難
朝の騒動の後、普通に着替えては朝食をとってはお見送りを受けながら宿を出、生物たちの朝の喧騒が発生している区画の中を通り過ぎては現場へと到着する。
そうして作業場に到着すれば挨拶を交わして先日と同じ様に沖に出ては作業を行い、昼食時に小さなドタバタ劇を開催しては、午後からは後片付けを行っては追加で複製図を事務所で書き起こす作業に没頭する。
就業となる頃には遠くに見える貨客船がパッチワーク的な姿になっているのが見え、真っ白なのに勿体ないという心境と、どうやって固定してるのか?という疑問を抱きながら拡大して状況を一定に眺めては、屋台店に寄り道をしてから宿へ戻り、夕食をとっては夜食用にと肉料理を部屋に持ち込んだりしては、やらせたくはないがやらなきゃ維持できないだろうメンテナンスを受けては就寝し、目覚めた後に重石Sを放り出しては、その日が始まる。
そんな日常を繰り返す事一週間近く
何も問題が起きる事もなく、日々が経過しているというのは"平和だなぁ"と、そう感想めいた事を思っていたりはしていたが、周りの殆どからどこかの誰かが広めた"アネさん"(たぶん姐さんとダブってる気がしないでもない)呼ばわりが定着し始めていて、折衷案で妥協した事を後悔し始めていたりもした。
また、仕事場から見えるあの大型貨客船はといえば応急修理という形でパッチワーク状態となっては、とうに出航していたりする。
そうして、今度は大型貨物船が来航するという事で、再び軽い午後の作業を終わらせては同じ様に作業停止を余儀なくされている生物たちと一緒に、手をかざしては沖合を眺めている状態であった。
今日は日差しが強いのか、海面は陽炎のごとく揺れている恰好になってはいるが、その見える先の水平線に、何やら黒い影の様なモノが移動しているのが確認できる。
「おっ、見えてきた」
「アネさん、目ぇよすぎだ。全然みえねぇよ」
「オレも見えねぇ。お前、見えるか?」
「無理」
x8という状況で遠望しているが、それでも水平線の向こう側から上に、何かしらの大きな移動物体があるというのをようやく確認できるといったところなのだが‥‥‥
「‥‥‥ん?あれは、煙?」
「煙って、アネさん、今時の船から煙なんて」
「いや、しっかりと黒煙?みたいなのが上がって」
「それが本当ならマズいな‥‥おい、誰か望遠鏡もってこい。あと親方呼んで来い」
「うっす」
そういわれて、下っ端の作業員がその場を離れ、班長が望遠鏡でその遠くを除き見始めていた。
こちらの視覚情報からは、何かしらの煙の様なモノが上に立ち上っているのが確認できるのは間違いない。なにせ、ある一定の高さにまで、その煙といえる存在が昇っているからこそ、その対象が認識できているのだから。
そんな中、沖合にあった大きな物体は徐々にではあるが此方の港へと向かっているのがハッキリとその船体といえる代物が確認でき始めたが、やはりその上部からは‥‥‥
「確かに、煙が昇ってるな。火事でも起きているのかもしれない‥‥‥お前ら、いつでも出れる様に準備しとけ」
「「「うっす!」」」
望遠鏡をのぞいていた班長が、その内容を口にし始めると、周囲の野次馬だったものたちは、自分たちの使っている作業船に乗り込んでは点検を始めだしていた。
そんな折、事務所の方からは息を切らしながらやってきた親方は持参した双眼鏡を使っては、その沖合へと注意を向けていた。
「まだそんなに大きくない煙だな、火の手も見えん。あるとしたら内部か?」
「貨物船ですからね、甲板の貨物がという事も。とりあえず、いつでも行ける様にはしてます」
そんな会話内容を聞きながら眺め、ようやくx4でも全体がハッキリと見えてくる貨物船。
見た目は前回の大型貨客船とは違い、普通に艦橋が前にある単胴船といったところで、煙が立ち上がっているのは艦尾よりの後ろ部分。
黒煙ではあるのだけれど、今は勢いよくという訳でもない。
一本の柱とでもいう形で、風に流される形で形成されている煙という感じだったが、徐々に速度が落ち始めたかと思えば、ハッキリと見えてきた甲板にて複数の人影が何やら行っているのが見える
