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閑話:〇月X日 狩人組合 副所長室

原文から変わってきてるので、内容も変更しています。

ただ、大まかな流れは変わっていない‥‥‥はず。たぶん。メイビー。

 ハンター組合(ギルド)、その副所長室において、専用の照明がテーブルの端に設置され、その灯りに照らされる形で椅子に座っている人物と、そのテーブルを挟んでは直立している人物とが対峙する格好になっていた。


 テーブルの上には事務的な書類が積まれている中、そのテーブル向かいに立った人物から一つの書類が手渡されていたが、その手渡された書類を軽く流し目で見ていた人物から先に言葉が発せられた。



「イリアス、事を焦る奴があるか」



 そう言葉を発しながら書類をテーブルの上へと置き、両腕を組んでは目の前にいる獣の顔した人物へと睨む様な視線を向けていた。



「も、申し訳ありません…ですが、単騎でガーランを仕留める事ができる人材となれば……」

「それが焦りすぎだと言っているのだ。お前は査定の報告書を見ていなかったのか?」

「い、いえ、当初のは目を通しはしましたが…」



 その言葉を聞いたテオーネといえば、軽く横へと首を振りながらテーブル上に置いてある書面の一つを取り出して困惑顔をしている虎の顔のイリアスへと手渡す。

 その手渡された書面を受け取ったイリアスといえば、その記載されている文面に目を通しはじめ、そしてその途中で再び顔を上げ



「これは?」

「その査定の最終(・・)報告書だ。最後まで目を通してみろ」



 再び手渡された報告書に目を向けそこにはイリアスが見た報告書だったが、その後半部分には追記された後があり、その追記された内容というものが、持ち込まれた素材の状況に関しておよびその討伐された対象の討伐された方法(・・・・・・・)の内容報告であった。


 ガーランの討伐。


 ひとえに討伐と言われる行為なのだが、海生魔物となると船団なりを組んでは網を張り、無数の銛で致命傷を与える方式が良く執られる方法であるが、この追記されている報告書には、その素材の破損状況から言えば「あまりにも綺麗」であり、頭部への一撃が存在するという内容であった。

 なにしろ、先の方法で討伐された場合、大抵は穴だらけの状況になるために、内臓などの素材になる部分も大きく損傷している物が多くなってしまう。

 では、「綺麗な状態」という代物になるためにはどうやったらできるのか。



 ハンター組合(ギルド)に組するものならばすぐに答えは返ってくるだろう。



 ひとつは単純明快な答えである、"圧倒的な力量の差をもって一撃で仕留める"という方法、そしてもう一つは"上策をもって仕留める"方法である。


 前者でいうところの力量差による物という内容だが、ガーランという存在が生息しているのは海という陸上とは異なる場所である。

 その様な陸上とは異なる海の魔物に対して、圧倒的な力量を持ち得ている人物など、一部の種や特殊な技術を持ち得る者たちしか行えないと言われている。


 現に、一般的なハンターであっても一握りの人物が自身の魔術や策を講じる事によって、ようやくその状態で仕留めるという方法が行えるかどうかである。

 つまりは、ほとんどは後者の方法が多いと呼べる方法であるのだが、それでも人員としても人数が少なからず必要になってくる相手である。



「この内容が正しいのならば‥‥‥」



 言葉を詰まらせるイリアスに対し、テオーネは遮るかの様に言葉を続ける。



「その内容を確認するために彼女を観察してみたが、私の存在に気づいていた節があったな。いや、気づいているが気づかないフリといった所か?」

「副所長の"隠形術"を、ですか…?」

「ああ、そうだ。確実に認識はしていたようだったな。久方ぶりに"緊張"というのを感じさせてもらったよ。それだけでも第四層位では低すぎる人材だぞ?」

「確かに、第四層位程度では、副所長の隠形術は見破れませんね」

「それとだ、監視していた内容とその報告書、あとは話をしてみた内容から彼女は海人族の可能性が高いだろうな」

「まさか、そんな事は…‥」



 イリアスにとっても、その種族の名を耳にするのは珍しい物でもないのだが、本人としてもその存在を実際に見たことがあるのは、やんちゃともいえる行動を取っていた若かりし頃の記憶でしかなかった。

