午後
昼時におきた嵐ともよべる突発的なイベントを終わらせた後、取り残された食事を周囲にいる生物たちと分けあうことで、完勝という形で勝利を得ることに成功した。
そもそも、あんな周囲の視線を受ける様なイベントを企ててくれた騒動発生装置Sのおかげで、一人で食事を摂るという行為が、とてつもなくコミュニケーションレベルが高い状況に陥れてくれており、"誰にも邪魔されず、独り静かに"という食事時における個人的なスタートラインから躓かせてくれつつも、あの状況からではご破算で願う事すらかなわなかった。
それならばと、たしか量が足りないとか言っていたのを思い出し、"ギャラリーを巻き込んでの食事会という恰好にしてしまえ"という、"もうどうにでもなーれー"精神でふるまった結果という訳である。
まぁ、おかげで軟派してくる生物とかも混じってはいたが、日常の情報やこの職場の状況などなど、情報収集には事欠かなかった。
といっても、先日のエイリアンもどきの事に関してがほとんどで、ききだす量よりも、語る量の方が多かった気がしないでもないが‥‥
「クァン、嬢ちゃん、ちょっといいか?」
「はい?」
「なんでしょう親方」
昼時が終わり、午後からの作業に入ろうとしていた折に、親方と助手の二人組が直接こちらへと話をしにきていた。
一体何かあったか?と思ったりしてはしたが、
「すみません。場所を変えて話をした方がよいかと思います」
「そうか。そうだな、いいか?二人とも」
「「はい」」
直接呼び出される格好にはなっているが、その二人の後を追い事務所へと入ってはその一室へと入っていく。
そんな折、親方の方から声がかかる。
「嬢ちゃん、どうだ?」
「ええっと?」
「ここにいる奴らは、馬鹿なやつもいるが、悪い奴はいなかったろ?」
「そう、ですね‥‥」
「何か言われてるなら、軽くあしらっておいていいぞ。懲りない奴もいるとは思うが、そんときゃ言ってこい」
「は、はぁ・・・」
そんな会話をしながらも、向かった先は事務所の一角の小部屋。
応接室とは異なる、ちょっとした会議室とでもいったところだろうか。
その部屋の前に来た時
「クァンはちょっと外で待っててくれ、まずは嬢ちゃんとの話があるから、クァンはそのあとだ」
「では、外でまってます」
「そうしてくれ、終わったら呼ぶ」
「わかりました」
と、自分と小麦肌の青年は事務所の外に出ていくのを確認した後、二人がその部屋に椅子へと促されるままに座り、今度は助手の方から早速度ばかりに話が出される。
「まず、就業契約に関しての話がまとまりましたので、まずはコレを」
そう言われては、助手の方から準備していました、というぐらいにその書面を懐から取り出されては手渡され、その中身を確認してみると、月単位における就業規則に関してと、主だった作業内容が記載されてあり、契約書といえる類の内容であった。
「慣例的に、月契約という事で進めていますが、よろしいでしょうか?」
「月契約?」
説明を聞くと、この業界は月単位で行うのが通例であるという事だった。
という事は、月契約だと派遣社員的な内容という事でよいのだろうか?年単位の契約という恰好は?という形で聞いてみると、
季節的、天候的な問題もあったりする為に日雇いでは色々と手間がかかり、工事期間からも長期として契約しなければ人夫の手を毎回募集するという非効率な形になり、年間にわたって永続的に仕事があるわけでもないために、こういう方法になっているという事だった。
「わかりました。では、契約の方よろしくお願いします」
「では、これを」
新たに渡された木板らしき代物だったが、今度はこれを職安組合へと持って行っていけば、当座の給金と交換してもらえ、尚且つ契約月の最後に残りが支払われるという形になっているとの事であった。
「契約書に関しては本人が持参して頂かなければ、処理が行えない形になっていたと思います。……そうですね、今からでも手続きを済ませてきてください。あと、それと……」
「他に、何か?」
さらに話を切り出そうとしていた助手の人だったが、その際、あまり話したくないように、すこし顔をしかめながら
「昨日の素材の件なのですが…」
「素材?」
「ええ、ガーランからとれた素材の件です」
「ああ、あれですか」
そういえば、この腰にぶら下げている剣の元となっていたガーランとかいう魔物、それぞれが素材になるモノらしく、食用になる部分以外は売却という形で進めていたはずであった。
