点
昨日の現場へと赴くまでの道のりは、昨日と同じ様に市場とも呼べる道筋からは少し外れた通りを歩いており、前回通った昼時分の時とはうって変わって、荷運びでひしめき合っている生物たちの活気で満ち溢れていた。
その見受けられる生物には、ヒューマン型の他にも爬虫類の様な顔型が二足歩行で荷物を抱えて歩いてもいれば、同様に荷車を牽いている獣の顔をした者もおり、VRMMOでいうところの精霊らしき岩肌を持った存在も鞄を背負っては移動していたりする。
昨日まではまったく気づかなかった人‥‥‥もとい人種達をチラホラと見かけ、自分が遊んでいたVRMMOの世界と似ている様で、それでも少々異なる点もある為にそうでもない、というか、各々が来ている服装のファッション性みたいな物が、自身の知っている内容とは大幅に事足りてないという印象でもあった。
そういえば昨晩の宴には、そういった生物の姿が見受けなかったなぁと思いつつも、そんなひしめき合う中を通るべく、まずはぶつからない様にとレーダーMAPとそこに表示される移動物体の進行ルートを推測しては、衝突しない回避ルートを補足して歩み進んではいるのだが、何故か視線を向けられている感覚がしており、そのことが気になってしまっていた。
最初は自分の身長の高さがと思ってみたりもしたのだが、他のそういった大型種族の生物と比べるとあまり変わらない、というかそれらと比べても低いという状況にもなっているために、結局は人込みにまぎれているはずなのだが、それでも視線というか何かしらこちらの様子をうかがっているとでもいうか‥‥
気にしてしまうと気にはなるもので、周囲の状況に探りを入れてみるかと聴覚に意識を集中して、聞き耳を立ててみる恰好にしてみれば「でけぇ・・・」「でかいな・・・」「ああ、デカイ」「巨人族って奴か?」「まさに巨大だな」という、大きさに関する音声ばかりを拾っており、確かに、この周囲の背の高い種族とあまり変わらない身長ではそう思われても仕方がないかと、その活気のある場所を通り過ぎていった。
港区の倉庫街
その倉庫街の先に港湾工事の事務所があるのだが、視線が気になっていた時の状態から、レーダーMAPに映りつづけている2つの存在がいる事が気になっていた。
しかもそれらは付かず離れずな距離を保ち続けており、ワザと道を間違えた風に装って足を止めては周囲を見渡してみるも、その姿は確認できなかったが、それでも移動を開始し始めるときっちりと一定距離を保ち続けて付いてきていた。
これは確実に自分へ何かしらの意識があるなと解るのだが、それらがどういった物なのかが判断つかないでいた。
なにせ、先日までそんな事はまったく無かったハズなのに、今に限りこういった尾行まがいな事をされているという理由として何かあったか?と、この世界に来てからの事を思い出してみるが、何かしらの思い当たる事があるとすれば昨晩の肉祭りぐらいしか思いつかない。
たしかあの肉は高級食材という事で、もしも窃盗などで手に入ったとしても売却すれば結構な金になるという話である為、そういう事なのかとしか想像できない。
それ以外には、これっぽっちも思いもつかないし、ここまでつかづ離れずを徹底されてては、下手に刺激を与えたりしたらメンドクサイ事になりそうな予感を感じてしまう。
こんな時、物語アルアルとかだと"わかってるぞ、出て来い!"なんて事やったりしたりして、お約束的に襲撃されるとか、または、その腕を見込んでとかになるとか、そういうのはこちらの長期活動予定を狂わされるのでご遠慮願いたいところ。
そうなってくると厄介事フラグなんて、自分から立てるものではない。
動くとしても全力で回避するに方向に限る。
それならば、相手が強制的に動き出さない限りは‥‥いや、動き出しても放置確定で関わり合いにならなければいいかと方針決定しておくが、何も知らないままどこのだれかわからない生物に、ストーキングされ続けているというのも何だか嫌な気分でもある。