 そのころの記憶をたどった内容からすれば、見た目の容姿はともかく、その髪色も違えばその呼吸器ともいえる特徴的な装飾ともいえる部位もなく、また、その身体の大きさからも自身の過去の知見から否定が入っていしまう程に違いすぎていた。

 そのため、否定する言葉しか出せなかったのだが



「今日、観察していて新たに分かった事を挙げるならば"潜水時間が一刻以上"。下手すれば二刻といったところだ。イリアス、これだけでも心当たりは何になる?」

「‥‥‥」



 テオーネから放たれたその観察結果の内容。

 その内容からいえば、"常人"では決して行えない内容のものであり、自身の知識からいえば心当たりはない事もなかったが、他の方法もあるだろうと答えてみる。



「も、もしかしたら海獣族か、または道具を使用して‥‥‥」

「ないな。お前も見ただろう?海獣族の特徴ともいえる尾も無ければ、独特ともいえる肌でも無い。それと、それらしい物を使うといった形跡や動作すらも無かったからな」



 テオーネからの返答は否定であった。

 内容の仔細を聞けば、羽織っている物を外したかと思えば、そのまま海中へと飛び込んだという事であった。

 しいて身に着けていた物とするならば、籠手とロングブーツの様な"防具的なモノ"といった程度であり、あとは肌に密着しているともいえるありきたりな服装というスタイルだったという。



「それにだ、出身地が東方諸国よりもさらに遠いとも言っていた。さらに遠いとなると?」

「諸島連合‥‥‥ですか」



 答えをあげた本人すらも知識でしか知らない事ではあるが、その答えとなる場所といえば、東方のさらに東、極東とも呼べる場所に点在する諸島群。

 その連なる諸島群が形成する国家、通称"諸島連合"という存在があるという。


 その島々の中には、大陸とは異なり、他種族の坩堝ともよばれており、その種々様々な文化や考え方がそれぞれに存在しているという話であった。

 なおかつ、その諸島連合の大きな特徴としていうならば"海人達の国家"と言い伝えられているほどにその人口割合が高いと言われているのが特徴でもあった。



「先の潜水時間の状況も、もしかしたら何かしらの魔術式を使っているという可能性があるだろうが、それよりも、あのガーランの素材の状況から言えば、海人と言われた方が納得できる」

「水の加護、それも海の慈愛とよばれる特性のおかげで、地上のそれと同等、下手をいえばそれ以上に動け、海生魔物に対しての天敵ともいえる能力を持つという、アレですか?」

「ああ、それだな。そうでなければ、海中における優位性の高い魔物を誘導するという事は不可能だろう。さらにそこから綺麗に仕留めることなど到底できるものでもなかろう」



 水中、いやこの場合は海中であるが、特定の種族においては、陸上において行える動作がそのまま水中で行えるといわれ、そして、それ以上の"力"を持った行為も可能であるという事、そうして海生魔物に対してに何故かしらの優位性を得られるといわれ、"海の恩寵を受けている種族"として称えられてもいた事があった。

 しかし、その逆にその"称えられている神秘性"からこそ、何かしらの"神聖さ"を持っている物とされ、その種族を狙う輩が存在するのも事実でもあった。



「で、でしたら尚の事、我々組合(ギルド)に参加してもらい、保護監視をしなければまずいのでは……?」

「まぁ、あの身体の大きさだ。他にも巨人族と牛人族との混血という線もあるかもしれんし、どちらの血が強いかは確定しきれないだろうが‥‥‥奴等の事だ、事を構えるなら下手に動いてしまうよりも、確実性が確認できるまでは動かないはずだ」

「そうなら良いのですが‥‥‥この街にも、物騒な奴らが入り込んでいるという情報が入っていますし」



 入国に関して一応の検査は行われるのだが、それにも限界がある。

 それらの網を避けるかの様に、そういった輩が入り込ませる事を生業としている業者すらある始末である。

 かといって、それらを取り締まるにも限度がある。

 公権が気づかない部分も多様に存在している為でもあった。



「まぁ、流れてきた有用な人材である事には間違いない。それに本人が秘匿する何かがあるのは確実だろう。大系のガーランを仕留めれる腕と‥‥‥」

「‥‥‥大系?]

