なんとかしてみる
視界の隅に映されている"Cation"という警告表示がされている身体の部分を触ってみて、ハッキリと確認した現状で思った事といえば、
"警告とか注意とか、そういうのを今さらに出されても、もう突き刺さってるやん、手遅れやん"
とか、
"それよりも、痛みとかそういうの無いの?"
というものばかりで、危機感とか焦燥感とか、そういった類を一切感じずに、ただただ冷静に現状に対して、状況をそのまま確認して自分にツッコミを入れていたりする始末だった。
そして、さらに思った事と言えば、確認できている状況を脳内の妄想カメラに第三者視点を展開し、突き刺さってる状況を冷静にトレースしている自分がおり、さらにさらに、"これってあれだな、つまり高速移動する相手を"捕まえた!"というシチュエーションが出来上がってるってやつだよな?"と、この状況から反撃する手段ともいえる兵装を内蔵させなかった自分自身の見通しの甘さに沸々と怒りが沸き起こり、ついには
「ガボゴゴボゴボガガゴ!ゴゴボガゴゴゴガゴグゴゴボガーゴ」
(意訳:こんな、とても美味しすぎるシチュエーション、今後二度とあるかないかじゃぁないか!まさかこんなシチュエーションが本当におきるとは、悔しい、ほんと悔しい!ちくしょーめ!)
と、場所も状況も何も考えずに、わめくように愚痴っていた。
なにしろ、いままさに機動力に優れる相手を、わざと被弾しながらも捕まえてからの必殺の一撃を加えるという浪漫、その浪漫の一歩手前まで完成されつくしているというのに、なんでその最後の必殺の一撃となる兵装を仕込まなかったのかなぁ!ほら!電磁警棒という武器を腕部に内蔵させて、あとはこう、バカッ!と腕の装甲を外して露出させて電極を当てたりとか、この至近距離ならバリアなんぞ意味ないぜ!的な強力な一撃的なものをぶち込むという事が出来ない!なんで、こんな美味しすぎるこの状況に出来ないのか!
くそう、もうね、苛立ってくる!
あ、しかしまてまて海中で電撃ってどうなんだ?
なんか周りに分散されてその威力が下がるとかになりそうということで、それなら水中だと物理的な得物に別の内臓兵装にしたんだっけか、けど、ほんと、まさかこんな見事にあてはまるシチュエーションが起きるなんて思いもよらないし、世の中ままならないものなのか・・・
そんな残念感をもちつつも、ようやく日の目をみる事のできた右腕に内蔵しておいた銛代わりの棒手裏剣もどきを射出するための装置を起動させると、右腕の手首付近に射出口があらわれる。
それが現れた事を確認した後に、体を捻ってはその右腕を相手に向け”トストストス”という軽い衝撃と共に射出していく。
が、その棒手裏剣もどきは、その対象に刺さる事わけでもなく、そのまま綺麗に弾かれる様に後方へと流されていった。
(・・・)
ええと、よし、まずはもう一度、現状の確認だ。
これは決して現実逃避ではない、情報を集めはとても大切な事なのだから。
まず、表示されているこの身体への損傷といえば、見事に背中側から腹部に向かって貫通してる角みたいなものだが、胸部でもなく腰椎部でもないので実際にはそれほど活動に影響をきたす事はない。
もしも、胸部だったらバラストタンクに穴あいていたと想定できるし、腰椎部や頸椎部などだと、ちょっとまずかったかもしれなかったかなぁとは思ったりはするが、さすがデフォルトでの耐久性の高さが、他の種族から比べると抜きんでているという初期の仕様は伊達ではない種族である。
ただ、イベントのためとはいえ、生物に近づける為に、四肢以外の部分を柔らかさを重視した表面装甲とする為に、堅牢性を低くした弊害の部分を貫かれるというのは、なんともはや、これだから2ndキャラの表面装甲は非戦闘用としか思えないぐらい脆いなぁと、重装甲の1stや防御特化のサポートキャラなら、たぶん貫けなかっただろうなぁと。
というか、情報収集を始めてる頃合いから、洋上に飛び出したり海へと落下したりを繰り返すカジキマグロもどきの角?の場所に刺さったまま状態という。それに合わせて空が見えたり、海の中見えたりしてるけれど、身体にはなんら影響がない、そう身体にはなんら影響がないのだが、視界的に内部(主に自分の感覚に)影響がもろに発生しだしている。
例えるなら、ジェットコースターの高速アップダウンを繰り返しているところに、さらに捻りが加わってとでもいうのか、視覚情報からと平衡感覚ともいえる機能部分からとの情報の交錯が、どっちが上なのか下なのかすら・・・、なんか気分悪い・・・そろそろ酔いそう・・・機械生命体なのに酔うってどうなんよ・・・
そんな何度もビッタンバッタンしている衝撃を何度となくうけてもいるもかかわらず、ずーっと先端には自分が刺さったままときており一向に抜け落ちる気配がない。
たぶんこれはあれかな?釣り針とかにある、刺さった得物がとれないカエリとかついてるんじゃないかな絶対。
その突き刺した当人(当魚?)の方へと振り返ってみてみると、あの気持ち悪い口が今すぐにでも捕食しようとでもするかの様に一所懸命にパクパクと動かしていたりしている。
正直あれキモイ、なんで口の中にさらに口があるのよ、どこぞのエイリアンか何かなの?
