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道?

 飛び降りろ、断る という水掛け論的なやり取りをしていても埒が明かない状況。

 一刻の猶予…とまでは行かないが、早急に退船してもらった方が良いのは確実でもある。



 さて、どうしよう



 どこかの誰かは、女性を象徴する部位の一部を使っておびき出せと、のたまってきたりするが、よくよく考えれば、海の中にいる時点でその様なものが見える訳がない。


 なんというか、自分でもかなり思考がおかしな事になってるなと冷静になり始めたとき、あちらが来ないなら、此方から出向けばいいかという、至極単純な回答方法を思いつく。



 こんな時、フライトユニットあれば楽なんだけどなぁと思いながらも"登るか"と、考えるまでもなく左腕を上部に向け、照準を合わせる事もせずにとりあえず射出させる。


 パスンという音と共に、射出されていくアンカーは、上方へ飛んで行ったと思えば空中で方向を変えては甲板の方へと飛んでいき、"unlock"から"lock"へと表示された事から何かに突き刺さった事が表示される。


 念のためにと、軽く引っ張てみるも弛むこともなさそうである。

 確認も取れたので、船体の壁に足掛けを行いながら、飛ばしたワイヤーを巻き取りしながら船上へと登っていった。




   *   *   *


 いざ甲板に登って来てはみたが、一番最初に目に入ったのは、空へと昇っている黒煙がさらに規模を増していた。


 その黒煙が発生している場所、その場所を見下ろす形で確認できたのだが、貨物が散乱してある中央、その中央にポッカリと穴が開いており、そこから煙が立ち上がるという形だった。


 内部から破裂したというより、"何かが上から突き破った"とでもいうのが正しいのだろうか、それほどに大きな穴が開いているという状況だった。



 っと、それよりも先ほどの生物(ナマモノ)を見つけるのが先である。

 船の縁にいるのは確認できていたので、すぐには見つかったのだが



「おい、大丈夫か?」

「なっ!どうやってここに!?」

「普通にワイヤーを使って壁を登って?というか、大丈夫じゃないな」



 と、細かい説明が面倒くさかったので説明ついでに実物のワイヤーとアンカーをぶら下げてみせると、どこか納得したような顔つきに変わっていった。


 そんなその相手の状況を観察してみたら、下から眺め見ていた時は勝手に水兵かと思っていたのだが、しっかりとその姿を確認すると、それは全く違う格好だった。


 なにせ全身を見れば、きれいにまとまった西洋風の鎧甲冑姿をしており、その腰より下の両の足は一般的な膝の位置よりも上側という場所に関節が出来上がっているとでもいうか、普通なら曲がりそうな方でもない方向へと曲がっているのが見て取れた。


 その顔はといえば、擦り傷など細かい傷があるが若い青年といったところだろうか、そこに何かしらの恐怖とでもいうべき影が落ちて…‥‥って、コチラを見たかと思えば、視線を下げてくる。



「というか早く退船しないと危ないぞ?」

「ま、まだ仲間が中に‥‥‥じ、自分だけが下りる訳には‥‥‥」

「あぁ、中にまだ人がいるのか・・・」

「そ、それに、この足では泳ぐこともままならない、そうなれば溺れるしか‥‥‥」

「まぁ、確かにそうかもしれないな」



 確かに、こんな両の足が使えない状態で鎧甲冑の姿のまま海に潜れば、重さ‥‥で‥‥‥?



「というか、その鎧を脱げば、浮く事はできるのでは?」

「・・・?!」



 "そうか!"的な驚きの表情をこちらに向けてくる青年。

 よくパニクってると頭が回らないというが、そこまで気づかないものなのだろうか。



「いや、気づけよ」

「す、すみません、先ほどまでデセマニバスと戦っていたので‥‥‥」

「デセ‥マニバス?」

「"海の奇術師(シー・マジシャン)"と呼ばれる魔物ですよ」



 そういわれて当たりを見るも、それらしい存在が視界に入る事はない。



「全然、それらしいのは見当たらないが?」

「その甲板に開けた穴から中へ行ったかと、デセマニバスが魔術を放ったときに穴が出来て周りが吹き飛ばされたのを覚えています。自分はその際に他の荷物と一緒に飛ばされてしまい、この有様で・・・、他の者は追いかける形で船内へと‥‥‥向かいました‥‥‥」



 悔しそうな口ぶりでそう説明をしてくれる鎧青年。

 となると、海へ放り込まれた人や荷物とかいうのは、その…‥デセ何とかという魔物?が何かしらしたときに甲板から飛ばされたとかそういうのだろうか?


