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鎧集

「っと、紹介するのを忘れてたな。こいつはキッド、一応ここにいる腕の立つパーティーの頭だ」

「船長、略称だそれ。いい加減、名前覚えてくれって」

「別に間違ってないだろう」



 船長と呼ばれた生物(ナマモノ)に対して、リーダーらしき生物(ナマモノ)が諦めのため息とともに苦笑しながら、



「船長から紹介に上がったが、一応ここにいるメンバーのパーティーリーダーをやってる。"オルキッド"だ。で、こいつ等が‥‥‥」

「オレ様はダットだ」

「私の名はアイネスと申します」

「デュー」

「アタシはラウザね」



 と、各々軽く自己紹介が続いた。

 牛頭が親指で自身を指さし、薄緑の肌色は両手を前に携えて一礼をし、耳が後ろに尖ってるのは座りながら片手をあげるだけであり、耳が上に尖ってるのはウィンクをしながら、順番に自己紹介がなされていった。



「えーっと、自分はアーネストだ」

「よーし、自己紹介が終わったらそろそろ行けよ、時間がもったいない」

「わかってるから、そう急かすな。よし、アイネスいくぞ」

「はい。わかりました」



 そう行った牛頭と薄緑は、ついさっきまで自分が下りてきた階段の方へと向かっていき、さらに下層へと続いていると思われる階段を降りていった。



「んじゃ、アタシたちも行くわ、さっきは左だったから‥‥‥」

「行くのは丁字路を右だ」

「言われなくてもわかってるわよ!っていうか行くわよ!デュー!」

「へいへい」



 からかっているのか、それとも口喧嘩とも呼べるのかどうかわからない二人組は、大きく開かれた扉をくぐってはその点滅している照明が照らしている通路の先を右側へと消えていった。



「それじゃぁ、アーネストさんだっけか、オレらも行こうか」

「‥‥‥わかった」



 案内されるかのように、その生物(ナマモノ)の後を追従する形で、ようやく現場へと続く通路へと足を踏み入れる事に成功した。




   *   *   *


「さっきまでいたところよりはマシだが‥‥‥本当に暑いな‥‥‥」



 リーダーと言われていた生物(ナマモノ)からは、現状の状況に対する事を口にされながら通路を小走りに進んでいる状況なのだが、記録しているMAPからみてみると、向かうべき場所を迂回しているかの様なルートを進んでいる感じであった。



「この方向でいいのか?」

「ああ、オレたちは、さっき上層階で何とかしようとしてたからな、あっちは居るだけで汗がとめどとなく流れおちていくほど暑かった。そこで、こんどは中層から下層から向かうって話だ。こっちの方がまだ暑さは抑えられているっぽいから、そっちの進入口を確認しに向かってるところだ」



 そう説明を受けながら、ようやく到着した中層入口と呼ばれる場所。

 その場所には、大きな金属製の扉が行く手を遮るかの様に存在していた。



「熱っ!なんだこりゃ、ここまで熱いって‥‥‥」



 その扉のドアのノブ?らしき物を素手で触ろうとしたリーダーと呼ばれた生物(ナマモノ)は、すぐさまそのドアノブ?から手を放していた。


 確認の為に扉の温度状況をみてみれば、基本的に扉や壁全体が80℃という数値を超え90℃にさしかかろうとしている所もあり、そりゃぁ素手で触れば熱いという訳だよなと思っていたら、それでもあきらめきれないのか、今度は手に布を巻いてはそのノブらしき物を掴んではスライドさせようと奮闘し始めた。



 そうして、しばらく奮闘していたのだが、ピクリとも動く素振りを見せない大きな金属製の扉をひと叩きしたあと、



「こりゃココはダメだな‥‥次、下層にいってみるか‥‥‥」



 そう自身の手を冷ますかのように振りながら、その扉を恨めしそうに見つめていた。

 次に行くとか言ってきてはいたが、とりあえずこの扉が開けれればよいのだろうか?と



「ここを開ければいいのか?」

「一応な。この先にもう一つだけ隔壁となる通路層がある。その通路層づたい貨物室の周囲状況を確認に向かうから、そこに侵入できれ‥‥ば‥‥‥っておい!あんた!何やってんだ?」



