二
「それじゃあ、頼んだぜ?」
「あ、おい……」
その確認作業という役どころを変わってほしいと思い、引き留めようとしてみたのだが、その対象となる生物は、その言葉をこちらに投げては先ほど鎧姿の生物を回収した場所に向かって進んで行った。
「仕方ない‥‥‥それで、そっちで歩けないのはいるか?」
「何とか‥‥‥な」
「いや、コイツは苦しいかもしれない」
そうへたり込んでいる鎧姿の生物たちに聞いてみるも、憔悴しきってはいるみたいだが、先ほど渡された水袋のお陰か、ある程度の回復を見込んでいる様子でもあった。
ただし、一部は意識が朦朧という状態なのか、ハッキリとしていないというのもいたりした。
状況が状況なだけに、そんなすぐに回復できるモノでもないか、と、その意識があいまいな生物を両肩に担ぎこんでは
「それじゃぁ、こっちだ。ついてきてくれ」
そう伝えては、鎧姿の集団を連れ立ち、先ほどの船長と呼ばれる生物がいる場所に向かって移動を開始した。
* * *
「そっちは大丈夫だった‥‥‥か?!」
「えっ?何それ?」
「・・・」
船長がいる区画へようやくたどり着き、船長と呼ばれた生物が、出迎える恰好でこちらを観察しては、抱えている生物を見つけては、尖った耳の生物二人と共に三者三様の驚きとも呼べる声や表情を創り上げていた。
そうして、担いでいる面々を下していくと、あとから続いてくる鎧姿の面々はといえば、通路上でへたり込んでいく鎧姿と「無事だったのか」「ああ、何とかな、だが隊長は‥‥‥」とお互いの無事を喜び合う面々が喜び合っていたり、悲しんでいたりと色々であった。
そんな再会的な雰囲気を作り上げている時、通路先から耳が尖っている存在たちの一つ、上に尖っている生物から声がかけられていた。
「こちらは人らしき人ってのはいなかった。というか、あの暑さだともうロクにいないかもしれないな」
「ほんと!もう、あそこ暑すぎ!って、それはそうと、リーダーは?」
「ああ、中層の隔壁までたどり着けたから、確認作業をしてくると言って倉庫の方へ向かった」
そういいながらも、水を作り出しては先ほど床に下した鎧姿の面々へ配っていたりし、それぞれから「み、水だ……」「助かる‥‥‥」と感謝の言葉を受けては「感謝しなさいよ?」と言ってはいるものの、まんざらでもない表情をしていた。
「ふむ、中層ならたどり着けそうなのか。上層はやっぱり厳しいか」
「ダメだな。行くのは止めとけといいたくなる」
「ほんと、行くだけで疲れちゃうわよ」
何やら船長と尖った耳たちは、状況の報告に勤めているという形であったが、こちらの要件は完了している。
そうなれば、とっとと戻っては先に進むべきである
「とりあえず、コレらは任せていいか?」
「それは構わんが、どこに行くんだ?」
「いや、先ほどの場所に戻るだけだが?」
「なら、アタシたちも一緒にいくよ?中層からならいけそうなんでしょ?」
そう言って、耳が上に尖っている生物から、同行を提案してくるが
「まてまてまて、コイツらがずいぶんと熱にやられて憔悴しきっている。水なりを与え続けたりできる奴がいてくれた方が助かる。あと、人手も残ってくれればさらにな」
と、船長から鎧姿の面々の対応に残ってくれという嘆願めいた内容がこぼされていた。
その言葉を聞いた尖り耳たちは、一瞬、考えを巡らせる為に口を閉ざしてはいたが、
「確かに、コイツらを無視していったら、リーダーにどやされるな。それに何かあったら目覚めが悪くなるわな」
「‥‥‥むぅ」
「諦めなラウザ。アイネスがあっちいったんだ、ここじゃぁお前が頼りにならざる得ない。それに、あっちいってもお前の魔法ぶっぱなせれる訳じゃないだろ?オレものこってやっからよ」
「ぐぅ‥‥‥わかったわよ」
そういって、耳が上に尖っている生物は諭される恰好で説得されていた。
「っと、そうだアーネストさん。ついでにコイツを一つ持って行け」
船長からは、いつの間にか近くに立てかけてあった木の棒途中からその先に、青白い金属らしき矢の様な形のモノがついている、いうなれば、一つの銛の様な代物とでもいうべきものなのだろうが、その先端はカエリという形状が、どことなく変わったものであった。
そんな銛を手にとっては此方へと手渡されるが、特に重たくもなく軽くもなくといった感じだった。
「あんたの持ってるその代物には劣るかもしれないが、こいつも魔封具の一つだ。ここで使われないままでいるよりも、そっちが持ってた方が何かの役に立つかもしれないからな。持って行け」
「わかった。ありがとう」
「おう、気をつけてな」
「リーダーに無茶するなと言っておいてくれ」
「いっつも、無茶するからね、うちらのリーダー。コレも忘れていってるし」
と、一緒に渡されたのは水袋。
そういえば、っこの水袋、鎧姿に渡したまんまで先に進んで行ったな・・・。
「たしかに、無茶をしてそうだな」
「でしょー?」
そんな苦笑ともいえる内容で受け答えをしてから、先ほどの場所に戻るべく扉を潜り抜けていった。
* * *
リーダーと呼ばれた生物が向かった先、その方向へと進んで行くと、一つの扉が行く手を阻んでいる恰好に、きっちりと閉じられていた。
その扉のレバー部を操作しては押し開けようとすると、かなりの重たさで妨げてきている感触があり、力を込めては開けていくっては先に進み、再び扉に出くわしては開けて先に進んではみるが、一向にさきに進んだはずの生物と出会う気配がなかった。
