてさぁ・・・
何度、尻を叩かれたか。で、お礼の為に連れて来なさいって怒られたんだよな」
「いんちょせんせ、こわかった・・・」
「な、怖かったよな。なんで探してたんだけど昨日から見当らないからさ、そんな時にさ」
「ゆーろすさまとおねえさんは、おなじ匂いがしたの」
「って感じで、エルが飛び出しッてったんだ」
と、ガキンチョの頭をなでながらが「エルの鼻に間違いは無いし・・・」と、つぶやいたかと思えば、クソガキはこちらへ向き直ると
「なぁ、ユーロス様の恰好してたの、もしかして、ねぇちゃんじゃないの?」