 リーダーと呼ばれていた生物(ナマモノ)の答えを全部聞き終わる前に、扉の取っ手に手をかけては力を加えていってみる。


 握っている扉のノブ?から何からが伝わってくる感触があるのだが、たぶんこれが"熱さ"的な感触なのだろうが、あまりに気にもならない感覚でもあり、この伝わってきている"熱さ"程度では人工皮膚が焼けるという事もなければ、手甲の指の金属部からある程度の熱による過熱された臭いぐらいしかしてこない程度でもあった。



 そもそも素体自身の耐熱性能から言えば、さらにこの倍以上の温度でも特に問題が起きる事はないはずである。


 そうして、そのままゆっくりと金属の扉を横へとスライドさせていこうと思ったが、結構重たい感触になっていたために、今度は両手を使っては体重をかけるかのように力をかけていくと、



「お、おい!!」

「よいっ・・・しょっと・・・」



 そう気合を入れるかの如くに力を加える量をさらに増加させてみようと意識をしてみると、その大きな扉から"ゴキン"とでもいう低い音と感触を伴った後に、急に軽くなりだしてはゆっくりとスライドしていく感触に変わっていった。



「お、おぅ‥‥‥マヂかよ‥‥‥」



 そうして、金属製の扉の半分ぐらいまで引き開けてみる事には成功した。


 その際、引き開けられた場所から強風とも呼べる風が身体を貫いていった感覚らしきものがあったが背後から「アッツゥ!」という声が聞こえてきたので、熱風だったのかもしれない。



「というか、なんなんだ?それよりも大丈夫なのか?」

「ん?そういえば、壊した感触みたいなのはあったが‥‥‥まずかったか?」

「いや、そうじゃなくて‥‥‥その……手とか大丈夫なのか?」

「手?ああ、熱さは問題にならないからな。ほら」



 そう言いながら手甲付きの手のひらを見せ、握っては広げてを繰り返してやると、微妙な面持ちでその手甲を眺めてはいたが、



「そりゃぁ‥‥‥って、そういう代物なのか?そういう物があるとは聞いた事はあるが‥‥‥」



 そんな驚きとも呆れとも言える表情をしながら、何かしらブツブツと独り言を言い放ち始める存在が一つあったが、それを置いておいて開いた隙間から顔をのぞかせてみる。


 その覗いた先は、こちら側とさほど変わらない通路が左右に続いていた。



「それで、このまま先に進めばいいのか?」

「あ、あぁ‥‥‥ちょっとここで待っててくれ、この先を見てくる。この先の通路に火の手は‥‥‥なさそうだな。なら、ついでだ、全開まで開けておいてくれ」

「了解」



 リーダーと呼ばれてる生物(ナマモノ)は、隙間から身体を滑り込ませて中の通路へと踊りでると、そのまま速足で先の曲がり角まで進んではその姿を消していった。


 その間、とりあえずはこの大扉を全開まで開けようと、その扉の端に体重をかけながら押しやっては全開という状況にまで開口部を作り上げたとき



「おーい!手を貸してくれ!!」



 と、消え去った方向から声がかかってきた。




   *   *   *



 声をかけられた先、その先には数人の鎧姿とリーダーと呼ばれる生物(ナマモノ)たちが、お互いに肩を貸し合っている状態で通路を奥から此方に向かって歩いてきていた。



「とりあえず、ここで止まるのはまずい、さっきの扉の外まで連れ出すから手伝ってくれ」

「あ、ああ、わかった」



 何かしら意識もうろうという感じで足取りが重たい感じのまま、歩くのがやっとといえる鎧姿の生物(ナマモノ)を両脇に抱えては、速足でその場から移動していく。


 その最中、両脇に抱えた存在からは、何かしらのうめき声という声しか聞こえてはいたが、その言葉を無視する形で二人、四人、と連れ出して、あとは肩を借りながらも自力で何とかたどり着いた生物(ナマモノ)を含めると、総勢7名といったところである。