「手続きを行う形でハンター組合の方へ話を持って行ったのですが……その組合の方で少し問題が起きまして…」
「何かあったのですか?」
何か言いたく無さげな、そんな表情をしながらも
「"本人が来てほしい"と。そうでなければ"買い取り処理は滞りかねない"とも。手続き云々に関しての委任状がなかったのをいいことに、本当に困った対応をしてきますよ」
あまりに向こう勝手の主張なのだが、一応筋は通っていると愚痴をまみえてこぼす程であった。
「こちらとしては、伝手を使っての換金方法が無い訳でも無いのですが、あまりお勧めされた方法でもないのと、……あと、実を言うと、できれば行ってもらえれば、こちらも助かるのですが‥‥いろいろとあるかもしれません」
「何か、あるんですかね」
「ええ、たぶんですが"ガーランを仕留めれる事が出来る人材"というのを確保したい、またはどういう人物かと見極めたい。と、そういう思惑だろうとは思います。なにしろ、海の魔物を少数、いうなれば、偶然であるにしても単騎で狩ったという実績だけでも、希少な人材になると思いますしね」
話を聞いてみると、ハンター組合は魔物討伐などを行っている、よく物語などにありそうな冒険者組合といっても過言でもない組織らしいのだが、その依頼のほとんどが陸上の魔物ばかりがほとんどであり、海に関しては組合という組織よりも、船などの設備の問題上、国軍や私兵などの団体が動いて対処するのが多いとの事、他にあるとすれば人員と資金を持っている大手クラン単位といったところである。
たまに、個人で討伐が行える人材というのが現れたりするらしいのだが、それはとても希少な存在という事でもあるらしい。
そもそも、そういう海生魔物を個人で討伐できる実力を持っている人材のほとんどが、海に関する業種、海軍やら海洋私兵、はては港湾警邏などについていたりするという実態がある。
また、ハンター組合は、その狩りを得意とする対象が陸生魔物がほとんどであり、海生魔物討伐に対応できる人材が乏しいハンター組合であっても、相手が魔物であるならば討伐依頼はハンター組合に回ってくる事になり、討伐対象が魔物でああるが故に受理をしなくてはならない立場でもある。
そのため、海生魔物に対応できる人材や組織が乏しいハンター組合としては、そういった対応ができる業種との繋がりをもたせておき、そういう依頼を受理したときは、対応処理が行える能力をもつ人材や組織に、多少なりともの融通をしてもらう方が都合がよくもあり、もちろん、その逆の内容が来たら今度はハンター組合が融通するという方法が、お互いにとって良いものであるという暗黙の了解というのが存在しているという事らしい。
「それは解りましたけれど、あちらにいって勧誘とかされることは…」
「それは低いかと思います。お互いの畑が畑ですし今までの事もありますから、畑を荒らされる事も嫌がります。それに、今後の信用にもつながります。ただ、個人としての人材登録的な事はあるかもしれませんし、たまにある指名や強制は無いでしょうが、協力をお願いされる事があるかもしれまんが‥‥」
お願いという形ではあるが、何かしらの要請が来るかもしれないという話であったが、一応はこちら側、港湾工事の人員という事でそこまで強制される事が出来ないという状況にはなると。
あれ?これ月契約を先に結ばないと不味い気が…‥
「なので、先に職安組合で契約書類を提出して、アーネストさん自身の所属を先にはっきりして頂いてから、ハンター組合へ向かってもらえればよいかと。まぁ、あちらへは明日以降の方がとてもとても良いので、今日は職安組合にて書類申請した後は、そのまま直帰されても構いません」
にこやかな表情でそう伝えてくる助手からは、何かしら抱えている物が爆発しそうな雰囲気でもあったが、その説明からいくと、やっぱり何かしらあったんだというのと、やはり所属云々はそういう形になるよなぁと思いつつ
「解りました。ハンター組合の方へは、明日にでもうかがわせてもらう恰好にさせていただきます」
「大変ありがとうございます。それでよろしくお願いします。では、早速ですけれど、職安組合の方に手続きに向かってください。あと、クァン君を呼んでいただければ」
そういわれた後、その部屋から退室しては外で待っていた小麦肌の青年に、今日はこれであがっても良いといわれた事を伝えては、こんどはそちらが呼ばれていると伝え、その作業場を後にした。
そういや親方、あれから一言もしゃべってなかったような‥‥‥




