01 竜として誕生
ああ、私は今何千年生きているのだろう。
世界はずいぶん様変わりしている。
人とかいう種族が2つの島を支配している。
森と言えるものが残っている島はほとんどない。
私も長生きしすぎたようだ。
ああ、でも竜は変わらない。
私もあの者たちのように暮していれば。
……いや、それは無理なこと。
たまには。
懐かしい日々を思い出しながら。
眠るとしよう……。
◆◆◆
私は闇竜に生まれた。
自らが生まれたときの記憶があるのは竜であるが故であろう。
とはいえ、記憶は消えかけているが。
闇竜の子供は皆一つの場所で育てられる。
だから親のことなど覚えてはいない。
生まれてから五年ほどはその建物から外出できない。
竜は寿命が長いが故、五年など長くはないのだ。
竜は食事がいらない。
それに最初からある程度思考できる。
常識を知らないのが問題点ではあるものの。
挙句竜なだけのことはあって生命力が高い。
つまり子守りは必要ない。
最近人の子育てを見て驚いた。
あそこまで手間をかけてよくやっていけるものだ。
一応成体の竜が見てはいるがほとんど育児とは言えまい。
人のそれに比べれば、な。
施設から出られない五年間は、じゃれあいのようなことを他の竜としていたのを覚えている。
その時の感覚では戦いだったのだが……。
とても戦いと呼べるものではなかったな。
まあ、戦いを見たこともなかったのだ。
仕方あるまい。
ほとんどすることもなかったはずの五年間だが、
案外すぐに五年間が終わった。
私の記憶が抜けているだけかもしれないがな。
五年たったら次は教育である。
といっても大したものではない。
教育というよりは
戦闘訓練である。