「はぁ、お前はつくづく報告書を見ない奴だな‥‥‥それとも気づかなかったのか?腰の剣、あれは戦士の証(ガーランのつるぎ)だ」

「えっ?あの長さのガーランの剣となると、その意味となれば……」



 その驚愕ともいえる表情を見たテオーネといえば、"あきれた"という内容も含んだため息がテオーネから放たれる。

 そのため息に対して、イリアスは記憶をたどるかの様に目を伏せた後、その意味を口にしようとしていた。



「ようやく理解したか馬鹿者。そういう訳で、あの得物のことを理解している奴(・・・・・・・)は、そうそうに手を出さんだろう。そういう話も広まっているしな」

「そう‥‥‥ですね、ですが"もしも"という事も」

「お前の言いたい事は分かっている。その点に関しては手は打ってある。"古い知人"に指名依頼で話を通しておいた」

「"古い知人"と言えば‥‥‥また、"彼"ですか?あの第十層位の‥‥‥」

「ああ。あいつなら他のハンター達にも顔が効くだろう?それに、街の者とも知己といえる間柄だ。下手な事にはならんだろう。それに、古い知人(あいつ)からは"丁度切っ掛けが欲しかった"とも言われていたしな」

「なら良いんですが‥‥‥」

「とりあえず、今後は気に留める程度でよいだろう。進展…というべきかどうか、何事かが起きたのならば此方も動く、そんな所でいいだろう、でだ、夕刻の騒動の件だが‥‥‥」



 背もたれにギシリと持たれかかり、大きなため息をついたかと思えば、テオーネはイリアスから手渡されていた書面を見開きながら、その内容に関しての事についての話へと変わっていった。




   *   *   *

 報告の終わったイリアスが、その部屋を退室したあとは静かな間が残され、独り深く椅子へと腰かけて、今日話をした人物を思い描いて思案を巡らせる。



 今日の夕刻に出会った人物。

 "アーネスト"と名乗る女性だったが、その女性は海人種の可能性が高いと推測する。

 あの体躯からみてみれば中央大陸か南方大島に類する巨人族の血が混じっているというのは確実だろう とは思う。


 そう、あくまでも思うだけである。


 だが、少し引っかかったのはこのハーヴェンスの街へ来たという経路である。

 本人は客船できたという口ぶりであったが、念の為に別件で確認の為に手に入れている乗船員名簿、その名簿に"アーネスト"という名前が一切出てこなかったのである。


 偽名を使われたという可能性も無きにしもあらずであるが、あの身体的な特徴ならば一目みれば記憶にとどまるものである。

 ならばと、その船員に確認をとろうにも同船がくるのは、早くても半月以上後であり、それまでに確認が行えるものでもない。

 同じく乗っていたハンターの数人に確認をとってはみたが、みた覚えがないというという話がでてはいた。

 しかし大型船であるならば、そういう事も起こりうる可能性があるため、確認用の調査としては心もとないが、そこは致し方ないぶぶんでもある。



 だが幾度と確認しても、その名簿にその名前は"存在しない"という事だけは確定している。



 ただでさえ海獣種が現れやすくなっているこの時期、しかも昨今はその中でも大型が頻繁に出没しているという話が出てきている中、小型の船もしくはそれに類する船で来れるとは到底思えない。

 なれば、どういった経路で来たのか。


 種族的な実力?


 馬鹿もほどほどに‥‥‥いや、そうも言えなくもないか。

 諸島連合の中には、週掛けで移動できたという話も聞く。

 そういう考えを幾つも重ねていても、結局のところ結論が出てくるわけでもなく、ただただ時間が過ぎ去っていくだけであった。

  


「今は様子を見るしかない、か。こんな時に所長が出向しているとはなぁ、はぁ‥‥‥」



 つぶやくように、ひとりごちる恰好で、窓のから吹いてくる夜風を肌に受けながら、何かしらの事案が発生しそうな可能性を秘めた人物が現れた事に、深いため息をつくしかなかった。



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