ALL or NOTHING
『P-K6E』
この兵装の特徴を簡潔に説明するならば『乾坤一擲』というのが適正かもしれない。
当たれば最大の成果が得られるが、外れたら危険が大いに伴うという代物であるからだ。
それに、使用に当たっては"貯め"が必要な兵装でもあり、使い勝手もかなり悪い兵装でもある。
VRMMO上においても、"当てにくいの代名詞の一つ"にもなってしまっているものであるが、"当たれば"VRMMO上における最強兵装の一角に連なる代物でもあった。
そんな代物を固定兵装ということで組み込んではみたものの、扱いづらい3rdキャラクターな為、基本的に飛行偵察用として使用したり超長距離用の兵装でレイド的なボス相手に嫌がらせ的な攻撃するぐらいしか使う目的がなくなり、この最強兵装の一角ともいえる兵装自身といえば、コケでも生えてくるのではないか?という置物レベルにもなっていた。
そんな兵装の荷量が完了したと同時、異様な加速で迫りくる紫色の甲殻類。
その迫ってきている紫色の甲殻類の腕が、その勢いのままにこちらに突き刺さる・・・という結果にならず、まるでその場で停止している様に見えるぐらいに、"ゆっくり"と此方に進んできているという内容だけは、変化していない。
それほどまでに"ゆっくりと"という認識ができているのは、別にこちら側がよくいう"加速装置的な物"を使用したわけでもない。
思いついた方法を試みるかの様に、例の追加された物理シールドを展開しては、相手の慣性力を全て無力にするのではなく、一部だけ残す形で使用して自由落下になるかならないかの威力だけを残してみただけである。
そうすると、上昇する勢いは衰えてはいるものの、まったく無くなっている訳でもないために、緩やかに接近してくるという速度へと変わったのである。
慣性制御、使い様によってはすごく有用だけれども、消費エネルギーが割に合わないため、急ぎ次の行動に出る。
紫色の甲殻類は、現状中空にいるために、さらに勢い増すなり方向を変えるなりの方法をとるには、必ず地に足をつけていなければ行えないという事が、縦横無尽に飛び回られた時に確認済みである。
つまりは、相手の機動力を殺す事に成功し、ゆっくりと動いている的になっているという事である。
あとはそのほとんど止まっている的、紫色の甲殻類に向かって動いている相手に命中させるのは困難と言われている固定兵装『P-K6E』の発射口を向けたと同時に"射出"と意識すれば‥‥‥
ドゥン!!
辺りに響くは重低音の音と身体を震わせるほどの衝撃波と、何かが飛び散る感触。
その衝撃音を発しては、すさまじい空気の振動が放たれた射出口からは、黒色ともいえる"杭"が突き出されており、その現れている黒色部分からは、その色とは相反する白い煙ともいえるモノを立ち昇らせていた。
ようやくその余韻が収まってきた時に、その発射口が向けられた相手がどこにいるのか?と辺りを探りだしてみるも、その見つけられた相手といえば、甲殻類の時に身体を構成していたとモノと思われる無数の欠片だけしか見当たらない恰好になっていた。
当てにくい武器とも言われる『P-K6E』だが"当たれば無類の威力を発揮する"
その武器の説明コメントにも、ユーザーの検証サイトにも記載はされていたが、相手の姿形すら見当たらなくなるという‥‥‥
それよりも、壁や天井や床一面いたる所に、紫色の塗料?みたいな物が、まるで自身を中心として広がってるとでもいうか、ぶち撒かれているとでもいったらいいのだろうか。
それに加え、自身の身体にも色々とぶちまけた様な付着の仕方をして、これは、その‥‥‥はっきりとしたグロい物が見当たらないぐらいに細かくなっていたために、不快感が抑えられる格好で助かってはいるが、あまりにも酷い結果にドン引いている自分がいたりした。
部類の威力を発揮というが、何というか‥‥‥やっぱりコレ、狂ってるレベルという代物じゃないか?