「ほら、水だ。これだけしかないから、回して飲んでくれ」

「助かった‥‥‥礼を言う‥‥‥」



 扉の場所に来るまで、何か大きな荷物を背負いながらも自力で歩いてきていた生物(ナマモノ)

 その生物(ナマモノ)は、分けてもらった水を一口二口と口に含んでから、咽喉が枯れたような声で言葉が発せられた。



「それでだ。この先の状況を聞きたいんだが、話せるか?」



 床に倒れている鎧姿の鎧を脱がしながら、その礼を伝えてきた生物(ナマモノ)へ問いただしてきていた。



「ああ、我々の任務は、今回の積荷の護衛を任されており、魔物が現れたとの事で貨物室に向かった我々は、天井に穴が開いた先の真下、炎が揺らめくその中央その空に、人型の様な透明な魔物が浮いている状況に出くわした」


「それで?」


「ただ、その場所がちょうど我々が守るべき荷物の上にいたため、その魔物を払いのけようと炎弾を放ったのだが、その魔物が紅く変色し出したかと思えば、いきなり衝撃ともいえる振動を感じたかと思えば、吹き飛ばされてしまっており、周囲はさらに炎に囲まれる恰好になっていた」



 その説明を聞きだしていた側は、「はぁ‥‥‥」と深くため息をついてはいたが、話を先に進めようとさらに「それで‥‥‥?」と続きを聞き出そうとしていた。



「そんな時に隊長が、囮として相手を引き付けるからと、その隙に護衛の箱を壊して中身の対象を持ち出せと‥‥‥」



 そういえば、鎧姿の人物とその二人は何かしらの大き目の箱らしき物を背負ってはいた。

 たぶん、それがその護衛の対象なのかと思ったが、詮索はしない方が良いだろう。



「その荷の詮索はしておかないが、あんたらが余計な事をしたお陰で散々な目にあいそうだ。あんたらが見た魔物、特徴からほぼデセマニバスで間違いはなさそうだが…‥‥そいつに、魔封具を使う前に魔法を使うのは御法度というのが、海の常識みたいなモンがあるんだよ」

「なんだって?」


「そうでもしなきゃ、そのまま同じ魔法(・・・・)同等以上(・・・・)の威力で撃ち返してくる。その特性せいで、アイツがなんて呼ばれているか知ってるか?海の奇術師(マジシャン)だ。魔術師(メイジ)じゃなくてな」

「‥‥‥」

「だから最初に言っただろ?専門屋に任せろって。指示に従わずに出てったツケがこれだ」

「‥‥‥」



 そういって、倒れ込んでいるほかの人員を一瞥したのち、ふたたびその相手をした人物に向き合い



「とりあえず、このまま一旦戻る。あと、あんたらの隊長がどうなろうが知ったこっちゃねぇ」

「なっ‥‥‥」

「あんたらの第一の目的は、"その荷物を守る"事なんだろ?なら、隊長さんだってわかってやってるハズだよな?」

「ぐっ‥‥‥」

「助けてください。と言われても聞かないぞ?あんたらがその荷物が優先な様に、オレらは"この船を守る"事が優先なんだ。わかるだろう?」



 そういわれた鎧姿の一人は、そのまま首を垂れるかの様にうなだれてしまっていた。



「よし、という事でアーネストさん。コイツラを船長のいたところまで運んでやってくれるか?」

「それは構わないが‥‥‥そっちは?」

「このままじゃまだ"聞き出した情報の確認不足"だ。精査を兼ねて確認の為にもう少し先でも見てくるさ。その時に、"偶然に人を見つける事"もあるかもしれないしな」



 そういいながら扉の先を眺めている存在に対し、首を垂れていた存在は勢いよく顔を上げ「そ、それは・・・」とつぶやいた後に、「本当に助かる。この礼は後程、必ず」と、頭を深々と下げては感謝の意を表していた。

 そんな礼を向けられた対象といえば



「そんなモンいらねーよ。ついでだ。ついで」



 と、そっけなく返していた。


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