寄
まず、まっさきに寄り道としておもむく先といえば、あの貨客船だろう。
なにせ、あの大きさで帆も煙突も無いのに、あんなにゆったりと進むとか、船体の構造もどうやっているのかが気になってしまう。
ので、港湾工事事業部の出入り口から出ては商船用の港の入口へとたどり着く。
といっても、海沿いともいえる壁ごしにぐるっと回る恰好で移動しただけなのだが。
そうしてたどり着いたのは良いのだが、その入口から中を覗き込んでみれば、その貨客船の周辺には、人、人、人、それに荷物と荷物がダブってしまっているというぐらい、ごった返しているのが否が応にも目に入ってしまっていた。
あんな人込み中を突っ切って、いや、もうその中にいる状態にもなる場所が船体の近くという事を想像してしまうと、あの混在状態の中で貨客船を観察してみようという気が滅入ってしまう。
他に細かく観察できそうで静かに堪能できる場所もなさそうでもあり、これならさっきの港湾工事区から海側の方を眺めていた方がマシだと思えてしまう。
すんごく興味を惹かれるのだが、いかんせんどうにもできそうにない。
そういえば、修繕作業を明日からと言っていたし、しばらくは停泊しているだろうから後からでもいいか、と割り切り、今度は街の中心部へと足を向けることにする。
* * *
そういえば、この街の事をあんまり知らない。
そもそも、滞在している街の名前すら知らないのだが、知らなくても生活に支障が今のところなさそうなのでそこらはどうでもいいかと考えてしまう。
必要なのは生活をする為に必要なエネルギー補給ができる手立てを確保する事だけで、そのためには食事という行為でとる必要があり、その食事を行うための資金源も仕事先も決まったので確保できたといえる。
食事によるエネルギー補給といえば、変換効率を考えるとどうも肉系統が良いという事もわかってもいる。
ほかにロボライフを満喫するものとしては、ハンガー的な場所という格好の代わりで宿泊する場所も確保できている。
ただ、ロボと動物とのふれあいという牧歌的な要素を満喫できていない点があるが、ここらはいつかは実るだろうから今のところは保留でいいだろう。
まぁ、そこらを確保しておけば当分の問題という問題はないはず。
それ以外、今のところ特に目立った問題は見当たらないし。
あ、一部、弊害とも言える変態がいるという点だけ目をつぶれば、順風満帆で進んでいるとはこのことをいうのだろう。
そのまま、理想的な活動停止まで持っていきたいものである。
とりあえずは、生活の事は一定ハードルを越えたのでおいておくとしても、一応は今いる街の事、というかエネルギー補給を行う為に必要になる"飲食が行える店"の場所を知らないのも何なので、いままで寄る事もなかった場所へと散策に向かっていこうと足を向けている。
たしか、屋台街と商店街はあっちだったから‥‥‥と、今度はその反対側の道が大きい場所を進んではみようかと進み始めると、だんだんと生物の種類が変わっているのが、傍目でもわかってくる。
なんというか、今までの人通りのところが一般的な布のような服装ばかりだった様相から、鎧姿の恰好をしているモノへと変わっていっており、まるでここがよくある中世的なファンタジー世界の‥‥‥
いや、そういう世界だったっけ?まぁ、どうでもよいか。
そういう生物たちの姿の割合が多くなり、さらに進んでいくと今度は良い匂いがし始めてくる。
それは屋根付きのフードコーナーとでもいう格好で、昨日行った屋台街とは違う格好の屋台街が存在しており、そんな場所に先ほどの鎧恰好をしていた生物たちが集まって、何かしらを注文しては立食をしたり、中央のテーブルで軽食にいそしんでいるのが見受けられる。
それにしても、こういう匂いをかがされると、とたんに興味が沸いてくるものである。
特に食事というエネルギー補給に。
そうと決まれば、飲食店としてどういうモノかを試してみるべきではなかろうかと、手前にあった串焼きみたいなものを売っている屋台へとおもむき
「へいらっしゃい」
「とりあえず・・・その肉串を100本で」
「へいま・・・100本!?」
「ああ、100本で」
「わ、わかった‥‥‥まいどあり‥‥‥」
とりあえず、先日もこの本数は余裕だったから、そこから始めてみようかと頼んでみる。
そもそも、満腹感も空腹感もまったくないというのは何だろうかね。
「(おい、あの見た目、デカさで女‥‥‥ま、まさか、あいつが噂のグーラ(暴食)か?)」