ゲーム上では当たらない、まともに当てる奴は変態とも言われていたりするこの兵装。
威力の程がどんなものかを知りたいが為に、過去には"本来の使用目的"を試すように、岩石というかもう岩盤だろう?という厚さの物に試し打ちした事はあったが、その時は一撃で手前側は粉々に粉砕し、全体としてはヒビが入っていくつかに割れるとかいう結果を叩き出した事を思い出してはいたが、接射した付近もいろいろと何かしらの惨状が起きるのではなかろうかと思えてしまう。
そんな兵装の初実戦といえる感想が"ドン引き"というのをとりあえずは横においておき、脅威は過ぎ去ったハズである。
と、言われていた目的である原因を取り除く作業に戻るべきなのだが、このまま3rdの恰好で外に出てもいいのだろうか?2ndじゃないし・・・
ま、なる様になるしかないか‥‥‥
考える事を早々にあきらめては、床に放りだされる恰好で落ちていた突剣を拾い上げては腰部にあたる部分に固定させ、そのまま陽の光が差し込んでいる天井の大穴からフライトユニットを普通に操作しては甲板へとユラユラとゆっくりと浮かび上がっていった。
* * *
そのまま上空へと浮かび上がる恰好で、積まれている貨物の上まで浮かび上がらせていくと、先ほどの紫色の甲殻類に襲われる前に出会った集まりを再び探し初めてみていた。
個人的な話なのだが、あのタコ星人みたいな存在が気になって仕方がない。
気になる理由の一つとして、初接触した際、こちらが何かを言おうとする前に、仲間?部下?をけしかけさせてくるほどの存在であり、その時にはっきりと"消せ"的なニュアンスの言葉が耳に聞こえていたため、先ほどから起きている不可思議な状況を作り上げている原因じゃないかな?と推測するまでであった。
そしてもう一つ。
それはゲーム時代において、あの様なタコ星人キャラクターは、魔術師系や暗殺者系に幻術系、そして暗黒魔法とかいわれるダークな方面とでもいう系統の能力に秀でていたという点があった。
まぁ、先ほどのタコ星人もどきが、ゲーム上のタコ星人とまったく同じという訳でもないだろうけれども、何かしらの関連は少なからずあるんじゃないかと思えて仕方がなかったからである。
そんな自身の考えを巡らせては、最初に出会った場所を上から眺め降ろす恰好で近づいては貨物の上に脚部を展開してフワリと静かに降り立つ。
降り立ってはみたたのだが、その当初出会った場所に残っていたのは、例のタコ星人もどきらしき生物が外套を羽織った存在だけが、当たりを確認するかの如くに立っている状況であった。
他にも、たしか存在していた鎧姿の生物たちはといえば、その近辺で顔色が青くするかのごとく、呻き声と嗚咽を伴いながら床へと倒れ込んでいる状況であった。
それはまるで、何かをしたという事を見せつけている
「あー、ちょっと良いカナ?」
唐突に語りかけたことで驚いたのか、タコ星人もどきは、周囲を確認するかのように、頭部をあわただしく左右に振り回し始めていっては何か警戒を強くし始めていたが、一向にこちらに気づく気配がない。
ので、
「すまん、上だ」
「!?」
ようやくこちらに気づいてくれたのか、外套から覗き見える緑色の目の様なものが、こちらを射殺そうとでもするぐらいの眼光で、にらみつけ始めてきた。
「キさま‥‥‥何者だ‥‥‥?」
「何者と言われてもなぁ‥‥‥説明しづらい。ところで、幻魔術ってのを知ってるか?」
「‥‥‥それが、ドうした?」
その単語を伝えて見ても、何も反応せずに淡々と返事を返してきてくれる。
「いや、幻魔術というのが掛かっている為に、知り合いが身動き取れない状況になっているから、その要因を知ってないかなと」
「‥‥‥シらんな。ところで、ワたしからも シつもんがあるが‥‥‥」
「ん?」
「その ブき と オなじモの を モった アいて を、オいかけた ヤつ をシらないか?」
「‥‥‥たぶん、コレ、だな」