そういや、エイリアンの元ネタに、そういう魚類からとったとかなんとか・・・
そんなビッタンバッタン行為を数十回繰り返しても、それでも刺さった自分という存在が外れないという事を悟ったのか、それともあきらめたのか、まさか他の手立てに変えたのか、今度は海中を勢いよく泳ぎはじめていった。
(ようやく、気分悪いのが落ち着いてきた・・・さぁて、これからどうすっか)
自分の目的は、面接の石を探して持って帰らないと飯の種にありつけない。
その為にはあの場所にどうやっても戻らないといけない訳で、じゃぁ今はどこらへんかな?とMAPを見てみたら、先ほどの地点から沖合へと遠ざかり始めていたりしている訳で。
(・・・あー、これマズくね?)
現状で何か方法が無いかと、装備やオプションをチェックしているが、結局はそのほとんどは倉庫に格納したままであり、この場所で取り出して身に着けるとしても、こんな水中移動の中、失敗したら海の底へ落ちては紛失するリスクがある。
ならば、元から内蔵としている物はと言えば、先ほど右腕に内蔵しておいた銛代わりの棒手裏剣を数個射出してみても、その角度の甘さからか相手の皮膚?鱗のせいで弾かれてしまったりして、ダメージらしきダメージが通ることもままならず、コレによる対処は無理だろう。
残弾も残り4発とかよろしくない状況でもあり、この数で動きを止めるという方法はとても無理そうである。
他にあるとしたら、左腕には射出型のアンカーしかない訳で、これを使うにしてもひっかける場所が無ければ、あまり意味をなさない。
あとは、バラストタンクや推進器、ソナーやライトなどなどの水中行動用の機能ばかり。
(・・・あれ?軽く詰んでる?)
対処するための材料が少なく少し焦るが仕方ない、まずはこれ以上遠ざかるのを避けなければ、このままではコバンザメのごとく魚類と生涯共存するとか、漂流物とかになる恐れがありすて嫌すぎる。
(なれば、とっとと戻るに越した事はない)
ほんとは活動エネルギーを蓄える為の資金調達にきたのに、なんでその蓄えるべき活動エネルギーを消耗する消費量が激しい事をしなきゃならんのに・・・
そう思いながらも、両脚部に内蔵してある水中推進器を起動させては、脚部膝下に取り込み口と吐き出し口が姿を現しては、内部ステータス画面には"Ready"の表示を光らせてくる。
そして水力方向を調節しては、続けざまに起動をかけると、水中での移動が徐々にだが加速し、最大船速に到達する時には、カジキマグロもどきをコチラが引っ張る恰好になっていく。
そうして、大きくUターンさせる事に成功はしたのだが、残量エネルギーのメーターがゆっくりとではあるが、目減りし始め・・・
って、ようやくため込んだ分の半分近くが持ってかれるの?!うっそぉ・・・
この減り方からいくと、このまま強制的に引っ張り続けていくと・・・港湾に戻るころにはガス欠待ったなし?それちょっとマズくね?
こうなりゃ相手の推力を少しでも利用し、こっちは多少なりとも節約する方向にするべく、出力を調整しては主にサイドスラスターよろしく方向転換に使用して港湾方面へと誘導していく。
相手は外に向かおうとしてるのを、こちらが無理やり抑え込むという形になるので、足の方向操作が忙しい忙しいが、功を奏したのか、ようやくMAPを確認しながら沖合への進行から、なんとか港湾側へと誘導することに成功しているのだが、こいつ予想以上に遊泳力が強い。
これがちょっと大変。
活動エネルギーを抑えたいというのもあったが、それでも結構な推力をもって方向姿勢の制御をしなければいけないときている。
何させてくれやがるんだよこいつは・・・
そんな愚痴をこぼしながらも、しばらく舵役として奮闘した結果なのか、位置確認用に表示しておいたMAP上に、陸地が徐々に近づいてきているのを示していた。
だが、ふと、このまま減速せずに進んだら確実に陸にぶつかる、という推測が脳裏によぎる。
減速用に推進器を一杯まで回すのも、エネルギー残量が気になり始めた今では十全とはいいにくい、それよりもこの勢いを全力で止めようとして、はたして止まる代物なのかが怪しい。
速度が落ちる中、暴れられたりしたら元の木阿弥になりそうでもある。
かといって、このまま岩礁やら岩壁とかに突っ込んだら、先端に突き刺さっている2ndキャラなんて装甲が甘い分、下手すりゃペシャンコとかになるオチが簡単に想像できてしまう。
それは勘弁だなぁ…機能停止はやはり1stの重装備型で陸地が理想だし。
ん?いまの状況で思ったが、海底も悪くないな。大破状態で海底に眠る兵器とか・・・。
そして、ダイビングスポットになっていたりと・・・あ、それオイシイな結構イケルな。
よし、それも候補に入れておくべきだな!ただし、2ndキャラでそれは勘弁であるが。
そんな死後妄想をしている間もさらに陸地に近づいてきており、そろそろ次なる手を打つかと、思いついた方法に覚悟を完了して行動に移す。
まずは脚部推進器の推力を増速させ、やや海面に誘導してはなんとか頭部を海上からあらわにさせる格好に調整し、周囲を遠望で確認してみると、その視界に頑丈そうな舫い杭をとらえる。
距離、速度からギリ届く距離かな?と観測状況を確認すると、すぐさまに左腕を海面に出しては、内蔵している有線誘導ワイヤーアンカーを展開しては射出させる。
目標は先ほど発見した舫い杭。
ひっかけろひっかけろ・・・と念じる様に優先でアンカーに内蔵されている小型スラスターを誘導するように操作していると、ワイヤーに張力が掛かるのが確認できた。
さらに、目視でも舫い杭に何十にも絡まっている事も視認できた。
よし、準備はできた。
カジキマグロ(もどき)?の一本釣り開始だ!ただし、疑似餌は自分だけどな!