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魔物


「アーネスト殿。私が道を作る、そのあとに続いてきてほしい」



 赤髪からその言葉を発せられ首肯をして返答し返すと、その赤髪は、その手に持っている氷の剣の様なモノを振りかざし、次の瞬間には先ほどとは異なる構えへと変貌させ、さらにさらに次の斬撃を繰り出していた。

 それでも警戒を緩めるという事をせずに、駆け足ともいえる速さでリーダーたちが戦闘を行っている場所に、一直線で向かう恰好になっていた。



 なってはいたのだが、その、何というか‥‥‥



 いたって真面目な顔つきで何もない空間にその氷の剣を振り回している姿のまま、広い甲板を走っている後姿という状況である。


 相手の魔物といえる存在が見えないままである為に、その必死とも真剣ともいえる表情から、その度合いが伝わってくる事は伝わってきてはいるのだが、いかんせん、魔物という存在がそこら中にいるという状況がてんで理解できず、正直どう言葉にしていいのかがわからない。



 さらに確認の為に各種センサーの状況画面にコロコロと変更してみてみるのだが、その姿かたちというものが全く表れてこないし、そもそも検知すらしない有様であった。


 デフォルトの機能として付随している代物でも、ゲーム上でも街中でも作業中の海中においても、それらしいものははっきりと解るぐらいの性能のはずなのだが一転して、まるでその性能が役立たずにでもなったかのように、一向にそれらしいのをとらえる事が出来ないままでいた。


 できないでいるのに、移動先となるリーダーの集団がいる場所では、攻撃を受け止めている牛頭がいたりするし、水弾の魔法を放っている尖り耳がいたりするが、その水弾は上空へと飛んで行っては霧散しては消え去っていたりしていた。




 そんな自身には見えない相手と戦っている赤髪の後を追う形で、リーダーが円陣を組んでいる場所へとたどり着く事に成功する。


 いや、成功といっていいのだろうか。

 普通に来れるんじゃ?と思えてしまうぐらい何も見えないし感知しないのにである。



 そうしてたどり着いた先の円陣、その円陣の中央には、船長と呼ばれていた生物(ナマモノ)と数名の水夫が守られるかの様に存在し、リーダーの集団も満身創痍とでもいうのか、肩で息をしている感じで、時折何かをその得物で受けては、または受け流してはいた。



「この数の相手で、よく持ちこたえているな」

「師匠!」

「状況は?」

「はい。お姉さまが向かわれて、重い音と振動が響いた時ぐらいから、急に大量の魔物たちが貨物の物陰から現れだして‥‥‥」

「ったく!甲板を調べた時にゃ、そんな魔物なんていなかったのに、どうなってやがんだよ!」

「アタシだって知りたいわよ!"水弾"」

「まっ、この程度なら、師匠の稽古より‥‥‥は!」

「マシかも‥‥‥なっ!!」



 そういいながらも、何かしらを受けては受け流しているリーダーと牛頭、そして上空に向かっては水弾を放っていたりする尖り耳と、受け流し的な回避動作をしているもう一つの尖り耳。

 その各人からは、威勢があるともいえる内容を口走ってはいる様なのだが、その表情には疲労ともいえる色が浮かび上がっており、厳しい状況に立たされているという感じで見受けられた。



「あいつ等、こちら側に襲ってくるが、その波が収まる気配がないな‥‥‥」

「んだな。倒そうとすれば下がるし、攻めようと前にでようとすれば他の奴が襲ってきやがるしで統率が出来すぎてらぁ」

「それでは何でしょう。そういう行動というのならば‥‥‥例えば、こちらの体力を奪うため、とか、そんな感じという代物なのでしょうか?」

「体力の消費が狙いってか?たくっ、さっきまで火の元で今度は炎天下の中で魔物さんたちと戯れなきゃならねぇんだよ!つーか、暑いわ!!」

「うっさい!暑いって言うなら"水膜"!」

「うぉっ、冷めてっ!てめぇ急にぶっかけんな!」

「ほら、涼しくなったでしょ?」

「ああ、確かに少しは涼しくなったな、すまん、助かる」

「べ、別に‥‥‥礼なんて、いいわよ‥‥‥」

「・・・」

「お前ら、口より手を動かせ、バカモノたちが」



 そう言い合いながらも、今までの会話を整理するなら、どうも止めどもなく迫り来ている魔物を倒そうとはしているが、他からの波状攻撃でもうけている状況という恰好なのだろう‥‥‥か?