"コレ"と言った代物は、胸の部分に付着していた、元は紫色の甲殻類と思われる欠片で、甲羅?殻?の破片といえるのか微妙な代物を右手で摘まんでは相手へと向けただけであった。
しかし、その欠片をいぶかしげに見続けていたかと思えば「ソう‥‥‥か!!」という言葉と共に、そのタコ星人もどきの外套の中から棒状の物をこちらに向けられたかと思えば
「カノエ・ヒアノエ・カナカ!」
そんな言葉を放たれたかと思えば、灰色ともいえる霧の様な物が自身の周りへと広がっていき、まるで意思があるかの様に自身へとまとわりついては、消えていった。
「そこで、シばらく ネていろ」
「‥‥‥そう言われても、眠気なんぞ無いんだが」
「!?ナぜ キかん‥‥‥」
踵を返すかのように、その場を立ち去ろうとしながら発したその言葉に対し、自身が受け答えできた事に驚いてるかの様に、タコ星人もどきは、ふたたびこちらを睨みつけてきては、
「ナらば‥‥‥カノエ・マケ・カナカ!」
という風な言葉を発したかと思えば、今度は黒紫色のな霧が、先ほどと同じように自身へとまとわりついかたと思えば、再び霧散するかの様に消えていった。
「何をしたんだ?まぁ、何も起きてなさそうだから別に問題ないから良いが‥‥‥」
「ナぜだ?!ナぜ、コれでも タおれん!?
ワたし の ジゅつ は、ハたらいて イる と イうのに!?」
何かしらのジュツ、術か?が働いていると言われたため、念のために状態モニタを確認するも異常を示す箇所は見受けられないままであり、特に問題になる箇所もなかっためにタコ星人もどきの行動に関しては気に留める事すらなかったが、自身に対して"何かしらの害的な行為を行っている"というのは理解したために、一応の確認を取ってみる。
「あんたがどういう人物かは知らないが、とりあえず"敵対行動を行う存在"という事でいいのかな?」
正直、自分としてはタコ星人もどきに対して敵味方とかそういう分別は、どうでも良いという認識でしかなくなってきている。
2ndキャラクター自身が理想とは異なる終焉を迎えた事に、ちょっ~~~とだけ、いや、かなぁ~~~りの口惜しいという感情を持ってはいたが、そのストレスは紫色の甲殻類が欠片だらけになっていった事を見て、ふと、ああいう風に故障品の中の破損部品として散るのもアリなんじゃね?いや、外見人型の中にメカバレ的な要素が露見するという状況というのもオツじゃね?いや、大アリだな。と思ったりしたぐらいである。
そのため、目の前にいるタコ星人もどきに対していうならば、自身にけし掛ける様に命令?を発した本人が、部下?の惨状に何も言わないとかないんじゃね?冷たくね?というぐらいの印象である。
そうして先ほどの言葉を放った後、たった一歩分だけの前に進むかの様に前進させ、相手をさらに見下ろす恰好にし、少し威圧をかける恰好に切り出してみたのだが、しばらく向き合ってはいたのだが、先に動いたのはタコ星人もどきだった。
そのタコ星人もどきはというと、急ぎこちらから離れる様に走り出したかと思えば、すぐさま振り帰っては、外套の隙間から手に持った杖らしきものをこちらにかざす様に向けると
「イヘ・カハウ・エウノ!!」
そんな言葉を発した次の瞬間、そのかざした杖の先端から何かしら光る物がこちらへと飛来してくるのが視認できたため、回避挙動を起動させては難なくそれらを避けては、その飛来してきた物を確認してみると、まるで氷の槍?大きな針?の様な代物が、先ほどまで乗っていた貨物の箱へと突き刺さっていった。
そうして、飛来してきた物の後に、再び聞こえてきたのは「カノエ・マカポ・カラウラ!」という言葉。
その言葉が発せられた後、急激に当たり一面に白い霧に覆われる恰好に陥っていった。
その白さといえば視覚情報だけでは、一寸先も視認しづらいというぐらいの濃さではあったが、この身体の機能として搭載されている音響情報と熱源情報により、この状況を作り出したと思われるタコ星人もどきの姿と位置と動きが、視認できなくても観測できているという状況ではあった。