仕方がない、火の粉が舞い落ちて延焼し始める前に、厄介事フラグを回避をするために。
それに、機能的にも使える事はわかったわけだし。
倉庫といえる建屋同士の合間、そんな場所の隙間的な通路に自然と入り込んでは足をとめ、メニューから"call"を意識してはその中から"hyou”を選択することを意識をする。
選択すると、昨晩のシーと同じく眼の前に作られた光の輪の中から出てきたのは、黒豹の様な恰好をしている動物、いやパッと見は動物なのだがその身体は金属的な光の反射をもっている機械姿の動物とでもいうシルエットであった。
その大きさは、大人一人が普通に通れるこの通路幅より少しばかり小さい程度ではあるが、見た目といえば黒色を基調としてた四足型の獣の格好をしており、その所々の継ぎ目などには赤い線を細く入れてあり、それがまた個性的な冷たさを醸し出していた。
特に陸上における強行偵察を主眼に置いた機械動物とでもいう存在として意匠を凝らし続けた結果、人型ではなく動物型が良いだろうとそういう風な恰好にしながら、その背には秘密装備として機関砲をその中に格納してあり、見た目以上に隠された物こそが至高であるという点に拘って作り込んだ支援ユニットの一つである。
そうして創り上げたのだが、名前を考える時点で思考能力はとうに力尽きてしまった為、そのままモデルとした動物の名である"黒ヒョウ"から"ヒョウ"としたのは秘密の話である。
秘密というか、他にもいる支援ユニットを知ってる奴等から「お前のネーミングセンスは壊滅的だ」「何も考えなかっただけだろう」「というかお前自身も考えずに名前重複させてるだろ」と総ツッコミが来たけが‥‥自分のはVer違いだからそんな事はないのと反論はしておいたっけか。
「アーネスト様、お呼びでしょうか?」
その呼び出した存在といえば、こちらの記憶探っている状況から引き戻してくれた。
というか、その声は凛々しくあり、その姿はとてもとても礼儀正しくもあり、待てみたいな状況のまま挨拶をしてきたその姿の見た目は、赤いラインの入っている黒ヒョウという存在であり、その目は言葉を話すたびに光っていたりもするその姿を見せてくれたら‥‥あぁ、もうカッコイイナァオイ。
動物系のロボキャラって、やはりこういうカッコイイ系というかクール系が一番良いな!特に、自分が会話してます的な視覚効果があるから余計に解りやすくしてみたら、さらにその度合いが上乗せされると気づいた時は、もうコレは突っ走るしかないじゃないですか。
あと、これぐらいの礼儀正しさをポンコツSにも見習ってほしいものである。
っと、今はそうじゃない。
「呼出して早々すまないヒョウさん、どうやら尾行?してると思われる奴らがいるみたいで、それらの動向偵察を頼みたい」
「排除、ではなく、偵察……ですか?それならば、私よりも観測機の方が向いているのでは?」
「あー、観測機の方は、今回は違うかもしれない」
ここでいう観測機は、1stキャラの遠距離"砲撃戦"を行う際に、着弾点を観測する為の砲撃支援ユニットとして飛行形態がとれる支援ユニットの事である。
ヒョウさんが陸、オタカさんが空、といった感じで固めてはいるのだが、いかんせん現在の2ndキャラにおいて重砲戦なんてする事が無いに等しい為に、呼び出してみる理由も特にはなかった。
ともう一つの支援ユニットの事を考えていたら、ヒョウさんの目が白から赤へと変わっていた。
ヒョウさんのお仕事モードとでもいうか、センサー系を発動した時にそうなるんだが、やっぱカッコイイなぁ・・・自分で作っておきながら、ほんと惚れ惚れするよ。
「確かに、3つほどそれらしいのを確認しました」
「えっ?3つ‥‥?2つじゃ?」
「センサーの感知に極僅かな歪を一ヶ所検知しました。
それが人為的な阻害であると判断できる為、もう1つ存在すると思われます。
