倉
食堂でのひと悶着も片付き、給仕Sから繰り出されそうになった追撃を、"仕事はどうした?"という言葉でかわし、ヒョウさん様にと追加注文でハンバーグを皿に山盛りで持ち帰りする恰好にしては、人が入りだした食堂を後にしてはいつもの部屋へと戻ってきていた。
途中、タイミングよくあの肉を引き取りに来たという事で確認をという事で持ち出しを見届けたりもしていた。
そうして、ようやく寝具の上に座りながら、本日手に入れた資金を確認しようと広げてはみた物の
(やたら金貨的な代物が多いんですけど)
そもそも、その金貨の割合が高すぎるのが、あの肉の売却額である。
正直、十数枚程度と思っていたところに、袋をひっくり返してジャラジャラと音を上げながら見てれば、枚数的にいえば百数十枚というぐらいだろうか。
(通りで重たいわけだ)
当初、受け取り云々に関しては気にもしていなかったが、実際に目で見て確認してみると、これがまた重たいのなんの。
数十キロあるんじゃないか?とさえ思える、
とりあえず、区分分けしておかないと、なんかこう色々と気になってしまうので、袋をひっくり返しては倉庫へと放り込んでいく
そうして、倉庫に入っていくのだが、入っていった後に表示されていった文字が、
"ディッシュ金銭貨" 132枚(13,134,000dsh相当)
"ディッシュ銀銭貨" 58枚(55,100dsh相当)
"ディッシュ銅銭貨" 73枚(730dsh相当)
"ディッシュ銅偽銭貨" 4枚( 4dsh相当)
と、リストに表示されていっており、正直、知らない名称がなぜか表示されているという。
あと、相当という表示もわからなくもないが、なんというか、HDDの容量が下がっているみたいな感じで、枚数とdshの単位(?)があってないという。
そしてもう一つ気になるのは、偽と書かれてあるのが一桁台の価値があるという表記がされている。
金本位制的な貨幣流通なんだろうけど、これを普通の銅銭貨と同じ用に扱われてた気がするのだが、なんというガバガバ感をすごく感じてしまう。
たぶん、この金銭貨とかも不純物混じってるとかそんな感じなんだろうか。
屋台で支払っていた時は、金貨1枚でお釣りで銀色や銅色ばかりだったから気にはしなかったが、何気にそういう貨幣が紛れ込んだという話なんだろうか。
・・・ん?
いや、まてまてまて、そもそも金銭を倉庫に仕舞ったら、なぜに名詞が表示されるんだ?どうなってんだ?倉庫に仕舞ったら表示されるものなのか?
それならば、確認するためにと空いた袋をいれてみたら、"貨幣袋 [空]"と表示され、もともと表示されていた"貨幣袋"というモノから名称が変わっていたりしていた。
マヂかよ・・・と驚きつつ、もしかしたらこいつも?と、さらに腰に取り付けていた突剣を外しては仕舞い込んでみると・・・
"海龍剣魚の突剣"
と、表示される始末。
いや、それ以上に気になってしまったのは、あのキモイ魚もどきに"龍"とか文字ついて当て字ってるんですけど?
なんというか、肉が高値ついてる理由って、龍とかついてるからなのかな?そうなのかな?
これってもしかして、"龍殺し"とかいう厨二が好きそうな事になるんですか?そうなんですか?
それが広まったりして、周囲の視線が変わったりするんですか?
・・・うわぁ何それ・・・恥ずかしい・・・超恥ずかしい
なんだこの、黒歴史を穿り返してくる心境とでもいうのか、穴があったら入りたいとでもいうか、正直そんなのは要らない、今現在、寝具の上で悶えまくる材料にしかならないという。
いやまて、魚ってついてるから、厳密には違うんだよね?ちがうよね?説明文とかそういうの表示されないから、厳密には龍とかそういうのじゃないよね?違うよね・・・そう、違う、違うはずと思っておく。
ふぅ・・・
寝具の上で悶え苦しむという行為でようやく落ち着いたが、あの肉が高値なのは名前の通りに、当て字になってる"龍"という名前が付けられた由来みたいなのが絡んでるということで良いのだろうか。
それならば、理屈としても理由としても、わからないでもないわけでもあるが、実際に旨いという事実があるから、そっち方面で高値が付いたとも言えなくもない。
結局、どっちからなのかはわからんが、まぁ、そういう代物なんだという事で割り切っておくか。
「アーネスト様、先ほどから何をなされておられるので?」
「ひゃぅぁ!?」
「?」
「ひょ、ヒョウさん!?いつからそこに?」
「この部屋に入られたときからですが」
「最初から!?」
「はい、そちらの寝具の上で転がっておられたので、何かがあったのかとお声をかけさせて頂きました」
「・・・」
まともに見られていた。
なんだろう、"黒い歴史がまた一つ"というナレーションみたいな声が脳裏に流れてきたりしたのだが、気取られてはいけない気がする。というか気取られて馬鹿Sに知られたら弱みとして握られる事が確定的に明らかになりそうである。
・・・そ、それだけは全力で阻止だ。
どうする?こういうときは・・・そうだ!話を変えれば!