 まぁ、その存在を追いかけて行ったという事だから、退治できるんだろう。

 勝てそうになければ、大抵は逃げるだろうし。



 そうなれば、とりあえずこの鎧青年を下で手当してもらった方が速そうでもある。



「とりあえず、連れて降りるぞ」

「えっ?」



 了承を得る前に鎧青年を肩に担ぎ、船べりにその身体を乗り上げて‥‥‥そのまま飛び降りる。



「ひぃぅぇぁぁあああああ!ごぶぼぁ」



 背中の方から何かしら悲鳴を上げている存在があるが、その悲鳴が続くこともなくすぐに海中へと没するが、バラスト調整を終わらせれば何の事はなくすぐに浮上する恰好になり、そのまま平泳ぎで背中の荷物を海上に出したまま進むのだが、背中から悲鳴や声が聞こえなくなっていたのには少し不安がよぎったが、心音や呼吸音は聞こえているので、気を失ったのかと思いつつも作業艇にたどり着く。



「アーネストさん!どうやって・・・」

「それよりも手を貸してくれ、こいつ両足が折れてるみたいだ!」

「はっ、はい!」



 小麦肌の青年の手を借り、担いできた鎧青年を作業艇へと引き揚げ、見よう見まねで添え木をしようとその脚絆となる部分を外していくと、その部分が異様に膨れ上がっており、その部分を触れてみると鎧青年は目を開けることもなく酷く唸りだしていた。



「けっこう酷い折れ方してそうだ」

「その場合はどうすれば、どうすれば・・・」

「アネさん!どうした!?」

「けが人だ!酷い骨折かもしれない!下手な応急手当がしづらい!というかわからない!」

「わかった!クァン!お前も(オカ)へ送って治療班に通達してこい!」

「はい!船団長!」

「アネさんはコッチ来てくれ!」



 先ほど、変な手段を訴えてきた生物(ナマモノ)から声がかけられ、状況を伝えるとすぐさま指示が飛んできた。


 というかあの人、船団長とかいう役職だったん?それは知らなかったが、呼ばれたので船団長のいる作業艇へと乗り移り、鎧青年を乗せた小麦肌の青年の作業艇は、そのまま陸地の方へと移動し始めた。



「で、アネさん。上はどうだった?見てきたんだろ?」

「えっ?ああ、甲板に穴が開いていて、そこから煙を吐いてる状態だった」

「ふぅむ、他には?」

「それと、気絶する前に聞き出せれたが、その穴を開けたのはデ…デセ……マ何とかいう…」

「ん?デセマニバスか?」

「それだ。で、その魔物が穴をあけて中に入っていったとかで、他にも乗り込んでたのが後を追っていったと」



 "ふぅむ"といった感じで、船団長は腕を組んでは思しはじめていた。



「アイツは"魔封具"さえ持っていたれば、気を許さない限りは問題にならない相手でもあるが、先に魔法を撃たれると厄介な相手だからな」

「"魔封具"ね。そんな道具を持ってるから追撃でもしに行ったといった所か。そんな珍しいモノがあるもんだ」

「ん?何いってんだアネさん。アネさんだって持ってるだろ?ソレ」



 そういって指さされたのは"ガーランの突剣"

