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「世間話、ですか?」

「ええ、世間話です」



 そう言いながらもその存在希薄な人物の表情からは、それなりにに認識できる範囲で何かしらこちらの様子を読み取ろうとしている雰囲気を出しており、ある種の刑事ドラマとかでよくある取調室ってこういう空気なのかな?と、なぜかそんな事を連想している自分がいた。



「それでは、そうですね‥‥‥この港街"ハーヴェンス”へはいつ頃に?」

「え?ええっと、二、三日前、ですね」

「二、三日前。となると先週の定期船が来ていた日ですかね。それに乗船して?」

「え、えぇ‥‥‥」



 実際は"違います。"といいたいところだったが、素直に伝えるという事が何かしらまずそうな、感じがしており、流される恰好で濁す形にしておいた。

 なにしろ、さっきからどう考えてみても"探っています"的な雰囲気を醸し出しており、あいまいな回答になったのも、正直に答えるべきか答えざるべきかが判断がし辛かったというのも手助けしていた。



 が、それよりも今初めて知った街の名前。



 そうか、ハーヴェンスっていうのか、そういえば最初に案内された大きい部屋で説明を受けた時にそんな話があった様な無かったような‥‥‥

 まぁ、あの時は機械の身体という事ばかりで、自身の身体を調べていた記憶が殆どでしかないのはおいておこう。



「先週の船で来られた。そうなると出身は東方の連合でしょうか?」

「いえ、そこよりさらに遠いかと」

「そこよりさらに遠いとなると、ふむ‥‥‥結構な長旅だったのでしょうね」

「長旅、という感じはしなかったですね」

「最近の船旅は、そういう時間的な疲労は感じにくいですから、確かにそうかもしれませんね。私も一度はゆっくりと船旅というのを味わってみたいですね」



 という感じで、本当に世間話的な代物がなされていたが、聞かれている事に対して嘘は返していないはず。

 言っていないが正しくもないですし長旅なんてしてないです。

 仕事から帰ってきて、自分の部屋に入ってゲーム起動してログインしたらこうなってました。

 なんて、そんな事を言ってもわかる訳無いよな



「それで、やはりこの西方大陸には働き口を求めて?」

「え?えぇ、まぁ、そうですね。働かないと生活がままなりませんし」

「我々の組合(ギルド)でも、稼ぎの良い魔物を求めてという方々が大勢中央大陸から来られていますし、昨今の公共事業に関しても活発化してきましたからね」

「そうなんですか」

「一昨年前からは外壁や砦の補修や増強に街道の整備、貴方が契約を結ばれた港湾関連と、それらに対しての砕石業が繁盛してるみたいですね。まぁ、そのおかげで我々の組合(ギルド)にも護衛依頼が良く来るので、よく聞く話になってますね」

「そういえば、探している時にそういう求人が多かったですね」



 記憶をたどれば、鉱山などの人夫募集とか結構あった。

 ほかにも運搬業務も確かに募集要項がかなりあったのを記憶から探りだすが、そんな裏話的な内容があった事なんて知るわけもない。

 こちらとしては、給金さえ手に入って活動エネルギーを確保できればどうでも良い事でもある。



「やはり、海洋に関する職場を選ばれたのは、何かしらの技量をお持ちだったからとか?」

「ええ、まぁ、そうですね。潜水などは得意だったのと、給与が良さそうだったというので」

「潜水が得意、という事ですか、なるほど。確かに港湾の方が打ってつけだったかもしれませんね」



 何か納得するかのように、または確認するかのように小声で"なるほど"とつぶやきを繰り返しながら頷き、それが終わると再び向き直り、



「そうそう、給金のお話が出てましたが、この街にやって来る人の中で"お金を稼ぐ"といういう事で、変わったところでは伝説や伝承に出てくる財宝を求めて、一攫千金を狙っているという方々もいますしね」

「財宝……?」

「えぇ、よくある勇者伝説に出てくる物ですよ。子供の頃のおとぎ話によく聞かされる勇者が魔王を倒して世界を平和にする。という勇者伝説ですよ。そのおとぎ話の一つに出てくる勇者が残した遺産という代物ですね」

「へぇ‥‥‥そんなものがあるんですか」



 すいません。

 その勇者云々、まともに自分かかわってましたがハブられました的な事を言いたくなってくる。

 だが、ここはぐっと抑えておくべきだろう。

 それにしても勇者の話って伝説というかおとぎ話になってるのか。

 そういえば勇者にしか扱えない装備が有るとか言ってたし、何かそれらみたいな事があるのだろうかね。



「ええ、数百年と伝われていて、今でもおとぎ話にもなって伝わっているという代物です。現品がどこかに存在するという話ですけれど、一部の人たちの管理下となっていたりしますし、そういう代物と思われる物が現在においても偶に見つかったりしています。そのため、まだ見つかっていない物があるのではないか?という事で、探されている方たちもいます。やはり、アーネストさんもそういったお話に興味がおありで?」

「いえ、まったく」

「そうですか。まぁ、そういう宝探しをしている人というのも珍しい部類ですからね」



 即効で切り捨てておく。

 此方としては、面倒事の匂いがプンプンしているし、そもそもそういう場所から追い出された訳ですし、今はこの機械の身体を堪能…もとい維持するのが大前提なので関心なんてサラサラ作る気は、毛頭一切これっぽっちもない。