 見えないから何とも言えないが、先ほどからひっきりなりに円陣のどこかで対応しているという風であった。



「ふむ、確かに、統率のとれた行動をとってきているな。そうなると、相手方は様子を見ているとも言えなくもないか、それとも更なる時間稼ぎか‥‥‥もし襲ってくるなら、一斉に襲ってくるはずだがそれらがないとなると、かなりのモノが使役しているという恰好が濃厚か‥‥‥」



 そういいながら、赤髪は再びその手に持つ剣で斬撃をくりだしていた。



「ですけど師匠。そんな相手、どこに‥‥‥」

「身を隠しているというのが常套だろうな。しかしここをどうやって切り抜けるかだ。船長、ここいらで身を隠せそうな場所となると、心当たりはないか?」

「急に言われてもな‥‥‥貨物船であるために、そういう場所は貨物によって在りすぎるだろうしな‥‥‥」



 赤髪とリーダーたちが、何やら打開策を検討し始めながらも、向かってきている相手を一つ一つ対応している姿が目に入ってくるのだが、やはりその行動に伴う相手がいないというだけで、違和感というものを、とてつもなく大きく感じてしまう。



 そんな、訳が分からない状況にウンザリしはじめている自分がいるのだが、この場合は聞いた方がいいのだろうか、それとも‥‥‥いや、悩むよりもまずは伝えてみるだけ、伝えてみるのが先決か。




「少し‥‥‥いいか?」

「なんだ?アーネスト殿。すまんが手が離せないので、手短に言ってくれ」

「その‥‥‥何もいないのだが?」

「‥‥‥?何を言っている?」

「いや、その魔物?という四本足やら、二本足やら、翼の奴やら、そういうのが一切、自分にはまったく見えない《・・・・》のだが」

「そんなバカな事があるか!現にオレは魔物の打撃の衝撃や斬撃を受けてるんだぞ?!」

「ワシにだって見えるぞ?空には翼をもった魔物が飛び交ってもいるし、甲板には無数ともいえる魔物たちが‥‥‥」

「だが、それでも見えないモノは見えないとしか‥‥‥」

「しかし、現に‥‥‥今‥‥‥もっ!!」



 リーダーはその得物を扱っては、その見えない何かの衝撃を捌き切ったといえる動作をしている。

 それを見せつけられれば、やはり先ほどから何も見えない何かがいるのだろうか?という認識になってしまう‥‥‥



「集団で同じ?まさか‥‥‥いや‥‥‥それなら‥‥」



 赤髪はブツブツと何か独り言をつぶやきだし、何かを確認するかの様にその氷の剣を消し去る。

 そうして、素手で構えを取ったかと思えば、何かしらをその小脇に抱える恰好でコチラに問いかけけてきた。



「アーネスト殿、私が捕まえている存在が見えるか?」

「いや、何も見えない。ただ、脇にわざと何か抱える動作をつくっている風にしか‥‥‥」

「ふむ、ならばその抱えている部分、その部分にいるコイツに触れれるか?」

「触れる?」

「ああ、そうだ、やってみてほしい‥‥‥」

「‥‥‥やってみよう」



 その抱え込まれている場所と思われる、見事に何もない空間となっている所、その場所に恐る恐る右腕を差し出すかの様に突き進ませていく。

 その突き進ませた右腕といえば、やはりとでもいうのか、何も感触がないままに、空を切るとでも言った感じで、その作られた輪の中を通りすぎていった。



「すり抜けて‥‥‥いった‥‥‥?」

「!?」

「えぇウソォ!?」

「マヂかよ・・・」

「嘘だろ、何の冗談だ?腕がそのまますり抜けているなんて‥‥‥」



 その光景を見たリーダーたち各人からは、その状況に対して驚きとも信じられないともいう言葉が発せられては、驚きを隠し切れない表情をしていた。


 自分としては、何もない空間に腕を突っ込んだだけという印象しか受けれないのだが‥‥‥

 その行動を指示した側も、少しの驚いたような表情をしたものの、すぐに平静を取り戻し



「私も耄碌したか‥‥‥これは"幻魔術"だ!しっかり攻撃は受け止めろ!攻撃する必要はない!守りを主にしろ!!」



 そう言い終えては、捕まえていた存在を蹴り飛ばす形で放り出していた。



バレバレのベタな展開ともいう。






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