「(今日はこっちに来ちまったのか・・・)」
「(何っ!?こっちにきたって!?)」
「(はやい!はやすぎる!そこまで仕入れてねぇぞ!)」
「(負ける・・・これは負ける・・・)」
なにやら周囲で騒ぎらしい騒ぎが発生しているみたいだが、こちらは先ほどの肉の串焼きが重要である。
先日もあった串焼き屋はタレ仕込みであったが、こちらは一転して塩をふりかける塩のみというシンプルな調理方法である。
その油の滴り落ちている肉がまた見た目も香りも良い塩梅に見え、やはり串モノは屋台である方が良い調理なのだろうなと納得してしまう。
「まずは、5本‥‥」
そういって店主から渡された5本を受取り、さっそくとかぶり付いていくと‥‥
あ、普通に旨い。
塩味と肉のジューシーさという形で旨‥‥‥
そうして、屋台制覇の旅が始まった。
* * *
「ごちそうさまでした」
そう一言告げた途端、周囲からどっと歓声の様な声が上がっていた。
「やりやがった・・・」
「あの量を?マヂかよ・・・」
「すげーな!姉ちゃん!」
「いい食いっぷりだったぜ!」
「なんつーか、食ってるだけなのに、"これぞ食ってる!"という印象だったわ」
「あ、それわかる、すっごくわかるわ」
「それ以上の表現できねーよな、ありゃぁ」
「巨人族だろ?オレの知り合いでもそこまでのはみたことねーわ」
ワイのワイのと賑やかになっている人だかりができており、また、少し離れた場所では
「もうねぇよ・・・なんだよアレ・・・」
「オレハヤリキッタゼ…‥‥ヤリキッタゼ‥‥‥アニキ…」
「店たたむべきか・・・?けれど、借金がなぁ・・・」
「あれがグーラ(暴食)…ハンパねぇな‥‥‥」
と、そのうちの一人は、どこか真っ白に燃え尽きている様な印象を受けてしまうのだが、こちらでにぎわっている集団とは異なるテンションの人たちがいたりしていた。
今の状況といえば、一通りの屋台食を堪能して一息つこうと併設されていたテーブル席に座っては、飲料水を確保して落ち着いている。
かれこれ18:00を回ろうとしてはいる時間帯で、すこし日が赤く染まり始めていた頃合いなのだが、その自分の周りでは、やんややんやとにぎわいが収まらないでいた。
「そうだ、姉ちゃん、これから飲みいかねーか?」
「お、お前さっそくナンパか?」
「ちっげーよ、なんつーか、面白そうだと思ってよ、今度は酒はどうかとな」
「あー、確かに興味あるわ」
「すまん、その、持ち合わせがそんなには」
酒といえば、食事以上にお金のかかる代名詞でもある。
たまには良いかもしれないが、いま試すだけ試した後では少々懐具合が心配になってくる。
というか、この身体でアルコール系ってどうなのか、そういや全然試してなかったな‥‥‥
「なら、近くの狩人ギルドの酒場でどうだ?安い酒だけどな!」
「飲めなくはねぇけど、安くて酔えるってとこだけどな」
「ちげぇねぇ」
どうみても、シラフでもない人達が何かと連れて行こうと‥‥狩人ギルド?
狩人ギルド‥‥‥狩人ギルド‥‥‥あっ
「狩人ギルドに用があったのを思い出した」
そう、たしか狩人ギルドに顔を出さなければいけなかった事を思い出す。
なんか、買い取りが云々とかあったような・・・
「なんだ、あんたもハンターだったのか?」
「あんたも?」
「おうよ、おれたちゃその狩人ギルドのハンターだぜ?」
集まっている人だかりを確認するも、たしかにそれぞれが何かしらの防具を着込み、それぞれに武器のようなものを携帯しているのが確認できる。
しかもそれらは、かなり使い込まれていたりする代物と一目でわかるぐらいに、なじんでいるという形でもあった。
「その狩人ギルドの、その場所を教えてくれないか?用事を済ませなきゃならないので」
「なんだ、用事があるのか‥‥‥まぁ、いいぜ?案内してやるよ、な、みんな」
「「「おうさ」」」
「ありがとう。助かる」
「姉ちゃんの食いっぷりと屋台屋の戦いは、なんつーか、見てて面白ったからな」
「言えてる言えてる」
「楽しませてもらった礼みたいなもんだ、気にすんな」
「んだな」
馬鹿しあってる会話と笑い声の中、数名に連れ出される恰好で狩人ギルドへと向かう事になった。
〇本人の知らない間につけられた二つ名
・暴食 ←屋台連合での通り名
・暴食の巨人(Giantess Gluttony) ←今回の事で増えた
二番目の略称で、G.G.とかだったら、本人が気に入りそうかもしれない。
(ただし、意味を知らないままが条件)