 そのガーランの突剣を抜いてみれば、太陽光に当たってか虹色の様に光り輝いていた。



「それも一種の魔封具だぞ?小さけりゃ魔除けにもなる代物だ。ただ、大系以外の海生魔物限定だけどな」

「これがね」

「というか、大抵大系の素材で作られた物はそういう道具になるからな。アネさん、知らなかったのか?」

「全然」

「はぁ・・・まぁ、覚えておいてくれればいい」



 そういえば、ここ数日、魔物とかそういう大きな海生生物が現れるという事すらなく作業できてたな。

 魚なりの生物(ナマモノ)を見ることも無くなったのは、この為なのだろうかね‥‥‥



 "ドォゥン"



 そんな会話をしているとき、空気を震わせるぐらいの籠った音が周辺に響き渡る。

 そして、その音の出どころからといえば、さらに大きな黒煙が立ち上る恰好になっていた。

 その強く立ち上がる黒煙を見る自分と船団長を含む数人の生物(ナマモノ)たち。



「ありゃぁ、ヘマしたのかもしれんな」

「どうします?船団長」

「魔封具を積んでもいないからな、応援に向かうわけにもいかんだろ」

「けれど放置してもいけない相手ですよ?しかも海中にいる訳じゃぁないから今がチャンスとも」

「それなら、魔封具を取りに戻ってオレたちでも」

「火災もしてんだぞ?下手に二次災害を出すわけにゃいかん!」



 あーだこーだと話が進み煮詰まりそうだったが、それよりも"その道具"を持ち、火災でもたぶん平気な自分が行って見てくればマシな気がしないでもない。


 ただ、面倒事に自分から飛び込むというのも何だか厄介ごとを招きそうだし、それならばと、ここは船団長と共に一度引き上げて出直しをすると、火災が広がってしまうし死者が出ることも確定という可能性も出てくる。



『アーネスト様、シー殿をお連れしました』

『えっ?ああ、今けが人がそっちに行くと思うから、識別救急(トリアージ)を怠らずに順次対応していく様に指示しておいて』

『アーネスト様、シー殿はアーネスト様のお傍に行きたいと愚図っておられますが………いえ、こちらで対処します』

『え?あぁ・・・おう・・・いや、そうだな。ちゃんと出来たらご褒美をやるとでも言っていいよ』

『‥‥‥よろしいので?』

『今回ばかりは、茶化しても仕方ないからな。その代り、きっちりとしっかりとヤレと』

『‥‥‥その件、私め、いえ、わかりました。伝えておきます』



 唐突にヒョウさんから送られてきた通信で、とりあえず救命士S(シー)の面目躍如をしてもらう事を通達しておいたが、そういやシーにはMode:Rescueとか言ってた割に自分はそんな事してないな。


 いや、Rescueという行為自体、生物(ナマモノ)が入り込めない場所での活動を行うというのは、忘れていた本分なのでは‥‥‥



 ………そうだ、そうだよ。何やってんだよ自分。



 これこそ念願のシチュエーションの一つじゃないか。



 この"生物(ナマモノ)では諦めてしまうような災害現場において要救助者を救出してくる。"という、この素晴らしきロボ的な機能を十二分に発揮できるシチュエーションが整ってるじゃないか。



 これは災害現場に向かわなければロボ道が廃る!



 そうと決まれば、まずは手持ちに何があるかの確認。

 共通倉庫(デポット)内確認、よし、生物(ナマモノ)用の潜水も兼ねてる酸素マスク等もある。消化の散水用としては、イベントで手に入れた景品の度が過ぎた"本気のおもちゃ"と言われた水弾を射出する水鉄砲(散弾も可)があるし、あとは、耐火用の布は、ありふれた外套の代用でいいか、これでも数百度は耐えれる難燃の代物だしな。



 よし。とりあえずの対応が出来る恰好にはなる。

 あとは実行に移すのみ。



「えーっと、たしか親方は"全部拾って来い"だったけか」

「アネさんどうした?確かに親方はそう言ってたが、アレでは残念だが…」



 船団長含む他の生物(ナマモノ)が見守られているが、コチラはやりたい事だけ伝える。



「なら、ちょっとアソコに行って拾ってくる」



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