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閑話:〇月□日 ギルの宿 馬房改装部屋周辺 闇夜の戦い4/4

"手を出してはいけない"


 そう感じたからには長年の経験上、この場をすぐにでも離れるべきである。

 "べきである"のだが、逃避に使う予定の方向からは"そちらへは進むべきではない"という警鐘が鳴りやまない。

 まるで、得体の知れない"何か"に対して、全身の体毛が身の毛がよだつ様な感覚にとらわれてしまっていた。



(まずい、まずいまずい!合流して早くこの場を立ち去らなければ!)



 仕事として来ていたにも関わらず、その仕事をすべて(なげう)っても構わないとすら判断させる恐怖が、この近くにいるというのを知らせた時、ふと目標としていた場所の前に何かが存在する事に気づいた。


 その存在は、先ほどまで(トラップ)と揉め事を行っていた相手というのにはすぐに感づいたが、その存在がここにいるという事は、外の罠は対処できたという事に他ならないだろう。


 そうねれば話は早い。

 そのまま感づかれる前に、逃げればよいだけの事、これ以上の罠はあの同業者が引き受けてもらえば良いと判断し、その場を後ずさるかの様に、ゆっくりとではあるが厩舎の外へとたどり着く事に成功する。



 厩舎の外、ようやく星明りが照らし出されてうっすらと周囲の状況が見え始めていたが、ほかに何かが存在するような気配もない事を確認するが、視界に入る庭らしき場所には、あの同業者が何かしらの罠を対処していた"痕"らしきものしか見当たらない。


 ああいった罠であるならば、何かしらの道具が破砕された痕跡が残されていたりするものだが、それらしいものが見当たらないが、今はその罠が発動する場所から遠ざかる方向である。

 もし、再発動するとしたとしても、一定の範囲から離れてしまえばそういった罠は発動しなくなるものである。


 なら、答えは単純明快。

 いそぎその厩舎から離れ、仲間との合流を果たして撤退するのみである。



 気取られないように厩舎から急ぎ離れては、合流と予定していた場所へと到達するといるはずの二人が、そこには存在していなかった。

 先だって撤退したのかと周囲を一瞥するも、そもそもこの場に来ていた形跡すらない。



「なっ、何が起きている?あいつらは・・・?」

「逃がすとお思いですか?」


 その声を発した方向へと顔を向けると同時ぐらい、身体に衝撃ともいえるモノが走り、立っている事すらままならなくなったと思えば、意識が朦朧と・・・



 最後に見たものといえば、仄かに紅く光る線の様な光だった




   *   *   *


 お姐様の貞操の危機と聞いては黙っていられません!

 あのヒョウさんが、タダ(・・)で見過ごしてくれた訳でもないでしょうが、ここは、しっかりとお役目を果たさねば!!なにせ、






 お姐様の初めては、全てこのシーがおいしく頂く事になっているのですゾ!

 どこぞの馬の骨が頂いて良い代物ではないのですゾ!!!



 可及的に速やかに、愛の巣の前に到着せねば!!というか、気が付けば到着してたりするとは、これこそは愛のなせる業です。


 です。が・・・ぐ・・・ぬ・・・


 到着してはみたモノの、この扉を開けるべきか、開けざるべきか‥‥‥少々悩んでしまいます。

 もし、もしもですよ?その様な場に出食わしてしまえば、混ざらせてもら・・・ゲフンゲフン、速攻で排除せねばなりませんし、逆に、そういう場がなかったとしたら‥‥まずは侵入者がいたかどうかの確認をしなければいけまん。

 しかししかし、このタイミングを逃せば、理由付けを伴った正当性に欠けてしまいます‥‥‥



 そう、つまりこの時こそが、機は熟したということ!


 

 何も悩むことはありませんでした。

 正当性が確保されるという事は、事実上OKと同義という事です。

 それでは、勢いよく扉を開けて部屋へと入ってみると、そこには‥‥‥




 お姐様しか感じられません‥‥‥あるぇ・・・


 シーとしては、多少なりともの"くんずほぐれつ"を期待し、その相手を排除するという口実を得ては、シーが代わりに"くんずほぐれつ"を堪能するという策がいきなり破綻です。どうしましょうか。



 ‥‥‥


 いや、まってください。

 もしかしたら、ここはあれです、もう手遅れだったという事でお姐様のお身体は汚されてしまっているのかもしれません。

 そうなれば、その(けが)れを確認しては浄化を行うのがシーのお役目ですね、そうですね!



