案内
原文にはない、寄り道てきなもの
案内され始めて、港内を順番にと回り始めると、所々で
「おぅ、昨日はありがとよ!」
「嬢ちゃん!ありがとよ!旨かったぜ!」
「ただ酒も、よかったぜ!」
と、通りすがるたびに従業員と思しき生物たちから声がかかっていた。
確かに、昨日の祭り騒ぎみたいなモノには、提供してはいたけれど、たしかあれって親方のポケットマネー?が出ているんじゃなかろうかと思ったりし、それだと、親方に言った方がよいんじゃないかなぁと思ったりはしたが、おおむね好評な話だったために、野暮なことは言わないでおく。
そんな中、先ほどの礼の言葉の後に
「という事で、今晩ご一緒にいかがですか?」
「何が、"という事"なんだよ!抜け駆けすんな!」
「んだと?!女旱りなんだから、別にいいだろうが!」
「それは事実だが、お前は節操なさすぎだ」
という事をやり取りし始める数人のグループと出会っていた。
しかも、こちらの足を止めては、それから仲間内のもめごとが発展しかけているという。
「アーネストさん、ほっといて行きましょう」
「あぁ?って、そういや、クァン、なんでお前が一緒にいるんだよ」
「そういやそうだ、なんでお前が一緒にいるんだ?」
それぞれが、先ほどまでもめごとに入っていたはずなのに、まるでなかったかのごとくに、小麦肌の青年に嫉妬交じりともいえる抗議を始めた。
が、その講義を受けている方は、ひるむことも一切なく普段通りとでもいう感じで対応していた。
「親方から頼まれたんですよ。案内しろと。あと相棒としてもと」
「はぁ!?マヂかよ」
「お前、代われ」
「代われって言われても、親方が決めた事ですし、あと底調査担当ですよ?」
「え?底調査かぁ」
「あぁー‥‥あれ、結構面倒臭くて辛いんだよなぁ、お前が得意なのがおかしいわ」
「チッ、ならしゃーねぇ・・・クァン、抜け駆けすんなよ?」
「しませんよ!こっちも仕事なんですから」
「本当だな?絶対だぞ?」
「わかりましたって」
その後は"じゃぁな"という手挨拶を兼ねて離れていくグループ。
なんというか、じゃれ合いとでもいう格好で、どことなく思い出される事があったりする。
「いつも、あんな感じなのか?」
「まぁ、だいたいあんな感じですよ?」
「そっか、なんか懐かしいな‥‥」
「懐かしい?」
「いや、前いたところでも、あんな感じのがいたからな、懐かしいなと」
「そうなんですか。どこも似たり寄ったりの人がいるもんなんですかね」
「かもな‥‥」
バカをしたら、それ以上のバカでし返してくる。
そんなバカな事をやってたアイツらの事を思い出しては、懐かしいなぁという言葉しか出てこなかった。
「それじゃぁ、次にいきますね」
「ん?あぁ、わかった」
そんな感情みたいなモノをリセットするかの様に、次の場所へと案内される。
その先には、小さな商店らしきものと、その隣には先ほどの倉庫群とは毛色の違う大きめの建屋が存在していた。
「こちらが、仕事で使う道具を管理している部署になります。必要な作業具があったら、受付の人に申請してから持ち出す格好になります」
「なるほど、受付はあそこの小窓みたいな処にいる人でいいのかな?」
その教えられた部署の扉近くには、小さな小窓が付いており、そこには暇そうにしている良い年をした中年のオジサンが居座って、こちらに気づいたのか、手を挙げて挨拶をしているところでもあった。
「はい、そこが受付になりますので、もし受付の人がいなければ、あちらの庶務棟‥‥」
という感じで、となりの商店の様な施設の説明を受け、とりあえずは覚えて込ませていた。
正直な話、実は"覚える"という行為を一切していない。
なにせ、視認して作られた施設位置情報が表示されるマッピングに、それぞれの施設のコメントを追記していっているだけなので、作業とでもいうべき内容である。
今も"不在時は、別の施設の方に代理として申請する"という記載をHELPの追記で記載しているわけでもある。
「道具なんですが、測量となると、専用の潜水具を利用できますが、どうされます?」
と、小麦肌の青年が見上げる様に聞いてはくるが、2ndキャラではそういう潜水に関しての機能が内装されている為に、それらの道具を借りる必要がない。
「自前があるから、そこは大丈夫だ」
といいながら、足を上げては装甲部分を叩いて教えておく。
修理やメンテナンス等は、アイツが一応やっておいてくれているため、機能不全になる事はまずないだろう。
というか、アイツが2ndキャラで手を抜く事が想定できない。その逆に入れ込む事なら、想定でき過ぎるから困る。
「えーっと、潜水具が不要って事は、以前どこかでそういう訓練とか、されてたんですか?」
「訓練とかは受けた事は‥‥‥うん、ないな」
「けど、ガーランと水中で戦えたって事だと、やっぱりハンターとかそういう経験があったりとか」
「ハンターねぇ・・・」
思い返してみても、訓練という訓練らしきモノをしなくても、機能として利用するだけで、先日のような潜水も普通に動作していた。
その操作に関して思い返してみても、結局はVRMMOの時となんら変わらない操作で動作できたわけで、やはり、これといった訓練という訓練をした覚えがまったくない。
水中戦という代物も思い出してみるも、戦闘があるといえばあったが、結局は仲間うちの能力というか、バフかかった魚人族の独壇場になりすぎるために、何もすることがないというか、下手に手を出したら邪魔ともなりえるぐらいだったし。
あの時は、傍観するか素材集めの手伝いとか、あっれぇ・・・戦闘に参加するという事をした記憶が…
あ!回復アイテム配ったぞ、うむ、間違いなく配って使ったし!使ったし…‥‥
‥‥‥
「うん、やっぱりそういう経験はないな」
「えぇ、それで、ガーラン倒せちゃうなんて‥‥‥」
何か、複雑な心境で視線を向けられているが、実際に経験という事はなかったのは事実である。
「まぁ、そうだな。しいて言うなら、この身体はそういうのが得意ってだけかなぁ」
「え?身体?それって、生まれつきなんですかね?」
「生まれつきっちゃぁ、生まれつきになる・・・な、うん」
「じゃぁ、種族的なモノとかでしょうか?」
「んー確かに、種族的といえば、種族的だな」
機械生命体として制作する事が出来る範囲で、そういう特化的な調整がしやすいというだけであるし、オプション的な機構も内蔵できたりする利点もあるから、言われてみれば、確かに生まれつきでもあり、種族的といえば種族的だなと。
ただ、魚人族には到底かなわないだろうけど‥‥‥あいつら、水中ではチートだよ絶対。
「ま、そんなわけで、潜水具云々は無くても何とかなるぞ。うん」
「となると、アーネストさんって、やっぱり…‥」
「ん?」
「いえ、わかりました。次は・・・」
何かしら言われそうだったが、それ以上もなく今度は船着き場の方へと案内されていった。
(キュピ、キュピーン)
「はっ!?(今度は下心持ちが!?)」
「シーちゃん?」
「あ、いえ、何でも(一刻もはやく向かわねば!けど、宿代を稼がないと一緒に居られないし…ぐぬぬぬ)」