そうなると、確かに観測機では対応しきれないかもしれません」
この2ndキャラではそこまで陸上における感知性能が高い形にしていない。
しいて上げる物とすれば水中においての分野だけであり、そこならば負ける事は無いのだが、その外れた一人という存在に関しては完全に解らない状態であった。
そのため、陸上に於いての索敵能力としてはヒョウの方がやはり性能は2ndキャラよりは上である為、その言葉はまず間違いないだろう。
「なら、その姿を隠しているのを重点にして、その他は上手くやっておいてくれれば」
「承知しました」
そうヒョウさんが言ったかと思えば、その姿を背景へと溶け込ませていった。
これは光学ステルスという奴であり、視覚情報をシャットアウトさせる機能である。
ついでに言うと、ECM・ECCM機能も搭載している為に、先ほどの歪を検知できたのはそのECCMを働かせたのだと思われる。
そういった機能を色々と支援ユニットつけている理由としては、この機械生命体でインフレしてしまったボスクラスとの戦闘において、純粋に生き残る戦法をとるには"見つかる前に殺れ""近づかれる前に殺れ""反撃されない位置から殺れ"という三大"殺れ"鉄則みたいなものが通説状態であった為に、超長距離から仕留めるのが苦肉の策という方法しか取れないという状況があった。
その為、そういった個々人が持つセンサー検知距離よりもさらに遠い場所、つまり遠距離の攻撃を正確に当てる為には、狙撃の場合はスポッター的な観測手が必要になるのだが、そこは機械生命体。
砲撃というさらに長大な射程を持つ兵装が扱えるために、地平線の向こうまで狙えるという代物を使わざる得なかったのである。
専用衛星などの観測方式でもあるならばまだしも、開拓惑星などにはその様な個人向けの情報衛星など存在しない(買い取った惑星の場合は可能である)し、というかべらぼうに高すぎるオプション品な為に1基しか手に入らなかったが、開拓惑星に持っていけるはずもなし。
そうなってくると、代替案としては自身の視界からは完全に見えない相手に対しては高高度の上空からの観測情報をも元にした砲撃を行う形になる。
ただし、それだけでは情報不足に苛まれる為に、時として対象に接近しての敵情収集をとる必要があり、それは相手に見つかってしまえば損傷するというリスクが伴ってくる。
それならば、極論として"見つからなければ良い"を地で実行すればよい。
という単純な思考で対応した為に、隠密・回避型としての支援キャラを製作しようと思い立ち、そしてその時に魔が差したのかそれならば人型に拘る必要もないし動物型でもいいのでは?という思考が当時の脳裏に電撃のごとく走り抜けてそういう恰好となり、さらに無理やりそういった強行偵察という方向性を持たせてみたら、これまた見事に趣味にハマった訳で‥‥
まぁ、他にも色々とデザイン的にやっちまったというのもあるし、背中に隠しつけた自衛用の機関砲なんて代物とかは、コレクションとして集めては倉庫に眠ってた肥やしを取り付けれる様にしただけで、まぁそこはそれで。
で、その姿を視覚情報から完全に消しさったヒョウさんといえば、「では‥‥」というセリフと共にタンッという地面を蹴る音がしたと思えば、もうその周囲にその存在がいるという認識が無くなっていた。
というか、こちらのレーダーMAPにヒョウさんが表示されないんですが‥‥
アレ?ここまで性能よかったっけ?そんな高度すぎる機能付けた覚えないんですけど‥‥?
‥‥
うーん…考えても仕方が無い。
なら、とにかく餌となる自分は知らぬ存ぜぬで事務所へと向かいましょうかと、倉庫間の通路から表通路へと戻りその歩みを開始した。
その際、確認したレーダーには、今度はしっかりと3つの光点と、ようやく表示された一つの支援ユニットのマーカーの点が表示しているのを確認できていた。
あ、よかった・・・ちゃんと表示された‥‥