「船から海に物が投げ込まれてる?」
「荷物?木箱?救命艇まで放りはじめてるな」
「消化作業をあきらめたか?よしお前ら!ちょっくら出て全部拾ってこい!!一つも残すなよ!!!」
「「「うぃっす!!」」」
班長の報告に対して、親方は迷う事もなくすぐさま各人へと指示を出す。
その指示をまるで、"まってました、わかってますぜ"という形で、作業艇が次々と煙を上げている船の方へと向かっていく。
「すまんが嬢ちゃんも行ってきてくれるか?最悪、溺れる奴を拾ってもらわなきゃならんかもしれん」
「アーネストさん、準備はできてますよ!」
「了解」
小麦肌の青年からの合図もあり、いつもの作業艇に乗り込んで現場へと向かい出す。
その際、ふと最悪の事態に備えるかと思いついた事に行動する。
『あー、ヒョウさん、聞こえる?』
『はい。聞こえております』
『シーの奴を呼んできてくれる?』
『シー殿を、ですか?』
『そう、Mode:"Rescue"で来いと』
『なるほど、承りました。それでは早速』
そう了承を返したヒョウさんの位置情報が、一瞬にして周辺MAP上から消えていた。
とりあえず、アイツにはリペアのほかにも一応はレスキュー機能も付けてある。
そのため、生物関連に対してもドクターとしても立ち回れる機能も付加させてはいるのだが、正直いままで使った事が無いので性能に関してはかなりの未知数ではあるのだが、ないよりはましである為に準備として呼んでおけば、何かしらが起きてしまった場合にすぐさま対応できるはず。
ある程度の手を打っておいた頃、すでに漂流物が浮かび作業艇にコンコンと当たって来る場所へと到着する。
正面にはそれなりに大きく見える貨物船、周囲に散らばり浮いている荷物群、その中でほかの作業艇といえば棒やロープなどで海上にいる船員を引き上げ「がんばれよ!」と激励をかけながら毛布をかぶせたりし、作業艇に引き上げられて一定以上になった船は沿岸部へと移動していく。
阿鼻叫喚というか、完全に救助を作業という形で一つ一つ的確に処理されているという印象だった。
「おーい、アネさん!泳げない奴がいるそうだからソイツを頼む!」
と、二度指さされる方の船の甲板、そこには必死に縁にしがみついている船員らしき生物が視認できた。
x2にてその対象を確認してみると、たしかに、あの形相からは泳ぎとかそういう類というか、水自体が怖いというか‥‥‥ん?あれ、それよりも飛び降りるのが怖いんじゃ?
と、自分がそう思った矢先、先ほど言ってきた相手に視線を向け直すと、胸の膨らみを表現するジェスチャーをしてから右手の親指を立て、それは見事というぐらいさわやかな笑顔を作っていた。
‥‥‥
つまり、自分(の身体的特徴)を囮におびき降ろせと、そういうことですか?
と、こちらが自身の胸を指さしてから、先ほどの船にいる相手を指さすジェスチャーを行うと、数回大きく頷かれた。
‥‥‥
「へいへい、やってやるよ!やりゃーいいんだろ!んじゃ、ちょっといってくるわ!」
「はい、お気をつけて。こちらはほかの作業艇の補佐をしてますので」
小麦肌の青年まで苦笑してるし。
そう思いながら、荷物が浮いている海域へと飛び込んでは、あの目標の下になる部分まで進んで見上げる。
確かに結構高い。4か5階建ての建造物?ぐらいの高さといったところ。
そこから飛び降りるとなると‥‥‥確かに怖いだろうなと。
「おーい、そこの奴!いい加減飛び降りてこい!!」
「断る!」
「ほかの奴らは飛び降りてるぞ!」
「絶対に断る!!」
とてつもなくメンドクサイ事になっていく気がする。
"どうすれば良いんだ?"という意味合いを含んだ視線を、先ほど囮作戦を言ってきた声の主に向けるも、"他の作業してます。あとは、そっちで考えてくれ"といった感じで視線すら合わせてくれない。
見上げれば、黒煙は先ほどよりも太く大きく立ち昇り始め、この状況からどうなるかといえば、火災になるんだろうなというのは誰の目で見ても想像できる事でもある。
そんな中、飛び降りようともせずにしがみ付いている生物が一つ。
ほんと、どうすればよいのかね。




