探し物は
目的地としてマークしている座標の近辺に到着してはみたのだが、太陽の明かりがあまり届いていないのか、それとも濁っているとでも言うべきか、周囲の状況が視認しにくいという状況の場所だった。
水深としては、だいたい30mに届くかどうかというところか。
それでも明かりが届きにくいということは、やっぱり水質的に透明度がそれほど高い訳ではないという事なんだろうと思うが、その濁っている理由というのは、こういう生活圏な話であるならば生活排水が流れ込んでいたり・・・
いや、深くは考えないでおこう。
そこはまぁ、おいておくとして、一応は目的地付近に到着しているはずである。
さすがに透明度がそんなに良くないといっても、強い明りさえあればあの色と形状であるなら簡単に見つかるだろうと、こめかみ部分に内蔵してある照明を起動させてみた。
起動してみたら、さらにうわぁ・・・という感想しかでてこなかった。
なにせ、その光に映し出された海底は、砂地ではなく砂利というか石や岩があちらこちらに存在しているという状況であり、しかも大きさ的に捜索している代物と似たり寄ったりの大きさがいくつもあるときている。
さらにさらにいうなれば、そういった自然の物とはまったく異なる、どうみても人工物的な代物までもが紛れていたりする始末。
それに付け加え"黄色"という色なので灯をつければ目立ってすぐに見つかるだろうと安易に思っていたが、その映し出される海底には、種々様々な色々なものが、それまもう色々と、人工物も混ざり合ってその"黄色"っぽい似た色が拡散している状態であったりと、
こりゃぁ、難儀しそうだ・・・
* * *
石さーん、どこですかー?返事してくださーい。
などと思ってみても返事が返ってくるわけでもない。
今は下手に推進器を使う事で濁りの元を巻き上げて視界をさらに悪くするわけにもいかない為、胸部と臀部のバラストを調整して、這うような格好で手泳ぎで進んでは一つ一つ調べていく。
こんな事なら投擲前にマーカーつけとけばよかったと、見つけた黄色っぽいものを見つけては手に持って、覚えさせた記録情報との差異をチェック・・・するまでもなくコレもハズレ。
見た目からして丸く、投擲した代物とは全くの別物である。
お、金貨らしきもの発見・・・って、なんだメダル?うーん・・・価値がよくわからない。
食器?らしきものもあったりするし・・・角ばったモノを見つけてみても、こんどは木片?らしきものだったりする。
何なんだここら辺の海底は。
似たような代物から、雑多なもの、果てはゴミくずっぽものまであったりという。
何気にこれ、難易度高くね?これはあれか、圧迫面接(水圧的な物理)という奴なのか?
ホント老人たちの難癖みたいな面接って奴は、どこにいっても似たり寄ったりになるんだろうかね。
もしかしたら"ワシが若かった頃なんて~"とかいうお約束的な物言いからはじまる説教とか普通にしてるんだろうかね。
っと、コレも違う。
そんなこんなと勝手な妄想ともいえる雑念を混ぜながら、探し続けるてはいるのだが、なかなかにそれらしいものがみつからない。
推定範囲の中央がこれならば、もしかして外よりの方にあったりするのか?と、手泳ぎで移動しては探すという事を繰り返す。
正直、何やってんだろう・・・自分・・・
そんな心境にさいなまれること幾数回、そうこうしながらも数をこなしていけば、ようやく目的っぽい代物を見つけ出すことに成功もする。
手に取ったその代物は、形状も角であり色も黄色であり、視認情報と登録情報からも、90%以上の確率で一致しており、同じ可能性が高そうである。
他に似たようなものはないよな?と、念のために近くの海底を確認してみるが、これ以上の似たものは見つからなかった。
ふぅ・・・ようやく見つかっ・・・
たぅぁ・・・!?
"終わった"と安堵した途端、とてつもない物理的な衝撃が体全体に走り、何故か自身の身体が海面すら飛び越え、太陽かがやく青い空へと・・・
って、なんだなんだ!?と、自身の身体を無理矢理に押してきている力を感じている方向へ、首をひねって振り向いたその先には、立派な背びれをつけている大きな魚類のような存在が、真後ろに存在していた。
・・・カジキ・・・マグロ?
ぱっと見ためでいえば、とてつもなく大きなカジキマグロとでも言う様な、そんな背びれが目立っている魚類が・・・って、なんでこんなとこに?いや、それよりも、それよりもだ。
何かキモイ!!
パッと見カジキマグロなのに、サメを思わせるギザギザ刃物の歯が、ワニの様な口にっ・・・って、なんか魚類と違う!サメ?爬虫類?なんかいろいろ混ざってるコレ!!
さらに視界に映しだされている状況モニター部から”Caution”という表示と共に、身体全体の状況表示が一部黄色に変わっている表示を示していた。
その黄色に表示されている部分、左腹部へと視線を移すと見事にその槍?みたいな物がニョッキリと腹部のところから生えていた。
生え・・・えっ?
頭の中が何が起きたのか理解できないないまま、いうなれば混乱をきたしていたというのがただしいのだろう。
海中へと戻った衝撃でようやく意識と認識を取り戻し、ふたたびその場所を視認して触ってみて確認した結果。
刺さっとるっ!!
カジキマグロもどきの角?が、見事に身体を貫通していた。