「まぁ、昨今、魔物たちの活動が例年以上に活発になってきているので、此方としても対応に苦慮している始末で、我々の組合(ギルド)に登録しているハンターたちにとっては、稼ぎ時だとここぞとばかり盛んに活動してもらってはいます」

「確かに、稼ぎ時にはなりそうですね」

「その分、事故や怪我なども多くなっていたり、荒くれ者も訪れたりで、内部でも揉め事が多くなったりと、こちらとしてもそちらの方の問題事への対応に苦慮しているところです」

「お、おつかれさまです」



 なんというか、中間管理職とでもいう心労が絶えなさそうな、そんな愚痴を聞かされていたりするが、その魔物の活動が活発化している原因なっているというのは、魔王が復活してあちらこちらに影響を与えているという風な説明を思い出した。



「そういえば、勇者のおとぎ話があるのなら、そのおとぎ話に出てくる様な…。例えば魔王みたいな存在がいる……とか?」

「やはり勇者伝説には興味がおありですか?」

「いえ、そういうのではなく、おとぎ話とかで、魔物が活発化する時というのは、そういう魔王的な存在が現れたからという感じじゃないかなと」


「ああ、それはあくまでもおとぎ話的なお話ですよ。伝承という事でそういう事があったかもしれない。というのはよく聞く話でしょうし、それに、原因としては地脈といえる存在が周期的にズレてしまい、そのズレがひずみを生じて魔物たちが活発化するというのが解っていますから」

「そう何ですか?」


「ええ、その地脈の安定状態からズレた時には、そういう現象が発生していたりすると、今までの歴史と研究者達がそう発表していますからね。ここ数年の間は、確かにその傾向が多くなる周期になるだろうという見解も発表されていましたし、その情報があったからこそ、この街にハンターたちも集まってきていますからね。まぁ、そのおっしゃられた説、というのも無い訳ではないですが‥‥‥実際にそういうのが存在していたというのは、やはりおとぎ話でしかないもので、俗説以下でしかありませんよ」



 その説明を聞いて、ふと疑問になる。

 なにせ、自分が聞いていた内容、魔王が出現した為に魔物たちが活動的になっている風な内容だったのを聞いていたのだが、あれ?違ったっけ?


 あまり真面目には聞いていなかったから、何か内容と異なってるかも?と思ったりはしたが、とかく現場的にいえば魔物が活性化してしまうという点は同じだし、自分にさえ火の粉が降りかかってきても対処ができているならば、さして問題にもならなさそうだし。



「そうそう、勇者話の一つですが、このハーヴェンスにもそういうおとぎ話…というよりも、建国話とでもいうのでしょうか、そういうのがありますよ」

「というと?」


「ほかの大陸から来られたアーネストさんならご存じ無いとは思いますが、この地に勇者たちが"何か"を封印したため、それを守護する守護役をこの地に残したと。その守護役の名が僧正(ビショップ)ハーヴェンスと伝われています」


「街の名前と同じ?」


「ええ、そうです。まぁ、他にも逸話としては今の世にも続いているセダムス教から異端とされ、破門された僧正(ビショップ)ハーヴェンス一派が、そのセダムス教が主となる大陸の西側から海上を陸沿いに伝って逃げてきて、大陸東端ともいえるこの地に町となる祖を築き発展した。という内容の話が伝わってはいますが、どちらが正しいのか、当時の資料が残されていない今となっては分かりませんが」


「伝承とかは、得てしてそういうモノなのでしょうね」

「ええ、そういうモノだったりするかもしれませんね」



 まぁ、おとぎ話とかも結局は創作物が多かったり、怖い系の言い伝えも子供にいう事を利かすための方便だったりするし、あながち破門された一派とかの方が信憑性はあるんじゃないかね。




 コンコンコン


 扉をたたく音に対し世間話をしていた相手から「どうぞ」という回答が投げかけられると、「失礼します」という言葉とともに、あの受付の生物(ナマモノ)の人が現れた。



「査定の方が終わりましたのでこちらにお持ちしました」

「そうか。ん?イリアスの奴はどうした?」

「はい。先ほど、組合員同士による騒動が街の通りで起きたとの事で、そちらに向かわれました」

「またか・・・」



 そうぼやいた本人は、額に手を合てて大きなため息をついていたが、すぐにその表情を取り繕い。



「すまないが私も状況を確認しに行くので、あとは彼女に聞いてもらってくれないか?」

「それは構わないですけど」

「本当にすまない。ゆっくり確認していってもかまわないから。では、失礼する」



 そう告げると、すぐさま席を立ったと思えば足早に退室していった。

 部屋に残された二人と、その間にあるテーブルに置かれた報酬らしき金銭の袋、そして、こちらに視線をむけたかと思えば



「こちらが報奨金となります。ご確認のほどよろしくお願いします」

「は、はい」



 完全に事務的な感情でこちらの挙動を見据えてくる犬頭の受付嬢と冷たい空間だけが残されていた。


 そんな冷たく静かに過ぎ去っていく空間の中、金貨と銀貨の混じった中身を説明を受けつつも一つづつ確認していく作業が続いていった。




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