 そうとわかれば、まずは触診で状況を確認しなければなりませんね!!ではでは、早速とばかりにお姐様の寝具に乗りあがっては、そのお身体の上にまたがり、さっそ


 コツン


 あれ?何かが頭部に当たる衝撃が・・・



ゴミ(・・)の排除をせずに、何をなさろうとされているのでしょうか?』

『‥‥‥』



 何でしょう、この冷たい様な凍えるような感情が含まれている様な、つい先ほど聞いた事のある声が聞こえてきたりしちゃったりで、その雰囲気のある方へと振り向いてみれば‥‥‥



「!?げぇ、ヒョウさん!!」



 驚きのあまり、音声として発生してしまいました。

 なにせ、そこには仄かに紅くラインを身体から発しているヒョウさんが、こちらにその背中の得物を突き付けてきていたりします。



『シー殿、もう一度聞きます。あなたは今、何をなさろうとしていたのですか?』

『は、はひっ・・・お、お姐様のお身体に異常が無いかの確認を‥‥‥』

『では、その両の手は?』


 と、指摘された両手といえば、お姐様の膨らみを確認すべく広げて触れようとしている位置で停止していたりして・・・どうしよう、どう言よう・・・あ、そ、そうだ!



『え、えっと、メンテナンスを行う為には、触診も必要となりますので、まずはそれから確認しようと・・・』

『本当、ですか?』

『は、はひっ、ほ、本当ですよ?異常が無いかのメンテナンスを確認する様には言付かっていますし』



 ヒョウさんの紅い瞳がコチラに突き刺さる様に、いや、もうグサグサと突き刺さっているんですけどぉ…あと、その銃口をさらに押し付けてくるのはいかがなものかなぁと‥‥‥

 ヒョウさんが怒ると、とてもとても怖いんですけどぉ‥‥‥オタカさん助けてぇ‥‥‥



『はぁ、まぁいいでしょう。アーネスト様が起きられてから、確認をとらせていただきます』

『は、はひっ』

『では、外においてあるゴミ(・・)の処分は任せてよろしいですね?』

『処分?』

『ええ、この場に侵入しようとしていた賊です』

『あっ・・・』


 お姐様に触れ合う事の方が重要すぎて、すっかり忘れていました。



『はぁ・・・シー殿には、処分に行ってもらう前に言わなければならないことがありますね。とりあえず、そこから降りて、ここに座りなさい』



 ここと言われた場所をヒョウさんは前足で指定してくる。

 場所的にはヒョウさんの真ん前。あ、これ、お説教モードだ。

 実力行使による折檻よりはマシですが、これが始まるとヒョウさん止まらないんですよね‥‥‥

 ヒョウさんの前に正座して座り込むと、



『アーネスト様の事を第一に考えなければならない私たちなのですよ?それなのにシー殿といえば‥‥‥』



 あぁ、お説教モードが始まった‥‥‥




   *   *   *


『・・・・・わかりましたか?』

『ハイ、ワカリマシタ』

『よろしい、ではゴミ(・・)の処分に行ってきてください。場所はMAPデータを送ります。未だ生きている生物(ナマモノ)ですから、扱いに注意してください。』

『ハイ、ワカリマシタ』

『道中で、殺傷は禁止です。アーネスト様が許可しておりませんので』

『ハイ、ワカリマシタ』

『そのMAPで記された場所が、そういったゴミを処分する場所です。覚えておいてください』

『ハイ、ワカリマシタ』


『・・・・・・では、行動に移す!』

『ハイ、ワカリマシタ』



 そう指令を出すと、シー殿はゆらりと起き上がっては、厩舎の前にあるゴミを担いではゴミ処理場へと向かって歩んで‥‥‥



『その速度では日が昇りきってしまいますよ?走って返ってきたら、アーネスト様に触れようとする件は、(今回だけは)大目にみておきますが?』


 みるみるシー殿に活気が復活していくのを感じます。

 はぁ・・・飴を与えるとしても、ここまで変わるものなのでしょうか。


『そ、それは本当ですか?』

『ええ、(今回だけ)大目にみますよ』

『シー!行っきまぁす!!』



 そう言ってきては、3つのゴミを担いだ存在は、朝靄(あさもや)の中へと消えていった。



(はぁ・・・本当に、動機さえまともであれば良いのに、まだまだ教育が足りませんかね。次は、どういった教育を施しましょうか‥‥‥)



〇警邏事務所(ゴミ処理場)

「はぁ、夜勤終了…お先」

「お疲れさん」


 ドサッ


「ん?なんだ?なんか聞こえなかったか?」

「疲れてんじゃね?」

「あー、そうかもなぁ・・・んじゃ帰るわ」

「おうおう、寝てこい」



「・・・うぉぁ!なんだ?これは!」

「どうした!?って、紐でグルグル巻き?なんじゃこれは…」

「って、何か書いてあるぞ?何々…"不法侵入してきたので捕まえておきました"だと?」


「・・・」

「お、おい、もしかしたら、こいつらポントス三人組じゃね?」

「えっ?あの捕まえられずにいた獣人のか?」

「どうする?」

「どうするも・・・とりあえず牢に放り込んでおくぞ、手伝え」

「えぇ・・・おれ仕事終わったんだが…」

「つべこべ言うな、手伝え」

「へーい・・・」



 この町の有力窃盗班の一つ「ポントス三人組」が捕まったという話が広まるのは、しばらくたってからの事である。



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