「そうそう、ヒョウさん、えーっと、頼んでおいた監視の方は・・・?」
「はい、偵察用ビーコンも追加で設置しておきました。各人、こちらへの配置をやめたのか、各方面へ散開する形となっております。ですが、いつでも状況確認もでき、すぐにでも撃てますが、いかがいたしましょう?」
「・・・」
なんか、ヒョウさんの行動が、だんだんと危ない行動になってる気がしないでもないんですけど・・・?
ゲーム内では、そんな行動とらなかったよね?あくまでも斥候とかしかしなかったよね・・・?
あるぇ・・・
「う、うん、すごく助かるけど、撃つのは基本、無しの方向で」
「・・・わかり、ました」
座り姿のまま首を垂れる恰好で、なんというか"残念です"とでも言いたげな・・・
「ヒョウさんは、十分に役にたってるからね!助かってるからね!本当だから!」
そういうと、首を持ち上げては、何かコチラを凝視してはいるものの、怖いとかというよりも、なんというか胸を張られて"もっと褒めて褒めて!"みたいな?
ネコ科って、こういうモノなの?これ、どうみてもイヌ科なんですけど、気のせいなの?
「あ、そうだコレを」
そういって、木箱の上に置いておいた皿をヒョウさんの前においておく。
食堂から出てくるときに手配しておいた、ハンバーグの山という代物である。
「これ、ヒョウさんの分だから、どうぞ」
そうすると、こちらと皿とを交互に見返しては
「本当に、よろしいので?」
「よろしいよろしい。十分に役に立ってるからね」
「で、では・・・頂かせていただきます」
そういっては、そのお皿の上のハンバーグの山の頂から手を・・・いや口を付けていくヒョウさん。
見た目が黒ヒョウだから、ワイルドな食事かなと思っていたら、そうでもなく。
一つひょいと加えて口にいれたら、そのまま丁寧に咀嚼しては飲み下していた。
一通りさらえると、何か思うところがあったのか、天井を見上げては目をつぶっており、その姿は絵になるというか様になるとでもいうか、まるで感動しているとでもいう風でもあった。
「どうかしたか?」
「これが食事というモノですか・・・感慨深かったです」
「そういえば、初めてだっけ?」
「はい、いつもなら、エネルギー補給装置で充填するだけでしたので、食事からの補給という方法は、今回が初めてです」
「えっ?いつも補給装置で補給してたの?」
「はい、そうですが・・・アーネスト様も同じではないでしょうか?」
「いや、まぁ、そうだったけど・・・」
こちらとしても、専用のパックを使って補給して活動エネルギーを補充していたが、支援ユニットも、実はこちらが知らないところでそんな事が行われていたという事実が発覚。
「という事は、エネルギーの補給状況はどうなの?」
「ほとんどFULLとなり、リザーブにも充填しておきましたが・・・まずかったでしょうか?」
「いや、それは構わないけど、あの量でFULLって・・・」
「はい、十分に蓄えれたと判断します」
あの皿盛りだけでFULLに持って行けるとか、何それ羨まなんですけど?
こちとら、どれだけ食ってもFULLのゲージラインまでもっていけてないんですが?
なんなの?この差は、どういう事なの?ねぇ、なんでなの?
「あぁ・・・なんかもういいわ、今日はもう寝る・・・」
「そうですか?では、就寝されるという事で、私は警戒に当たらせていただきます」
猛烈な虚無感に襲われ、もう何も考えたくないわと、夢の世界(?)へと逃避するために寝具に横になっては、手を振って"よろしく"という意思表示をした後、そのままスリープモードへと移行していった。