ただ、炎といえる物はいまだ見える事もなく、ただただ壁の温度が高い状態という状況が続いていた。
そうして、その進む先に再び扉が現れ、同じように開けていくと、異様に強い風が吹き込んできた。
扉の先、そこは壁のない通路とでもいうのだろうか、接地されているのは手すりだけの通路であり、その手すりから先に見えるのは、火の海とでもいう真っ赤な炎が巻き上がっており、そこから黒い煙が立ち込めている状況だった。
そんな貨物室ともいえる空間に、その場にはふさわしくないとでもいう恰好で、その空中に浮いている存在が目に付く。
水色の様な色合いで、人の様な恰好で、その頭部と思われる部分からは10本近くの触手が生えているとでもいうか、細長いクラゲをひっくり返したようなとでもいうのか空中を遊泳しているという形で揺らめくように移動していた。
そんな存在が、1匹ではなく、2匹で
そんな存在を手すりから見上げる恰好で眺めていると
「アーネストさん!扉開けろ!扉!!」
急に自身を呼ぶ声が聞こえてきたが、その手すりの途中から下へと降りる階段が設置してあり、その階段から何かを背負ってる先ほどのリーダーが叫んできていた。
その鬼気迫るとでもいう迫力に負けて、今まで来た扉を大きく開けてはリーダーが通りすぎた後にすぐに扉を閉め、リーダーと鎧甲冑姿のがその背に背負われていた。
「ぜぇ……はぁ………来てくれて、正直、助かった。み、水‥‥‥は、ああ、渡したまんんまか‥‥‥」
「それも預かってきたぞ」
と、水袋を受け渡すと、慌てた恰好で水を口に含んでは、ゆっくりと飲み込んでいき、そうして背負っていた鎧甲冑の存在を下しては
「おい、水だ。慌てずゆっくり口に含むんだぞ」
そう言って、膝で抱えるようにその生物の口へと水袋の口をつけては、ゆっくりと流し込んで行った。
その水袋の口をあてがわれた生物といえば、その流し込められた水をゆっくりとではあるが、飲み込んでいるのが解ったが、その生物といえば、見るからに女性といえる特徴を持っていたりしていはいたが、その顔には紅く焼けただれた痕が酷く残っている状態であり、いうなれば、重度のやけどを負っているという形でもあった。
ほかにも、その甲冑にも何かしらの酷い損傷が受けている事が、傍目でわかるほどにひしゃげていたりもし、あまりよろしくない状況というのは、一目瞭然といえる状況だった。
「こんな時、アイネスがいてくれれば‥‥‥」
「うゥ・・・アツ‥‥イ・・・」
無意識なのか意識があるのかわからないが、ようやく言葉を口にしてきてはいたが、その状況はあまりに良いという表現が出てきてくれるものでもなかった。
そして、そこでようやく気付いたが、その鎧甲冑を背負ってきた存在の背中も、焦げ付いている痕ともよべる損傷をしており、こちらもタダではすんでいない事も物語ってもいた。
「ちょっと待ってろ」
そういって倉庫から取り出したのはタンクを背中に背負うタイプの水鉄砲。
形状的に銃というものというよりも、筒というのが正しい代物ではあるが、水を吐き出すという意味ではこれで応急処置的な対処ができるはずである。
「とりあえずは、これで」
「な、なんだ!?どこからソレ・・・てっ!」
何かしらの驚きをされたが、そんなのは関係なく、そのトリガーを引いては散弾モードで生物相手に放水を開始する。
吐き出された散弾は、二つの生物に降りかかる形で水浸し状態へと陥らせた。
びしょ濡れになった片方からは
「うわっっぷ・・・冷てぇ‥‥‥って、なんだソレ?」
こちらの行動に興味を持ったのか、床に置いている背負いタンクと手に持っている筒を見比べては此方へと聞いてきた
「水鉄砲だな」
「水デッポゥ?」
「水を飛び出させる道具だな」
「あー、消火用の放水具か何かか。というかなんでこっちにぶっかけてんだ?」
「火傷には水で冷やすと良いというからな」
「あぁ、確かにそう言うな・・・」
「で、どうするんだ?2匹というのは聞いてなかったが」
「あぁ・・・2匹だと、2匹とも無力化しないと厄介だからな、対処するにしても人手が足りてない
‥‥‥」
そう扉の方を見ながら、2匹という言葉を投げかけると、その点に関して同意しては、膝に抱えている生物の状況を確認するかのように眺めており、こちらも先ほどぶちかました水分が、予想よりも早く乾きそうになったを確認すると、「とりあえず、乾かない様に濡らしておくぞ」と了承を得てから、再び水をぶっかけておいては覚まさせない様にしておく。
そんな状態で、何言う事も無く数回ほど水濡れになった二つの生物だったが、意を決したのか
「どちらにしろ、今はコイツの手当を早めにしなけりゃまずいだろうな‥‥‥」
「そういえば、甲板に港湾の治療班への搬送が開始されている頃かもしれない」
「それは、本当か?」
「ああ、ここに入って来る前に、吊り下げ担架を用意とか言ってたからな」
記憶を思い出してみれば、船団長がそんな事を言っていたはずである。
「‥‥‥よし、いったん戻る事にする。相手の数も確認できたし、あとは消火班が徐々に消し止めていけば、相手はアイツらだけになるはずだしな」
そう言ってから、膝に抱えていた鎧姿の生物をゆっくりと背中へと背負いはじめ
「すまない、扉の開閉役を頼めるか?」
その言われた役目を承諾し、ふたたび船長たちが待つ場所へと引き返していった。




